個人情報
アレルギーや配慮の申し出は要配慮個人情報か
条文が挙げている項目を確認する
イベントの申込でアレルギーを聞く、車椅子の利用を聞く、配慮の希望を自由記述で受ける。どれも運営上は必要なことですが、通常の個人情報より扱いが重い類型に触れる可能性があります。この記事は、条文が何を挙げているかを確認し、設問の設計で論点を減らす方法を整理します。
結論
第2条第3項は「要配慮個人情報」を、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報と定義しています。第20条第2項は、一定の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないとしています。
根拠と、この記事の限界
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
Point
第2条第3項は「政令で定める記述等」としており、政令の内容は本記事の取得範囲外です。 したがって「アレルギーは要配慮個人情報です/ではありません」という断定を、本記事では行いません。 条文が挙げている項目を示し、検討すべき論点として整理するに留めます。判断は弁護士に確認してください。
条文が挙げている項目
この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。(第2条第3項)
- 01人種
- 02信条
- 03社会的身分
- 04病歴
- 05犯罪の経歴
- 06犯罪により害を被った事実
- 07その他、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等
Point
条文に「病歴」があります。 イベントで健康に関することを聞く設問が、この項目に触れうるかどうかは、聞き方によります。「持病をお書きください」と「食べられないものがあればお書きください」では、集まる情報の性質が違います。
注意
7つ目に政令への委任があります。 政令で何が定められているかは本記事では扱いません。「条文に書いてある6項目だけが要配慮個人情報」という読み方もできません。
第20条第2項 — 取得に同意が要る
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。(第20条第2項)
条文が挙げる除外は第1号から第8号です。
- 第1号 法令に基づく場合
- 第2号 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 第3号 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 第4号 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに協力する必要がある場合
- 第5号・第6号 学術研究機関等に関するもの
- 第7号 当該要配慮個人情報が本人、国の機関、地方公共団体、学術研究機関等その他委員会規則で定める者により公開されている場合
- 第8号 その他前各号に準ずるものとして政令で定める場合
Point
通常の個人情報との違いは「取得の時点で同意が要る」点です。 第17条の利用目的の特定や第21条の明示とは別に、取得そのものに同意という要件が置かれています。
第20条第1項 — 適正な取得
個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。(第20条第1項)
こちらは要配慮個人情報に限らず、すべての個人情報についての規定です。
設問の設計で論点を減らす
ここが実務でいちばん効く部分です。同じ運営目的を達成しながら、集まる情報の性質を変えられます。
| 運営目的 | 重くなる聞き方 | 軽くなる聞き方 |
|---|---|---|
| 食事の手配 | 「アレルギー・持病をお書きください」 | 「召し上がれないものがあればお書きください」 |
| 会場の動線 | 「障害の種類と程度をお書きください」 | 「当日の移動でご希望があればお書きください」 |
| 座席の配置 | 「聴覚・視覚に障害がありますか」 | 「前方のお席をご希望の方はチェック」 |
| 緊急時の備え | 「既往症をお書きください」 | 「緊急連絡先」+当日の救護体制で対応 |
Point
運営に必要なのは「何をすればよいか」であって、「なぜ必要か」ではないことが多い。 「車椅子で来場します」が分かれば動線は設計できます。診断名を聞く必要はありません。 設問を「こちらが何をすればよいか」に寄せると、集まる情報が軽くなります。
注意
ただし「軽い聞き方にすれば要配慮個人情報に当たらない」という保証ではありません。 自由記述欄には、こちらが聞いていないことが書かれます。書かれた場合にどう扱うかも決めておいてください。
自由記述欄の扱い
- 誰が読むかを決めている(全スタッフに共有していないか)
- どこに保管するかを決めている
- 当日の運営に必要な部分だけを現場に伝える運用になっている
- 終了後に削除する手順がある
- 記入欄のそばに何に使うかを書いている
Point
配慮の申し出を、当日の運営チャットにそのまま貼らないでください。 必要なのは「〇番の席を前方に」「入口で誘導」といった行動の指示であって、申し出の原文ではありません。
合理的配慮との両立
障害者差別解消法第8条第2項は、意思の表明があった場合に合理的配慮をしなければならないとしています。つまり申し出を受ける設計が必要です。一方で、申し出の内容は重い情報を含みえます。
Point
この2つは矛盾しません。 申し出やすくすることと、集めた情報を慎重に扱うことは両立します。入口は広く、扱いは厳密に。
- 01
申し出の欄を用意する
合理的配慮の起点は意思の表明です。欄がなければ始まりません。
- 02
何に使うかを欄のそばに書く
第17条の利用目的に対応します。「当日の運営の準備のため」など、使う範囲を具体的に。
- 03
同意の取り方を検討する
第20条第2項は取得に同意を求めています。どういう形で取るかは弁護士に確認してください。
- 04
読む人を限定する
申し出の原文にアクセスできる人を決めます。
- 05
現場には行動だけを伝える
「何をすればよいか」に変換して伝えます。
- 06
終了後に削除する
第22条は努力義務ですが、重い情報ほど残す理由がありません。
注意
合理的配慮の設計はイベントのバリアフリーと合理的配慮、アンケートの設計はアンケートの注意書き、文面の構成は個人情報の取扱いの書き方を参照してください。
この記事の要点
- 第2条第3項は人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪により害を被った事実と、政令で定める記述等を挙げている。
- 政令の内容は本記事の取得範囲外。「アレルギーは要配慮個人情報か」を断定しない。
- 第20条第2項は、一定の場合を除き取得の時点で本人の同意を求めている。利用目的の明示とは別の要件。
- 設問の設計で集まる情報の性質を変えられる。「診断名」ではなく「こちらが何をすればよいか」を聞く。
- 自由記述欄には聞いていないことが書かれる。 読む人を限定し、現場には行動だけを伝える。
- 合理的配慮と両立する。 入口は広く、扱いは厳密に。
FAQ
よくある質問
本記事では断定しません。第2条第3項は人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他政令で定める記述等を挙げていますが、政令の内容は本記事の取得範囲外だからです。ただし条文に「病歴」が挙がっている以上、聞き方によって論点になりうる領域です。弁護士に確認してください。
第20条第2項が、同条の挙げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないとしている点です。通常の個人情報では、第17条の利用目的の特定と第21条の通知・公表・明示が中心ですが、要配慮個人情報では取得そのものに同意という要件が置かれています。
逆です。障害者差別解消法第8条第2項は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、負担が過重でないときは合理的配慮をしなければならないとしています。申し出を受ける設計がなければ、そもそも意思の表明ができません。入口は広くしたうえで、集めた情報の扱いを厳密にするのが両立の形です。
集まる情報の性質は変わります。食事の手配が目的なら「持病をお書きください」ではなく「召し上がれないものがあればお書きください」、動線の設計が目的なら「障害の種類と程度」ではなく「当日の移動でご希望があればお書きください」。運営に必要なのは何をすればよいかであって、診断名ではないことが多いはずです。ただし軽い聞き方にすれば対象外になるという保証ではありません。
原文をそのまま共有する必要はありません。現場に必要なのは「〇番の席を前方に」「入口で誘導」といった行動の指示です。申し出の原文にアクセスできる人を限定し、現場には行動だけを伝える運用にしてください。運営チャットに原文を貼るのは避けてください。