個人情報
イベント写真のSNS投稿
撮る前に決めておくこと
イベント写真は撮った後に使い道を考えることが多く、それが問題を生みます。「報告書用に撮っておいて」で撮った写真が、翌週SNSに載り、翌年の告知物に使われる。公開の範囲を撮影前に決めていないと、後から整えるのは困難です。 この記事は、撮る前に決めることを整理します。
結論
写真に写った人が特定の個人を識別することができる場合、その写真は第2条第1項の個人情報として扱われえます。名札が読める写真は、氏名と会社名を公開することになります。撮影と公開を行うなら、第17条第1項の利用目的に入っている必要があり、第三者に提供するなら第27条の論点になります。
この記事が扱わないこと
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
Point
肖像権・パブリシティ権は、本記事では扱いません。 これらには明文の根拠条文がなく、判例の積み重ねによるものだからです。本サイトは条文で裏付けできる範囲に限って書いています。写真の公開を予定しているなら、個人情報保護法の整理に加えて、必ず弁護士に確認してください。
注意
登壇者・出演者の写真は、契約の話でもあります。 出演契約・登壇依頼の段階で、撮影と公開の範囲を取り決めてください(業務委託契約書)。
撮影と公開を利用目的に入れる
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。(第17条第1項)
撮影した写真を使うなら、その用途が利用目的に入っている必要があります。そして第17条第2項により、変更は「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲」を超えられません。
| 使い道 | 書いておく必要 |
|---|---|
| 社内の記録としてのみ保存 | 保存期間を決める(第22条) |
| 報告書に掲載(社内・協賛社向け) | 利用目的に書く |
| 自社Webサイトに掲載 | 利用目的に書く |
| SNSに投稿 | 利用目的に書く |
| 次回の告知物に使う | 利用目的に書く |
| 協賛社・出展者に提供 | 第27条の論点 |
| プレスリリース・メディアへの提供 | 同上 |
Point
「報告書に使います」と書いて、SNSに投稿するのは、書いてある範囲を超えています。 使う可能性があるものは、最初に書いておく。 あとから足すのは第17条第2項の制限がかかります。
名札が読める写真
イベント写真には名札が写ります。名札が読める写真を公開することは、写っている人の氏名と会社名を公開することです。
- 公開前に名札が読めるかを確認する手順がある
- 誰が確認するかを決めている
- ぼかし処理をする場合、いつ誰がやるかを決めている
- 名札の文字サイズと位置を、写真に写る前提で設計している(名札の設計)
- 集合写真は名札を外してもらう運用がある
Point
ぼかし処理は、枚数が増えると必ず省略されます。 持続する対策は、名札を小さくする、首から下げる位置を下げる、撮る角度を決めるといった物理的な設計です。後工程に頼らない設計にしてください。
撮影しない区画を作る
もっとも確実な方法は、撮られたくない人が撮られない場所を用意することです。
- 撮影エリアと非撮影エリアを分ける
- 非撮影の意思表示ができる仕組み(ストラップの色、シールなど)
- 撮影する時間帯を告知する(「14:00から集合写真を撮ります」)
- カメラマンの動線を決めて、客席の後方から撮る
- 懇親会は撮らないという判断もありうる
Point
ストラップの色で意思表示できる運用は、名札の設計と同時に決められます。 申込時に「写真撮影を希望しない」を選べるようにして、当日のストラップを分ける。当日その場で判断させるより、確実に機能します。
注意
この仕組みは、カメラマンと当日スタッフ全員が凡例を知っていることが前提です。運営マニュアルと朝礼で共有してください。
誰が撮るかで話が変わる
| 撮る人 | 決めること |
|---|---|
| 主催者が手配したカメラマン | 撮影範囲、納品先、データの保管と削除、二次利用の可否(契約で) |
| 主催者のスタッフ | 撮った写真の集約先、個人端末に残さない運用 |
| 出展者・協賛社 | 撮ってよい範囲を出展規約に書く |
| 登壇者 | 客席を撮ってSNSに上げることがある。事前に伝える |
| 参加者 | 撮影の可否を案内に書く。他の参加者が写る点も |
| メディア | 取材の範囲を事前に取り決める |
Point
登壇者が客席を撮ってSNSに上げるのは、よくある場面です。本人は好意でやっていますが、客席の参加者は想定していません。登壇依頼の段階で伝えてください。
注意
スタッフが個人の端末で撮った写真は、個人のカメラロールに残り続けます。集約先を決め、集約後に端末から削除するところまで運用に入れてください(終了後のデータ処理)。
撮る前に決める手順
- 01
使い道を全部書き出す
社内記録、報告書、Webサイト、SNS、次回の告知物、協賛社への提供、プレス。使う可能性があるものを全部。
- 02
利用目的に反映する
申込の文面に書きます(個人情報の取扱いの書き方)。第三者に提供するなら第27条の整理も。
- 03
撮らない範囲を決める
非撮影エリア、意思表示の仕組み、撮らない時間帯。
- 04
撮る人ごとにルールを決める
カメラマン、スタッフ、出展者、登壇者、参加者、メディア。
- 05
名札の見え方を設計する
文字サイズ、位置。後工程のぼかしに頼らない。
- 06
公開前の確認者を決める
誰が、何を見てから公開するか。名札、意図しない写り込み、非撮影の意思表示。
- 07
保管と削除を決める
原本の置き場所、個人端末からの削除、保持期間。
- 写真の使い道を全部書き出した
- 利用目的に反映した
- 第三者に提供するなら第27条の整理をした
- 非撮影エリアまたは意思表示の仕組みを用意した
- 撮る人ごとのルールを決めた(出展規約・登壇依頼を含む)
- 名札の見え方を物理的に設計した
- 公開前の確認者を決めた
- 原本の保管場所と個人端末からの削除を決めた
- 肖像権等について弁護士に確認した
Point
この記事の内容を満たしても、それは個人情報保護法の観点だけです。 写真の公開には別の論点があります。公開を予定しているなら、弁護士への確認を必ず入れてください。
この記事の要点
- 肖像権・パブリシティ権は本記事では扱わない。 明文の条文がないため。公開するなら弁護士に確認する。
- 使い道は撮る前に全部書き出して、利用目的に入れる。 第17条第2項により、あとから足すのは制限がかかる。
- 名札が読める写真の公開は、氏名と会社名の公開。
- ぼかし処理は枚数が増えると省略される。 名札の大きさと位置という物理的な設計で解決する。
- 撮られない場所と意思表示の仕組みを用意するのが最も確実。申込時に選べるようにしてストラップを分ける。
- 登壇者が客席を撮ってSNSに上げるのはよくある。登壇依頼の段階で伝える。
FAQ
よくある質問
本記事では個人情報保護法の範囲で整理しています。撮影した写真を公開するなら、その用途が第17条第1項の利用目的に入っている必要があり、第17条第2項により変更には制限がかかります。ただし写真の公開には肖像権など明文の条文がない論点もあり、本記事では扱っていません。公開を予定しているなら弁護士に確認してください。
書いてある範囲を超えています。第17条第2項は、利用目的の変更を変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲に限っています。社内記録、報告書、Webサイト、SNS、次回の告知物、協賛社への提供はそれぞれ性質が異なるため、使う可能性があるものは最初に書いておいてください。
名札が読める写真を公開することは、写っている人の氏名と会社名を公開することになります。公開前に確認する手順と担当者を決めてください。ただしぼかし処理は枚数が増えると必ず省略されるため、持続する対策は名札を小さくする、首から下げる位置を下げる、撮る角度を決めるといった物理的な設計です。
最も確実なのは、撮られない場所を用意することです。撮影エリアと非撮影エリアを分ける、ストラップの色やシールで意思表示できるようにする、撮影する時間帯を告知する、といった方法があります。申込時に「写真撮影を希望しない」を選べるようにして当日のストラップを分けると、その場で判断させるより確実に機能します。カメラマンと当日スタッフ全員が凡例を知っていることが前提です。
撮る人ごとにルールを決めてください。登壇者が客席を撮ってSNSに上げるのはよくある場面ですが、客席の参加者は想定していません。登壇依頼の段階で伝えてください。出展者・協賛社には出展規約で撮ってよい範囲を書き、参加者には案内に撮影の可否と他の参加者が写る点を書いてください。スタッフが個人端末で撮った写真は、集約後に端末から削除するところまで運用に入れてください。