店舗イベント
店舗イベントの年間計画
月別の企画と販促カレンダーの作り方
店舗の集客イベントは、思いついたときに1回ずつ企画すると、毎回「何をやるか」から悩み、告知が間に合わず、終わった後の振り返りも次に生きません。続けられる店は、1年分の「枠」を先に置いています。枠とは「この時期に、この目的で、この規模のイベントを1本やる」という予定です。目的は新規客に知ってもらう・再来店してもらう・客単価を上げる・閑散期を底上げするの4つに分け、季節の行事と自店の周年・閑散期を当てはめます。中身は後から決めてかまいません。枠が先にあれば、準備を始める時期と告知を始める時期が自動的に決まります。
結論
店舗イベントの年間計画は①1年分の売上の山と谷を確認する ②目的別に枠を置く ③季節の行事・地域の催し・自店の周年を当てはめる ④枠ごとに担当と予算の上限を決める ⑤各回の準備の順番を逆算する ⑥終わった回の振り返りを、翌年の同じ枠に引き継ぐの順で作ります。単発の店頭イベントの組み立て方は店舗イベントで集客する方法、周年祭は店舗の周年祭の企画で扱っています。このページは、それらを1年の中にどう並べるかに絞ります。
結論:年間計画の型と、最初に決めること
年間計画で最初に決めるのは、企画の中身ではなく「枠」です。枠を置く順番は次のとおりです。
| 最初に決めること | 決め方 | これが決まると何が決まるか |
|---|---|---|
| 売上の山と谷 | 昨年の月別の売上・来店数を並べ、落ち込む時期と混む時期に印を付ける | 閑散期の底上げの枠を置く時期 |
| 1年の本数 | 準備に割ける人手から逆算する。少なく置いて、確実に毎回振り返れる数にする | 1本あたりにかけられる準備の量 |
| 目的の配分 | 新規・再来店・客単価・閑散期のどれを今年重く見るか | 企画の種類と、効果の測り方 |
| 動かせない日 | 自店の周年、地域の祭り・商店街の催し、季節の行事 | 枠の日付の候補 |
| 枠ごとの担当 | 店長が全部持たない。枠ごとに主担当を1人決める | 準備が止まったときに誰が動くか |
| 予算の上限 | 枠ごとに上限だけを先に決める(中身は後で) | 景品・装飾・告知物の規模 |
Point
混む時期に大きなイベントを重ねないのが基本です。もともと人が来る時期にイベントを足すと、レジと接客が回らなくなり、来てくれた人の満足を下げます。イベントの力は、人が来ない時期と、来た人にもう一度来てもらう仕掛けに使ってください。
目的別の企画アイデア
| 目的 | 企画の例 | 向く時期の考え方 | 効果の見方 |
|---|---|---|---|
| 新規客に知ってもらう | 店頭の体験会、地域のマルシェやお祭りへの出店、商店街の合同企画、ポップアップ出店 | 地域の人通りが増える時期(祭り・商店街の催し)に重ねる | 初来店の数、どこで知ったか |
| 再来店してもらう | 次回来店で使える特典、会員向けの先行案内会、季節の入れ替え時の内覧会、スタンプ企画 | 前のイベントで来た人が、次に来る理由を作れる間隔で置く | 特典の利用数、会員の再来店 |
| 客単価を上げる | 組み合わせの提案フェア、試食・試着会、使い方の実演 | まとめ買い・贈り物の需要がある時期 | 1人あたりの購入点数・金額 |
| 閑散期を底上げする | 教室・ワークショップ、常連向けの感謝デー、予約制の個別相談会 | 昨年の売上が落ちた時期 | 前年同時期との比較 |
| 関係を深める | 周年祭、常連向けの小さな会、作り手を招いた話の会 | 自店の周年、新商品の入荷 | 参加者の声、紹介での来店 |
月別の行事と企画の例
季節の行事は、告知の「理由」になります。すべてを使う必要はありません。自店の客層と商品に合うものだけを選び、上の目的のどれに当てるかを決めてください。
| 時期 | 行事・きっかけ | 企画の例 |
|---|---|---|
| 1月 | 新年、初売り | 福袋・初売り特典、新年の目標に合わせた提案 |
| 2月 | 節分、バレンタイン | 贈り物の提案フェア、ラッピングの実演 |
| 3月 | ひな祭り、卒業、新生活の準備 | 新生活の準備相談会、卒業・送別の贈り物 |
| 4月 | 入学・入社、新年度 | 新しく越してきた人向けの店舗紹介、体験会 |
| 5月 | 連休、母の日 | 連休中の子ども向け体験、母の日の贈り物 |
| 6月 | 父の日、梅雨 | 父の日の提案、雨の日の来店特典 |
| 7月 | 七夕、夏休みの始まり | 願いごとの短冊、子ども向けの工作教室 |
| 8月 | 夏休み、お盆 | 自由研究の題材になる体験、帰省客向けの手土産提案 |
| 9月 | 敬老の日、秋の行楽 | 祖父母への贈り物、秋の新商品の内覧 |
| 10月 | ハロウィン | 仮装特典・子ども向けの企画(店舗のハロウィンイベント) |
| 11月 | 秋の味覚、年末の準備 | 年末の贈答品の予約会、常連向けの感謝デー |
| 12月 | クリスマス、年末 | ディスプレイと贈り物の提案(店舗のクリスマスイベント) |
注意
表に加えて、自店の周年の月と、昨年の売上が落ちた月を書き込んでください。この2つは、全国共通の行事より自店にとって重要な枠です。
準備のスケジュール(順番)
年間計画は「年の初めに枠を置く工程」と「各回の準備の工程」の2段に分かれます。各回の準備にかかる期間は、企画の大きさと手続きの有無で変わるため、まず順番を決め、自店の過去の実績で期間を書き込んでください。
年の初め(または期の初め)にやること
- 01
昨年の売上・来店数を月別に並べる
山と谷に印を付けます。昨年のイベントの結果メモがあれば横に並べます。
- 02
枠を置く
目的・時期・規模・主担当・予算の上限を1行ずつ書きます。中身は空欄で構いません。
- 03
販促カレンダーに落とす
枠ごとに「中身を決める日」「告知を始める日」「当日」「振り返りの日」を書き込みます。告知物の制作とSNSの投稿予定も同じカレンダーに載せます。
- 04
全員に共有する
スタッフのシフトと休暇の希望は、このカレンダーを見て出してもらいます。
各回の準備の順番
- 01
中身を決める
目的に合う企画を選び、昨年の同じ枠の振り返りを読みます。
- 02
手続きと条件を確認する
店の外(歩道・駐車場・公園)を使う、食べ物を出す、景品を出す場合は、ここで確認を始めます。確認先は後の「判断基準」の表にまとめています。
- 03
仕入れ・景品・材料・告知物を発注する
発注の締切から逆に並べます。告知物の印刷は、告知を始める日より前に届くように。
- 04
店頭から告知を始める
最初に知らせるのは、いま来ている客です。レジでの声かけ、店頭の掲示、会員への案内を先にし、SNSや地域への告知を後に重ねます。
- 05
スタッフに共有する
当日の役割、特典の条件、よく聞かれる質問と答えを1枚にまとめて渡します。
- 06
前日に準備する
装飾、特典の準備、レジの設定(特典の打ち方)、在庫の確認。
- 07
当日を回す
次の章の進行例を参考に、時間帯ごとの動きを決めておきます。
- 08
振り返りを書き、翌年の同じ枠に貼る
数字(来店数・特典の利用数・売上)と、やってみて分かったことを、翌年の同じ枠の欄に残します。
準備の期限を一覧にするにはガントチャート作成ツール、逆算の考え方はイベント準備スケジュールの組み方が使えます。
当日の進行例(店内で行う1日のイベント)
| 時間帯 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 開店前 | 装飾・特典の最終確認、朝礼で役割と特典の条件を共有、レジの特典設定の確認 | 責任者、全員 |
| 開店直後 | 店頭の声かけを始める。告知を見て来た人に、イベントの場所を案内する | 店頭担当 |
| 混む時間帯 | 体験・実演を回す。レジに人を寄せ、待ち列が通路をふさがないようにする | 体験担当、レジ担当 |
| 落ち着く時間帯 | 在庫と特典の残りを確認・補充、交代で休憩、写真で記録 | 責任者、記録担当 |
| 閉店前 | 翌日以降も続く特典の案内、最終回の体験の締め切りを知らせる | 店頭担当 |
| 閉店後 | 来店数・特典の利用数・売上を集計、気づいたことを振り返りメモに書く | 責任者 |
体験や実演の回数・時刻は、店の広さと担当の人数で決めてください。時刻を店頭に掲示すると、人が一度に集まりすぎるのを防げます。
判断基準・決めることの表
| 決めること | 判断の基準 | 確認先・参考 |
|---|---|---|
| 店内か店外か | 店の外(歩道・公道・公園)を使うと手続きが要ることがある | 管轄の警察署・道路管理者・公園管理者。道路使用許可、公園の許可 |
| 景品・特典を出すか | 購入や来店を条件に景品を出す場合は、景品表示法の限度額の対象になりうる | イベントの景品と景品表示法 |
| 食べ物・飲み物を出すか | 試食・販売の形によって保健所の手続きが変わる | 管轄の保健所。イベントの飲食提供の手続き |
| 予約制にするか | 体験の席が限られるなら予約制。予約の個人情報の扱いを決める | イベントの個人情報の扱い |
| 装飾・什器を増やすか | 通路・非常口・消火器の前をふさがない。カーテンや展示用の合板などは防炎の対象になりうる | 管轄の消防署。会場装飾と防炎物品、来場者動線の設計 |
| 看板・のぼりを出すか | 屋外に出す掲示は自治体の条例の対象になりうる | 自治体の屋外広告物の担当。屋外の看板・のぼり |
| 音楽を流すか | 店内のBGMとイベントでの演奏では扱いが変わることがある | イベントで音楽を流す著作権 |
| 効果を何で測るか | 目的ごとに1つ決める(新規なら初来店、再来店なら特典の利用) | イベントのKPI |
Point
景品の条件は、告知文を書く前に決めてください。「ご購入の方に」「ご来店の方に」「どなたでも」のどれにするかで、景品表示法の扱いが変わります。景品類は、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する物品・金銭その他の経済上の利益とされています(景品表示法第2条第3項)。
準備のチェックリスト
- 昨年の月別の売上・来店数と、昨年のイベントの結果を並べた
- 1年分の枠を、目的・時期・規模・主担当・予算の上限で書いた
- 混む時期に大きなイベントを重ねていない
- 各枠に「中身を決める日」「告知を始める日」「振り返りの日」を書いた
- 店外・食べ物・景品・装飾・看板・音楽のうち、該当するものの確認先を書いた
- 装飾や体験コーナーで、通路・非常口・消火器の前をふさいでいない
- 景品・特典の条件(購入・来店・条件なし)を告知前に決めた
- レジでの特典の打ち方をスタッフ全員が分かる形にした
- スタッフ向けの1枚(役割・特典の条件・よくある質問)を作った
- 効果を測る数字を、目的ごとに1つ決めた
- 振り返りを翌年の同じ枠に残す場所を決めた
スタッフの配置はシフト表作成ツール、店頭の掲示はお知らせ・張り紙作成ツールで作れます。
当日の運用(役割・連絡・アナウンス文例)
役割
| 役割 | やること |
|---|---|
| 責任者 | 全体を見て、在庫・特典の補充と、混雑時の判断をする。問い合わせの最終受け皿 |
| 店頭担当 | 通りがかりの人への声かけ、イベントの場所の案内、待ち列の整理 |
| 体験・実演担当 | 時刻どおりに回す。参加者に次回の案内を渡す |
| レジ担当 | 特典の適用。特典の条件の質問に答える |
| 記録担当 | 写真と数字の記録。写真を撮る旨を店内に掲示する |
連絡のルール
- 特典・景品がなくなりそう:気づいた人→責任者。終了の告知をするかどうかを責任者が決める
- 待ち列が店外や通路にはみ出した:店頭担当→責任者。整理券や時刻指定に切り替える
- 体調不良・けが:見つけた人→責任者。救急への連絡が必要かを判断する
店内アナウンス文例
【開始のご案内】本日は◯◯フェアを開催しております。店内奥のコーナーで、◯時から◯◯の実演を行います。どうぞお立ち寄りください。
【特典のご案内】本日お買い上げのお客様に、次回ご来店時にお使いいただける◯◯をお渡ししております。お会計の際にお受け取りください。
【終了のお知らせ】◯◯の特典は、ご好評につき本日分を終了いたしました。楽しみにご来店いただいたお客様には、誠に申し訳ございません。
よくある失敗
| 失敗 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 告知が当日の直前になる | 中身を決めてから告知の日を考えている | 枠を置いた時点で告知を始める日をカレンダーに書く |
| 混む時期にイベントを重ねて、レジが回らない | 季節の行事だけで時期を決めた | 昨年の売上の山を確認し、山にはイベントを重ねない |
| 毎年同じ企画で、効果が落ちても気づかない | 振り返りを残していない | 数字と気づきを翌年の同じ枠に貼る |
| 特典の条件をスタッフが説明できない | 条件を口頭でしか共有していない | スタッフ向けの1枚に条件と答え方を書く |
| 景品の条件を後から変えて告知と食い違う | 景品表示法の確認を告知の後にした | 景品の条件は告知前に決める |
| 担当が店長だけで、繁忙期に準備が止まる | 枠ごとの主担当を決めていない | 枠ごとに主担当を1人置く |
この記事の要点
- 店舗イベントは単発で考えず、1年分の「枠」(目的・時期・規模・主担当・予算の上限)を先に置く。
- 目的は新規客・再来店・客単価・閑散期の4つに分け、混む時期に大きなイベントを重ねない。
- 季節の行事は告知の理由になる。自店の周年と昨年の売上が落ちた月も枠に入れる。
- 告知は店頭(いま来ている客)から始め、SNSや地域への告知を後に重ねる。
- 景品の条件は告知前に決める。振り返りは翌年の同じ枠に残す。
FAQ
よくある質問
一律の回数はありません。準備に割ける人手から逆算し、毎回振り返りを書ける数にしてください。少なく置いて確実に回すほうが、翌年の計画に生きます。
枠ごとに、目的、時期、規模、主担当、予算の上限、中身を決める日、告知を始める日、当日、振り返りの日を書きます。告知物の制作やSNSの投稿予定も同じカレンダーに載せると、抜けが見えます。
予約制の教室・ワークショップ、常連向けの感謝デー、個別相談会など、少人数でも成り立つ企画が向いています。昨年の同じ時期の数字と比べて効果を見てください。
購入や来店を条件に景品を出す場合は、景品表示法の限度額の対象になりうるため、条件と景品の価格を告知前に確認してください。詳しくはイベントの景品と景品表示法で整理しています。
歩道や公道を使う場合は、管轄の警察署や道路管理者への手続きが要ることがあります。内容と場所を伝えて事前に相談してください。
企画の型と告知の順番は店舗イベントで集客する方法、周年祭は店舗の周年祭の企画にまとめています。