敬語
「お心遣い」と「お気遣い」の違い
使い分け早見表とそのまま使える例文
結論から言うと、品物・お金・差し入れなど形のあるものをもらったら「お心遣い」、体調や忙しさ、失敗などを気にかけてもらったら「お気遣い」です。どちらも相手が自分のために心を配ってくれたことを敬う言葉で、上司・取引先・お客様へのお礼に使えます。意味は大きく重なるため、取り違えても大きな失礼にはなりません。そのまま使える一文は、品物なら「結構なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。」、配慮の言葉なら「お気遣いいただき、ありがとうございます。」。このページでは、早見表、迷ったときの判断手順、言い換え、場面別のお礼メール・一言例文、謝罪での使い方、「お気遣いなく」の返し方、送る前のチェックまでを並べました。
結論
「心遣い」は相手のためにあれこれと心を配ること、「気遣い」は相手の様子や状況を気にかけることを表す言葉で、相手の行為なので「お」を付けて敬います。「心遣い」は、配った心が品物や金銭という形になったものまで含めて言いやすく、「結構なお心遣い」のように品物そのものを遠回しに指す使い方もあります。「気遣い」は、声かけや取り計らいなど、気にかけてくれたこと自体へのお礼に寄ります。
早見表:どちらを使うか即答
| もらったもの・してもらったこと | 使う言葉 | そのまま使える一文 |
|---|---|---|
| 手土産・お中元・お歳暮 | お心遣い | 結構なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。 |
| お祝い金・お見舞い金・餞別 | お心遣い | このたびは過分なお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。 |
| 上司からの差し入れ・ごちそう | お心遣い | 差し入れのお心遣い、ありがとうございます。 |
| 体調を崩したときの声かけ | お気遣い | 温かいお気遣いの言葉をいただき、ありがとうございます。 |
| 忙しさを察して急ぎを外してくれた | お気遣い | お忙しい中でのお気遣い、恐れ入ります。 |
| 失敗のあとの励まし | お気遣い | こちらの不手際にもかかわらずお気遣いいただき、恐縮しております。 |
| 日程・条件を調整してくれた(仕事上の取り計らい) | ご配慮 | 日程のご配慮をいただき、ありがとうございます。 |
| 相手が手土産を持ってこようとしている | お気遣いなく | どうぞお気遣いなくお越しください。 |
Point
覚え方:「形があれば心遣い、気持ちや声かけなら気遣い」。品物と励ましの両方をもらったときは、「お心遣い」一つにまとめるか、「お品物と温かいお言葉をいただき」のように中身を並べて書きます。
迷ったときの判断手順
- 01
何にお礼を言うのかを書き出す
品物・お金なのか、声かけ・取り計らいなのかを一語で言えるようにします。
- 02
形のあるものなら「お心遣い」
手土産、差し入れ、お祝い・お見舞いの品や金銭は「お心遣い」。品名を出したくないときは「結構なお心遣い」とします。
- 03
気にかけてもらったことなら「お気遣い」
体調、忙しさ、失敗、移動の負担などを案じてもらったときは「お気遣い」。
- 04
仕事上の調整なら「ご配慮」も候補にする
日程・納期・条件など業務の取り計らいには「ご配慮」が合います(詳しくは「ご配慮」の使い方)。
- 05
最後に中身を一言添える
「◯◯をいただき」「体調を気にかけていただき」のように、何に対するお礼かを入れれば、言葉の選び方で誤解されにくくなります。
違いを項目ごとに比べる
| 比べる点 | お心遣い | お気遣い |
|---|---|---|
| 重きのある意味 | 相手のために心を配って何かをしてくれること | 相手の体調・状況を気にかけてくれること |
| よく合う場面 | 贈り物・差し入れ・お祝い・心付けへのお礼 | 体調・忙しさ・失敗などへの気配りへのお礼 |
| 品物を指す使い方 | 「結構なお心遣いを」で品物を遠回しに指せる | 品物を指す使い方はあまりしない |
| 相手を止める言い方 | 「お心遣いなく」はあまり使われない | 「どうぞお気遣いなく」がよく使われる |
| よく付く言葉 | 温かい・細やかな・結構な・過分な | 細やかな・いつもの・温かい |
| 話し言葉での使いやすさ | やや改まった響き。礼状・メール向き | 口頭でも使いやすい |
注意
「お気持ち」は、相手の思いそのもの(「お気持ちだけいただきます」)を指す言葉で、行為へのお礼である「お心遣い」「お気遣い」とは使いどころが違います。品物を辞退するときに「お気持ちだけありがたく頂戴します」と使います。
使える場面・使わないほうがよい場面
| 場面 | 合う言葉 | ひとこと |
|---|---|---|
| 取引先から手土産・お中元をいただいた | お心遣い | 「結構なお心遣いをいただき」 |
| 上司から差し入れをもらった | お心遣い | 社内なら「差し入れをありがとうございます」でも十分 |
| お祝い・お見舞いの品や金銭をいただいた | お心遣い | 品名や用途を添えると気持ちが伝わる |
| 体調を崩したときに声をかけてもらった | お気遣い | 「温かいお気遣いの言葉を」 |
| 忙しい時期に締め切りを延ばしてもらった | ご配慮/お気遣い | 仕事上の取り計らいなら「ご配慮」 |
| 相手が手土産を持ってこようとしている | お気遣いなく | 「どうぞお気遣いなくお越しください」 |
| 同僚・後輩に気を回してもらった | どちらも重い | 「気にかけてくれてありがとう」で十分 |
| 自分の行為を説明する | 使わない | 「お」付きは相手の行為に使う |
言い換え一覧(改まり度と使いどころ)
| 言い換え | 改まり度 | 向く場面 | 例文 |
|---|---|---|---|
| ご配慮 | 改まった | 日程・条件など業務上の取り計らい | 納期についてご配慮いただき、ありがとうございます。 |
| ご厚意 | 改まった | 相手の好意による申し出・提供 | ご厚意に甘え、資料を拝借いたします。 |
| ご厚情 | とても改まった | 礼状・挨拶状で長年の厚い情けに | 在任中に賜りましたご厚情に、深く感謝申し上げます。 |
| ご高配 | とても改まった | 取引先への文書の書き出し | 平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。 |
| お心配り | 改まった | 細かな点まで行き届いた配慮 | 細部にわたるお心配りに感謝いたします。 |
| お心尽くし | 改まった | 手間をかけたもてなし・品 | お心尽くしのおもてなしをいただき、ありがとうございました。 |
| お骨折り | 改まった | 相手が手間を取ってくれたこと | ご紹介にあたりお骨折りいただき、恐縮です。 |
| お力添え | 改まった | 支援・協力へのお礼 | 皆様のお力添えのおかげで、無事に終えることができました。 |
| お心にかけていただき | 丁寧 | 気にかけてもらったことへのやわらかいお礼 | いつもお心にかけていただき、ありがとうございます。 |
| 気にかけていただき | やわらかい丁寧 | 上司・先輩(口頭にも) | 気にかけていただき、ありがとうございます。 |
| 気遣ってくれてありがとう | くだけた | 同僚・後輩 | 気遣ってくれてありがとう。助かったよ。 |
「ご高配」は取引先への文書の書き出しに寄った言葉です。「ご愛顧」との違いは「ご高配」と「ご愛顧」に、お礼メール全体の組み立てはお礼メールの書き方にまとめています。
そのまま使える一言例文(場面別)
「お心遣い」の一言
- 結構なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。(手土産)
- いつも変わらぬお心遣いをいただき、ありがたく存じます。(お中元・お歳暮)
- 過分なお心遣いを賜り、恐縮しております。(お祝い金・餞別)
- お見舞いのお心遣い、ありがたく頂戴いたしました。(お見舞い)
- 差し入れのお心遣い、ありがとうございます。皆でいただきます。(社内の差し入れ)
- 細やかなお心遣いのおかげで、当日は滞りなく進めることができました。(行事の準備)
- お心遣いに甘えて、ありがたく頂戴いたします。(受け取るとき)
「お気遣い」の一言
- お気遣いいただき、ありがとうございます。(基本形)
- 温かいお気遣いの言葉をいただき、ありがとうございました。(体調)
- お忙しい中でのお気遣い、恐れ入ります。(忙しさを察してもらった)
- 細やかなお気遣いをいただき、恐縮しております。(失敗・トラブル後)
- お気遣いのおかげで、落ち着いて準備を進められました。(励まし)
- 移動についてまでお気遣いいただき、助かりました。(出張・来訪)
- どうぞお気遣いなくお越しください。(手土産を断る)
- その件はどうぞお気遣いなさいませんよう、お願いいたします。(負担をかけたくない)
口頭(電話・対面)で言うとき
- わざわざありがとうございます。お気遣いいただいて恐縮です。
- こんなにお心遣いいただいて、ありがとうございます。皆でいただきます。
- ご心配をおかけしました。お気遣い、ありがとうございます。
場面別のお礼メール例文
取引先から手土産をいただいた
件名:本日のご来社のお礼(株式会社△△ □□)
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日はお忙しいところお越しいただき、ありがとうございました。
また、結構なお心遣いをいただき、誠にありがとうございます。部署の皆でおいしくいただきました。
お打ち合わせでいただいたご要望は、◯月◯日(◯)までに整理してお送りいたします。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
お中元・お歳暮が届いた
件名:お心遣いのお礼
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日、◯◯を確かに拝受いたしました。
いつも変わらぬお心遣いをいただき、ありがたく存じます。
本来であれば書面にてご挨拶すべきところ、略儀ながらメールにて失礼いたします。
今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
異動・退職で餞別をいただいた
件名:お心遣いのお礼
◯◯様
お世話になっております。□□です。
このたびは、私の異動に際し、過分なお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。
いただいたお品は、新しい職場で大切に使わせていただきます。
これまでのご指導に恥じないよう努めてまいりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
体調を気にかけてもらった
件名:お気遣いのお礼と業務再開のご連絡
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日は体調を崩しご迷惑をおかけしたうえ、温かいお気遣いの言葉をいただき、ありがとうございました。
おかげさまで回復し、本日から通常どおり業務に戻っております。
お待たせしていた◯◯の件は、◯月◯日(◯)までにご連絡いたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
上司から差し入れをもらった(社内)
件名:差し入れのお礼
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
昨日は遅くまでの作業中に差し入れをいただき、ありがとうございました。
部長のお心遣いのおかげで、チーム全員最後まで集中して取り組むことができました。
◯◯の資料は本日中に提出いたします。
失敗のあとに励ましてもらった(お詫びを兼ねる)
件名:◯◯の件のお詫びとお礼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日の◯◯の件では、多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
それにもかかわらず細やかなお気遣いをいただき、恐縮しております。
ご指摘いただいた点は社内で共有し、確認の手順を見直しました。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
お詫びの文中では、先に謝ってから「それにもかかわらず」とお気遣いへのお礼を続けると、謝罪が軽く見えません。お礼から書き始めると、反省より感謝が前に出てしまいます。
相手に手土産は不要と伝える
件名:◯月◯日のご来社について
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯月◯日(◯)◯時のご来社、お待ちしております。
当日は打ち合わせのみですので、どうぞお気遣いなくお越しください。
受付で私の名前をお伝えいただければ、ご案内いたします。
「お気遣いなく」と言われたとき・お礼を言われたときの返事
相手から「どうぞお気遣いなく」と言われたら、無理に押し切らず「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」と受けるのが自然です(「お言葉に甘えて」の使い方)。品物を用意してしまった場合は「ほんの気持ちですので」と一言添えて渡します。
反対に、こちらの心遣いにお礼を言われたときは、「とんでもないことでございます」「お役に立てたならうれしいです」のように軽く受けます。
◯◯様
ご丁寧にありがとうございます。
ほんの気持ちですので、どうぞお気になさらないでください。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 私のお心遣いです | 「お」付きは相手の行為を敬う形で、自分の行為には使わない | ささやかな気持ちです |
| お気遣いのほど、ありがとうございます | 「のほど」は主に「ご理解のほどお願いいたします」のようなお願いの文で使う形で、この組み合わせは不自然 | お気遣いいただき、ありがとうございます |
| お気遣いになられて | 「お〜になる」と「れる」を重ねた二重敬語 | お気遣いくださって/お気遣いいただいて |
| ご配慮される | 「ご……される」は尊敬語として本来適切な形ではないとされる | ご配慮くださる/ご配慮いただく |
| お心遣いいただき、お気遣いに感謝します | 同じ意味を一文で重ねていてくどい | どちらか一つにする |
| お気遣いなく!(目上に一言だけ) | 言い切りだと突き放して聞こえることがある | どうぞお気遣いなくお越しください(など、後ろに続けて書く) |
| 何に対するお礼か書かない | 定型文に見えやすい | 品名や出来事を一言入れる |
注意
二重敬語は、文化審議会答申「敬語の指針」で「一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったもの」とされ、「お読みになられる」が例に挙がっています。「ご……される」が本来の尊敬語の形でないとする記述も同じ答申にあります。
送る前のチェックリスト
- 品物・お金へのお礼は「お心遣い」、声かけ・配慮へのお礼は「お気遣い」になっている
- 何に対するお礼か(品名・出来事)を一言入れた
- 「お心遣い」と「お気遣い」を同じ文で重ねていない
- 自分の行為に「お心遣い」「お気遣い」を使っていない
- 「お気遣いになられる」「ご配慮される」の形になっていない
- お詫びを兼ねるときは、謝罪を先に書いた
- 同僚・後輩向けに、改まりすぎた言い方を使っていない
この記事の要点
- どちらも相手が自分のために心を配ってくれたことを敬う言葉で、目上に使える。
- 品物・お金・差し入れへのお礼は「お心遣い」、体調や状況を気にかけてもらったときは「お気遣い」。
- 仕事上の日程・条件の取り計らいには「ご配慮」も合う。
- 相手に負担をかけたくないときは「どうぞお気遣いなく」、言われたら「お言葉に甘えて」。
- お礼には何に対するものかを一言添え、お詫びを兼ねるなら謝罪を先に。
FAQ
よくある質問
意味が重なる言葉なので、どちらを使っても大きな失礼にはなりません。品物や金銭をもらったときは「お心遣い」、体調や状況を気にかけてもらったときは「お気遣い」と書き分けると、より自然に読めます。
使えます。上司・取引先・お客様へのお礼として使える言い方です。より改まった場面では「細やかなお気遣いをいただき、誠にありがとうございます」とします。
「お心遣い」一つにまとめるか、「お品物と温かいお言葉をいただき」のように中身を並べて書きます。一文の中で「お心遣い」と「お気遣い」を重ねるとくどくなります。
間違いとまでは言えませんが、相手を止める言い方としては「どうぞお気遣いなく」のほうがよく使われます。
いただいた品物を、直接名前を出さずに敬って言う言い方です。「結構な」は「立派な・すばらしい」という意味合いで、手土産やお中元のお礼によく使われます。
「痛み入ります」は、相手の厚意に恐縮する気持ちを表す改まった言い方です。目上から思いがけない品や配慮を受けたときの礼状・メールに向きます。日常のやり取りでは「恐れ入ります」「ありがとうございます」のほうが自然です。
差し入れ程度なら「差し入れをありがとうございます」で十分です。お祝いや餞別など改まった贈り物をもらったときは、社内でも「お心遣い」を使って問題ありません。
「お」の付いた「お心遣い」は相手の行為を敬う言い方なので、自分の贈り物には使いません。「ささやかな気持ちですが」「心ばかりの品ですが」などと書きます。