個人情報
イベントアンケートの個人情報の注意書き
用紙に何を書く必要があるか
申込フォームの個人情報の文面は整えたのに、当日配るアンケート用紙には何も書いていない。 これが最も多いパターンです。紙だから対象外になる条文はありません。この記事は、アンケート用紙に何を書く必要があるのかを条文から整理し、あわせてそもそも氏名を書かせる必要があるのかという設計の話をします。
結論
アンケートで個人情報を取得する場合、第21条第2項が関わります。同項は本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合に、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならないと定めています。利用目的は第17条第1項によりできる限り特定する必要があります。一方、個人を識別できない形で集めるなら、そもそも第2条第1項の個人情報に当たらない可能性が出てきます。
根拠と、この記事の立場
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
Point
この記事は「この注意書きを使えば適法」という保証をしません。 必要な記載は取得する項目と用途で変わります。本記事が示すのは条文が要求している構成要素です。文面は弁護士に確認してください。
まず「氏名を書かせるのか」を決める
注意書きを考える前に、設計の話をします。第2条第1項は個人情報を特定の個人を識別することができるもの等と定義しています。
Point
識別できない形で集めるなら、前提が変わります。 満足度を5段階で聞くだけ、自由記述の感想だけ。氏名・連絡先を書かせないアンケートにすれば、個人情報を扱う論点自体が小さくなります。
注意
ただし「名前を書かせなければ個人情報ではない」と単純には言えません。 第2条第1項第1号は「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」も含むとしています。受付番号や座席番号と申込データが結びつく設計なら、照合の論点が出ます。当てはめは本記事では断定しません。
何のために記名が要るのかを言語化する
- 後日フォローの連絡をするため → 記名が要る
- 抽選・プレゼントの当選連絡をするため → 記名が要る
- 参加者の属性別に集計したい → 属性項目は要るが、氏名は不要かもしれない
- 満足度を測るだけ → 記名は不要
- 次回の企画の参考にするだけ → 記名は不要
- 「なんとなく」 → 削る候補
取る必要がない項目を取らないのが、いちばん確実な個人情報対策になる。
記名式にする場合、用紙に書く要素
個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。(第21条第2項)
条文は「その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合」としています。紙のアンケート用紙に本人が記入する形は、この文言に重なりえます。
構成要素
| 条文 | 用紙に反映するもの |
|---|---|
| 第17条第1項 | 利用目的を、使う場面の単位で特定して書く |
| 第21条第2項 | それを記入する前に読める位置に置く |
| 第27条第1項 | 第三者に提供する予定があるならその旨 |
| 第27条第5項第3号 | 共同利用にするなら5項目 |
| — | 問い合わせ先 |
Point
「記入する前に読める位置」が紙では効きます。 裏面の下部に小さく載せる構成だと、記入が終わってから目に入ります。記入欄と同じ面の、記入欄より上に置くのが素直です。
アンケート特有の論点
- 自由記述欄に何が書かれるか分からない — 体調や家族のことを書かれる可能性がある。第2条第3項の要配慮個人情報に触れる記述が入りうる
- 登壇者への共有 — 「◯◯さんの講演が良かった」という回答を登壇者に見せるなら、第27条の論点
- 事例として公開する — 回答を広報に使うなら、利用目的に書いておく必要がある
- 出展者へのフィードバック — ブースごとの評価を出展者に渡すなら第27条
注意
第20条第2項は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはならないとしています。自由記述欄にそうした記述が入る可能性をどう扱うかは、本記事では断定しません。設問の作り方で、書かれにくくすることはできます。
設問の設計で論点を減らす
個人情報の論点は、文面で対処する前に、設問で減らせます。
| 設計 | 効果 |
|---|---|
| 氏名・連絡先欄を任意にする | 記入しない人の分は論点が小さくなる |
| 連絡先が要る理由を欄のそばに書く | 何のために書くのかが分かり、記入率も上がる |
| 自由記述を「本日の内容について」のように限定する | 想定外の記述が入りにくい |
| 登壇者に見せる設問を分けておく | 共有の範囲を設問単位で設計できる |
| 回収した用紙の保管場所と担当を決める | 当日の紛失が最大のリスク |
Point
当日のアンケート用紙は、物理的に紛失します。 机に置きっぱなし、箱ごとどこかへ、スタッフの鞄の中。誰が回収し、誰がどこに保管するかを当日の運営に組み込んでください(イベント運営チェックリスト)。
回収後の扱い
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。(第22条)
注意
条文は努力義務の書き方です。具体的な保存期間は条文にありません。集計が終わった紙の原本をいつまで持つかを決めてください。決めていないと、段ボールのまま残ります。
用紙に載せる注意書きの骨組み
記名式のアンケートで用紙に載せる場合の骨組みです。◯◯の部分と利用目的は、実際の使い方に合わせて書き換えてください。使わない目的は書きません。記入の手がかりであり、この文面で適法になることを保証するものではありません。
ご記入いただいた内容は、本イベントの内容の改善と、◯◯株式会社が主催する今後のイベントのご案内に利用します。ご本人の同意なく第三者に提供することはありません。お名前・ご連絡先の記入は任意です。お問い合わせは◯◯部(メールアドレス:◯◯)までお願いします。
注意
無記名のアンケートにするなら、氏名欄を置かないのがいちばん簡単です。申込フォームの側の書き方は「個人情報の取扱いについて」の書き方にまとめています。
Webアンケートの場合
第21条第2項は括弧書きで「電磁的記録を含む」としています。Webのアンケートフォームも、この類型に当たりえます。
- 送信ボタンの前に利用目的が読める
- スマートフォンで見たときに折りたたみの中に隠れていない
- 外部のアンケートツールを使う場合、そのツールに入ったデータを誰が見られるかを把握している
- 外部ツールの利用が委託(第27条第5項第1号)に当たるかを整理している
- 回答データのエクスポート先と保管場所を決めている
- イベント終了後、ツール側のデータをどうするかを決めている
Point
外部ツールのアカウントは残り続けます。 無料プランのフォームツールに、過去のイベントの回答が全部入ったまま、退職した担当者のアカウントで保持されている。これはよくある状態です。 誰が管理するかを決めてください。
アンケートのURLは、QRコード作成ツールでQRコードにして受付や資料の最後に載せられます(入力したURLはサーバーに送りません)。
注意
オンライン開催の場合の論点はウェビナーの個人情報、文面全体の構成は個人情報の取扱いの書き方に整理しています。アンケートの設問そのものの作り方はイベントのKPIも参照してください。
この記事の要点
- 紙のアンケートも第21条第2項の対象になりうる。 条文は「本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合」としている。
- 最初に決めるのは文面ではなく「氏名を書かせるか」。 識別できない形なら論点自体が小さくなる。
- ただし第2条第1項第1号は「他の情報と容易に照合」できる場合も含む。受付番号と申込データが結びつく設計には論点が残る。
- 記入欄と同じ面の、記入欄より上に置く。裏面下部だと記入後に目に入る。
- 自由記述欄に要配慮個人情報が書かれうる(第2条第3項・第20条第2項)。設問の作り方で書かれにくくできる。
- 当日の紙は物理的に紛失する。 回収・保管・廃棄の担当を運営に組み込む。
FAQ
よくある質問
記事内に用紙に載せる骨組みを置いています。基本は、回答を何に使うかと、問い合わせ先を書くことです。記名式にする場合は、氏名や連絡先を何に使うのか(今後の案内に使うのか、集計だけか)を利用目的として書き、無記名でよい設問は氏名欄を設けない設計にすると、注意書き自体も短くなります。
第21条第2項は「本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合」に、あらかじめ利用目的を明示しなければならないとしています。紙のアンケート用紙に本人が記入する形はこの文言に重なりえます。申込フォームだけ整えて当日の用紙が抜けている状態になりがちなので、個人情報を書かせるものは全部点検してください。
単純にはそう言えません。第2条第1項第1号は「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」としています。受付番号や座席番号が申込データと結びつく設計なら、照合の論点が出ます。ただし本記事では個別の当てはめを行いません。氏名・連絡先を書かせない設計にすれば論点が小さくなるのは確かです。
第21条第2項は「あらかじめ」「明示」という書き方です。記入する前に読める位置である必要があります。裏面の下部に小さく載せる構成だと、記入が終わってから目に入ることになります。記入欄と同じ面の、記入欄より上に置くのが素直です。
第2条第3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴等を含む個人情報を要配慮個人情報と定義し、第20条第2項は原則としてあらかじめ本人の同意を得ないでこれを取得してはならないとしています。本記事では個別の当てはめを断定しませんが、設問を「本日の内容について」のように限定することで、想定外の記述が入りにくくすることはできます。
第22条は、利用する必要がなくなったときに個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています。努力義務の書き方で、具体的な保存期間は条文にありません。集計が終わった紙の原本をいつまで持つかを自社で決めてください。決めていないと段ボールのまま残り続けます。