経費
社内懇親会の費用は交際費になるのか
条文が定める3つの除外
社内の懇親会にかかった費用を、交際費として処理するのか、別の科目にするのか。 この判断の出発点は、租税特別措置法が「交際費等」をどう定義しているかです。条文には除外される費用が明記されていて、社内イベントに関わる項目が複数あります。まず条文を確認してください。
結論
租税特別措置法第61条の4第6項は「交際費等」を、得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものと定義し、同項の各号で除外される費用を挙げています。第1号は専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用、第2号は施行令で定める金額(1人あたり1万円)以下の飲食費ですが、ここでいう「飲食費」は同じ項の中で専ら役員・従業員・その親族に対する接待等のための支出を除いて定義されています。社内だけの飲み会に1万円の基準は使えない構造です。
根拠と、この記事の限界
本記事の条文はe-Gov法令検索の租税特別措置法および同施行令から取得しています(2026年10月時点)。
Point
この記事は、どの勘定科目で処理すべきかを示しません。 「福利厚生費にできるか」「交際費にすべきか」は税務上の当てはめであり、個別の事情によります。本記事が示すのは、条文が『交際費等』をどう定義し、何を除外しているかという事実だけです。実際の処理は必ず税理士に確認してください。
注意
国税庁の通達・質疑応答事例は本記事の取得範囲外です。引用していません。また金額の基準は改正されうるため、本記事の数字は2026年10月時点のものとして扱ってください。
交際費等の定義 — 誰に対する支出か
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(…)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい(第61条の4第6項)
読み取れること
- 対象は「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に対する支出
- 行為の類型は接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為
- 各号に該当するものは除かれる(次章)
接待飲食費からは社内分が除かれている
同じ第6項が「接待飲食費」も定義していますが、ここに注目すべき括弧書きがあります。
同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。…)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているもの
Point
「専ら…役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く」とあります。つまり社内だけの飲食は「接待飲食費」の定義から外れる構造です。接待飲食費は後述の「100分の50」の計算に使う概念なので、この区別は意味を持ちます。
除外される3つの費用
第61条の4第6項の各号が、交際費等から除かれる費用を定めています。
第1号 — 専ら従業員の慰安のため
専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用(第61条の4第6項第1号)
Point
社内イベントが最も関係する号です。 ただし条文は「専ら従業員の慰安のために行われる」「運動会、演芸会、旅行等」「通常要する費用」という3つの限定を置いています。自分の催しがこれに当たるかの判断は、本記事では行いません。
第2号 — 1人あたり1万円以下の飲食費
第2号は「飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用」としています。その政令が施行令第37条の5第1項です。
…同項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、一万円とする。(施行令第37条の5第1項)
| 条文の要素 | 内容 |
|---|---|
| 計算方法 | 飲食費として支出する金額を参加した者の数で除して計算 |
| 基準額 | 1万円 |
| 判定 | 計算した金額が基準額以下の費用は交際費等から除かれる |
注意
「参加した者の数で除して」という計算です。実際に参加した人数が分母になります。この金額は改正されうるので、適用の前に最新の条文を確認してください(本記事は2026年10月時点)。
Point
第2号は、社内だけの飲み会には使えません。 第2号の「飲食費」は、第6項の本文で「飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の…役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)」と定義されています。つまり1人1万円以下でも、社内の人だけの飲食は第2号の対象外です。1万円の基準が問題になるのは、取引先など社外の方が参加する飲食です。社内だけの会で条文上関係しうるのは、第1号(専ら従業員の慰安のため)です。
第3号 — 政令で定める費用
施行令第37条の5第2項が3つ挙げており、そのうち社内の催しで関係しうるのが第2号です。
会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用(施行令第37条の5第2項第2号)
ほかに第1号(カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品の贈与に通常要する費用)、第3号(出版物・放送番組の編集のための座談会、取材に通常要する費用)があります。
損金不算入の計算
交際費等に当たる場合、どこまでが損金になるかは資本金の額等で変わります。
| 区分 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 資本金等が100億円以下 | 第61条の4第1項 | 交際費等の額のうち、接待飲食費の額の100分の50に相当する金額を超える部分が損金不算入 |
| 資本金等が1億円以下(一定の法人を除く) | 第61条の4第2項 | 定額控除限度額(800万円×適用年度の月数÷12)を超える部分とすることができる |
Point
第2項は「することができる」です。 自動的に適用されるのではなく、第7項により確定申告書等に定額控除限度額の計算に関する明細書の添付があることが条件とされています。
注意
第1項の適用期間は「平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度」とされています。通算法人に関する規定(第3項・第5項)は本記事では扱いません。
イベント運営として整えておくこと
処理の判断は税理士に委ねるとして、判断できる材料を残しておくのは運営の仕事です。条文が求めている要素から逆算すると、次が必要になります。
- 参加した人数(施行令の計算が「参加した者の数で除して」なので、実際の参加者数が要る)
- 参加者の属性(社内のみか、社外の取引先等が含まれるか)
- 催しの目的(何のための会か。社内の慰安なのか、取引先の接待なのか)
- 飲食費とそれ以外の切り分け(会場費、備品、景品は飲食費ではない)
- 領収書と明細(内訳が分かる形で)
- 会議に関連する飲食物かどうか(施行令第37条の5第2項第2号)
Point
いちばん抜けるのは「実際に参加した人数」です。 申込人数と当日の参加人数は違います。施行令の計算は参加した者の数で除すると書いているので、当日の実数を記録しておく必要があります。受付の名簿にチェック欄を置けば済みます(参加者名簿の管理)。
注意
社外の方が参加する懇親会は、社内だけの会とは条文上の扱いが変わりえます。参加者の属性を記録に残しておいてください。 また、景品を出す場合は景品表示法の論点も別にあります(イベントの抽選・景品)。
進め方
- 01
催しの目的と参加者の範囲を先に決める
社内の慰安なのか、取引先を招くのか。混ぜると判断が複雑になります。 分けられるなら分けたほうが整理しやすくなります。
- 02
飲食費とそれ以外を分けて見積を取る
会場費、飲食、備品、景品。一式でまとめた見積だと、あとで切り分けられません。(見積書の作り方)
- 03
当日の参加実数を記録する
受付でチェックするだけです。これが無いと計算の分母が出ません。
- 04
領収書と明細を揃える
内訳が分かる形で受け取ってください。
- 05
税理士に確認する
勘定科目の判断と申告の処理は税務の領域です。 本記事は条文を示すところまでです。
- 催しの目的を言語化した
- 参加者が社内のみか、社外を含むかを整理した
- 飲食費とそれ以外を分けて見積を取った
- 当日の参加実数を記録する手順がある
- 領収書と明細を内訳が分かる形で揃えた
- 税理士に処理を確認した
注意
懇親会そのものの設計は懇親会のセッション設計、幹事の進め方は懇親会幹事のやること、案内文は懇親会の案内文例文集を参照してください。
この記事の要点
- 交際費等の定義は「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する」支出(第61条の4第6項)。
- 接待飲食費の定義から「専ら役員・従業員・親族に対する接待等」は除かれている。 社内だけの飲食は外れる構造。
- 除外の第1号は「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」。
- 除外の第2号は1人あたり1万円以下の飲食費(施行令第37条の5第1項)。ただしこの「飲食費」は社内だけの飲食を除いて定義されているので、社内だけの飲み会には使えない。
- 会議に関連する茶菓・弁当も除外(施行令第37条の5第2項第2号)。
- 勘定科目の判断は税務の当てはめ。本記事では示さない。 判断材料(参加実数・属性・目的・内訳)を残すのが運営の仕事。
FAQ
よくある質問
はい。交際費等の定義と除外を定めた租税特別措置法第61条の4第6項の構造は、懇親会・忘年会・歓送迎会といった名前に関係なく同じです。社内だけの会で条文上関係しうるのは第1号の「専ら従業員の慰安のために行われる」費用で、1人1万円の基準(第2号)は社内だけの飲食には使えません。実際にどの科目で処理するかは、税理士に確認してください。
本記事では個別の判断を示しません。条文の構造としては、租税特別措置法第61条の4第6項が交際費等を「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義し、各号で除外される費用を挙げています。第1号は専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用です。実際の処理は税理士に確認してください。
条文上、1人1万円の基準(第61条の4第6項第2号・施行令第37条の5第1項)は社内だけの飲み会には使えません。第2号の「飲食費」は、第6項の本文で「専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するもの」を除いて定義されているためです。社内だけの会で条文上関係しうるのは第1号(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用)です。1万円の基準が問題になるのは、取引先など社外の方が参加する飲食です。実際の処理は税理士に確認してください。
本記事では勘定科目を示しません。条文の構造としては、社内だけの忘年会・新年会で関係しうるのは第61条の4第6項第1号(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用)で、条文は「専ら従業員の慰安のため」「通常要する費用」という限定を置いています。取引先を招く会は社内だけの会とは扱いが変わりえます。参加者の範囲・実数・目的・内訳を記録したうえで、税理士に確認してください。
施行令第37条の5第1項は「当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して」と定めています。条文の文言は参加した者の数です。申込人数と当日の参加人数は違うため、当日の実数を記録しておいてください。受付の名簿にチェック欄を置けば済みます。
施行令第37条の5第2項第2号は「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」を、交際費等から除かれる費用として挙げています。ただし何が「会議に関連して」に当たるかの当てはめは本記事では行いません。税理士に確認してください。
条文上、交際費等の定義は得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する支出を対象としています。また接待飲食費の定義からは「専ら役員・従業員・親族に対する接待等」が除かれているため、社外の方が参加する場合は社内だけの会と扱いが変わりえます。参加者の属性を記録に残したうえで、税理士に確認してください。