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個人情報

参加者から「私の情報を消して」と言われたら
開示・訂正・利用停止の請求への対応

イベント終了後に「送られてくるメールを止めてほしい」「登録した情報を消してほしい」という連絡が来ることがあります。これらは法律上の請求として定められた行為で、対応の枠組みも条文にあります。そして請求を受け付ける手続きを、あらかじめ本人の知り得る状態に置いておくことが第32条で求められています。来てから考えると間に合いません。

更新: 2026-10-16読了:約7分PRODUCER AGENT 編集部

結論

個人情報保護法は、本人が行える請求を複数定めています。第33条が開示、第34条が訂正・追加・削除、第35条が利用停止・消去および第三者提供の停止です。そして第32条第1項は、これらの請求に応じる手続を含む4つの事項を本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければならないとしています。

根拠と、この記事の範囲

本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。

注意

「保有個人データ」の定義(第16条第4項)は本記事の取得範囲外です。 第33条〜第35条の請求は保有個人データを対象としていますが、自分が持っているデータがこれに当たるかの判断は示しません。また手数料(第38条)の額も条文にないため示しません。 運用の設計は弁護士に確認してください。

先にやること — 第32条

請求への対応は、請求が来る前に準備する部分があります。

個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次に掲げる事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。(第32条第1項)

号本人の知り得る状態に置くべき事項(条文の文言)
第1号当該個人情報取扱事業者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
第2号全ての保有個人データの利用目的(第21条第4項第1号から第3号までに該当する場合を除く)
第3号第32条第2項の求め、第33条・第34条・第35条の請求に応じる手続(手数料の額を定めたときはその額を含む)
第4号前三号のほか、政令で定めるもの

Point

第3号が「手続」です。 どこに、どうやって請求すればよいのかを、あらかじめ示しておく必要があります。「個人情報に関するお問い合わせ先」を書いていないイベントサイトは、ここが満たせていません。

第32条第2項 — 利用目的の通知を求められたとき

第2項は、本人から当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、遅滞なく通知しなければならないとしています(第1項により利用目的が明らかな場合等の除外あり)。第3項は、通知しない旨を決定したときも遅滞なくその旨を通知するとしています。

3種類の請求

第33条 — 開示

本人は、電磁的記録の提供による方法その他の個人情報保護委員会規則で定める方法による開示を請求できます(第1項)。事業者は、本人が請求した方法(多額の費用を要する場合その他の当該方法による開示が困難である場合は書面の交付による方法)により遅滞なく開示しなければなりません(第2項)。

ただし第2項のただし書は、次に該当する場合に全部又は一部を開示しないことができるとしています。

  1. 01本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
  2. 02当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
  3. 03他の法令に違反することとなる場合

注意

第3項により、開示しない旨を決定したとき、データが存在しないとき、請求された方法での開示が困難なときは、本人に遅滞なくその旨を通知しなければなりません。黙っているという選択肢は条文にありません。

第34条 — 訂正等

本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないときは、当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を請求することができる。(第34条第1項)

Point

第34条は「内容が事実でないとき」の請求です。 「もう送ってこないでほしい」は、こちらではなく第35条の話になります。来た連絡がどちらの請求なのかを、受け付ける側が切り分ける必要があります。

第2項は、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、結果に基づいて訂正等を行うとしています。第3項は、行ったとき/行わない旨を決定したときに遅滞なく通知(行ったときはその内容も)を求めています。

第35条 — 利用停止等・第三者提供の停止

第35条は請求の根拠を複数の項に分けています。

項請求できる場面(条文の文言)請求できること
第1項第18条・第19条の規定に違反して取り扱われているとき、又は第20条の規定に違反して取得されたものであるとき利用の停止又は消去
第3項第27条第1項又は第28条の規定に違反して第三者に提供されているとき第三者への提供の停止
第5項利用する必要がなくなった場合、第26条第1項本文の事態が生じた場合、その他本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合利用停止等

Point

第5項の「利用する必要がなくなった場合」が実務で効きます。 イベントが終わって連絡の必要がなくなった参加者から請求が来る、という構図はここに当たりえます。

注意

第2項・第4項等には、多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときという、代替措置を認めるただし書きがあります。「できません」で終えられる構造ではありません。

受け付ける側の設計

条文に「遅滞なく」が繰り返し出てきます。つまり来てから体制を作るのでは遅いということです。

  1. 01

    窓口を決めて公開する

    第32条第1項第3号の「請求に応じる手続」です。メールアドレスか問い合わせフォームか、どちらでもよいが、どこかに書く。 イベントサイトのプライバシーポリシーに置くのが自然です。

  2. 02

    どの請求なのかを切り分ける手順を作る

    開示(第33条)、訂正等(第34条)、利用停止等(第35条)。来る文面は法律用語では書かれません。 「消して」「送らないで」「何を持っているか教えて」を、どの条文に当てるかを決めておきます。

  3. 03

    本人確認の方法を決める

    本人以外からの請求に応じると、別の事故になります。 どう確認するかを決めておいてください。

  4. 04

    どこを探せばよいかを把握しておく

    申込フォームのデータ、名刺管理ツール、CRM、メール配信ツール、当日の紙のアンケート。散っていると「消しました」と言えません。

  5. 05

    対応の記録を残す

    いつ、誰から、何を請求され、どう対応したか。第33条第3項・第34条第3項が通知を求めているので、通知した事実も残してください。

  6. 06

    断る場合の根拠を確認する

    第33条第2項のただし書の3つの場合など、条文に根拠がある場合に限られます。 「対応できません」と返す前に、どの条文かを確認してください。

  • 個人情報に関する問い合わせ窓口を公開している
  • 第32条第1項の4事項を本人の知り得る状態に置いている
  • どの請求に当たるかを切り分ける手順がある
  • 本人確認の方法を決めている
  • データがどこにあるかを把握している(紙を含む)
  • 対応と通知の記録を残す運用がある
  • 断る場合の条文上の根拠を確認する手順がある
  • 担当者が不在のときに誰が受けるかを決めている

Point

散らばったデータが最大の障害です。 申込ツール、名刺管理ツール、営業のExcel、担当者のメールボックス、当日の紙。「消しました」と答えるには、どこにあるかを知っている必要があります。 保管場所を集約する設計が、結局いちばん効きます(参加者名簿の管理)。

注意

文面の作り方は個人情報の取扱いの書き方、全体像は来場者名簿と個人情報保護法を参照してください。

この記事の要点

  • 請求の根拠は第33条(開示)・第34条(訂正等)・第35条(利用停止等・提供停止)。
  • 第32条第1項により、請求に応じる手続を含む4事項をあらかじめ本人の知り得る状態に置く必要がある。
  • 第34条は「内容が事実でないとき」。「もう送らないで」は第35条。受け付ける側が切り分ける。
  • 第35条第5項の「利用する必要がなくなった場合」がイベント後の請求に当たりうる。
  • 開示を断れるのは第33条第2項のただし書の3つの場合など、条文に根拠がある場合。
  • 条文に「遅滞なく」が繰り返し出てくる。 来てから体制を作るのでは遅い。

FAQ

よくある質問

01削除の依頼メールには、どう返信すればよいですか?

まず受け付けたことを伝え、本人確認の方法と、対応の結果を知らせることを書きます。たとえば「お問い合わせを受け付けました。ご本人であることを確認したうえで対応し、結果をあらためてご連絡します。確認のため、お申込み時のお名前とメールアドレスをお知らせください」のような返信です。返信の前に、どの請求に当たるか(開示・訂正等・利用停止等)を切り分け、データがどこにあるかを確かめておくと、その後の対応が止まりません。

02参加者から「登録情報を消してほしい」と言われたら応じる義務がありますか?

どの請求に当たるかで変わります。第35条第1項は第18条・第19条違反の取扱いや第20条違反の取得のとき、第5項は利用する必要がなくなった場合その他本人の権利または正当な利益が害されるおそれがある場合に、利用停止等を請求できるとしています。第2項等には、多額の費用を要する等で困難な場合に代替措置をとるときのただし書きがありますが、「できません」で終えられる構造ではありません。

03どこに問い合わせ窓口を書けばよいですか?

第32条第1項第3号は、第32条第2項の求めおよび第33条・第34条・第35条の請求に応じる手続を、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければならないとしています。イベントサイトのプライバシーポリシーに置くのが自然です。あわせて同項第1号の氏名または名称および住所(法人は代表者の氏名)、第2号の全ての保有個人データの利用目的も必要です。

04開示請求を断ることはできますか?

第33条第2項のただし書は、本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、他の法令に違反することとなる場合に、全部または一部を開示しないことができるとしています。また第3項により、開示しない旨を決定したとき、データが存在しないとき、請求された方法での開示が困難なときは、本人に遅滞なくその旨を通知しなければなりません。

05「情報が間違っている」と言われた場合はどうなりますか?

第34条第1項は、保有個人データの内容が事実でないときに訂正、追加または削除を請求できるとしています。第2項により、利用目的の達成に必要な範囲内において遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づいて訂正等を行います。第3項により、訂正等を行ったとき、または行わない旨を決定したときは、遅滞なくその旨(行ったときは内容も)を通知する必要があります。

06対応の準備として何から始めればよいですか?

まず窓口を決めて公開すること(第32条第1項第3号)、次にデータがどこにあるかを把握することです。申込ツール、名刺管理ツール、営業のExcel、メール配信ツール、当日の紙のアンケートに散らばっていると、「消しました」と答えられません。保管場所を集約する設計が結局いちばん効きます。

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