ビジネスの慣用句
「采配を振る」の意味と読み方
振るうとの違い・場面別の例文
「采配を振る」は、先頭に立って全体に指図し、物事を取り仕切ることです。読み方は「さいはいをふる」。使った一文は「今回の展示会は、◯◯さんが采配を振って準備を進めた。」。「采配を振るう」もよく聞きますが、辞書などで本来の言い方とされるのは「采配を振る」です。文化庁の調査では「振るう」を使う人のほうが多いものの、改まった文では「振る」が安心です。迷ったら文書では「振る」、目上の人へのお礼では「お取りまとめいただき」と言い換える、の2点を押さえれば困りません。このページでは、意味と由来、「振る」と「振るう」の違い、場面別の例文、言い換え、よくある間違い、使う前のチェックリストをまとめました。
結論
「采配を振る」は、集団の先頭に立って指図をし、全体を動かすことを表す慣用句です。「采配」だけでも指図すること・取り仕切ることの意味で使われ、「◯◯さんの采配」「采配が当たる」「采配ミス」のような言い方もします。
結論:意味・読み方・書き方の早見表
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 意味 | 先頭に立って全体に指図し、物事を取り仕切ること |
| 読み方 | さいはいをふる(「さいばい」ではない) |
| 本来の言い方 | 采配を振る(辞書などで本来の言い方とされる) |
| 「采配を振るう」は? | 広く使われているが、本来の言い方ではない。会話なら通じる。文書では「振る」が無難 |
| 過去形・て形 | 采配を振った/采配を振って(「振るった」「振るって」は「振るう」の形) |
| 使う場面 | 複数の人を動かして、行事・プロジェクト・チームをまとめた場面 |
| 目上の人に | 「采配を振っていただき」より「お取りまとめいただき」が無難 |
「采配を振る」の意味と由来
「采配」は、もともと戦の場で大将が軍勢を指揮するために手に持って振った道具を指すとされます。柄の先に細長く切った紙などを束ねたもので、これを振って合図を出したことから、「采配を振る」が「指揮をする」「取り仕切る」の意味で使われるようになったと説明されます。
仕事の場面では、プロジェクトや行事、チームを率いて段取りや役割分担を決めることに使います。単に「担当した」ではなく、複数の人を動かして全体をまとめたニュアンスがあります。
Point
「采配を振る」は「先頭に立って指図し、全体を取り仕切る」。一人で作業した場面ではなく、人を動かしてまとめた場面に使う言葉です。
「采配を振る」と「采配を振るう」の違い
文化庁「国語に関する世論調査」(平成29年度)では、「チームや部署に指図を与え,指揮すること」をどちらの言い方で表すかを尋ねています。辞書などで本来の言い方とされる「采配を振る」を使う人は32.2%、「采配を振るう」を使う人は56.9%でした。前回の平成20年度調査(「振る」28.6%、「振るう」58.4%)と比べると「振る」はやや増えましたが、平成29年度の時点でも「振るう」のほうが多数でした。
混同が起きやすいのは、二つの動詞の意味が近いためです。「振る」は手に持った物を揺り動かすこと(手を振る、旗を振る)、「振るう」は道具や力を思うままに使いこなすこと(腕を振るう、権力を振るう)を表します。采配は手に持って振り動かす道具なので「振る」が合う、という考え方です。
| 言い方 | 扱い | 会話 | 文書・社外 |
|---|---|---|---|
| 采配を振る | 本来の言い方とされる | 使える | こちらで書く |
| 采配を振るう | 使う人は多いが、本来の言い方ではない | 通じる。相手を正すほどではない | 避けるのが無難 |
注意
活用もあわせて確認しておくと書き間違えません。「振る」は振らない・振って・振った・振れば、「振るう」は振るわない・振るって・振るった。報告書に「采配を振るった」と書くと「振るう」の形になります。
使い方の例文(場面別)
会議で(社内)
今回のイベントは規模が大きいので、◯◯さんに全体の采配を振ってもらい、各班のリーダーがそれを支える形にしましょう。
注意
同僚や部下に向けた言い方です。目上の人に頼むなら「全体の取りまとめをお願いできますか」のほうが落ち着きます。
朝礼で
先週の展示会は、◯◯さんが采配を振って、限られた人数でも無事に乗り切ることができました。ありがとうございました。
報告書・日報で
当日の運営は◯◯課が采配を振り、受付から撤収まで予定どおり進行した。
注意
事実を記録する書き方です。「振るい」ではなく「振り」と書きます。
社内メールで(上司へのお礼)
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
昨日の◯◯では、部長に全体をお取りまとめいただき、ありがとうございました。おかげさまで、大きな混乱もなく終えることができました。
注意
目上の人の行動に「采配を振っていただき」と書くと、相手の指揮ぶりを評価する言い方に聞こえることがあります。お礼では「お取りまとめいただき」と言い換えるのが無難です。
そのほかの場面の例文
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 面談(上司から部下へ) | 次の案件では、◯◯さんに現場の采配を任せたいと考えています。困ったときはいつでも相談してください。 |
| 引き継ぎ | ◯日以降の進行は◯◯さんが采配を振ります。判断に迷う件は◯◯さんに確認してください。 |
| 自己PR・面接 | 前職では社内イベントの采配を振り、各部署から集まった担当者の役割分担と当日の進行をまとめました。 |
| 社内報 | 新店舗のオープン準備は、店長の◯◯さんが采配を振り、短い準備期間で開店にこぎつけました。 |
| 送別のあいさつ | ◯◯さんには、これまで数多くの行事で采配を振っていただきました。新しい部署でのご活躍をお祈りしています。 |
| 振り返り会議 | 今回は采配を振る人が決まっていなかったため、判断が遅れる場面がありました。次回は最初に責任者を決めましょう。 |
| スポーツの話題(雑談) | 監督の采配が当たって、終盤に逆転できたそうですね。 |
| 取引先への報告(自社のこと) | 当日は弊社の◯◯が全体の指揮を執り、進行いたしました。 |
注意
送別のあいさつ全体の組み立ては送別会のあいさつの例文を参考にしてください。社外向けの文では「采配を振る」より「指揮を執る」のほうが改まって聞こえます。
「采配」を使うほかの言い方
| 言い方 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 采配を任せる | 取り仕切る役を人に預ける | 当日の受付まわりの采配は◯◯さんに任せます。 |
| 采配が当たる | 指図や判断がうまくいく | 配置を入れ替えた采配が当たり、待ち時間が短くなった。 |
| 采配ミス | 指図や判断の誤り | 人員の割り振りは私の采配ミスでした。次回は見直します。 |
| ◯◯さんの采配で | その人の指図のもとで | ◯◯さんの采配で、作業の順番を組み直しました。 |
似た表現・言い換え・反対の表現
| 表現 | 意味・ニュアンス | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 指揮を執る | 先頭に立って全体に指図する | 社内外の文書、改まった報告 |
| 取り仕切る | 物事を中心になって進め、まとめる | 会話・メール全般 |
| 陣頭指揮を執る | 現場の先頭に立って直接指図する | 現場に出て指揮したことを強調したいとき |
| 切り盛りする | 限られた人や物をやりくりして物事を進める | 店や行事の運営 |
| 舵を取る | 進む方向を決めて導く | 方針・方向づけの話 |
| お取りまとめいただく | 相手に全体をまとめてもらったことを敬って言う | 目上・社外へのお礼 |
| 人任せにする(反対寄り) | 自分では指図せず、他人に任せきりにする | 反対の意味として |
「采配を振る」は指図して人を動かすことに重心があります。自分が手を動かして準備したことを言うなら、「中心になって進めた」「取りまとめた」のほうが合います。
よくある間違い
| ありがちな言い方 | 気になる点 | 無難な言い方 |
|---|---|---|
| 采配を振るう(文書で) | 使う人は多いが、本来の言い方ではない | 采配を振る |
| 采配を振るった(報告書で) | 「振るう」の過去形になっている | 采配を振った |
| 「さいばい」と読む | 「采配」の読みは「さいはい」 | さいはい |
| 「差配を振る」と書く | 「差配(さはい)」は取り仕切ること・管理することを表す別の言葉で、「采配を振る」の形では使わない | 采配を振る |
| 一人で黙々と作業したことを「采配を振った」 | 人を動かしてまとめた意味が伝わらない | 中心になって進めた |
| (目上へ)部長の采配はお見事でした | 相手の指揮を評価する言い方になり、上からに聞こえることがある | 部長がまとめてくださったおかげで、うまく進みました |
目上・社外に使うときの注意
「采配を振る」自体は失礼な言葉ではありません。ただし、目上の人や取引先の行動に対して使うと、相手の仕事ぶりを評価する響きが出ることがあります。お礼を伝えるときは、評価ではなく感謝として言い換えると角が立ちません。
| 相手・場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 同僚・部下 | ◯◯さんが采配を振ってくれたおかげで助かりました |
| 上司へのお礼 | 全体をお取りまとめいただき、ありがとうございました |
| 取引先へのお礼 | ◯◯様に当日の進行をお取りまとめいただき、誠にありがとうございました |
| 社外への報告で自社のことを書く | 弊社の◯◯が全体の指揮を執りました |
行事の当日に全体を取り仕切る役割の考え方はイベントプロデューサーの仕事、会議を進める側のコツは会議の進め方(ファシリテーション)にまとめています。
使う前のチェックリスト
- 複数の人を動かしてまとめた場面か(一人の作業なら「中心になって進めた」)
- 文書では「振る」で書いたか(「振るう」「振るった」になっていないか)
- 「采配」を「差配」と書いていないか
- 相手が目上・取引先なら「お取りまとめいただき」に言い換えたか
- 社外への改まった文なら「指揮を執る」のほうが合わないか
この記事の要点
- 「采配を振る(さいはいをふる)」は先頭に立って指図し、全体を取り仕切ること。
- 由来は大将が軍勢の指揮に振った道具とされる。
- 「振る」が本来の言い方とされるが、文化庁の調査では「振るう」を使う人のほうが多かった。文書では「振る」。
- 過去形は「振った」。「差配」は別の言葉。
- 目上・社外へのお礼では「お取りまとめいただき」と言い換える。
FAQ
よくある質問
先頭に立って全体に指図し、物事を取り仕切ることです。もとは大将が軍勢を指揮するために振った道具「采配」から来たとされます。
辞書などで本来の言い方とされるのは「采配を振る」です。文化庁「国語に関する世論調査」(平成29年度)では「振るう」を使う人のほうが多いという結果でしたが、文書では「采配を振る」と書いておくのが無難です。
「振るった」は「振るう」の過去形です。「采配を振る」の形で書くなら「采配を振った」になります。
「さいはい」と読みます。「さいばい」ではありません。
別の言葉です。「差配(さはい)」も取り仕切ることを表しますが、「采配を振る」という慣用句では「采配」と書きます。
使えます。「前職ではイベントの采配を振りました」のように、自分が人を動かしてまとめた経験を述べるときに使えます。一人で作業した経験なら「中心になって進めました」のほうが正確です。
失礼な言葉ではありませんが、相手の指揮ぶりを評価する言い方に聞こえることがあります。お礼として伝えるなら「お取りまとめいただき、ありがとうございました」と言い換えるのが無難です。