マナー
手土産のビジネスマナー
渡し方・タイミング・選び方と例文
ビジネスの手土産で大切なのは、相手の職場で配りやすく、相手に気を遣わせないことです。高価なものや珍しいものより、個包装で日持ちがして、人数分そろっているものが喜ばれます。このページでは、最初に場面ごとの早見表を置き、続けて選び方と予算、渡すタイミング、誰が渡すか、紙袋の扱い、のし、そのまま使える言葉の例文、よくある失敗の順にまとめました。
結論
結論:①選ぶのは個包装・日持ち・常温・人数分。②渡すのは応接室で挨拶と名刺交換を済ませたあと(商談やお詫びは用件のあと、会食は帰り際)。受付や玄関では渡さない。③渡す人は、こちらの最上位者から相手の最上位者へ。④紙袋から出し、正面を相手に向けて両手で。⑤言葉は「皆さまで召し上がってください」で足ります。
場面別の早見表(いつ・誰が・何と言って)
| 場面 | 渡すタイミング | 渡す人→受け取る人 | 添える言葉(短く) |
|---|---|---|---|
| 初めての訪問・挨拶 | 応接室で挨拶と名刺交換を済ませたあと | こちらの上位者→相手の上位者 | 「皆さまで召し上がってください」 |
| 商談・打ち合わせ | 用件が済んで、席を立つ前 | 同上 | 「本日はありがとうございました。皆さまでどうぞ」 |
| お礼の訪問 | お礼を直接伝えたあと | お礼を言う本人→お世話になった方 | 「ささやかですが、お礼の気持ちです」 |
| お詫びの訪問 | お詫びを伝え、話が一段落したあと | 責任者→相手の責任者 | 「心ばかりのものですが、お納めいただけますでしょうか」 |
| 会食・接待 | 帰り際、店を出る直前か出たところ | 招いた側の上位者→相手の上位者 | 「お荷物になって恐縮ですが」 |
| 年始・着任の挨拶回り | 挨拶の言葉のすぐあと | 挨拶する本人→窓口の方 | 「本年もよろしくお願いいたします」 |
| 相手が不在・受付に預ける | 受付で用件を伝えるとき | 自分→受付の方(担当者宛て) | 「◯◯様にお渡しいただけますでしょうか」 |
早見表の理由と、言葉の全文は下の各見出しで説明します。訪問そのものの流れは取引先訪問のマナーにまとめています。
選び方のチェックリスト
- 個包装になっていて、その場で配りやすい
- 机で書類を広げたままでも食べられる(指がべたつかない・くずが出にくい)
- 日持ちがする(相手がすぐに配れないこともある)
- 常温で持ち運べる(夏場はチョコレートなど溶けやすいものを避ける)
- 相手の部署の人数に足りる数が入っている(来客や在宅勤務の人も考えて少し多めに)
- 切り分けが必要なもの・匂いの強いもの・汁気の多いものではない
- 相手の会社の近くで買えるものではない(「近所のお店ですね」になりやすい)
- 相手の会社と張り合っている会社の商品ではない(相手がメーカーなら、ブランドを一度調べる)
- コンビニや駅の売店でいつも並んでいる品ではない(相手のために選んだことが伝わる)
- 予算が社内の決まりに沿い、相手にお返しを考えさせない額である
選びやすいもの・避けたいもの
| 区分 | 例 | 理由 |
|---|---|---|
| 選びやすい | 個包装の焼き菓子、せんべい・おかき、個包装の羊羹、ドリップコーヒーやお茶の詰め合わせ | 日持ちがして常温で置け、人数に合わせて配れる |
| 夏場に向く | 常温で置ける個包装のゼリーや寒天菓子 | 持ち歩いても溶けず、冷蔵庫に入れるかどうかを相手が選べる |
| 避けたい | 生菓子、切り分けるケーキ、アイス・要冷凍の品 | 冷蔵庫の場所や切り分ける手間で相手の負担になる |
| 避けたい | 香りの強い食品、汁気の多い果物 | 職場に匂いが残る、配りにくい |
| 避けたい | 相手の会社の競合品、相手の会社の近所の店の品 | 配慮が足りない印象になる |
| 場面を選ぶ | 名入れの品、お酒 | 好みや社内の決まりが分かれる。相手をよく知っている場合に限る |
Point
迷ったら、自社の地元で長く売られている菓子にします。選んだ理由を一言で説明できるので、渡すときの言葉に困りません。
予算の決め方
手土産の予算は、場面と相手との関係、社内の決まりで変わるため、このページでは金額の目安を示しません。次の順で決めると迷いません。
- 01社内の決まりを確認する:交際費や贈答の規程に上限や手続きがあれば、それに従います。費用の扱いは交際費の記事と経理規程を確認します。
- 02場面で上下させる:定例の打ち合わせは控えめに、初めての挨拶やお礼・お詫びは少し改まった品にします。
- 03相手にお返しを考えさせない額にする:受け取った側が「何か返さなければ」と感じる品は、かえって負担になります。かといって、いつもの差し入れと同じでは改まった訪問に釣り合いません。
- 04迷ったら上司に確認する:同じ取引先に以前どのくらいの品を持参したかを聞くと、釣り合いが取れます。
注意
訪問先によっては、贈り物を受け取らないと社内で決めていることがあります。初めて伺う相手なら、日程を決めるメールの中で「お持ちしてもご迷惑でないか」をそれとなく確かめておくと、当日に困りません。受け取りを断られたときの返し方は贈り物を断る・断られたときの言葉も参考にしてください。
渡すタイミングの考え方
共通する考え方は、相手が落ち着いて受け取れるときに渡すことです。受付や玄関、エレベーターの前でいきなり渡すと、担当者に気持ちが伝わりにくく、相手も置き場所に困ります。
| 場面 | 渡すタイミング | 早すぎる・遅すぎるとどうなるか |
|---|---|---|
| 取引先への訪問 | 応接室に通され、挨拶と名刺交換を済ませたあと | 受付で渡すと、品物が担当者の手に届かないことがある |
| 商談・打ち合わせ | 用件が済み、席を立つ前 | 話の前に渡すと、品物で話を進めようとしている印象になる |
| お礼の訪問 | お礼を言葉で伝えたあと | 言葉より先に品物を出すと、お礼の重みが伝わりにくい |
| お詫びの訪問 | お詫びを伝え、話が一段落したあと | 最初に渡すと、品物で済ませようとしている印象になる |
| 会食・接待 | 帰り際、店を出る直前か出たところ | 食事の前に渡すと、相手が会食中ずっと荷物を気にすることになる |
| 年始・着任の挨拶回り | 挨拶のすぐあと | 短い訪問なので、挨拶と一緒に渡して長居しない |
誰が誰に渡すか(上司と同行するとき)
- 上司と同行するとき:手土産は訪問した側のいちばん上の立場の人が渡します。部下は品物を持ち運び、渡す直前に紙袋から出して上司に手渡します。
- 受け取る相手:相手側もいちばん上の立場の人に渡します。担当者しか同席していない場合は、担当者に渡します。
- 自分一人で訪問するとき:その日に応対してくれた方のうち、立場が上の方に渡します。
- 複数の部署に挨拶するとき:部署ごとに分けて用意するか、窓口の部署にまとめて渡して「皆さまで」と添えます。どちらにするかは事前に決めておきます。
Point
上司が渡すときは、部下は品物の向きを整えて上司に渡すところまでが役目です。上司が渡し終えるまで、横で一緒に軽くお辞儀をします。
渡し方(紙袋の扱い)
- 01
紙袋から出す
相手の前で紙袋から品物を取り出します。紙袋はたたんで自分の手元に置き、持ち帰ります。
- 02
正面を相手に向ける
のしや包装、箱の文字の正面が相手から読める向きにして、両手で持ちます。
- 03
立って、正面から渡す
座っていた場合は立ち上がり、相手と向き合って、言葉を添えながら両手で渡します。机越しに差し出すことは避けます。
- 04
紙袋ごと渡してよい場面
会食の帰りや屋外など、相手がそのまま持ち帰る場面では、「袋のままで失礼いたします」と言って紙袋ごと渡して構いません。
- 05
受付に預けるとき
担当者が不在のときは、受付で担当者の名前と自分の会社名・氏名を伝え、名刺を添えて預けます。後でメールでも一言伝えます。
注意
紙袋は予備をもう一枚もらっておくと、相手に新しい袋を添えて渡せます。持ち歩いた袋は汚れていることがあるためです。
のし・表書きは必要か
取引先への挨拶や打ち合わせの手土産は、のしを付けなくても失礼にはなりません。改まったお礼やお詫び、年始の挨拶などで付ける場合は、場面に合った表書きにします。
| 場面 | のし | 表書きの例 |
|---|---|---|
| 定例の訪問・打ち合わせ | なくてよい | — |
| 初めての挨拶・年始・着任 | 付けるなら紅白の蝶結び | 「御挨拶」「御年賀」 |
| お礼の訪問 | 付けるなら紅白の蝶結び | 「御礼」 |
| お詫びの訪問 | 考え方が分かれる(かけない・無地にする、または紅白の結び切り) | 自社の慣習を上司に確認する。詳しくはお詫びの品 |
品物を買う店で「取引先への挨拶用なので、控えめに」と伝えると、小さめの掛け紙にしてもらえることがあります。名前は水引の下に会社名か氏名を書きます。のし紙作成ツールで表書きと名前を入れて印刷できます。
添える言葉の例文(場面別15)
初めての訪問・挨拶
本日はお忙しいところありがとうございます。皆さまで召し上がっていただければと思い、お持ちしました。どうぞお納めください。
定例の打ち合わせ
いつもお世話になっております。ささやかですが、皆さまの休憩のときにでも召し上がってください。
商談のあと
本日は長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。心ばかりのものですが、皆さまでどうぞ。
お礼の訪問
先日は大変お世話になり、ありがとうございました。ささやかですが、お礼の気持ちです。
お詫びの訪問
このたびは大変ご迷惑をおかけいたしました。心ばかりのものですが、お納めいただけますでしょうか。
会食の帰り際(招いた側)
本日はありがとうございました。お荷物になって恐縮ですが、ご家族の皆さまで召し上がってください。
会食の終わり(招かれた側)
本日はお招きいただき、ありがとうございました。ささやかですが、お礼の気持ちです。
地元のものを渡すとき
弊社のある◯◯で昔から親しまれているお菓子です。お口に合えば幸いです。
季節のものを渡すとき
暑い日が続いておりますので、冷やしてもおいしいものにいたしました。よろしければ皆さまでどうぞ。
上司が渡すとき(部下の一言)
(上司に手渡しながら小声で)こちらをお願いいたします。
年始の挨拶回り
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。皆さまで召し上がってください。
着任・異動の挨拶
このたび御社を担当することになりました◯◯です。ご挨拶の印にお持ちしました。今後ともよろしくお願いいたします。
受付に預けるとき
株式会社◯◯の◯◯と申します。こちらを◯◯部の◯◯様にお渡しいただけますでしょうか。名刺を添えておきますので、よろしくお願いいたします。
預けたあとのメール(一文)
本日はご不在のところ失礼いたしました。ささやかなものを受付の方にお預けしましたので、皆さまで召し上がっていただければ幸いです。
受け取りを遠慮されたとき
承知いたしました。かえってお気を遣わせてしまい、失礼いたしました。本日は持ち帰らせていただきます。
Point
「つまらないものですが」は、使わない人もいます。 へりくだる言い方としては間違いではありませんが、「皆さまで召し上がってください」「お口に合えば幸いです」のほうが、気持ちがまっすぐ伝わります。かしこまった言い方の「ご笑納ください」の使い方はご笑納くださいの意味と使い方にまとめています。
よくある失敗と防ぎ方
| 失敗 | なぜ困るか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 受付で渡してしまう | 担当者に届かない・誰からか伝わらない | 応接室で挨拶のあとに渡す。預けるなら名刺を添える |
| 個数が足りない | 配れない人が出て、相手が気まずくなる | 事前に相手の部署の人数を担当者に聞くか、多めの箱を選ぶ |
| 紙袋のまま机に置く | 相手が中身を取り出す手間がかかる | 室内では紙袋から出して渡す |
| 会食の最初に渡す | 相手が会食中に荷物を気にする | 帰り際に渡す。店に預けておくと持ち運びも楽 |
| 賞味期限が近い・要冷蔵 | すぐに配れないと相手が困る | 購入時に期限と保存方法を確認する |
| 上司がいるのに自分が渡す | 相手の上位者への敬意が伝わりにくい | 同行時は上司に渡してもらう段取りを事前に決める |
| 相手の会社の近くの店で買う | 急いで用意した印象になる | 前日までに自社の近くや地元の店で買う |
訪問前日のチェックリスト
- 相手の部署の人数と、訪問の人数・役職を確認した
- 個数・賞味期限・保存方法を確認した
- 相手に贈答の受け取りを控える決まりがないか、必要なら確認した
- のしの有無と表書きを決めた
- 予備の紙袋をもらった
- 上司と同行する場合、誰が渡すか・いつ渡すかを打ち合わせた
- 添える一言を決めた(上の例文から一つ)
手土産を受け取ったとき
受け取る側は、両手で受け取り、「ありがとうございます。皆でいただきます」とお礼を伝えます。受け取った品物は、相手の前で床に置かず、机の上か脇に置きます。
あとで部署で配る場合は、誰からいただいたかを一言添えると、次に会ったときにお礼を伝えやすくなります。お礼は、打ち合わせのお礼メールの中で一言触れるのが自然です。文例はお土産のお礼メッセージにまとめています。来客の迎え方は来客対応のマナーも参考にしてください。
この記事の要点
- 選ぶのは個包装・日持ち・常温・人数分。相手の近所の店や競合の商品は避ける。
- 訪問なら挨拶と名刺交換のあと、商談・お詫びなら用件のあと、会食なら帰り際。受付では渡さない。
- 上司と同行するときは、こちらの上位者から相手の上位者へ。
- 紙袋から出して、正面を相手に向けて両手で渡す。会食の帰りや屋外では紙袋ごとでもよい。
- のしはなくてもよい。付けるなら紅白の蝶結びに「御挨拶」「御礼」。
- 言葉は「皆さまで召し上がってください」がいちばん使いやすい。
FAQ
よくある質問
取引先への訪問では、応接室で挨拶と名刺交換を済ませたあとに渡します。商談やお詫びの訪問では用件が済んでから、会食では帰り際、店を出る直前か出たところです。受付や玄関では渡しません。
訪問した側のいちばん上の立場の人が、相手側のいちばん上の立場の人に渡します。部下は品物を持ち運び、渡す直前に紙袋から出して向きを整え、上司に手渡します。
室内で渡す場合は紙袋から出し、正面を相手に向けて両手で渡すのが基本です。会食の帰りや屋外など、相手がそのまま持ち帰る場面では「袋のままで失礼いたします」と添えて紙袋ごと渡して構いません。
挨拶や打ち合わせの手土産なら、付けなくても失礼にはなりません。改まったお礼や年始の挨拶で付ける場合は、紅白の蝶結びに「御礼」「御挨拶」「御年賀」などと書きます。
社内の交際費や贈答の決まりを確認し、そのうえで場面に合わせて決めます。相手にお返しを考えさせない額にするのが目安です。迷う場合は、同じ取引先に以前持参した品を上司に確認してください。
不在の場合は、担当者の名前と自社名・氏名を伝え、名刺を添えて受付に預けて構いません。後でメールで、品物を預けたことを一言伝えます。
間違いではありませんが、へりくだりすぎて聞こえることもあります。「皆さまで召し上がってください」「お口に合えば幸いです」のような言い方なら、どの相手にも使えます。相手や場面に合わせて使い分けてください。
招いた側が帰り際に渡すことが多いですが、招かれた側がお礼として持参することもあります。招かれた側が持参する場合も、席に着く前ではなく、会食の終わりか帰り際に渡すと相手の負担になりません。