金融機関
金融機関の顧客向けセミナー・イベント企画
コンプライアンス確認の進め方
金融機関の顧客向けセミナーや説明会は、一般のイベントと同じ段取りに加えて、社内のコンプライアンス部門の確認が必ず入ります。何が許され、何が許されないかを判断するのはコンプライアンス部門や法務の役割です。この記事では、イベント担当が確認に必要な材料をいつ、何を揃えればよいかに絞って整理します。法令の当てはめは断定しません。
結論
金融機関のイベントには、資産運用セミナー、新商品の説明会、保険の相談会、顧客向けの懇親会などがあります。金融商品の説明や勧誘には金融商品取引法などのルールがあり、セミナーでの説明もその対象になりうるため、①話す内容と資料 ②配る物と特典 ③集める情報とその使い道 ④当日の記録の4点を、企画の段階からコンプライアンス部門と確認しながら進めます。
先に分けておくこと:イベント担当が決めること、確認に回すこと
| 領域 | イベント担当が決めること | コンプライアンス部門・法務に確認すること |
|---|---|---|
| 話す内容・資料 | テーマ、登壇者、進行、資料の締切 | 説明の内容と表現、資料の記載が社内規程と法令に沿っているか |
| 配る物・特典 | 粗品や来場特典を出すかどうか、予算 | 景品にあたるか、限度額の当てはめ、案内での表示の仕方 |
| 参加者情報 | 申込フォームの項目案、受付の方法 | 利用目的の書き方、営業部門やグループ会社と共有してよいか |
| 当日の運営と記録 | 会場、人員、受付、撮影の有無 | 何を記録し、どこに、どの期間残すか(社内規程に従う) |
Point
確認が遅れる原因の多くは、材料が揃っていないことです。「何を話すか」「何を配るか」「集めた情報を何に使うか」の3つを、企画書の段階で文書にしてコンプライアンス部門に渡してください。資料ができてから相談すると、作り直しが発生しやすくなります。
確認の流れ:企画から当日まで
- 01
企画の段階で相談する
開催の目的、対象の顧客、扱う商品やテーマ、粗品や特典の有無、集める情報を一枚にまとめ、確認が必要な項目を洗い出してもらいます。
- 02
資料の下書きを出す
スライドと配布資料の下書きを、確認に必要な期間を見込んで早めに提出します。数値や過去の実績を載せる箇所は、出典を添えておきます。
- 03
告知と申込フォームを確認する
案内文、申込フォームの項目、利用目的の書き方を確認に回します。特典を書く場合は、その表示の仕方もあわせて確認します。
- 04
講師と当日の進行をそろえる
複数の講師が話す場合は、確認済みの資料と話す内容をそろえ、質疑で個別の商品の勧誘に踏み込む場合の扱いを決めておきます。
- 05
当日の記録を残す
参加者、配布資料、説明の要点、質疑の要点など、社内規程で求められる記録を残します。
- 06
終了後に報告する
実施の報告と、苦情や問い合わせがあった場合の内容をコンプライアンス部門に共有します。
注意
確認にかかる期間は、社内の体制と内容で大きく変わります。最初の相談のときに「資料はいつまでに出せばよいか」を聞き、その日を準備の工程表に書き込んでください。工程表の作り方はイベントのスケジュールでも扱っています。
資料と話す内容で気をつけること
表現の可否はコンプライアンス部門が判断しますが、イベント担当や講師が下書きの段階で気をつけておくと、確認の往復が減ります。
- 成果や利益を約束するように読める表現(「必ず」「確実に」など)を使っていないか
- 過去の実績を示す箇所に、将来の成果を約束するものではないことを添えているか
- 数値やグラフに出典と時点を書いているか
- リスクや費用について、利点と同じくらい分かる形で書いているか
- 参加者の知識や経験に合った説明の深さになっているか(初めての人向けか、経験者向けか)
- 質疑で個別の相談に入る場合に、別の場を設けるなどの扱いを決めているか
Point
講師が複数いるときは、話す内容のばらつきに注意してください。確認済みのスライドを全員が使い、口頭で付け足してよい範囲をあらかじめ決めておくと安心です。
粗品・来場特典・飲食の扱い
セミナーの来場者に粗品を配ったり、申込の特典を付けたりする場合は、景品表示法の景品規制との関係を確認します。景品表示法は、顧客を誘引する手段として、自己の商品・サービスの取引に付随して提供する物品・金銭などの経済上の利益を「景品類」とし、提供できる額などを制限しています。
- 景品類にあたるかどうかは、取引に付随しているかなどの要件で決まります。来場や申込だけで配る物か、口座開設や契約を条件にする物かで判断が変わりうるため、企画の段階で確認に回します
- 限度額は、来場者全員に配る総付景品と、抽選で配る懸賞とで考え方が違います。消費者庁の「景品規制の概要」に示されていますが、取引価額の当てはめは個別に確認が必要です
- 飲食を伴う懇親会は、商品の説明や相談の場と時間を分けるなど、社内規程に沿った区切り方を決めておきます
景品規制の基本はイベントの景品と景品表示法で整理しています。
参加者情報の扱い
申込や受付、アンケートで集める情報は、何に使うかを先に決め、申込の時点で示しておきます。セミナー後に営業の連絡に使うなら、そのことも利用目的に含めておく必要があります。
- 申込フォームの項目は、当日の運営とその後の連絡に必要なものに絞ったか
- 利用目的に、案内やフォローの連絡に使うことを書いたか
- 営業部門やグループ会社と共有する予定があるか。ある場合、その扱いをコンプライアンス部門と確認したか
- アンケートで資産や投資経験などを聞く場合、聞く理由と扱いを決めたか
- 撮影や録画をするか。する場合、事前に案内しているか
- 受付の名簿や回収した用紙の保管場所と廃棄の時期を決めたか
利用目的の書き方は「個人情報の取扱いについて」の書き方、申込項目の絞り方はイベント申込フォームの設計、共催先やグループ会社と参加者リストを共有する場合の整理は共催セミナーの参加者リスト共有を参照してください。
当日の運営と記録
- 受付:名簿は当日のスタッフだけが扱い、顧客の目に触れない置き方にする
- 配布資料:確認済みの版だけを配る。版の取り違えがないよう、表紙に版の情報を入れておく
- 説明と質疑の記録:何を残すかは社内規程に従う。録音や録画をする場合は事前に案内する
- 個別相談:セミナーの場とは分け、相談の記録の扱いを決めておく
- 終了後:苦情や問い合わせは記録し、コンプライアンス部門に共有する
注意
セミナー後のお礼やフォローの連絡は、利用目的の範囲で行います。一斉メールの誤送信を防ぐ手順はイベントの一斉メールとBCCにまとめています。
この記事の要点
- 法令の当てはめはコンプライアンス部門・法務が判断する。イベント担当は確認に必要な材料を早く揃える。
- 企画書の段階で「何を話すか」「何を配るか」「集めた情報を何に使うか」を文書にして渡す。
- 資料は、成果を約束するように読める表現を避け、過去の実績には将来を約束しない旨と出典を添える。
- 粗品や特典は景品表示法の景品規制との関係を確認する。来場だけか、契約を条件にするかで判断が変わりうる。
- 参加者情報は、営業の連絡に使うなら利用目的に含めて申込時に示す。共有先がある場合は事前に確認する。
FAQ
よくある質問
開催の目的、対象の顧客、扱う商品やテーマ、粗品や特典の有無、集める情報とその使い道を一枚にまとめ、企画の段階でコンプライアンス部門に相談することから始めます。そのとき、資料をいつまでに出せばよいかを聞いて、準備の工程表に書き込んでおくと、確認待ちで止まりにくくなります。
出す場合は、景品表示法の景品規制との関係を確認します。景品類にあたるかどうかは取引に付随しているかなどの要件で決まり、来場や申込だけで配る物か、口座開設や契約を条件にする物かで判断が変わりうるため、企画の段階でコンプライアンス部門に確認してください。限度額の考え方は消費者庁の「景品規制の概要」に示されています。
載せるかどうか、どう表示するかはコンプライアンス部門の確認事項です。下書きの段階では、出典と時点を書き、将来の成果を約束するものではないことを添え、リスクや費用も同じくらい分かる形で示しておくと、確認の往復が減ります。
申込の時点で示した利用目的の範囲によります。セミナー後に営業から連絡するなら、そのことを利用目的に含めて申込時に示しておく必要があります。グループ会社や共催先と共有する場合は、別の整理が必要になることがあるため、事前にコンプライアンス部門と確認してください。
強制は難しいため、案内や当日の冒頭で「撮影や投稿はお控えください」とお願いする形が一般的です。主催者側が撮影する場合は、撮ることと使い道を事前に案内してください。