手順
会議のファシリテーションの進め方
手順・質問例文・手法
結論から言うと、ファシリテーションで会議を進めるときは「ゴールを一文で決める→冒頭で共有する→意見を広げる→整理する→絞って決める→宿題を確認する」の順に進めます。うまくいくかどうかは、会議中の話術よりも会議の前にゴールと決定者を決めておくこと、場面ごとの問いを用意しておくことで大半が決まります。この記事では、手順に加えて場面別にそのまま言える例文、使える手法の比較表、困ったときの言い方、チェックリストをまとめました。開会・閉会の読み上げ文は会議の司会進行 台本と例文にあります。
結論
会議のファシリテーションとは、参加者の意見を引き出して整理し、合意して決めるところまで会議を導く進め方です。流れは①準備(ゴール設定) ②発散(意見を広げる) ③整理(論点をまとめる) ④収束(絞って決める) ⑤確認(決定事項と宿題)。ファシリテーターは中立を保ち、自分の意見で結論を誘導しないのが基本です。
まず全体像:会議の進め方は5段階
| 段階 | 目的 | ファシリテーターの一言 | 使う手法 |
|---|---|---|---|
| ①準備 | 何を決める会議かをはっきりさせる | (事前連絡)「今回は◯◯を一つに決めます」 | ゴール設定、アジェンダ、決定者の確認 |
| ②発散 | 意見を出し切る | 「良し悪しは置いて、まず全部出しましょう」 | 順番に発言、書いてから話す |
| ③整理 | 出た意見を仲間分けし、論点を見える形にする | 「大きく分けると二つになりそうです」 | グルーピング、論点の書き出し |
| ④収束 | 条件に照らして絞り、決める | 「今日の判断基準は◯◯です。どれが一番近いですか」 | 評価軸の表、投票、決定者の判断 |
| ⑤確認 | 決まったことと宿題をそろえる | 「誰が・何を・いつまでに、を読み上げます」 | アクションログ、議事録 |
Point
発散と収束を同時にやらないことが最大のコツです。意見を出している最中に「それは無理」と評価が入ると、発言が止まります。「ここまでは出すだけです」「ここからは選びます」のように、段階が変わる瞬間を口に出して伝えてください。
ファシリテーターの役割と、司会・書記との分担
| 役割 | やること | 兼ねてよいか |
|---|---|---|
| ファシリテーター | ゴールに向けて問いを投げ、意見を整理し、決めるところまで進める | 小さな会議では司会と兼ねてよい |
| 司会 | 開会・閉会、議題の切り替え、発言者の指名 | ファシリテーターと兼ねることが多い |
| 書記 | 発言と決定事項を記録し、ホワイトボードや共有画面に書き出す | ファシリテーターとは分けたほうがよい |
| タイムキーパー | 議題ごとの終了時刻を知らせる | 参加者の誰かに頼む |
| 決定者 | 意見が割れたときに最終判断をする人 | あらかじめ決めておく。ファシリテーターとは分ける |
ファシリテーターに必要な四つの力
| 力 | 会議中にやること | 鍛え方 |
|---|---|---|
| 聴く力 | 発言をさえぎらず最後まで聞き、要点を言い換えて返す | 「つまり◯◯ということですね」と要約して確かめる練習をする |
| 問う力 | 広げる問い・深める問い・絞る問いを使い分ける | 下の例文を会議前にメモしておき、その場で選ぶ |
| 整理する力 | 意見を論点ごとに分け、共通点と違いを示す | 出た意見を書き出し、見出しをつけてまとめる |
| 時間を守る力 | 議題ごとの終了時刻を意識し、脱線を戻す | アジェンダに「終える時刻」を書き、残り時間を口に出す |
Point
「誰が最後に決めるのか」を会議の前に決めておいてください。 決定者が決まっていない会議は、意見が割れたところで止まります。ファシリテーターが決定者を兼ねると中立が保ちにくいので、上司や責任者に頼むのが無難です。
準備:ゴール・参加者・アジェンダを決める
- 01
ゴールを一文で書く
「◯◯の案を一つに決める」「◯◯の課題を洗い出して優先順位をつける」のように、会議が終わったときに何ができていればよいかを書きます。「◯◯について話し合う」はゴールではありません。
- 02
決定者と決め方を決める
最後に誰が判断するのか、全員の合意を目指すのか、多数決にするのかを先に決めます(会議の決め方)。
- 03
参加者の立場と持っている情報を確かめる
誰が賛成しそうか、誰がどんな懸念を持っていそうか、判断に必要な情報を誰が持っているかを事前に把握します。必要なら会議前に一言聞いておきます。
- 04
議題を並べて時間を割り振る
ゴールにたどり着く順に議題を並べ、決める議題に長めの時間を割きます。共有だけで済むものは資料で送り、会議では扱いません。
- 05
グランドルールを用意する
「批判は後で」「発言は短く」「結論から話す」など、会議中の約束事を二つか三つ決めておきます。
- 06
前日までに送る
ゴール・アジェンダ・資料と「考えてきてほしいこと」を一つ添えて送ります(アジェンダの書き方)。
そのまま使えるアジェンダの型
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 会議のゴール | 新サービスの名称案を一つに決める |
| 決定者・決め方 | 決定者:◯◯部長/話し合ったうえで決定者が判断 |
| 議題と終える時刻 | ①前提の共有(◯時◯分まで)②案の出し合い(◯時◯分まで)③比較と決定(◯時◯分まで)④宿題の確認(◯時◯分まで) |
| 事前に考えてきてほしいこと | 名称案を一人一つ以上 |
| グランドルール | 出し合いの間は批判しない/発言は結論から |
冒頭:ゴールとルールを共有する
会議の最初の数分で、目的・ゴール・進め方・ルールを全員にそろえます。ここを飛ばすと、参加者がそれぞれ違うゴールを想定したまま話し始めます。
本日はお集まりいただきありがとうございます。今日のゴールは、新サービスの名称を一つに決めることです。進め方は、まず案を出し合い、次に比べて、最後に◯◯部長に判断していただきます。案を出す間は、良し悪しの評価はしない約束でお願いします。終了は◯時の予定です。
参加者が緊張していたり、初対面の人が多かったりするときは、一人一言ずつ「今の気分」や「今日期待すること」を話してもらうチェックインを入れると、最初の発言のハードルが下がります(会議のアイスブレイク)。
場面別:そのまま言える質問・進行の例文
意見を広げる(発散)
- 「まず、良し悪しは置いておいて、思いつくことを全部出してみましょう」
- 「◯◯さんの部署から見ると、どう見えますか」
- 「ほかに、まったく別のやり方はありますか」
- 「お客様の立場だったら、どう感じると思いますか」
- 「まだ発言していない方にも聞いてみたいです。◯◯さん、いかがですか」
- 「少数意見でも構いません。違う見方があれば教えてください」
深める(具体化)
- 「具体的には、どんな場面を想定していますか」
- 「そう考えた理由を、もう少し聞かせてください」
- 「たとえば、どのくらいの規模をイメージしていますか」
- 「今のお話は、つまり◯◯ということでしょうか」
整理する
- 「いったん手を止めて、ホワイトボードを見てください。『◯◯』に関する意見と『◯◯』に関する意見に分かれそうです」
- 「どの案も◯◯を大事にしている点は同じですね。分かれているのは◯◯の部分でしょうか」
- 「論点は◯◯と◯◯の二つと理解しました。この分け方で合っていますか」
- 「今は◯◯の話をしています。◯◯の件は後で扱います」
絞り込む(収束)
- 「ここからは絞り込む時間です。今日決めるのは一つです」
- 「判断の基準は、費用・期限・効果の三つにしましょう。どの案が一番近いですか」
- 「一番の懸念は何ですか。それが解消できれば、この案で進めてよいですか」
- 「どうしても譲れない条件を、一人一つ挙げてください」
合意を確かめて決める
- 「では、◯◯の案で進めます。反対の方や、気になる点が残っている方はいらっしゃいますか」
- 「全面的に賛成でなくても、この案で進めることに協力できるかどうかを確認させてください」
- 「◯◯部長、この案で決定してよろしいでしょうか」
時間を管理する・脱線を戻す
- 「残り十分です。そろそろ絞り込みに入ります」
- 「その件はこちらの『あとで扱う』欄に書いておきます。最後に扱い方を決めましょう」
- 「今日のゴールに戻ります。◯◯を決めるために、この話は必要でしょうか」
締める
- 「最後に、決まったことと宿題を読み上げます」
- 「◯◯は◯◯さんが、◯日までにお願いします。よろしいでしょうか」
- 「今日決まらなかった◯◯は、次回の最初に扱います」
会議で使えるファシリテーション手法の比較
| 手法 | やり方 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 順番に発言(ラウンドロビン) | 全員に一人ずつ順番に話してもらう | 発言が一部の人に偏るとき | 一人の持ち時間を決めておく |
| 書いてから話す | 付箋やチャットに各自書いてから発表する | 立場の強い人に引っ張られそうなとき | 書く時間を区切る |
| ブレインストーミング | 批判なしで案を出し合う | アイデアを広げたいとき | 最初にルールを伝える(ブレストのやり方) |
| グルーピング | 似た意見をまとめて見出しをつける | 意見が多くまとまらないとき | 分け方を参加者に確認する |
| 評価軸の比較表 | 案を縦、判断基準を横に並べて比べる | 複数案から一つ選ぶとき | 基準は議論の前に決める |
| 投票(ドット投票など) | 一人数票ずつ良いと思う案に入れる | 候補を絞り込みたいとき | 最終決定は決定者が行うと先に伝える |
| パーキングロット | 本題から外れた話を別枠に書き出して預かる | 脱線が多いとき | 預かった話の扱いを最後に決める |
| アクションログ | 宿題を担当・期限つきで一覧にする | 決めたことを確実に実行したいとき | 担当と期限のない宿題を残さない |
困ったときの対処と言い方
| 困りごと | 対処 | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 一人が話し続ける | お礼を言ってから、ほかの人に振る | 「ありがとうございます。ほかの方の意見も聞きたいので、◯◯さんはいかがですか」 |
| 誰も発言しない | 順番に回すか、先に書いてもらう | 「一人一言ずつ、順番にお願いします」「まずチャットに書いてください」 |
| 上司の意見に全員が合わせる | 立場の強い人の発言を後に回す | 「◯◯さんには最後にまとめてご意見をいただきたいので、まず皆さんから伺います」 |
| 意見が対立する | 共通の目的を確認し、違いを絞る | 「お二人とも◯◯という目的は同じですね。違うのは◯◯の部分でしょうか」 |
| 話が脱線する | パーキングロットに書き出して戻る | 「いったん『あとで扱う』欄に書いておき、本題に戻ります」 |
| 結論が出ない | 次回決めるための宿題を決める | 「今日は決めずに、◯◯の情報をそろえて次回決めます。担当は◯◯さんでよいですか」 |
| 時間が足りない | 決める議題を優先し、残りは後日に | 「残りの議題は、資料を送ってご意見をいただく形にします」 |
まとめ方:決まったこと・宿題を読み上げる
会議の最後には、決まったこと・決まらなかったこと・宿題(誰が・何を・いつまでに)の三つを読み上げます。宿題に担当者と期限がついていないと、次の会議で同じ話をすることになります。まとめた内容は、その日のうちに議事録で共有します(議事録の仕上げ方、AI議事録の使い方)。
締めに使う記録の型
| 区分 | 内容 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 決まったこと | サービス名は「◯◯」に決定 | — | — |
| 決まらなかったこと | ロゴの方向性(次回の最初に扱う) | — | 次回会議 |
| 宿題 | 商標の確認 | ◯◯さん | ◯月◯日 |
| 宿題 | ロゴ案を二つ用意 | ◯◯さん | 次回会議の前日 |
オンライン・ハイブリッド会議での工夫
- 発言は挙手機能やチャットで受け、ファシリテーターが順に指名する。
- 意見出しは、口頭よりチャットや共有の書き込み画面のほうが集まりやすい。
- 画面共有で、書記がまとめている内容を全員に見せながら進める。
- ハイブリッドでは、会議室の声が聞き取りにくいオンライン側の人に先に発言を振る。
- 共有の書き込みツールを使うときは、事前に接続と操作を試してもらう。
- カメラやマイクの都合で話しにくい人がいるので、「チャットでも構いません」と一声かける。
オンライン会議の基本的な作法はオンライン会議のマナーにまとめています。
よくある失敗
- ゴールが「話し合う」になっている:何が決まれば終わりかが分からず、時間いっぱい話して終わる。
- ファシリテーターが自分の案を推す:参加者は誘導されたと感じ、決まったことに協力しにくくなる。
- 発散中に評価してしまう:「でも予算が」と言った瞬間に、ほかの案が出なくなる。
- 書き出さずに口頭だけで進める:同じ意見が繰り返され、何が出たか分からなくなる。
- 沈黙を怖がって自分で埋める:問いを投げたら、少し待つ。答えが出ないときは問いを具体的に言い直す。
- 宿題に担当と期限がない:次の会議で同じ議論をやり直すことになる。
会議前・中・後のチェックリスト
会議前
- ゴールを一文で言えるか
- 決定者と決め方が決まっているか
- 議題ごとに終える時刻が書いてあるか
- アジェンダと資料を前日までに送ったか
- 書記とタイムキーパーを頼んだか
会議中
- 冒頭でゴールとルールを伝えたか
- 発散と収束の切り替えを口に出したか
- 出た意見を全員が見える場所に書き出したか
- 発言していない人に声をかけたか
- 脱線した話を預かって本題に戻したか
会議後
- 決まったこと・決まらなかったこと・宿題を読み上げたか
- 宿題に担当と期限がついているか
- その日のうちに議事録を共有したか
- 預かった話の扱いを決めたか
この記事の要点
- 進め方は準備・発散・整理・収束・確認の5段階。発散と収束を同時にやらない。
- 会議の前にゴールを一文で書き、決定者と決め方を決めておく。
- 冒頭でゴールとグランドルールを共有し、出た意見は全員が見える場所に書き出す。
- 場面ごとの問い(広げる・深める・整理する・絞る)を事前にメモしておく。
- 最後に宿題の担当と期限まで読み上げ、その日のうちに議事録で共有する。
FAQ
よくある質問
会議のゴールに向けて問いを投げ、参加者の意見を引き出して整理し、結論を出すところまで進める役割です。自分の意見で結論を誘導せず、中立を保つのが基本です。小さな会議では司会を兼ねることもあります。
司会は開会・閉会や議題の切り替えなど会議の形式を進める役、ファシリテーターは議論の中身を結論まで導く役です。社内の会議では一人が両方を担うことが多く、その場合も「決めるところまで連れていく」意識を持つと会議が締まります。
会議の前にゴールを一文で書くこと、場面ごとの問いを事前にメモしておくことの二つが効きます。会議中は、出た意見を書き出して全員に見せ、「この中でどれにしますか」と聞くだけでも議論は前に進みます。
一人ずつ順番に発言してもらう、先に付箋やチャットに書いてもらってから発表する、立場の強い人の意見を最後に聞く、といった方法で偏りを減らせます。
似た意見をまとめて見出しをつけ、論点を二つか三つに絞ります。そのうえで判断基準を先に決め、案を比較表に並べて比べると選びやすくなります。
無理に決めず、「次回決めるために何が足りないか」を確認し、その情報をそろえる担当と期限を決めて終えます。決まらなかったことも議事録に残しておきます。
発言者を指名して順番を整えること、チャットや共有画面で意見を集めること、まとめている内容を画面共有で見せることの三つです。ハイブリッドではオンライン側の人に先に発言を振ると偏りが減ります。