個人情報
共催セミナーの参加者リスト共有
共同利用は5項目を事前に示す
共催セミナーで最も多い事故が、「共催なんだからリストは折半でしょう」で進めてしまうことです。個人情報保護法には共同利用という枠組みがありますが、使うには条件があります。条文は5つの事項をあらかじめ示していることを求めており、1つでも欠ければこの枠組みは使えません。そして企画が動き出してからでは足せません。
結論
第27条第1項は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。ただし第27条第5項は、一定の場合に提供先が「第三者に該当しないものとする」としており、第1号が委託、第2号が事業の承継、第3号が共同利用です。第3号には5つの事項をあらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているという条件が付いています。
根拠となる条文
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
注意
本記事は条文の構造を整理するものです。 自分の案件で委託・共同利用・通常の第三者提供のどれを選ぶべきかという判断は示しません。構成を決める段階で弁護士に相談してください。
3つの道がある
共催相手にリストを渡す方法は、条文上いくつかの道に分かれます。どれを選ぶかで、事前にやることが変わります。
| 方法 | 条文 | 事前にやること |
|---|---|---|
| 本人の同意を得て提供 | 第27条第1項 | あらかじめ本人の同意を得る |
| 委託 | 第27条第5項第1号 | 利用目的の達成に必要な範囲内であること |
| 共同利用 | 第27条第5項第3号 | 5項目をあらかじめ通知又は容易に知り得る状態に |
Point
第27条第5項は「第三者に該当しないものとする」という書き方です。つまり第三者提供のルールを外す枠組みであって、「何をしてもよい」という意味ではありません。それぞれに条件が付いています。
委託(第1号)はリストの分け合いではない
個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合(第27条第5項第1号)
注意
条文は「利用目的の達成に必要な範囲内において」「取扱いの全部又は一部を委託する」としています。相手が自社の目的のために使う構図は、この文言からは出てきません。「共催相手も営業に使いたい」という話であれば、委託の枠組みではない可能性が高くなります。
共同利用の5項目
特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的並びに当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。(第27条第5項第3号)
長い一文なので、分解します。
| # | 示すべき事項(条文の文言) | よくある欠け方 |
|---|---|---|
| ① | 共同して利用する旨 | 書いてある |
| ② | 共同して利用される個人データの項目 | 「参加者情報」とだけ書いて項目を列挙していない |
| ③ | 共同して利用する者の範囲 | 「共催各社」で済ませて会社名を書いていない |
| ④ | 利用する者の利用目的 | 自社の目的だけ書いて、相手の目的を書いていない |
| ⑤ | 管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所(法人はその代表者の氏名) | 丸ごと抜けている |
Point
⑤がいちばん抜けます。 条文は氏名又は名称、住所、法人なら代表者の氏名まで求めています。「当社が管理します」ではなく、会社名・住所・代表者名を書くという構造です。
「あらかじめ」が条件
条文は「あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき」としています。申込の時点で示されている必要があるということです。
注意
だから企画の後から足せません。 申込が始まってから「協賛が1社増えたのでリストも共有したい」となっても、③の「共同して利用する者の範囲」が変わります。共催・協賛の座組みは、申込ページを公開する前に確定させてください。
変更するとき
第27条第6項は、⑤の氏名・名称・住所・代表者の氏名に変更があったときは遅滞なく、④の利用目的または責任を有する者を変更しようとするときはあらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならないとしています。
共催の座組みを決める順番
実務でずれるのは、営業上の合意と、個人情報の設計の順番が逆になるときです。
- 01
共催相手が何に使いたいかを聞く
お礼のメールだけなのか、自社の営業に使うのか、次回の案内に使うのか。相手の利用目的は④で示す必要があります。 曖昧なまま進めると書けません。
- 02
どの項目を渡すかを決める
氏名だけか、会社名・部署・役職まで含むか、アンケートの回答も含むか。②で項目を列挙するので、ここが決まらないと文面になりません。
- 03
参加する会社を確定させる
③の「共同して利用する者の範囲」です。申込開始後に増やせない前提で座組みを固めてください。
- 04
管理責任者を決める
⑤です。どの会社が管理責任を持つのかを決め、会社名・住所・代表者名を書きます。「主催者が」で曖昧にしないこと。
- 05
申込ページに5項目を載せる
「あらかじめ」が条件です。申込が始まる前に載っている状態にしてください。
- 06
共催契約に書き込む
法令上の要件とは別に、事業者どうしの取り決めとして契約に落とします。渡した後の取扱い、再提供の可否、終了後の扱い。
- 共催相手の利用目的を具体的に聞いた
- 共有する個人データの項目を列挙した
- 参加する会社を確定させた(申込開始後に増やさない)
- 管理責任者の会社名・住所・代表者名を決めた
- 5項目を申込ページに載せた(申込開始前に)
- 共催契約に、渡した後の取扱いを書いた
- 共同利用が適切な枠組みかを弁護士に確認した
Point
「とりあえず共催で進めて、個人情報は後で」が最も危険です。 5項目のうち②③④⑤は、座組みが固まらないと書けません。そして申込ページの公開がデッドラインです。逆算してください。
注意
文面全体の構成は個人情報の取扱いの書き方、全体像は来場者名簿と個人情報保護法、共催相手との契約は業務委託契約書を参照してください。
この記事の要点
- 第27条第5項は「第三者に該当しないものとする」枠組み。第1号が委託、第2号が事業承継、第3号が共同利用。
- 共同利用の条件は5項目をあらかじめ通知又は容易に知り得る状態に置くこと。
- ⑤の管理責任者は氏名又は名称・住所・法人なら代表者の氏名まで求められている。いちばん抜けやすい。
- ③「共同して利用する者の範囲」があるため、申込開始後に共催・協賛を増やせない。座組みを先に固める。
- 委託(第1号)は「利用目的の達成に必要な範囲内」での「取扱いの委託」。相手が自社の目的で使う構図は文言から出てこない。
- 第27条第6項により、管理責任者の変更は遅滞なく、利用目的・責任者の変更はあらかじめ、通知又は容易に知り得る状態に。
FAQ
よくある質問
共催相手と参加者リストを共有する予定があるなら、共有の枠組みを先に決め、その枠組みが求める記載を申込の時点で示します。共同利用にするなら、共同して利用する旨、共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的、管理について責任を有する者の氏名または名称および住所(法人はその代表者の氏名)の5項目です(第27条第5項第3号)。
第27条第1項は原則としてあらかじめ本人の同意なく個人データを第三者に提供してはならないとしていますが、第27条第5項第3号の共同利用の条件を満たせば、提供先は第三者に該当しないものとされます。条件は、共同して利用する旨、共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的、管理について責任を有する者の氏名または名称および住所(法人は代表者の氏名)の5項目を、あらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いていることです。
なりません。それは5項目のうち①にあたる部分だけです。②共有する個人データの項目の列挙、③共同して利用する者の範囲(どの会社か)、④利用する者の利用目的、⑤管理について責任を有する者の氏名または名称および住所と代表者の氏名が必要です。とくに⑤は抜けやすい項目です。
共同利用の枠組みでは難しくなります。第27条第5項第3号は③「共同して利用する者の範囲」をあらかじめ示していることを条件としているためです。共催・協賛の座組みは、申込ページを公開する前に確定させてください。
第27条第5項第1号は「利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合」としています。相手が自社の目的のために使う構図は、この文言からは出てきません。共催相手も営業に使いたいという話であれば、委託の枠組みではない可能性が高くなります。どの枠組みを選ぶべきかは弁護士に相談してください。
第27条第6項は、管理について責任を有する者の氏名、名称もしくは住所または法人の代表者の氏名に変更があったときは遅滞なく、利用する者の利用目的または当該責任を有する者を変更しようとするときはあらかじめ、その旨を本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置かなければならないと定めています。