社内文書
稟議書の書き方と例文
そのまま使える型と場面別の文例
稟議書は、自分に決裁権のない支出や契約について、決裁者に「承認してよい」と判断してもらうための文書です。結論から言うと、件名で何の承認かを示し、本文は「目的→内容→費用→効果→比較検討」の順、金額と結論を先に書けば通りやすくなります。このページでは、空欄を埋めるだけで使える型と、物品購入・修理・システム導入・新規取引・外注・研修参加・採用・懇親会・会食の文例をまとめました。社内イベントの費用の積み上げ方はイベント予算書の作り方にあります。
結論
稟議書は①件名 ②目的(なぜ今必要か) ③内容(何を・いつ・どこから) ④費用 ⑤効果 ⑥比較検討 ⑦添付資料の順に書きます。件名だけで「何の承認か」が分かるようにし、本文は決裁者が判断に使う情報だけに絞ります。
まず使える稟議書の型(テンプレート)
どの場面でも、次の型の◯◯を埋めれば稟議書の骨組みになります。社内に決まった書式がある場合は、その欄に同じ順で当てはめてください。
件名:◯◯(対象)の◯◯(購入/契約/委託/参加/開催)の件
申請日:◯月◯日 申請者:◯◯部 ◯◯
決裁希望日:◯月◯日(理由:◯◯の納期/申込締切のため)
目的:◯◯で◯◯が起きており(困っている事実)、◯◯するため、◯◯を申請します。
内容:◯◯(品名・型番・プラン名) 数量:◯ 相手先:◯◯株式会社 実施・納品時期:◯月◯日
費用:総額◯◯円(税込) 支払時期:◯月 予算区分:◯◯費(今期予算内/予算外)
効果:◯◯の作業が◯◯になる/◯◯のミスが減る
比較検討:A案(◯◯)、B案(◯◯)、何もしない場合(◯◯)を比べ、◯◯の理由でA案を選びました。
添付:見積書、比較表、カタログ(または仕様書)
注意
決裁希望日と、その日付の理由を書いておくと、決裁者が後回しにしにくくなります。予算内か予算外かも一言あると、経理の確認が早く済みます。
稟議書に書く項目と書き方のコツ
| 項目 | 書くこと | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| 件名 | 何の承認を求めるか | 「◯◯購入の件」「◯◯委託の件」と対象と行為を入れる |
| 目的・背景 | なぜ今必要か | 困っている事実を一つ。「便利になる」だけで終えない |
| 内容 | 何を・数量・時期・相手先 | 型番・プラン名・契約期間まで書く |
| 費用 | 総額と内訳、支払時期、予算区分 | 税込か税抜かを明記。月額なら契約期間の総額も書く |
| 効果 | 承認すると何が良くなるか | 作業時間・ミス・売上など、測れる言い方で |
| 比較検討 | ほかの案と比べた結果 | 代替案を最低一つ。「何もしない」も比較対象 |
| リスク・対応(必要に応じて) | 懸念と、その手当て | 解約条件・保守・情報管理など、聞かれそうな点を先に |
| 添付資料 | 見積書・カタログ・比較表・仕様書 | 本文に書ききれないものはここへ |
Point
決裁者が知りたいのは「断る理由がないか」です。 金額の妥当性(相見積もり)と、やらなかった場合に困ること、の二つが書けていると判断してもらいやすくなります。見積書を比べるときは見積書を比較する4つのポイントが使えます。
稟議・決裁・起案・申請書の違い
| 言葉 | 意味 | 稟議書との関係 |
|---|---|---|
| 稟議 | 決裁権のある人たちに文書を回し、承認を得る手続き | その手続きで回す文書が稟議書 |
| 起案 | 案を文書にまとめて最初に出すこと | 稟議書を書いて出す行為が起案 |
| 決裁 | 権限のある人が、案の採否を最終的に決めること | 稟議書の行き着く先。字は「決済」ではなく「決裁」 |
| 申請書 | 決められた手続きを求める書類 | 定型の手続きは申請書、判断が要る案件は稟議書。境目は会社ごとに違う |
どこまでが申請書でよく、どこからが稟議書かは、会社の決裁権限の規程で決まります。迷ったら経理か総務に確認してください。字の違いは「決裁」と「決済」の違い、申請書の文例は社内の申請書の書き方にあります。
物品購入の稟議書 例文(パソコン・備品)
業務用パソコンの購入
件名:業務用ノートパソコン購入の件
目的:営業部で使用しているノートパソコン◯台が導入から年数が経ち、起動や資料作成に時間がかかるほか、故障による業務停止が続いています。業務の停滞を防ぐため、新しい端末への入れ替えを申請します。
内容:ノートパソコン(メーカー・型番)◯台 購入先:◯◯株式会社 納品希望日:◯月◯日
費用:総額◯◯円(税込)。内訳は添付の見積書のとおりです。
効果:資料作成の待ち時間が減り、外出先で故障して業務が止まる心配も小さくなります。
比較検討:◯社から見積もりを取り、保守内容と価格を比べて◯◯株式会社を選びました(比較表を添付)。修理での延命も検討しましたが、部品の供給が終わっているため見送りました。
オフィス家具・備品の購入
件名:会議室用モニター購入の件
目的:◯階会議室にはモニターがなく、打ち合わせのたびにノートパソコンの画面を囲んで資料を見ています。来客との打ち合わせでも同じ状態のため、会議室にモニターを常設したく申請します。
内容:モニター(型番◯◯)1台、壁掛け金具一式 購入先:◯◯
費用:総額◯◯円(税込)、設置費を含みます。
比較検討:レンタルも見積もりましたが、利用頻度が高く、◯か月で購入費を上回るため購入を選びました。
注意
備品・消耗品の稟議は「なぜ今か」が抜けがちです。故障の回数や待ち時間など、起きている事実を一つ書くと通りやすくなります。
修理・買い替えの稟議書 例文
件名:複合機の修理費用承認の件
目的:◯階の複合機で紙詰まりが続き、メーカー点検の結果、給紙部品の交換が必要と判明しました。社内の印刷業務を止めないため、修理費用の承認をお願いします。
内容:給紙ユニットの交換(◯◯株式会社による出張修理) 実施予定:◯月◯日
費用:◯◯円(税込)
比較検討:買い替えも見積もりましたが、本体はリース期間が残っており、修理のほうが費用を抑えられるため修理を選びました。
修理か買い替えかで迷う案件は、両方の見積もりを並べて、選ばなかった理由も書くと差し戻しが減ります。
システム・有料サービス導入の稟議書 例文
件名:勤怠管理システム(◯◯)導入の件
目的:現在は紙のタイムカードを月末に手入力で集計しており、担当者◯名が毎月◯日ほどこの作業にかかっています。入力ミスによる修正も毎月発生しているため、システムでの集計に切り替えたく申請します。
内容:◯◯(◯◯プラン) 利用者:全社員◯名 契約期間:◯か月 導入開始:◯月◯日
費用:初期費用◯◯円、月額◯◯円(いずれも税込)。契約期間の総額は◯◯円です。
効果:月末の集計作業がなくなり、打刻の漏れもその場で分かるようになります。
比較検討:◯社の製品を試用し、操作のしやすさと既存の給与ソフトとの連携で◯◯を選びました。
リスク・対応:情報システム担当とセキュリティの確認を済ませています。途中解約の条件は添付の約款のとおりです。
注意
月額のサービスは、月額だけでなく契約期間の総額を書きます。自動更新の有無と解約の条件も、聞かれる前に書いておくと確認の往復が減ります。
新規取引先との契約の稟議書 例文
件名:◯◯株式会社との取引開始(部材の仕入れ)の件
目的:現在の仕入先◯◯社からの納品遅れが続き、◯月は出荷に影響が出ました。供給を安定させるため、仕入先を一社追加したく申請します。
内容:取引先:◯◯株式会社(所在地◯◯、取引実績:◯◯社など) 取引内容:部材◯◯の仕入れ 取引開始:◯月
費用:月間の取引見込み◯◯円(税込) 支払条件:月末締め翌月末払い
比較検討:◯社と面談し、納期の守り方と単価で◯◯株式会社を選びました。
添付:会社概要、見積書、取引基本契約書の案
新しい相手との契約では、相手先がどんな会社かを決裁者が判断できる材料(会社概要・取引実績)と、契約書の案を付けます。契約書の確認を法務に頼む場合は、その予定も書いておきます。
外注・業務委託の稟議書 例文
件名:社員総会の運営業務委託の件
目的:◯月◯日開催の社員総会について、会場設営・音響・受付を社内だけで行うと、担当部署の通常業務が当日まで止まります。運営の一部を外部に委託し、社内は企画と進行に集中したく申請します。
内容:委託先:◯◯株式会社 委託範囲:会場設営・音響・受付スタッフの手配(仕様書を添付)
費用:◯◯円(税込)。内訳は添付の見積書のとおりです。
比較検討:◯社から提案を受け、実績と見積もりの内訳の明確さで選定しました。
外注の稟議には委託の範囲を書いた仕様書を添付すると、承認後に「どこまで頼んだのか」で揉めません。書き方は業務委託仕様書の書き方、内製との分け方はイベントは内製か外注かを参照してください。展示会の出展は展示会出展の稟議書に専用の文例があります。
研修・セミナー参加の稟議書 例文
件名:外部研修「◯◯講座」参加の件
目的:来期から担当する◯◯の業務で必要な◯◯の知識を、短期間で身につけるため参加を申請します。
内容:主催:◯◯株式会社 日程:◯月◯日〜◯月◯日(◯日間) 形式:会場(オンライン) 参加者:◯◯部 ◯◯
費用:受講料◯◯円、交通費◯◯円、合計◯◯円(税込)
効果:受講後は部内で報告会を開き、資料を共有します。
比較検討:社内の資料での独学も考えましたが、◯◯の実習があるこの講座のほうが早く業務に使えると判断しました。
研修の稟議は「受けたあと職場にどう返すか」まで書くと通りやすくなります。参加後の報告は研修報告書の書き方にまとめています。
採用・人員増の稟議書 例文
件名:◯◯部 正社員◯名採用の件
目的:◯◯の受注が増え、現在の◯名体制では納期の遅れが出始めています。残業も続いているため、◯◯担当を◯名増やしたく申請します。
内容:職種:◯◯ 雇用形態:正社員 入社希望時期:◯月 採用方法:求人サイト◯◯への掲載
費用:求人広告費◯◯円(税込)。人件費は給与規程に基づき、年間◯◯円の見込みです(内訳を添付)。
効果:一人あたりの担当件数が◯件から◯件になり、納期の遅れを解消できます。
比較検討:外注での対応も見積もりましたが、継続して発生する業務のため、社内で人を増やすほうが費用を抑えられると判断しました。
注意
採用の稟議は、採用にかかる費用(広告費など)と、入社後の人件費を分けて書きます。給与の水準は社内の規程に合わせ、人事と事前にすり合わせておきます。
懇親会・会食・社内イベントの稟議書 例文
部署の懇親会
件名:部署懇親会の費用承認の件
目的:◯月の組織変更で新しく加わったメンバーとの交流を深め、部署内の連携を良くするため、懇親会を開催します。
内容:日時:◯月◯日(◯)◯時〜 場所:◯◯(店名) 参加予定:営業部◯名
費用:一人あたり◯◯円、総額◯◯円(税込)。会社負担分と個人負担分の内訳は添付のとおりです。
効果:日頃接点の少ないメンバー同士が話す機会をつくり、業務上の相談がしやすい関係をつくります。
取引先との会食(接待)
件名:取引先との会食費用承認の件
目的:◯◯株式会社◯◯様との今期の取引のお礼と、来期の取り組みについての意見交換のため。
内容:日時:◯月◯日(◯)◯時〜 場所:◯◯(店名) 出席者:先方◯名(◯◯様、◯◯様)、当社◯名(◯◯部長、◯◯)
費用:総額◯◯円(税込)の見込み、一人あたり◯◯円
社内イベント(表彰式・周年行事など)
件名:社内表彰式の開催費用承認の件
目的:今期の成果を全社で共有し、表彰を通じて社員の取り組みを周知するため、表彰式を開催します。
内容:日時:◯月◯日(◯) 場所:本社◯階ホール 対象:全社員◯名(オンライン参加を含む)
費用:記念品◯◯円、会場設営◯◯円、配信機材◯◯円、合計◯◯円(税込)。内訳は添付の予算書のとおりです。
比較検討:外部会場も見積もりましたが、本社ホールで収容できるため社内開催としました。
注意
飲食を伴う費用の会計上の扱い(交際費か福利厚生費か)は会社のルールと税務の判断が絡みます。考え方は社内懇親会・忘年会の費用は交際費かにまとめています。最終的には経理に確認してください。会食は先方の会社名・出席者名・人数が後で必要になるので、稟議の段階で書いておきます。幹事の段取りは懇親会の幹事がやることへ。
差し戻される理由と直し方
| 差し戻される理由 | 決裁者の受け取り方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 件名が「購入の件」だけ | 何の承認か開くまで分からない | 対象と行為を入れる(「業務用ノートパソコン購入の件」) |
| 目的が「便利になるため」 | 今やる理由がない | 困っている事実を一つ書く(故障の回数、作業にかかる時間) |
| 見積もりが一社だけ | 金額が妥当か判断できない | 相見積もりか、一社に絞った理由を書く |
| 月額だけ書いてある | 総額が分からない | 契約期間の総額と、更新・解約の条件を書く |
| 代替案がない | ほかの方法を検討したのか分からない | 「何もしない場合」を含めて比べる |
| 本文が長い | 判断に必要な点が埋もれる | 本文は要点だけにし、詳細は添付へ |
| 決裁希望日の直前に出した | 検討の時間がない | 納期・締切から逆算し、余裕をもって出す |
差し戻されたら、指摘された点だけを直し、件名に「(再申請)」と入れて出し直します。冒頭に何を直したかを一文で添えると、決裁者が前回との違いを追いやすくなります。
件名:業務用ノートパソコン購入の件(再申請)
前回のご指摘を受け、次の2点を修正しました。①◯◯社を加えた三社の見積もり比較表を添付しました。②修理で延命した場合の費用と、見送った理由を比較検討に追記しました。
提出前のチェックリスト
- 件名だけで「何の承認か」が分かる
- 目的に「なぜ今か」(困っている事実)が書いてある
- 金額が税込か税抜か、月額なら契約期間の総額も書いてある
- 予算内か予算外か、どの費目かを書いた
- 見積書・比較表など、金額の根拠を添付した
- 代替案(やらない場合を含む)と比べた理由がある
- 決裁希望日と、その理由(納期・締切)を書いた
- 会食は相手先の会社名・出席者・人数を書いた
- 誤字と、数量×単価の計算を見直した
この記事の要点
- 稟議書は件名・目的・内容・費用・効果・比較検討・添付の順。結論と金額を先に。
- 決裁者が知りたいのは「なぜ今か」と「金額は妥当か」。
- 代替案は最低一つ。「何もしない」も比較対象になる。
- 月額のサービスは契約期間の総額、採用は採用費と人件費を分けて書く。
- 見積書・仕様書・比較表は本文に書かず添付する。
- 懇親会・会食の費用は、会計上の扱いを経理に確認してから出す。
FAQ
よくある質問
件名で何の承認かを示し、本文は目的・内容・費用・効果・比較検討の順に、結論と金額を先に書きます。決裁者が「断る理由がないか」を確かめられるよう、相見積もりと、やらなかった場合に困ることを書いておくと通りやすくなります。
このページの「まず使える稟議書の型」の◯◯を埋めれば、そのまま下書きになります。社内に決まった書式がある場合は、その欄に同じ順で当てはめてください。
「件名:業務用ノートパソコン購入の件。目的:現在の端末が故障を繰り返し業務が止まっているため、入れ替えを申請します。内容:型番・台数・購入先。費用:総額◯◯円(税込)、内訳は見積書のとおり。比較検討:◯社の見積もりを比べて選定しました」という形が基本です。
開催の目的(交流・慰労など)、日時と場所、参加予定人数、一人あたりと総額の費用、会社負担と個人負担の内訳です。飲食費の会計上の扱いは会社のルールによるため、出す前に経理に確認してください。
申請書は決められた手続きを求める書類、稟議書は決裁者の判断が要る案件の承認を求める文書です。どの金額・内容から稟議にするかは会社の決裁権限の規程で決まるため、社内のルールを確認してください。
社内の決裁にかかる日数は会社や決裁者の人数で変わります。納期や申込締切から逆算し、決裁希望日とその理由を書いて、余裕をもって出してください。
指摘された点だけを直し、件名に「(再申請)」と入れて出し直します。何を直したかを冒頭に一文で書いておくと、決裁者が前回との違いを確認しやすくなります。