マナー
他社訪問のマナー
到着から帰りまでの流れと、そのまま言える一言
他社を訪問するときにやることは、約束の少し前に着く、受付ではっきり名乗る、勧められた席で待つ、相手が来たら立って挨拶する、時間内に用件を済ませて短く辞去するの五つです。言葉に迷ったら、会った最初に「本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます」、帰り際に「本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」と言えば外れません。訪問先から見れば、あなたの言葉づかいやふるまいがそのまま自社の印象になります。このページでは、前日の準備から後日のお礼・上司への報告までを時系列に並べ、場面ごとにそのまま言える例文、商談中のふるまい、やりがちな失敗をまとめました。迎える側の動きは来客対応の流れとマナーを見てください。
結論
他社訪問は①前日の確認 ②到着・身だしなみ ③受付 ④応接室で待つ ⑤挨拶と名刺交換 ⑥商談 ⑦辞去 ⑧お礼の連絡の順に進みます。どの段階でも「相手の時間をいただいている」ことを意識し、待たせない・長居しない・勝手に動かないの三つを守れば、大きく外れません。作法の細かい部分は会社や相手先によって違うので、自社の決まりや相手先の案内に従ってください。
訪問の流れ(時系列)
- 01
前日までに確認する
日時・場所・相手の部署と名前・人数・持ち物を確かめます。初めての場所なら、最寄り駅からの道と入館の方法(受付の階、受付電話や無人受付の有無)を調べておきます。
- 02
少し前に着く
約束の時刻の数分前に受付へ着くようにします。早く着きすぎたら、建物の外や近くで時間を調整します。遅れそうなときは、分かった時点で相手に電話します。
- 03
建物の外で身だしなみを整える
コートやマフラーは建物に入る前に脱ぎ、裏地を表にしてたたんで腕にかけます。雨の日は傘の水を切り、傘立てやビニール袋を使います。携帯電話は音が鳴らない設定にします。
- 04
受付で名乗る
「お世話になっております。株式会社△△の□□と申します。◯時に◯◯部の◯◯様とお約束をいただいております」。受付の種類ごとの言い方は訪問先の受付での名乗り方にまとめています。
- 05
応接室で待つ
案内された席、または勧められた席に座ります。指定がなければ入口に近い側で待ち、資料と名刺入れを出しておきます。詳しくは応接室での待ち方と座る位置。
- 06
立って挨拶し、名刺を交換する
相手が部屋に入ってきたら立ち上がり、「本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます」。名刺交換の手順は名刺交換のマナーを見てください。
- 07
用件を時間内に済ませる
勧められてから座り直し、最初に今日の目的と終わりの時刻を確かめます。手土産がある場合は、挨拶が済んだところで渡します(ビジネスの手土産)。
- 08
短く辞去する
用件が終わったら、訪問した側から切り出します。「本日はありがとうございました。そろそろ失礼いたします」。見送りを受けたら、適当なところで「こちらで結構です」と伝えます。
- 09
当日中にお礼を伝える
社に戻ったら、その日のうちにお礼のメールを送ります(打ち合わせのお礼メール)。
場面別の言い方(そのまま言える一言)
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 受付で名乗る | お世話になっております。株式会社△△の□□と申します。◯時に◯◯部の◯◯様とお約束をいただいております。 |
| 受付で待つよう言われた | 承知いたしました。ありがとうございます。 |
| 案内してくれた人に | ありがとうございます。失礼いたします。 |
| 担当者が部屋に入ってきた | 本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。 |
| 初めて会う相手 | はじめまして。株式会社△△の□□と申します。本日はよろしくお願いいたします。 |
| 席を勧められた | ありがとうございます。失礼いたします。 |
| お茶を出された | ありがとうございます。(口をつけるのは勧められてから) |
| 本題に入る | 早速ですが、本日は◯◯の件でお時間をいただきました。 |
| 辞去を切り出す | 本日は長い時間ありがとうございました。そろそろ失礼いたします。 |
| 見送りを受けた | こちらで結構です。本日はありがとうございました。 |
注意
「伺う」「参る」の使い分けは「伺う」と「参る」の違い、「お忙しいところ」の言い換えは「お忙しいところ」の使い方にまとめています。
相手別の言い方の例
初めて訪問する会社の担当者に
はじめまして。株式会社△△の□□と申します。本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
何度も会っている担当者に
◯◯様、いつもお世話になっております。本日もお時間をいただき、ありがとうございます。
担当者の上司が同席したとき
はじめまして。株式会社△△の□□と申します。いつも◯◯様には大変お世話になっております。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
受付や案内をしてくれた社員に
ご案内いただき、ありがとうございます。
担当者が遅れて入ってきたとき
(「お待たせしました」と言われて)いえ、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
前任者から引き継いで初めて訪問したとき
このたび前任の◯◯に代わり担当になりました、□□と申します。◯◯同様、どうぞよろしくお願いいたします。
お詫びのために訪問したとき
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。このたびは大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
帰り際、エレベーターまで見送られたとき
本日はありがとうございました。どうぞこちらで。失礼いたします。
注意
前任者など自社の人の名前には「様」「さん」や役職の敬称を付けません。「前任の◯◯」「弊社の◯◯」と言います。お詫びの訪問の申し入れ方は謝罪訪問のアポイントの取り方を見てください。
持ち物と身だしなみの確認表
| いつ | 確認すること | ひとこと |
|---|---|---|
| 前日 | 日時・場所・相手の名前・人数・入館方法 | 相手の名前は漢字まで確かめる |
| 前日 | 名刺の残り、資料の部数、手土産 | 資料は相手の人数より少し多めに |
| 建物に入る前 | コート・マフラー・手袋を外す | 裏返してたたみ、腕にかける |
| 建物に入る前 | 携帯電話を音の鳴らない設定に | 商談中は机に出さない |
| 受付の前 | 名刺入れをすぐ出せる場所に | 上着の内ポケットか鞄の取り出しやすい所 |
| 帰り | 建物を出てからコートを着る | 見送りを受けている間は着ない |
コートを脱ぐ場所や手土産を渡すタイミングは、相手先の決まりや案内があればそちらを優先します。「どうぞお召しになったままで」と言われたら、その言葉に従って構いません。
出発前のチェックリスト
- 相手の会社名・部署・氏名(漢字)・役職を確かめた
- 日時・住所・受付の階・入館方法(有人受付、受付電話、無人受付)を確かめた
- 最寄り駅からの道順と、遅れたときの連絡先(相手の電話番号)を控えた
- 名刺は足りる枚数があり、名刺入れに入っている
- 資料は人数分+予備があり、折れや汚れがない
- 手土産を持っていく場合、紙袋ごと用意した
- 当日の目的・話す順番・聞きたいことをメモにまとめた
- 同行者がいる場合、誰が何を話すか、名刺交換の順番を決めた
- 筆記用具とメモ帳、必要なら会社の許可を得た端末を持った
- 靴の汚れ、髪、爪、上着のしわを見た
注意
上司と一緒に行くときの名刺交換や紹介の順番は上司と同行訪問するときのマナーにまとめています。
商談中のふるまい
座り方と持ち物の置き場所
- 勧められてから座る。勧められなければ「失礼いたします」と言って腰かける
- 鞄は足元(自分の椅子の横)に置く。テーブルや空いた椅子には置かない
- 背もたれに深くもたれず、浅めに座って背筋を伸ばす
- もらった名刺は、相手の座っている並びに合わせて机の上に置き、商談が終わるまで出しておく
聞くとき・話すとき
- 相手が話している間はさえぎらず、相づちとメモで聞いていることを示す
- 最初に「本日は◯◯の件で、◯時までお時間をいただいていると伺っております」と目的と終わりの時刻をそろえる
- 結論から話し、数字や日付は資料を指しながら伝える
- 答えられない質問は、その場で推測で答えず「確認して◯日までにご連絡いたします」と持ち帰る
資料を渡す・受け取る
- 資料は相手から読める向きにして、両手で渡す。「こちらが本日の資料です」
- 相手の資料は両手で受け取り、「頂戴いたします」と言う
- パソコンや画面を見せるときは、「画面をご覧いただけますでしょうか」と一言かけてから向ける
お茶を出されたら
- 出してくれた人に「ありがとうございます」と軽く頭を下げる
- 口をつけるのは相手に「どうぞ」と勧められてから。勧められなければ、相手が飲んでからにする
- 飲み残しは気にしなくてよい。茶たくや器の位置は動かさない
退室から建物を出るまで
- 01
辞去を切り出す
用件が終わり、次にやることを確かめたら、訪問した側から「本日はありがとうございました。そろそろ失礼いたします」と言います。
- 02
片付けて立つ
資料と名刺をしまい、椅子を戻してから立ちます。お茶の器はそのままで構いません。
- 03
扉の前で一礼する
部屋を出る前に振り返り、「失礼いたします」と言って一礼します。
- 04
見送りを断る
エレベーターや玄関まで来てくれたら「こちらで結構です」。エレベーターの扉が閉まるまで頭を下げます。
- 05
建物を出てからコートを着る
受付の前を通るときは受付の人に会釈します。電話や同行者との感想の話は、建物を離れてからにします。
やりがちなNG
- 約束よりずっと早く受付に行く(相手の予定を崩すことがある)
- 遅れそうなのに連絡せず、着いてからお詫びする
- コートを着たまま受付に行く
- 勧められる前に上座に座る、勝手に席を移る
- 鞄をテーブルや椅子の上に置く
- 分からない質問にその場の推測で答える(後で訂正が必要になる)
- 相手の話の途中で資料をめくり始める、話をさえぎる
- 待っている間に携帯電話で通話する、部屋の中の物に触る
- 相手が来ても座ったまま挨拶する
- 用件が終わっても雑談で長居する
- 帰りのエレベーターや玄関先で、商談の感想を同行者と話す
Point
建物を出るまでは訪問中です。エレベーターや廊下には相手先の社員がいます。商談の感想や社内の事情は、建物を離れてから話してください。
言ってはいけない・避けたい言い方
| 避けたい言い方 | 理由 | 言い換え |
|---|---|---|
| ◯◯さんいますか? | 相手先の人への言い方として軽すぎる | ◯◯部の◯◯様はいらっしゃいますでしょうか。 |
| お伺いさせていただきました | 敬語を重ねすぎて回りくどく聞こえる | 本日はお時間をいただき、ありがとうございます。 |
| 弊社の◯◯部長が申しておりました | 自社の人に役職の敬称を付けている | 弊社部長の◯◯が申しておりました。 |
| ご苦労さまです(受付の人に) | 目上から目下へのねぎらいとして受け取られやすい | ありがとうございます。 |
| 了解しました | 訪問先では改まった言い方が無難 | 承知いたしました。 |
| じゃあ、そろそろ… | 締めくくりがあいまい | 本日はありがとうございました。そろそろ失礼いたします。 |
注意
「お疲れさま」と「ご苦労さま」の違いは「お疲れさま」と「ご苦労さま」、「申す」と「おっしゃる」の使い分けは「おっしゃる」「申す」の違いにまとめています。
遅刻の連絡・お礼・上司への報告(例文)
遅れそうなときの電話
お世話になっております。株式会社△△の□□です。本日◯時にお約束をいただいておりますが、電車の遅れのため、到着が◯時◯分ごろになりそうです。大変申し訳ございません。このままお伺いしてもよろしいでしょうか。
遅れると分かった時点で、約束の時刻より前に連絡します。到着の見込みを具体的に伝え、相手の都合を聞きます。連絡の手順は遅刻の連絡の仕方にまとめています。
早く着きすぎたが、外で待てる場所がないとき
お約束の時刻より早く着いてしまいました。お時間までこちらでお待ちしてもよろしいでしょうか。
訪問した日のお礼メール
件名:本日のお打ち合わせのお礼(株式会社△△ □□)
株式会社◯◯
◯◯部 ◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日はお忙しいところお時間をいただき、誠にありがとうございました。
お話しした◯◯の件は、◯日までに資料をお送りいたします。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
遅れて到着したときのお詫び
本日はお約束の時刻に遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。お待たせしたにもかかわらず、丁寧にご対応いただき、ありがとうございました。
上司への報告(社に戻ってから)
◯◯部長、本日の株式会社◯◯への訪問のご報告です。
結論:◯◯の件は先方で前向きに検討いただけることになりました。
先方からの質問:◯◯の費用の内訳を知りたいとのことです。
次にやること:◯日までに見積と資料を私からお送りします。
ご判断いただきたい点:値引きの可否について、ご相談させてください。
報告は結論→相手の反応・質問→次にやること→判断してほしいことの順にすると短く済みます。報連相の考え方は報連相の意味を見てください。
遅刻のお詫びメールの全文は打ち合わせに遅刻したお詫びメール、訪問のお礼メールの他の例は打ち合わせのお礼メールを見てください。
この記事の要点
- 流れは確認→到着→受付→待つ→挨拶→商談→辞去→お礼。
- 約束の数分前に受付。早すぎても相手の予定を崩すことがある。
- コートは建物に入る前に脱ぎ、出てから着る。
- 相手が来たら立って挨拶。辞去は訪問した側から切り出す。
- 商談中は鞄は足元、名刺は机の上。分からないことは持ち帰る。
- 建物を出るまでは訪問中。当日中にお礼のメールと上司への報告。
FAQ
よくある質問
受付に着くのは約束の時刻の数分前が目安とされます。早く着きすぎると相手の予定を崩すことがあるので、近くで時間を調整してから入ります。大きなビルで入館手続きに時間がかかる場合は、その分だけ早めに建物に入ります。
建物に入る前に脱いで裏地を表にしてたたみ、腕にかけて持つと丁寧です。帰りは建物を出てから着ます。相手から「どうぞお召しください」と勧められた場合は、お礼を言って着て構いません。
訪問した側から切り出すのが基本です。用件が終わったら「本日はありがとうございました。そろそろ失礼いたします」と言って席を立ちます。相手が次の予定を気にしている様子なら、早めに切り上げます。
エレベーターや玄関まで見送ってもらうことが多いので、適当なところで「こちらで結構です」と伝えます。エレベーターの扉が閉まるまでは、相手の方を向いて軽く頭を下げます。
相手に「どうぞ」と勧められてから口をつけます。勧められない場合は、相手が飲んだあとにいただくと自然です。飲み切らなくても失礼にはなりません。
自分の椅子の横の床に置きます。テーブルの上や空いている椅子、ソファの上には置きません。自立しない鞄は、足元に倒して置いて構いません。
当日の遅れは、相手がすぐ気づける電話で連絡します。相手が電話に出られない場合は、留守番電話かメールで遅れる理由と到着の見込みを伝え、着いたら受付で改めてお詫びします。
送るのが無難です。訪問した日のうちに、時間をもらったお礼と、話した内容で次にやることを短く書きます。社内で誰が送るか決まりがあれば、会社の決まりに従ってください。