社内行事
社内イベントの景品は課税される?
非課税の条件と、課税される例
結論:忘年会・運動会など、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の費用は、国税庁の通達で「課税しなくて差し支えない」とされています(所得税基本通達36-30)。 ただし①不参加者に参加に代えて金銭を渡す ②役員だけが対象は通達自体が除外しており、③現金・商品券を配る ④成績上位者だけに渡すも別の根拠から給与課税の論点になります。この記事は、国税庁の公表文と所得税法の条文で確認できたことだけを、早見表・チェックリスト・経理への相談文例・当選者記録表にまとめました。
結論
所得税法第36条第1項は、収入金額に「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」の価額を含めています。物でも収入が原則です。そのうえで所得税基本通達36-30は、会社がレクリエーションのための「社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用」を負担して参加者が受ける経済的利益について、不参加者に参加に代えて金銭を支給する場合と、役員だけを対象とする場合を除き、課税しなくて差し支えないとしています。
早見表:このケースは課税される?
国税庁の公表文に書いてあることと、書いていないので確認が要ることを分けています。右端の列は判断ではなく「どこに確認するか」の目安です。
| ケース | 確認できた公表文の記載 | 扱いの向き |
|---|---|---|
| 社員向けの忘年会・運動会・社内パーティーの費用 | 通達36-30:除外ケースを除き「課税しなくて差し支えない」 | 課税しない扱いの対象 |
| 不参加者に、参加の代わりに現金を渡す | 通達36-30:除外ケース。(注)で不参加者に支給する金銭は給与等として課税と明記 | 課税(自己都合の不参加者に渡すと、参加者側も36-30の扱いから外れる) |
| 役員だけの行事 | 通達36-30:「役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合」は除外 | 課税の論点 |
| ビンゴ・抽選の景品(物品) | 景品が36-30の「行事の費用」に含まれるか、金額の目安は、確認した公表文に記載なし | 要確認(品名・単価を添えて税理士へ) |
| 景品が現金・商品券・ギフト券 | 記念品について:現金・商品券などを支給する場合は全額が給与(No.2591) | 課税の論点が強い(ビンゴ景品への当てはめは要確認) |
| 営業成績上位者だけへの表彰の賞品 | 第28条第1項「賞与並びにこれらの性質を有する給与」に当たるかが論点 | 課税の論点が強い |
| 創業記念の記念品 | 処分見込価額による評価額が10,000円以下、おおむね5年以上の間隔など(No.2591) | 条件を満たせば課税しない |
| 永年勤続表彰の記念品 | 社会一般的にみて相当な金額以内、勤続おおむね10年以上など(No.2591) | 条件を満たせば課税しない |
| 社員旅行 | 4泊5日以内、参加人数が全体の50%以上(No.2603) | 条件を満たせば原則課税しない |
| 社外の参加者・取引先への景品 | 所得税法第204条第1項第8号、交際費等の定義(措法61条の4第6項)、景品表示法 | 別の枠組み(下の章) |
Point
「1人5,000円〜10,000円までなら非課税」と書かれた記事がありますが、本記事で確認した国税庁の公表文(通達36-30、タックスアンサーNo.2591・No.2603)には、ビンゴ景品の金額の目安は書かれていません。 10,000円以下という数字があるのは創業記念品の基準(No.2591)で、ビンゴ景品の基準ではありません。
根拠:条文と通達で確認できたこと
条文はe-Gov法令検索の所得税法、通達は国税庁「所得税基本通達 給与等に係る経済的利益」、ほかは国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)から取得しています(2026年11月時点)。
物でも収入(所得税法第36条)
その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。(第36条第1項から抜粋)
価額は「取得し、又は当該利益を享受する時における価額」(第36条第2項)。仕入値ではなく、渡した時点の価額という構造です。「商品券でなく物だから大丈夫」という整理は、条文からは出てきません。
レクリエーション行事は課税しない扱い(通達36-30)
- 対象:レクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用
- 除外1:行事に参加しなかった人(業務の必要で参加できなかった人を除く)に、参加に代えて金銭を支給する場合
- 除外2:役員だけを対象として行事の費用を負担する場合
- (注):不参加者(業務の必要で参加できなかった人を含む)に支給する金銭は、給与等として課税
注意
(注)の「含む」に注意してください。 業務で来られなかった人への金銭は、参加者側の扱いには影響しない一方で、受け取った本人には給与等として課税という書き方です。
給与になれば源泉徴収(第28条・第183条)
第28条第1項は給与所得を「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と定めています。景品が給与等に当たれば、第183条第1項により会社が支払の際に源泉徴収し、翌月10日までに納付します。
給与か、一時所得か
受け取った側の所得区分は、給与所得のほかに一時所得が候補になります。国税庁タックスアンサーNo.1490は、一時所得の例として次を挙げています。
| 給与所得 | 一時所得 | |
|---|---|---|
| 定義・例 | 賞与並びにこれらの性質を有する給与(第28条第1項) | 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除く)、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く) |
| 計算 | 給与等として源泉徴収(第183条) | 総収入金額−支出した金額−特別控除額(最高50万円)。その2分の1を他の所得と合算 |
| 誰が手続するか | 支払う会社が源泉徴収 | 受け取った本人の所得として計算 |
Point
社内イベントの景品が「業務に関して受けるもの」に当たるかは、国税庁の公表文に書かれていません。 社員への景品は給与、と断定する記事も、一時所得で50万円まで非課税、と断定する記事もありますが、どちらも当てはめの話です。 自社の行事の内容を添えて税理士に確認してください。
場面別:判断の材料になる点
| 場面 | 確認すること | 記録しておくこと |
|---|---|---|
| 忘年会・新年会のビンゴ | 全員が参加できたか。景品に現金・商品券・ギフト券を含むか | 参加者名簿、景品の品名と単価、当選者 |
| 運動会・社内レクの賞品 | 参加は全社員に開かれていたか。役員だけの部門がないか | 案内文、種目と賞品の対応 |
| 社内表彰(MVP・年間賞) | 業績に連動しているか。賞金か物品か | 選考基準、賞の名目(選考基準) |
| 不参加者へのお詫び・代替 | 参加に代えて金銭を渡していないか(通達36-30) | 渡したもの、理由(業務都合か自己都合か) |
| 二次会 | 会社負担の二次会が「社会通念上一般的に行われていると認められる」行事に当たるかは公表文に記載なし | 一次会と分けた費用と参加者 |
| ゴルフコンペ | 社員だけか、取引先を含むか。取引先なら交際費等の定義(措法61条の4第6項)の論点 | 参加者の区分、景品と費用の内訳(ゴルフコンペの表彰式) |
| 社員旅行の中の景品 | 旅行自体がNo.2603の条件(4泊5日以内、参加50%以上)を満たすか | 行程、参加率(社員旅行の幹事) |
| 派遣・業務委託スタッフへの景品 | 自社の給与等ではない人への支払いの扱い | 区分の整理が先(スタッフの区分) |
社外の参加者・取引先に渡す場合
所得税法第204条第1項第8号は「広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの」を源泉徴収の対象とし、税率は第205条第2号で「政令で定める金額を控除した残額に百分の十」、現物は「支払の時における価額として政令で定めるところにより計算した金額」です。
Point
「広告宣伝のための賞金」の政令の定義と控除額は本記事の取得範囲外です。 当てはめと数値は示しません。
会社側では、取引先など「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」への贈答は交際費等の定義(租税特別措置法第61条の4第6項)の論点になります。景品表示法の総付景品・懸賞の上限も別にかかります(イベントの景品と景表法)。税と景表法は別の枠組みで、両方が同時にかかります。
会社側の処理(福利厚生費か交際費か)
国税庁タックスアンサーNo.5261は、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用は交際費等から除かれ、福利厚生費などとされると説明しています。条文では租税特別措置法第61条の4第6項第1号です。
注意
景品の勘定科目をどれにするかは、本記事では断定しません。 社員だけの行事か、取引先を含むか、給与として扱うかで変わります。社内懇親会の費用の整理は社内懇親会の費用は交際費かを参照してください。
景品を決める前のチェックリスト
- 全社員が参加できる行事か(特定の部署・役員だけになっていないか)
- 不参加者に、参加の代わりに現金・商品券を渡す予定がないか
- 景品に現金・商品券・ギフト券・プリペイドカードが含まれていないか
- 業績に連動した賞品が混ざっていないか(表彰と抽選を分けているか)
- 景品の単価・総額を一覧にしたか(渡した時点の価額がわかる資料)
- 取引先・社外の人に渡す景品があるか(あれば記録を分ける)
- 二次会を会社負担にするか、一次会と費用を分けたか
- 景品の案を、品名と単価がわかる段階で経理・税理士に通したか
- 当選者記録の保管期間と削除時期を決めたか
そのまま使える:経理・税理士への相談文例
金額と品名が決まる前に一度通すのが、一番やり直しが少ない方法です。用途別に3つ用意しました。
① 経理・人事への事前相談(社内メール)
件名:12月の忘年会景品について事前のご確認
経理部 ◯◯さん
お疲れさまです。総務の△△です。
12月◯日の全社忘年会で、ビンゴの景品を次の内容で検討しています。
・対象:全社員(◯名、うち役員◯名)
・景品:1等 家電(約◯円)×1、2等 食品ギフト(約◯円)×3、参加賞 菓子(約◯円)×全員
・現金・商品券は含めない予定です
・欠席者への代替の支給は予定していません
税務上の扱いと仕訳について、確認が必要な点があれば◯日までに教えていただけますか。必要であれば顧問税理士への確認もお願いいたします。
② 顧問税理士への確認(要点だけ)
◯◯先生
いつもお世話になっております。株式会社◯◯の△△です。
社内行事の景品の扱いについてご確認をお願いします。
1. 行事:全社員対象の忘年会(参加予定◯名/全◯名)
2. 景品:別紙の一覧(品名・単価・数量)
3. 確認したい点:景品が給与等に当たるか、当たる場合の源泉徴収の要否、会社側の勘定科目
4. あわせて、業績表彰の賞品(◯円相当)を同じ場で渡す予定です。
ご多忙のところ恐れ入りますが、◯日までにご教示いただけますと幸いです。
③ 社内告知に入れておく一文
当日ご欠席の方への景品の代替や、現金での支給はありません。あらかじめご了承ください。
注意
③は、通達36-30の除外ケース(不参加者に参加に代えて金銭を支給する場合)に当たる運用を避けるための一文です。業務で参加できない人への配慮をする場合も、金銭で渡す前に経理に相談してください。
当日に作る:当選者・配布記録表
判断は専門家に任せるとして、判断に必要な材料は現場でしか残せません。 次の表を当日に埋めてください。
| 列 | 記入例 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 品名・数量 | ワイヤレスイヤホン×1 | 何を渡したか |
| 単価(購入時の資料) | ◯円(領収書番号◯) | 第36条第2項の「享受する時における価額」の材料 |
| 現金・商品券の別 | 物品/商品券/現金 | 課税の論点が変わる |
| 受け取った人の区分 | 社員/役員/派遣/社外 | 見る条文が変わる |
| 名目 | 抽選/表彰/参加賞/販促 | 給与の性質があるかの材料 |
| 行事の性質 | 全社行事(参加◯名/全◯名) | 通達36-30の対象かの材料 |
| 氏名・所属 | ◯◯(営業部) | 源泉徴収が要る場合に必要 |
よくある失敗
| 失敗 | 何が問題か | 代わりに |
|---|---|---|
| 欠席者にQUOカードや現金を配る | 通達36-30の除外ケース。不参加者への金銭は給与等 | 代替支給をしないと告知する/配るなら事前に経理へ |
| 景品をすべて商品券にする | 記念品では現金・商品券は全額が給与(No.2591)。景品でも論点が重くなる | 物品にする、または事前に税理士へ |
| MVPの賞金をビンゴと同じ扱いにする | 業績連動は第28条の「賞与…の性質を有する給与」の論点 | 表彰と抽選を分けて記録する |
| 「1人1万円までは非課税」と決めつける | その金額はビンゴ景品について国税庁が示したものではない(10,000円以下は創業記念品の基準) | 品名と単価を添えて確認する |
| 役員だけの慰労会で景品を出す | 通達36-30の除外ケース | 対象を広げるか、扱いを事前に確認 |
| あとから当選者を思い出して一覧を作る | 単価・区分の精度が落ちる | 当日に記録表を埋める |
この記事の要点
- 社会通念上一般的なレクリエーション行事の費用は、通達36-30で「課税しなくて差し支えない」。
- 除外は2つ:不参加者に参加に代えて金銭を渡す場合、役員だけを対象にする場合。
- 不参加者に渡す金銭は、業務都合で来られなかった人の分も給与等として課税(36-30の注)。
- 現金・商品券は記念品なら全額が給与(No.2591)。景品でも論点が重くなる。
- ビンゴ景品の金額の目安は、確認した国税庁の公表文に書かれていない。 10,000円以下は創業記念品の基準。
- 物でも収入(第36条第1項)。価額は渡した時点のもの(同第2項)。
- 品名・単価・受け取った人の区分・名目を当日に記録し、決める前に経理・税理士に通す。
FAQ
よくある質問
所得税法第36条第1項により、物でも収入になるのが原則です。そのうえで所得税基本通達36-30は、レクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる行事(会食、旅行、演芸会、運動会等)の費用を会社が負担して参加者が受ける経済的利益について、不参加者に参加に代えて金銭を支給する場合と役員だけを対象とする場合を除き、課税しなくて差し支えないとしています。景品がこの「行事の費用」に含まれるかは公表文に明記されていないため、品名と単価を添えて税理士に確認してください。
本記事で確認した国税庁の公表文(通達36-30、タックスアンサーNo.2591・No.2603)には、ビンゴなどの景品について金額の目安は書かれていません。10,000円以下という基準があるのは創業記念品(処分見込価額による評価額、No.2591)で、景品の基準ではありません。金額で判断する前に、所轄の税務署または税理士に確認してください。
永年勤続や創業記念の記念品については、現金・商品券などを支給する場合は全額が給与として課税されると国税庁が説明しています(No.2591)。ビンゴ景品について同じ記載は確認できていませんが、物品より論点が重くなると考えて、事前に経理・税理士に相談してください。
通達36-30は、行事に参加しなかった人に参加に代えて金銭を支給する場合を、課税しない扱いから除いています。また(注)で、不参加者(業務の必要で参加できなかった人を含む)に支給する金銭は給与等として課税するとしています。社員旅行についても、自己都合の不参加者に金銭を支給すると、参加者・不参加者全員にその額の給与があったものとされます(No.2603)。代替を渡す場合は事前に経理に相談してください。
通達36-30はレクリエーションのための行事の費用の扱いで、業績に連動した表彰の賞品についての記載ではありません。所得税法第28条第1項の「賞与並びにこれらの性質を有する給与」に当たるかが論点になります。抽選の景品とは分けて記録し、税理士に確認してください。
国税庁タックスアンサーNo.1490は、一時所得の例として懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除く)や、法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く)を挙げています。一時所得は特別控除額が最高50万円で、所得金額の2分の1を他の所得と合算します。社内イベントの景品が「業務に関して受けるもの」に当たるかは公表文に書かれていないため、どちらに当たるかは税理士に確認してください。
本記事は勘定科目の当てはめを示しません。国税庁タックスアンサーNo.5261は、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用は交際費等から除かれ、福利厚生費などとされると説明しています。ただし取引先が含まれる場合や、給与として扱う場合は変わります。品名・数量・金額・受け取った人の区分・名目を記録し、税理士に確認してください。
所得税法第204条第1項第8号は「広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの」を源泉徴収の対象としています。政令の定義と控除額は本記事の取得範囲外なので、当てはめと数値は示しません。取引先への贈答は交際費等の定義(租税特別措置法第61条の4第6項)の論点にもなり、景品表示法の上限も別にかかります。
通達36-30の対象は「社会通念上一般的に行われていると認められる」行事の費用です。会社負担の二次会がこれに当たるかは公表文に書かれていません。一次会と費用・参加者を分けて記録し、税理士に確認してください。