法令
イベントの個人情報の取り扱い
申込フォーム・名簿共有で条文が求めていること
結論から言うと、イベントの個人情報の取り扱いは5つを決めれば骨格ができます。①取る項目を絞る ②利用目的を場面ごとに特定し、申込フォームでは送信前に示す ③協賛企業などに名簿を渡すなら、申込の時点で本人の同意を取る(共催なら3つの形から選ぶ) ④当日の名簿・端末・共有ドライブを誰が見られるかを決める ⑤使い終わった名簿を消す担当と時期を決める。特に申込フォームは、「あとで公表すればよい」ではなく「あらかじめ明示」が求められる類型に当たりえます。以下、条文の根拠と、場面別の決めごと、書き換えて使える文例を順に示します。
結論
個人情報保護法第17条第1項は、個人情報を取り扱うに当たって利用目的をできる限り特定することを求めています。取得時の扱いは第21条で、同条第1項は通知又は公表ですが、第2項は本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された個人情報を取得する場合にあらかじめ明示することを求めています。第27条第1項は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。
根拠となる法律
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
注意
本記事は条文の構造を整理するためのものです。 自分が「個人情報取扱事業者」に当たるか、具体的にどの安全管理措置を講じるべきか、委託の例外に当たるかといった論点は本記事の取得範囲外です。実際の運用の設計と、プライバシーポリシーの文言は、個人情報保護委員会の案内を確認し、必要に応じて弁護士に相談してください。
場面別:イベントで個人情報を取り扱うときに決めること
イベントでは、申込から終了後まで、個人情報が入ってくる場面がいくつもあります。場面ごとに「何が集まるか」「何を決めるか」を先に一覧にしておくと、抜けが見つかります。
| 場面 | 主に集まる情報 | 決めておくこと | 関わる条文 |
|---|---|---|---|
| 申込フォーム | 氏名、会社名、部署、メールアドレス、電話番号 | 利用目的を送信前に読める位置に書く。必須と任意を分ける | 第17条、第21条第2項 |
| 当日の受付 | 紙の名簿、名札、受付記録 | 名簿を誰が持ち、終了後に誰が回収・廃棄するか | 第23条 |
| 名刺の預かり・交換 | 名刺 | 何に使うかの示し方、保管場所、社内で誰が使えるか | 第2条第1項、第23条 |
| アンケート | 回答、属性、自由記述 | 記名にするか、回答を何に使うかを冒頭に書く | 第21条 |
| 配慮の申し出 | 健康状態、障害、食事のアレルギーなど | 同意の取り方、共有する相手、削除の時期 | 第20条第2項 |
| 写真・動画の撮影 | 参加者が写った写真・動画 | 掲載先の告知、写りたくない人の申し出方法 | (肖像の扱いは別記事) |
| オンライン配信 | 視聴記録、質問の投稿 | 視聴記録を何に使うかを申込時に書く | 第17条、第21条 |
| 協賛・共催・出展者 | 名簿、ブース訪問者の情報 | 同意を取るか、共催の3つの形のどれにするか | 第27条 |
| イベント終了後 | 上のすべて | いつまで持ち、誰が消すか | 第22条(努力義務) |
| 漏えいが起きたとき | — | 社内の連絡先と判断する人 | 第26条 |
注意
撮影についてはイベント写真のSNS掲載、名刺については名刺と個人情報、アンケートについてはアンケートの利用目的の書き方、オンライン配信についてはウェビナーの個人情報で詳しく扱っています。
第17条 — 利用目的を「できる限り特定」する
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。(第17条第1項)
Point
「できる限り特定」です。「事業活動に利用します」「サービス向上のため」といった書き方は、特定できているかが問われます。イベントなら、何のために使うのかを、使う場面の単位で書くのが出発点です。
イベントで実際に発生する利用場面
- 当日の受付(本人確認、名札)
- 開催前後の連絡(会場変更、中止の連絡、お礼)
- 参加状況の集計(報告書の作成)
- 次回以降の案内(別のイベントの告知)
- 営業活動(商談の連絡)
- 共催・協賛企業への提供(ここは第27条の論点)
注意
利用目的の変更には制限があります。 第17条第2項は「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない」としています。後から営業に使いたくなっても、変更の範囲に制限がかかるということです。最初に書く段階で、使う可能性のある場面を考えてください。
第21条 — 申込フォームは「あらかじめ明示」
ここが最も実務に効きます。第21条は第1項と第2項で求められる水準が違います。
| 場面 | 条文 | 求められること |
|---|---|---|
| 一般(取得した場合) | 第21条第1項 | あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、又は公表 |
| 本人から直接書面に記載された個人情報を取得 | 第21条第2項 | あらかじめ、本人に対しその利用目的を明示 |
個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。(第21条第2項)
Point
括弧書きで「電磁的記録を含む」とされています。つまりウェブの申込フォームもこの類型に当たりうるという構造です。この場合、求められるのは「速やかに通知又は公表」ではなく、「あらかじめ明示」です。送信ボタンを押す前に、本人が利用目的を読める状態になっている必要がある、という設計になります。
設計として何をするか
- 申込フォームの画面内に利用目的を書いている(別ページへのリンクだけで足りるかは要検討)
- 利用目的が使う場面の単位で書かれている
- 送信前に読める位置にある
- 第三者に提供する予定があるなら、その旨と提供先を書いている
- 問い合わせ先を書いている
注意
第21条第4項は適用除外を4つ挙げており、第4号は「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」です。ただしどの場合がこれに当たるかの判断は本記事の範囲外です。「明らかだから書かなくてよい」と自己判断しないでください。
第21条第3項は、利用目的を変更した場合に、変更された利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならないと定めています。
第27条 — 共催・協賛への名簿共有
イベントで最も事故が起きやすいのがここです。
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。(第27条第1項)
条文が挙げる除外は第1号から第7号で、①法令に基づく場合 ②人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるとき ③公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるとき ④国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに協力する必要がある場合 ⑤〜⑦学術研究機関等に関するものです。
Point
「協賛企業に名簿を渡す」はこの除外のどれにも当たりません。 つまりあらかじめ本人の同意が原則になります。イベントの企画段階で協賛の条件として名簿提供を約束してしまうと、申込の設計がそれに縛られます。約束する前に、同意をどう取るかを決めてください。
イベントで第三者提供が問題になりうる場面
- 協賛企業へのリスト提供
- 共催団体との名簿の共有
- 登壇者への参加者リストの共有
- 出展者へのブース訪問者情報の提供
- 撮影した写真・動画の協賛企業への提供
共催イベントの3つの形
複数の会社でセミナーを共催し、申込やアンケートを一緒に受け付ける場合について、個人情報保護委員会はFAQで次の3つの形を示しています(個人情報保護委員会 FAQ「複数の企業でセミナーを共催して…」)。
| 形 | どう取得するか | 必要になること |
|---|---|---|
| 各社がそれぞれ取得する | 申込やアンケートの形式上、共催する各社がそれぞれ取得することが分かるようにする | 各社ごとに利用目的をあらかじめ明示する(第21条第2項) |
| 幹事会社が取得して、後で各社に渡す | 形式上は幹事会社だけが取得し、その後、個人データとして共催各社に提供する | 原則として本人の同意(第27条第1項) |
| 共同利用にする | 第27条第5項第3号の要件を満たして共同して利用する | 次の5項目をあらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置く |
共同利用の場合にあらかじめ示す事項は、条文の列挙どおり次の5つです。
- 01共同して利用する旨
- 02共同して利用される個人データの項目
- 03共同して利用する者の範囲
- 04利用する者の利用目的
- 05当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所(法人はその代表者の氏名)
Point
「共催だから自由に名簿を共有できる」わけではありません。 どの形でも、申込を受け付ける前に決めておく必要があります。責任者の氏名・名称・住所などに変更があったときは遅滞なく、利用目的や責任者を変更しようとするときはあらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くことも第27条第6項で求められています。共同利用の詳しい設計は共催セミナーの共同利用を参照してください。
注意
協賛企業や出展者に名簿を渡す場合、その相手が共同利用の「特定の者」に当たるか、委託(第27条第5項第1号)に当たるかの判断は、本記事では行いません。構成を検討している場合は、個人情報保護委員会の案内を確認し、専門家に相談してください。
第23条 — 安全管理措置
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。(第23条)
注意
具体的に何をすればよいかは、条文には書かれていません。 本記事では措置の一覧を示しません。以下はイベント運営で個人データが置かれがちな場所の洗い出しであり、法令上の要件の列挙ではありません。
- 受付で使う紙の名簿(当日の管理、終了後の回収と廃棄。名簿の作り方は参加者名簿の管理)
- 名札の控え
- スタッフの個人端末に入った参加者リスト
- 共有ドライブのアクセス権(協力会社のスタッフが見られる状態になっていないか)
- メールの一斉送信(宛先の指定方法)
- アンケートの回収物
- 名刺の保管
- イベント終了後に誰がどこまで保持するか
Point
イベントは臨時のチームで、臨時の場所で動く仕事です。普段の社内ルールが当てはまらない状況が生まれやすい。協力会社のスタッフが参加者リストを見られる状態になっていないかは、発注の段階で決めておくべき項目です(業務委託契約書)。
第20条第2項 — 配慮の申し出は「要配慮個人情報」に触れうる
第2条第3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他、不当な差別や偏見などが生じないよう取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を要配慮個人情報としています。
第20条第2項は、同項が挙げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないと定めています。
Point
申込フォームでアレルギー、障害、病歴に関する申し出を受ける欄を設けると、この論点に触れる可能性があります。どの記述が当たるかの当てはめは本記事では断定しませんが、任意の欄にする・何に使うかを書く・同意のチェックを置く・共有する相手と削除の時期を決めるの4点は、欄を作る前に設計してください。詳しくは要配慮個人情報を参照してください。
そのまま書き換えて使える文例
場面ごとの文例です。◯◯を自社の情報に置き換えてください。文例は書く項目の組み立て方を示すもので、これを載せれば足りるという意味ではありません。 公開前に、自社のプライバシーポリシーとの整合を確認し、必要に応じて弁護士の確認を受けてください。
文例1:申込フォームの利用目的(単独で主催する場合)
ご記入いただいた個人情報は、次の目的に利用します。
・本イベントの受付と参加証の発行
・開催に関するご連絡(日時・会場の変更、中止のお知らせを含みます)
・参加状況の集計(個人が特定されない形にして報告書に使用します)
・当社が開催する今後のイベントのご案内(下の欄でご希望いただいた方のみ)
個人情報の取り扱いに関するお問い合わせは、◯◯(メールアドレス)までお寄せください。
文例2:今後の案内を希望するかのチェック欄
□ 当社が開催するイベント・セミナーの案内をメールで受け取る(任意)
※チェックがなくても、本イベントにはお申し込みいただけます。
文例3:協賛企業に名簿を渡す場合の同意欄
□ 協賛企業である◯◯株式会社に、氏名・会社名・部署名・メールアドレスを提供することに同意します(任意)。
提供先の◯◯株式会社は、自社の製品・サービスのご案内に利用します。
※同意いただかなくても、本イベントにはご参加いただけます。
文例4:共催する各社がそれぞれ取得する場合
このフォームでご記入いただく情報は、共催する◯◯株式会社と△△株式会社がそれぞれ取得します。各社の利用目的は次のとおりです。
◯◯株式会社:本イベントの受付、開催に関するご連絡、同社の今後のイベントのご案内
△△株式会社:同社の製品に関するご案内、同社の今後のセミナーのご案内
文例5:共同利用とする場合の記載
本イベントでお預かりした個人データは、次のとおり共同して利用します。
共同して利用する個人データの項目:氏名、会社名、部署名、役職、メールアドレス、アンケートの回答
共同して利用する者の範囲:◯◯株式会社、△△株式会社
利用する者の利用目的:本イベントの運営、開催後のお礼と資料のご送付、各社の今後のイベントのご案内
管理について責任を有する者:◯◯株式会社(住所 ◯◯、代表取締役 ◯◯)
文例6:アンケートの冒頭
このアンケートの回答は、今後のイベントの内容の改善と、個別のご連絡を希望された方へのご連絡に利用します。お名前の欄は空欄のままでもご回答いただけます。
文例7:受付で名刺をお預かりするときの掲示
受付で名刺を1枚お預かりします。お預かりした名刺は、本日の受付の記録と、本イベントに関するご連絡に利用します。
文例8:配慮の申し出の欄
食事のアレルギーやお体の状況などで配慮をご希望の場合は、ご記入ください(任意)。
ご記入の内容は当日の対応の準備にのみ利用し、対応に当たる担当者と◯◯(会場・ケータリング事業者など)に限って共有します。イベント終了後、◯◯までに削除します。
□ 上記の取り扱いに同意して記入します
文例9:撮影の告知(申込ページと会場の掲示)
会場では記録と広報のため、写真・動画を撮影します。撮影したものは、当社のウェブサイト、SNS、開催報告に掲載することがあります。写りたくない方は、受付でお申し出ください。目印のシールをお渡しします。
文例10:オンライン配信の視聴記録
視聴ページでは、視聴の有無と視聴時間、お寄せいただいた質問を記録します。これらは参加状況の集計と、ご質問への回答に利用します。
企画から終了後までの設計
- 01
取得する項目を決める
氏名、会社名、メールアドレス、電話番号、役職、アンケートの回答。何に使うか説明できない項目は取らないのが出発点です。項目が増えるほど、管理も説明も重くなります。
- 02
利用目的を場面の単位で書く
第17条第1項の「できる限り特定」に対応します。後から使いたくなる場面を含めて考えてください。第17条第2項により、変更の範囲には制限があります。
- 03
第三者提供の有無を先に決める
協賛・共催・登壇者・出展者。渡す予定があるなら、申込の段階で同意を取る設計にします。企画の後から足せません。
- 04
申込フォームに「あらかじめ明示」する
第21条第2項の類型に当たりうるため、送信前に読める位置に利用目的を置きます。
- 05
当日の持ち出しと共有の範囲を決める
誰がリストを持つのか、どの端末に入れるのか、協力会社のスタッフはどこまで見るのか。発注時に取り決めておくこと。
- 06
終了後の扱いを決める
第22条は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています(努力義務)。いつまで保持し、誰が消すのかを、紙の回収物も含めて決めてください。決めていないと、誰のPCにも残り続けます。
注意
申込フォームで配慮に関する申し出を受ける場合、その内容の扱いも同じ設計の中で決めてください(イベントのバリアフリーと合理的配慮)。イベント後のフォローで名簿を使う場合の設計はイベント後のフォロー、抽選や景品を伴う場合は景品表示法も合わせて確認してください。
この記事の要点
- 第17条第1項: 利用目的をできる限り特定する。第2項により、変更は「関連性を有すると合理的に認められる範囲」まで。
- 第21条第2項: 本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された個人情報を取得する場合はあらかじめ明示。申込フォームはこの類型に当たりうる。
- 第21条第1項の「速やかに通知又は公表」と、第2項の「あらかじめ明示」は水準が違う。
- 第27条第1項: 原則としてあらかじめ本人の同意なしに個人データを第三者に提供してはならない。協賛企業への名簿提供は除外のどれにも当たらない。
- 協賛の条件に名簿提供を入れる前に、同意の取り方を決める。企画の後からは足せない。
- 共催は「各社がそれぞれ取得」「幹事会社が取得して同意を得て提供」「共同利用(5項目をあらかじめ示す)」のどれにするかを、申込を受け付ける前に決める。
- 配慮の申し出の欄は要配慮個人情報(第20条第2項)に触れうる。任意の欄・利用目的・同意・削除の時期をセットで設計する。
- 第23条の安全管理措置は条文に中身がない。イベントは臨時のチームと場所で動くため、協力会社のアクセス範囲を発注時に決めておく。
FAQ
よくある質問
何に使うか説明できない項目は取らないこと、利用目的を受付・連絡・集計・次回の案内などの場面の単位で書いて申込の時点で示すこと、協賛企業や共催団体に渡すならあらかじめ本人の同意を取ることです。当日は、紙の名簿の回収と廃棄、スタッフの個人端末や共有ドライブで誰が見られるか、終了後に誰がいつまで保持するかを決めておいてください。
個人情報保護法第21条第2項は、本人との間で契約を締結することに伴って書面に記載された個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合に、あらかじめ利用目的を明示しなければならないと定めています。括弧書きで「電磁的記録を含む」とされているため、ウェブの申込フォームもこの類型に当たりえます。第1項の「速やかに通知又は公表」とは水準が違う点に注意してください。
第27条第1項は、法令に基づく場合など同条が挙げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。協賛企業への名簿提供は、条文が挙げる除外のどれにも当たりません。渡す予定があるなら、申込の段階で同意を取る設計にしてください。企画の後から足すことはできません。
第17条第1項は「できる限り特定しなければならない」としています。使う場面の単位で書くのが出発点です。当日の受付、開催前後の連絡、参加状況の集計、次回以降の案内、営業活動では、それぞれ性質が異なります。また第17条第2項により、利用目的の変更は変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行えないため、最初に書く段階で使う可能性のある場面を考えてください。
第2条第1項は、生存する個人に関する情報であって、氏名などにより特定の個人を識別することができるものを個人情報としており、条文は紙か名刺か名簿かといった媒体を区別していません。名刺が個人情報に当たるかは、特定の個人を識別できるかの問題です。個別の当てはめは本記事では断定しませんが、イベントで集めた名刺を何に使い、誰がどこまで保持し、いつ廃棄するかは、他の取得経路と同じ設計の中で決めてください。
条文に具体的な保存期間の定めはありません。第22条は、利用する必要がなくなったときは個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています(努力義務)。特定した利用目的に照らして必要な期間を決め、紙の受付名簿、アンケートの回収物、スタッフの個人端末に入ったリスト、共有ドライブなど、残りやすい場所を含めて、誰がいつ消すかを決めてください。
個人情報保護委員会のFAQは、各社がそれぞれ取得することが分かるようにして各社ごとに利用目的をあらかじめ明示する方法、幹事会社だけが取得して後で共催各社に提供する場合に原則として本人の同意を取る方法、第27条第5項第3号の要件を満たして共同利用とする方法を示しています。どれにするかは、申込を受け付ける前に決めてください。
第26条は、個人データの漏えいなどのうち、個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定める事態が生じたときに、委員会への報告と本人への通知を求めています。どの事態が対象になるかは規則で定まるため、本記事では断定しません。まず被害の範囲を確認し、個人情報保護委員会の案内を確認してください。初動の整理は個人情報の漏えい時の対応にまとめています。