PRODUCER AGENT 無料で始める

法令

イベントのバリアフリー対策
合理的配慮の義務と、段階別の準備・文例

結論:イベント主催者は、障害のある人から申し出があれば、負担が過重でない範囲で合理的配慮をしなければなりません(障害者差別解消法第8条第2項。2024年4月1日から義務)。条文の起点は申し出なので、実務で先に要るのは①会場選定で対応できる幅を確保する ②告知ページで会場の状態を先に出す ③申込フォームに申し出の欄と期限を設けるの3つです。この記事では、条文の要点に加えて、段階別チェックリスト、告知ページに載せるアクセシビリティ情報のテンプレート、申込フォームと返信メール・当日アナウンスの文例を、そのまま使える形でまとめます。

更新: 2026-10-16読了:約14分PRODUCER AGENT 編集部

結論

障害者差別解消法第8条第1項は、事業者が障害を理由として不当な差別的取扱いをすることで障害者の権利利益を侵害してはならないと定めています。第8条第2項は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています。

まず結論:主催者が準備することを段階別に

細部に入る前に、全体像です。表の上の段階ほど、後からやり直しがききません。

段階やることここで決まること
会場選定・下見経路・段差・エレベーター・多目的トイレ・席・休憩場所を確認する対応できる範囲の上限。決めた後では変えられない制約が多い
告知・広報会場の状態(アクセシビリティ情報)と相談窓口を公開する来場者が参加できるかを自分で判断できるか
申込配慮を申し出る欄・期限・フォーム以外の連絡手段を設ける申し出ができるか(第8条第2項の起点)
申し出への返答できること・できないこと・代わりの方法を返す配慮の中身。検討せずに断らない
設営・当日申し出を進行表に書き込み、担当を名指しで決める約束したことが現場で実行されるか
終了後できたこと・できなかったことを記録する次の会場選定と告知文の質

法律上の位置づけ — 2024年4月から「しなければならない」

内閣府のリーフレットは、令和3年の改正で事業者による合理的配慮の提供が義務化されたこと、その開始が令和6年(2024年)4月1日であることを示しています(内閣府「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」)。条文はe-Gov法令検索の障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。

項内容(条文の文言)性質
第8条第1項障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないしてはならない(禁止・申し出の要件なし)
第8条第2項…必要かつ合理的な配慮をしなければならないしなければならない(要件あり)

事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

第8条第2項を3つの要素に分けて読む

要素条文の文言主催者の実務に置き換えると
① 申し出意思の表明があった場合申し出られる手段(欄・窓口・期限)を先に用意する
② 負担負担が過重でないとき「過重かどうか」は検討した結果として言うこと。検討前に断らない
③ 個別性性別、年齢及び障害の状態に応じて障害の種類ごとのマニュアルを当てはめず、本人に何が困るかを聞く

注意

何が「過重な負担」に当たるかは、条文に書かれていません。 判断の要素も条文には列挙されていないため、本記事では基準を示しません。個別の判断に迷う場面は、所管の行政窓口や専門家に相談してください。

行政機関等と共催する場合

第7条が行政機関等について同趣旨を定めており、第2項の文言は第8条第2項とほぼ同じです。行政機関等と共催する場合は、相手側には第7条が及ぶことを前提に、誰が申し出を受け、誰が対応するかの役割分担を打ち合わせてください。

「社会的障壁」は段差だけではない — 4つの分類で見直す

社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。(第2条第2号)

条文が挙げる事物、制度、慣行、観念に沿って、イベントで起きやすいものを整理します。

分類イベントで起きやすい例見直し方の例
事物入口の段差、床を横切るケーブル、高い位置の展示、小さい文字の案内表示スロープ・ケーブルカバー、展示の高さを下げる、表示を大きく・近くに
制度申込がウェブフォームのみ、連絡手段が電話のみ、先着順・自由席のみ申込と連絡の手段を複数にする、席の事前確保の枠を設ける
慣行資料は当日配付のみ、案内は口頭だけ、再入場不可資料の事前送付、掲示と口頭の併用、休憩のための退出・再入場を認める
観念「来ないだろう」「見れば分かる」「前例がない」見ただけでは分からない状態の人も来る前提で、申し出の窓口を開けておく

障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。(第2条第1号)

注意

車椅子の利用者だけを想定した設計にしないでください。見えにくさ、聞こえにくさ、発達障害、精神障害など、見ただけでは分からない状態にある人も来場します。

困りごとの場面から逆算する準備表

障害の種類で分けるのではなく、来場者がどの場面で困るかで準備を考えると、抜けが減ります。右の列は申し出を受けたときに提示できる選択肢の例で、すべてを事前に用意する必要があるという意味ではありません。

困りごとの場面起きやすい所事前にできる準備申し出があったときの選択肢の例
移動する駅からの経路、入口、会場内の通路、トイレ段差・エレベーター・多目的トイレの位置を告知段差のない経路の案内、誘導スタッフ、通路側の席の確保
見る・読む案内表示、スライド、配付資料、申込フォーム表示の文字を大きく、資料のデータ提供の可否を決める資料の事前送付、前方席の確保、読み上げ
聞く場内アナウンス、講演、受付でのやり取り重要な案内を掲示・画面でも出す筆談の用意、字幕・文字表示、前方席
理解する・情報量当日の流れ、複雑なルール、急な変更当日の流れを事前に文章で公開簡単な言葉での案内、流れを書いた紙、問い合わせ先の明示
音・光・人混み大音量の演出、強い照明、入退場の混雑演出の内容を事前に告知、静かな休憩場所を確保入場時間をずらす、出入りしやすい席、休憩場所の案内
体調・休憩長時間の着席・立ち見、待機列休憩時間と休める場所を告知椅子の用意、列に並ばない入場方法、途中退出・再入場
同伴者介助者・同行者の入場、席、参加費介助者の扱いを決めて明記隣席の確保、介助者の扱いの個別確認

段階別チェックリスト

会場選定・下見

  • 最寄り駅から会場までの経路(段差、坂、エレベーター)を実際に歩いて確認した
  • 建物入口の段差とスロープ、自動扉かどうかを確認した
  • エレベーターの有無と、会場階まで行けるかを確認した
  • 多目的トイレの有無と位置、会場からの距離を確認した
  • 車椅子で入れる席を設けられる場所と通路の幅、そこからの見え方を確認した
  • 休憩できる静かな場所・救護室・授乳室として使える部屋があるか確認した
  • 照明と音量の調整範囲を確認した
  • 駐車場(障害者用区画の有無)と、会場までの距離を確認した
  • 避難経路と、エレベーターが使えないときの避難方法を施設側に確認した

告知・広報

  • 告知ページに会場のアクセシビリティ情報(下のテンプレート)を載せた
  • 配慮の相談窓口(メールと電話)と申し出の期限を書いた
  • 告知の画像に文字を入れる場合、同じ内容を本文のテキストでも書いた
  • 告知画像・チラシを白黒で印刷したり、スマートフォンで縮小表示したりしても読めるか試した
  • ウェブページ以外でも同じ情報を受け取れるようにした(メール本文、紙のチラシなど)
  • 申し出の期限から逆算して告知の公開日を決め、準備の時間を確保した

申込

  • 申込フォームに配慮を申し出る自由記述欄がある
  • フォーム以外の申込・連絡手段がある
  • 同伴者・介助者の扱いを明記した
  • 申し出への返答の担当と期限を決めた
  • 申し出の内容(障害に関する情報)の取得目的・共有範囲・保管と廃棄を決めた

設営

  • 通路に物を置かない。床のケーブルはカバーで覆うか、動線から外した
  • 展示物・受付台・パンフレット置きの高さが、座った位置からも届くか確認した
  • 案内表示を動線の分かれ目ごとに、大きく、目の高さに近い位置に貼った
  • 車椅子席・優先席を確保し、表示した
  • 休憩場所を設け、場所を案内できるようにした

当日運営

  • 申し出の一覧を進行表に書き込み、担当を名指しで決めた
  • 受付・誘導スタッフに申し出の内容と対応を事前に共有した
  • スタッフが一目で分かる服装・名札になっている
  • 筆談用の紙とペンを受付に置いた
  • 当日の想定外の申し出を誰が判断するか決めた
  • 移動に手助けが要ると申し出た来場者ごとに、非常時に付き添うスタッフを割り当てた

注意

下見全体の項目は会場の下見チェックリスト、会場選びの段階は会場の選び方、当日の体制はイベント運営チェックリストと合わせてください。

告知ページに載せるアクセシビリティ情報(テンプレート)

来場者が知りたいのは「バリアフリー対応しています」という一言ではなく、自分が参加できるかを判断するための具体的な状態です。できないことも書くのがポイントです。下の表は記入例で、◯は支障なく利用できる、△は条件つき・要相談、×はできない・注意が必要、の意味で使っています。

項目状態書き方の例
駅から会場まで◯◯◯駅◯番出口からエレベーターで地上へ。会場まで段差のない経路あり
建物入口△正面入口に段差あり。右手の通用口からスロープで入れます(スタッフが案内します)
会場までの移動◯エレベーターで◯階へ
多目的トイレ◯会場と同じ階、受付の向かい
車椅子席◯後方に◯席分を確保(申込時にお知らせください)
座席△全席自由。前方席の確保をご希望の方はご相談ください
休憩場所◯会場外の◯◯室を休憩用に開放
音・光の演出×オープニングで大きな音とストロボ照明を使います(◯時ごろ・約◯分)
資料△当日配付。データの事前送付をご希望の方はご相談ください
介助者◯介助の方の扱い:◯◯(参加費・席を明記)
駐車場×会場に駐車場はありません。近隣の◯◯をご利用ください

告知ページにそのまま貼れる文面

■会場のアクセシビリティ情報
・最寄り駅から:◯◯駅◯番出口のエレベーターから地上に出て、段差のない道で約◯分です。
・入口:正面入口には段差があります。右手の通用口からスロープでお入りいただけます。
・会場内:エレベーターで◯階へお越しください。多目的トイレは同じ階にあります。
・お席:車椅子席を◯席ご用意しています。前方席の確保もご相談いただけます。
・演出:開始直後に大きな音と強い光の演出があります(◯時ごろ)。
・休憩:会場外に休憩用の部屋をご用意しています。

■ご参加にあたってのご相談
お手伝いが必要なことや、ご不安な点がありましたら、◯月◯日までに申込フォームの相談欄、またはメール・お電話でお知らせください。期限を過ぎてからのご相談も承りますが、ご希望に沿えない場合があります。
メール:◯◯ 電話:◯◯(平日◯時〜◯時)
いただいた内容は、当日の準備のためだけに使い、担当者以外には共有しません。

申込フォームの文例

「配慮が必要な方はお申し出ください」の一文だけでは、何をどこまで書けばよいかが伝わりません。選択肢と自由記述を組み合わせます。

【ご参加にあたってのご相談(任意)】
当日、お手伝いが必要なことやご希望があればお知らせください。準備の都合上、◯月◯日までにお知らせいただけますと助かります。

□ 車椅子席を希望する
□ 段差のない経路の案内を希望する
□ 前方の席を希望する(見えにくさ・聞こえにくさ等)
□ 資料を事前にデータで受け取りたい
□ 筆談での対応を希望する
□ 休憩しやすい席・場所を希望する
□ 介助者・同行者と参加する(人数:◯名)
□ その他(下の欄にご記入ください)

ご希望の内容(自由記述):[        ]
ご連絡の方法:□メール □電話 □その他(  )

※ご記入いただいた内容は、当日の準備のためだけに使います。

注意

申し出の内容には障害に関する情報が含まれます。取得の目的、共有の範囲、保管と廃棄の扱いは来場者名簿と個人情報と合わせて設計してください。

申し出への返信メールの文例(3パターン)

返信では、こちらが何をするか、当日どう動けばよいか、当日の担当者を具体的に書きます。対応が難しい場合も、理由と代わりの方法を示し、相談を続けられる形で返します。

① そのまま対応できるとき

件名:【◯◯イベント】車椅子席のご用意について

◯◯様

◯◯イベント事務局の◯◯です。お申込みとご相談をいただき、ありがとうございます。
車椅子席を、会場後方の通路側にご用意いたします。

■当日のご案内
・入口:正面入口に段差があるため、右手の通用口からお入りください。
・受付:通用口を入ってすぐの受付で、お名前をお伝えください。担当の◯◯がお席までご案内します。
・多目的トイレ:会場と同じ階、受付の向かいにあります。

ほかにもご希望があれば、遠慮なくお知らせください。当日お会いできることを楽しみにしております。

◯◯イベント事務局 ◯◯
メール:◯◯ 電話:◯◯

② 希望どおりは難しく、代わりの方法を提案するとき

件名:【◯◯イベント】資料のご提供についてのご相談

◯◯様

◯◯イベント事務局の◯◯です。ご相談いただき、ありがとうございます。
講演資料の事前送付についてご希望をいただきましたが、登壇者の資料が前日まで確定しないため、事前にすべてをお送りすることが難しい状況です。

代わりに、次の方法をご用意できます。
・概要と目次は、◯月◯日までにデータでお送りします。
・当日の資料は、開始前に受付でデータをお渡しします。
・前方のお席を確保いたします。

この方法でご参加いただけそうか、ほかによい方法があるか、お聞かせいただけますでしょうか。ご都合に合わせて調整いたします。

◯◯イベント事務局 ◯◯
メール:◯◯ 電話:◯◯

③ 会場の制約でできないことがあるとき

件名:【◯◯イベント】会場の設備についてのご連絡

◯◯様

◯◯イベント事務局の◯◯です。ご相談をいただき、ありがとうございます。
会場の◯◯は建物の構造上、2階の展示エリアへのエレベーターがありません。施設側にも確認しましたが、当日までに設置することができません。ご不便をおかけし、申し訳ございません。

1階でもご覧いただけるよう、次の対応をいたします。
・2階の展示のうち◯点を、1階に移して展示します。
・2階の展示内容を、写真と説明の資料にまとめてお渡しします。

このほかにご希望があれば、お知らせください。可能な範囲で調整いたします。

◯◯イベント事務局 ◯◯
メール:◯◯ 電話:◯◯

Point

「前例がないため」「ほかの方との公平のため」だけを理由に断る返信は避けてください。 条文の構造上、「過重かどうか」は検討した結果として言うことです。何を検討し、何ができて、何ができないかを書きます。

当日の運営に落とす

  1. 01

    申し出を一覧にする

    誰が、何を必要としていて、こちらが何をすると答えたか。口頭のやり取りも含めて一覧にします。担当者が一人で抱えると、当日その人が動けなくなった時点で崩れます。

  2. 02

    対応を進行表に書き込む

    「〇時に△△の案内」「受付で□□を渡す」といった形で、香盤表やチェックリストの行として書き込みます。別紙にすると見られません(香盤表)。

  3. 03

    担当を名指しで決める

    「スタッフ全員で」は誰も担当していないのと同じです。

  4. 04

    スタッフに事前共有する

    当日の朝礼ではなく事前に共有します。受付での対応は受付の設計と合わせてください。

  5. 05

    当日の申し出の判断者を決める

    現場スタッフが即答できないとき、誰につなぐかを決めておきます。

  6. 06

    終了後に記録を残す

    何を申し出られ、何ができて、何ができなかったか。次の会場選定と告知文に使える資料です。

当日の声かけ・アナウンスの文例

【受付での声かけ】
「お手伝いできることはありますか。お席までのご案内も承ります。」
(いきなり車椅子を押す、腕を引くなどはせず、まず希望を聞きます)

【開演前のアナウンス】
「本日、休憩用のお部屋を会場外の◯◯にご用意しています。途中の退出・再入場は自由です。開始直後に大きな音と強い光の演出がありますので、苦手な方はスタッフにお声がけください。」

【非常時の案内(掲示・画面と口頭の両方で)】
「ただいま◯◯のため、避難をお願いします。スタッフの誘導に従ってください。移動にお手伝いが必要な方は、その場でお近くのスタッフにお知らせください。」

よくある失敗と防ぎ方

失敗何が起きるか防ぎ方
「バリアフリー対応」とだけ告知する何ができるか分からず、来場をあきらめる人が出る項目ごとに状態を書く(上のテンプレート)。できないことも書く
会場を決めてから考えるエレベーターのない階など、申し出を受けても変えられない会場選定の比較項目に入れる
申し出の窓口がフォームのみフォームを使いにくい人が申し出られないメールと電話も書く
申し出を担当者が一人で抱える当日、その人が別対応中で約束が実行されない一覧にして進行表に書き込み、担当を名指しする
床にケーブルを這わせる車椅子・杖の人がつまずく、通れないカバーで覆う、動線から外す
検討せずに「対応できません」と返す条文の想定する手順と合わない検討した内容と代わりの方法を返信に書く
配慮の内容をスタッフ全体に回覧障害に関する情報が必要以上に広がる共有範囲を担当者に限る

本記事の根拠と範囲

条文はe-Gov法令検索、義務化の時期は内閣府のリーフレットによります(2026年10月確認)。

注意

本記事のチェックリストと文例は、条文の構造(申し出が起点、個別の状態に応じる)を運営に置き換えたものです。個別の場面で何をすれば合理的配慮を尽くしたことになるか、何が「過重な負担」に当たるかは、条文には書かれていません。 本記事では当てはめを行いません。判断に迷う場面は、所管の行政窓口や専門家に相談してください。

この記事の要点

  • 2024年4月1日から、事業者の合理的配慮は義務(第8条第2項「しなければならない」)。
  • 要件は①意思の表明 ②負担が過重でないとき。配慮は性別、年齢及び障害の状態に応じて行う。
  • 条文の起点が申し出だから、実務の起点は「申し出られる設計」:告知の相談窓口、フォームの欄と期限、複数の連絡手段。
  • 告知は「対応しています」ではなく、項目ごとの状態を書く。できないことも書く。
  • 社会的障壁は「事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」。段差だけでなく、申込ルールや運用も見直す。
  • 会場選定が対応範囲の上限を決める。断る前に、検討した内容と代わりの方法を返す。

FAQ

よくある質問

01イベント主催者にも合理的配慮の義務がありますか?

あります。障害者差別解消法第8条第2項は、事業者について「必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めており、内閣府は2024年(令和6年)4月1日から事業者の合理的配慮の提供が義務化されたと案内しています。要件は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合で、その実施に伴う負担が過重でないときです。

02告知ページには何を書けばよいですか?

「バリアフリー対応」とだけ書くのではなく、最寄り駅からの経路、入口の段差、エレベーター、多目的トイレ、車椅子席、休憩場所、音や光の演出、資料の提供方法、介助者の扱い、駐車場について、項目ごとに状態を書きます。できないことも書いておくと、来場者が参加できるかを自分で判断でき、申し出も具体的になります。あわせて相談窓口(メールと電話)と申し出の期限を書いてください。

03申込フォームで配慮の希望を聞くには、どう書けばよいですか?

よくある希望(車椅子席、段差のない経路、前方席、資料の事前送付、筆談、介助者の同行など)を選択肢にし、自由記述欄と申し出の期限、フォーム以外の連絡手段を添えます。申し出の内容には障害に関する情報が含まれるため、取得の目的、共有の範囲、保管と廃棄の扱いも先に決めて示してください。

04どこまで対応すれば十分ですか?

条文には具体的な水準が書かれていません。第8条第2項は「その実施に伴う負担が過重でないとき」としていますが、何が過重な負担に当たるかの判断要素は条文に列挙されていないため、本記事では基準を示しません。ただし条文の構造上、検討した結果として言えることであり、検討せずに断るのは想定された手順ではないと読めます。

05希望どおりに対応できないときは、どう返事をすればよいですか?

できない理由(会場の構造、資料の確定時期など)を具体的に書き、代わりにできる方法を示して、それで参加できそうか、ほかによい方法があるかを尋ねます。「前例がない」だけを理由にした返事は避けてください。本記事に返信メールの文例を3パターン載せています。

06申し出がなければ何もしなくてよいのですか?

第8条第2項は意思の表明があった場合を要件としていますが、実務としては「申し出られる状態を作っているか」が先に問われます。相談の窓口がなく、会場の状態も公開されていなければ、相手は何を申し出ればよいか判断できません。また第8条第1項の不当な差別的取扱いの禁止には、申し出という要件がありません。

07介助者の参加費はどう扱えばよいですか?

条文には介助者の参加費についての定めはありません。主催者として方針を決め、告知ページと申込フォームに明記してください。決めていないと、当日の受付で判断が分かれます。

08車椅子の方への対応を準備しておけばよいですか?

第2条第1号は、障害者を、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものと定めています。見ただけでは分からない状態にある人も来場します。第8条第2項は「当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて」としているため、本人に何が困るかを聞いて決めるのが条文の構造に沿ったやり方です。

Related

関連記事

実務ガイド

イベント会場の下見チェックリスト当日に何を見て、何を撮り、何を聞くか

駅からの道順・搬入・電源・通信・受付と控室・原状回復。一覧表と質問例、確認メール例文つき。

実務ガイド

イベント受付は何人必要?早見表・計算式・役割分担と声かけ例文

必要レーン数の早見表と計算式、周辺の役割を含めた人数、処理時間の測り方、行列の伸び方、声かけ例文、想定問答、備品と失敗例。

実務ガイド

イベントチェックリスト3か月前から事後処理まで155項目

7段階+備品+形式別で155項目。連絡例文と最小版つき。

実務ガイド

イベントの「個人情報の取扱いについて」条文から逆算して何を書くか

利用目的(第17条)・あらかじめ明示(第21条第2項)・第三者提供(第27条)。書くべき要素を条文単位で。

実務ガイド

アレルギーや配慮の申し出は要配慮個人情報か条文が挙げている項目を確認する

第2条第3項は人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴等を挙げる。第20条第2項は原則として同意が必要。

実務ガイド

イベント法務、ウェブと条文の食い違い自分が間違っていた3点も載せます

法令記事187本を一次情報で書く過程で見つかった食い違い。自分の誤りも同じ基準で載せる。

実務ガイド

イベントに必要な許可・届出の一覧飲食の保健所手続き・申請先の早見表・申請の流れ

やることから申請先と根拠条文を引く早見表と索引。飲食を出すときの保健所の手続きと主催者・出店者の分担、場面別の例、私有地・屋内の考え方、用意する資料、問い合わせ文例付き。

実務ガイド

イベント申込フォームの設計取得項目を減らすと、ほぼすべてが軽くなる

項目を減らすと、明示も管理も削除も請求対応も軽くなる。必須と任意の切り分けが設計の中心。

実務ガイド

「ご配慮」の意味と使い方そのまま使える例文とご考慮との違い

「ご配慮(ごはいりょ)」は、相手がこちらのために心を配ってくれることを敬って言う言葉。お礼は「ご配慮いただき、ありがとうございます」、お願いは「ご配慮のほど、よろしくお願いいたします」。判断の材料に入れて考えてほしいときは「ご考慮」、自分が気を配るときは「配慮いたします」。

実務ガイド

イベントの仮設トイレ手配台数の決め方・設置場所・当日の運用

台数は会場・レンタル会社と相談して決める。相談に持っていく情報、設置条件、清掃と補充の当日運用。

実務ガイド

ダイバーシティとは?意味と使い方インクルージョンとの違い

ビジネスの「ダイバーシティ」は、性別・年齢・国籍・経歴・働き方など、さまざまな違いを持つ人が組織にいること。日本語なら「多様性」「人材の多様性」。使った一文は「登壇者の顔ぶれにダイバーシティを持たせましょう」。いるだけでなく、その違いを受け入れて活かすことは「インクルージョン」と呼ばれ、あわせて「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」と言われる。

#面白いを実現しろ

Produce your IDEA.

会場・内容・規模・演出条件から、確認すべき手続きと管轄の候補を根拠つきで出します。照会メールの文面まで作ります。最終的な要否は窓口にご確認ください。

法令アップデート

改正がなかった月は、なかったとだけ送ります

e-Gov法令検索から条文を取得し、出典と取得日を添えてお知らせします。解説記事の要約は送りません。水増しのために書くことがないので、月によっては短くなります。

PRODUCER AGENT のご案内を含みます。配信停止はいつでも、メール本文のリンクから行えます。