内製
イベントは内製か外注か
判断基準・費用比較と場面別の結論
結論から言うと、イベントは丸ごと内製か丸ごと外注かで決めず、工程ごとに分けて決めます。目的設定・集客・効果測定は自社、音響・照明・施工・警備と当日の現場統括は外部、が基本形です。そのうえで「担当者の時間を本当に空けられるか」を確かめ、空けられない工程から外に出します。
結論
イベントの内製と外注の判断は①工程ごとに分解する ②各工程の社内工数を見積もる ③その工数を確保できるか確認する ④失敗したときの影響の大きさで切り分けるの順で行います。内製の費用には外注費の代わりに担当者の人件費と止まる本業が入るため、比べるときは両方を金額に直します。
まず結論:場面別の内製・外注の目安
代表的な場面ごとに、どこまで自社で持ち、どこを外に出すかの目安を表にしました。前提は「社内に専任の運営経験者がいない会社」です。経験者がいる場合は、内製の範囲を広げてかまいません。
| 場面 | おすすめの形 | 外に出す工程 | 自社に残す工程 |
|---|---|---|---|
| 社内の懇親会・忘年会 | 内製が中心 | 会場・料理(会場側に任せる) | 企画、出欠、進行、景品 |
| 社員総会・キックオフ | 一部外注 | 音響・映像、配信、当日の技術進行 | 目的、登壇者調整、資料、社内告知 |
| 周年式典・表彰式 | 統括ごと外注を検討 | 企画演出、施工、技術、当日統括 | 目的、招待者リスト、表彰対象の選定 |
| 自社開催の小規模セミナー | 内製が中心 | 必要なら配信の技術のみ | テーマ、集客、受付、アンケート、フォロー |
| 大型カンファレンス・フォーラム | 統括ごと外注 | 企画〜当日運営の実務、事務局 | 目的・KPI、登壇者の選定、集客の主導、効果測定 |
| 展示会出展 | 一部外注 | ブースの設計・施工、必要ならスタッフ | 出展目的、展示内容、来場者対応の主力、商談化 |
| 新製品発表会・記者発表 | 統括ごと外注を検討 | 会場演出、技術、メディア受付の運営 | 発表内容、報道対応の窓口、資料 |
| オンライン・ハイブリッド配信 | 技術は外注 | 配信機材、スイッチング、回線の確保 | 番組構成、登壇者との調整、視聴者対応 |
| 採用説明会・会社説明会 | 内製が中心 | 大規模なら会場運営・配信 | 内容、登壇社員、申込管理、選考への接続 |
30秒で判定する:外注を優先すべきかのチェック
- 社外のお客様・取引先・報道関係者が来場する
- 失敗すると会社の信用やブランドに響く
- 音響・照明・映像・施工など専門機材や技能が要る
- 参加者が多く、安全・警備・導線の計画が要る
- 担当者が兼務で、準備期間が本業の繁忙期と重なる
- 社内に同規模のイベントを運営した経験者がいない
- 前回の資料や記録が残っていない、または初開催
注意
当てはまる項目が多いほど、外に出す工程を増やす方が安全です。逆に、どれにも当てはまらない社内向けの小規模イベントなら、内製で十分に回ります。どちらの場合も、自社に残す工程(目的・集客・効果測定)は変わりません。
判断の4つの軸
「安いから内製」「大変だから外注」という決め方は、どちらも後で計算が合わなくなります。次の4軸で整理してください。
| 判断軸 | 内製に寄せる条件 | 外注に寄せる条件 |
|---|---|---|
| 頻度 | 年に何度も実施する。定型化できる | 単発、または数年に一度 |
| 失敗時の影響 | 社内向けで、多少の不備が許容される | 対外的で、失敗がブランドや信用に直結する |
| 専門性 | 社内に経験者がいる。特殊な技能が不要 | 音響・照明・構造・安全など専門技能が必要 |
| 社内工数 | 担当者の時間を実際に空けられる | 本業を止められない。繁忙期と重なる |
内製のメリット・デメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 意思決定が速い/自社の文脈や社風を反映しやすい/直前の変更に強い/ノウハウと顧客データが社内に残る |
| デメリット | 担当者の本業が止まる/品質が担当者の経験に左右される/想定外のトラブルに弱い/担当者が1人だと止まりやすい |
| 向いているケース | 社内向け・小規模・定例のイベント、前回の記録とテンプレートがあるイベント |
外注のメリット・デメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 経験の蓄積があり品質が安定しやすい/専門機材と人員をまとめて手配できる/社内の工数を本業に戻せる/トラブル時の対応手順を持っている |
| デメリット | 外注費がかかる/自社の意図を伝える手間がかかる/契約範囲外の変更は追加費用になる/記録を受け取らないとノウハウが残らない |
| 向いているケース | 対外的・大規模・初開催のイベント、技術や安全の比重が大きいイベント |
内製と外注の総合比較
| 観点 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|
| 直接費用 | 外注費は不要だが社内人件費が発生 | 見積として明示される |
| 意思決定の速度 | 速い。社内で完結する | 確認の往復が発生する |
| 自社らしさの反映 | 高い。文脈を理解している | 伝える手間がかかる |
| 品質の安定性 | 経験に依存。初回は不安定 | 経験の蓄積があり安定しやすい |
| トラブル対応力 | 想定外への対応力が弱い | 経験則で対応できる |
| ノウハウの蓄積 | 社内に残る | 意識的に残さないと消える |
| 繁忙期の耐性 | 本業と競合すると破綻する | 影響を受けにくい |
| 柔軟な変更 | 直前まで変えやすい | 契約範囲を超えると追加費用 |
費用の比べ方:内製は「無料」ではない
内製と外注を比べるとき、外注側は見積書に金額が出るのに、内製側は金額が見えません。そのため内製が安く見えます。比べる前に、内製で発生する費用をすべて同じ表に並べることが出発点です。
費用比較の表(そのまま使える枠)
| 費用の項目 | 内製の場合 | 外注の場合 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| 運営・統括の費用 | 担当者の人件費(工数×時間単価) | 見積の運営費・管理費 | 内製側は打ち合わせ時間まで数える |
| 当日の人員 | 動員した社員の人件費 | スタッフ費 | 社員動員はその日の本業が止まる |
| 機材・施工 | 個別にレンタル・発注 | 見積に含まれることが多い | 個別発注は手配と調整の工数が増える |
| 制作物 | 社内デザインまたは個別発注 | 見積に含むか別途 | 校正の往復の時間 |
| 機会損失 | 担当者が本業でできなかった仕事 | (小さい) | 最も数字にされにくい費用 |
| 手戻り・緊急対応 | 直前の追加発注は割高になりやすい | 契約範囲外は追加費用 | 変更が起きたときの扱いを事前に決める |
| 保険・安全 | 自社で手配・判断 | 委託先の体制を確認 | 事故時の責任の所在 |
- 01
内製する工程の工数を出す
後述の手順で、工程ごとの時間を出します。打ち合わせ・調整・当日・撤収を含めます。
- 02
時間単価を掛ける
担当者の人件費を時間単価にして工数に掛けます。単価の出し方は自社の経理・人事のルールに合わせてください。
- 03
内製でも外に払う費用を足す
会場費、機材レンタル、印刷、ケータリングなど、内製でも発生する支払いを足します。
- 04
外注の見積と並べる
外注の見積に含まれる範囲と含まれない範囲を確認し、同じ範囲で比べます。見積の読み方は見積の比較方法で解説しています。
- 05
金額に出ない差を書き添える
品質の安定、トラブル時の対応力、ノウハウの残り方など、数字にならない差を決裁者向けに1行ずつ添えます。
Point
比べるのは「外注費」対「0円」ではなく、「外注費+自社に残る工数」対「内製の人件費+内製でも払う費用+機会損失」です。外注しても自社の工数はゼロになりません。打ち合わせ、確認、社内調整は残るため、外注側にもその工数を入れて比べてください。
外注費がどんな内訳で決まるかは運営代行の料金の内訳、予算全体の組み方はイベント予算の立て方で整理しています。
工程別の内製可否を判定する
工程ごとに「内製が原則」「外注が原則」「どちらでも可」を整理します。社内に経験者がいる工程は、表より内製側に寄せてかまいません。
| 工程 | 内製の難度 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 目的・KPIの設定 | 低 | 内製が原則 | 自社の事業文脈を知らないと設計できない。外に出すと評価軸を持てない |
| 予算の枠決め | 低 | 内製が原則 | 社内の承認プロセスと不可分 |
| 企画・コンセプト | 中 | どちらでも可 | 自社らしさは内製が強い。発想の幅は外部が強い |
| 会場選定・契約 | 中 | どちらでも可 | 候補出しは外部が速い。契約の名義と支払いは自社で持つ選択肢もある |
| 協力会社の選定・発注 | 高 | 外注が有利 | 相場観と業者のつながりが必要。初回の内製は割高になりやすい |
| 制作物のデザイン | 中 | どちらでも可 | 社内にデザイン機能があるかによる |
| 集客・申込管理 | 低 | 内製が原則 | 自社の顧客リストと関係性を持つのは自社 |
| 進行台本・香盤の作成 | 中 | どちらでも可 | 定型化すれば内製可能。複雑な進行は外部が速い |
| 音響・照明・映像の技術 | 高 | 外注が原則 | 専門技能と機材。安全にも直結する |
| 施工・造作 | 高 | 外注が原則 | 構造・電気・防火の規制が絡む |
| 当日の現場統括 | 高 | 外注が有利 | 同時多発の判断が必要。経験差が最も出る |
| 受付・誘導スタッフ | 中 | どちらでも可 | 社員動員は外注費がかからないが、本業が止まる |
| 安全・警備 | 高 | 外注が原則 | 事故時の責任と保険の観点から専門会社に任せる |
| 撮影・記録 | 中 | どちらでも可 | 記録用途なら内製可。対外利用なら外注 |
| アンケート・効果測定 | 低 | 内製が原則 | データを自社に残すことが重要 |
| 事後のフォロー | 低 | 内製が原則 | 商談化は営業の仕事。外に出す意味がない |
注意
上の表で「内製が原則」とした工程は、外に出すとノウハウと評価軸が自社に残らない領域です。逆に「外注が原則」は、安全・法規制・専門技能が絡み、内製の学習コストが見合わない領域です。
社内工数の見積もり方
内製の是非を判断する前に、必要な工数を数字で出してください。感覚で「何とかなる」と判断すると、直前に破綻します。
- 01
工程を洗い出す
上の工程表を使い、内製する工程だけを抜き出します。
- 02
各工程の作業を分解する
「会場選定」なら、候補調査・問い合わせ・下見・社内調整・契約手続き、と作業レベルまで割ります。
- 03
作業ごとに時間を置く
1作業あたりの所要時間を見積もります。やったことがない作業は、経験者の見積より多めに置き、終わったら実績で補正します。
- 04
打ち合わせ・調整時間を足す
見落とされる筆頭です。社内調整、業者との打ち合わせ、メールの往復。作業時間と同じくらいかかることも珍しくありません。
- 05
当日と前後日を足す
前日準備、当日、撤収、事後の精算・機材返却までを日数に入れ、関与する人数を掛けます。撤収が翌日にかかる会場もあるため、会場の規定で確認してください。
- 06
手戻りのバッファを積む
承認のやり直し、仕様変更。どれだけ積むかは過去案件の手戻りの実績から決め、実績がなければ多めに置きます。
- 07
担当者の稼働可能時間と突き合わせる
その期間に、その人が本当にその時間を空けられるかを上長と確認します。ここで無理なら内製は成立しません。
工数見積の目安表
| 工程 | 所要工数の傾向 | 見落としやすい作業 |
|---|---|---|
| 企画・社内合意 | 承認者の数に比例して増える | 資料の作り直し、部門間の調整 |
| 会場選定 | 候補数×下見の移動時間 | 規定確認、搬入条件の確認、社内稟議 |
| 協力会社の選定 | 社数×(依頼・質問対応・比較) | 見積の読み込みと横並び表の作成 |
| 制作物 | 点数×(指示・校正の往復) | 校正の往復の回数。想定より増えやすい |
| 集客 | 配信の準備+申込の問い合わせ対応 | 個別の問い合わせ対応と、直前のキャンセル処理 |
| 台本・香盤の作成 | 登壇者数と転換の数に比例 | 変更のたびの全面更新 |
| リハーサル | 半日〜1日×関係者 | 関係者の日程調整そのもの |
| 当日 | 前日準備・本番・撤収×関与人数 | 早朝集合、終了後の精算、機材返却 |
| 事後 | 精算+報告+フォロー | アンケート集計、社内報告資料の作成 |
Point
工数の見積で最も効くのは「打ち合わせ時間を数えること」です。週1回の定例でも、準備期間の週数と出席者の人数を掛けると、社内の時間は想像以上に積み上がります。これに準備と議事録を足すと相当な量になります。作業時間だけを数えた見積は、実態を大きく下回ります。
内製化が失敗する条件と、よくある判断ミス
内製が破綻するケースには共通のパターンがあります。着手前に該当しないか確認してください。
| 失敗条件 | 何が起きるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 担当者が兼務で、本業の繁忙期と重なる | 直前に手が回らず、外注に緊急で切り替え割高になる | 着手前に繁忙期カレンダーと突き合わせる |
| 担当者が1人しかいない | 体調不良や異動で全体が止まる | 副担当を置き、情報を共有フォルダに集約する |
| 経験のない工程まで内製する | 相場が分からず高く発注する。安全上の見落としが出る | 専門性の高い工程は最初から外注する |
| 決裁者が現場を知らない | 直前の方針変更で作り直しが発生する | 早い段階で決裁者を巻き込み、承認済みの範囲を明文化する |
| 「安いから」だけで決めた | 社内人件費を数えておらず、結果的に高くつく | 内製の総費用を人件費込みで算出する |
| 前回の記録が残っていない | 毎回ゼロから。内製の利点であるはずの蓄積が働かない | テンプレートと振り返り記録を残す運用を先に作る |
| 規模が急に大きくなった | 前回と同じやり方が通用せず破綻する | 参加人数や会場が前回から大きく変わったら設計を見直す |
外注側で起きやすい判断ミス
| ミス | 何が起きるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 目的・KPIまで外注先に任せた | 終わった後に成功かどうかを判断できない | 目的と評価指標は自社で決めてから依頼する |
| 「一式」の見積で契約した | どこまでが範囲か分からず、追加費用が後から出る | 工程ごとの範囲と納品物を仕様書に書く |
| 丸投げして打ち合わせに出なかった | 自社の意図とずれた内容になる。ノウハウも残らない | 主要な打ち合わせには自社の担当者が必ず出る |
| 参加者データを委託先にだけ残した | 次回の集客やフォローに使えない | 名簿とアンケートの受け渡しを契約時に決める |
外注に切り替えるべきサイン
- 準備が予定より2週間以上遅れている
- 担当者の残業が常態化している
- 社内から人を追加で借りる相談が始まっている
- 会場や業者からの質問に即答できない状態が続いている
- リハーサルの日程が確保できていない
- 安全・警備の計画が具体化していない
- 当日の人員配置表が本番2週間前に白紙である
注意
上記に3つ以上当てはまる場合は、その時点で外部の統括を入れることを検討してください。直前になるほど選べる会社と手段が減るため、判断は早いほど有利です。
ハイブリッド(一部外注)の設計
実務で最も安定するのは、工程を分けて一部だけ外注する形です。ただし切り分け方を誤ると、責任の隙間が生まれます。申込や問い合わせ対応だけを切り出す場合は事務局代行の業務範囲で整理しています。
代表的な3つの型
| 型 | 内製する範囲 | 外注する範囲 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 統括外注型 | 目的設定、予算、集客、効果測定 | 企画〜当日運営の実務一式 | 経験が浅い、規模が大きい、社内工数がない |
| 現場外注型 | 企画、制作物、集客、進行台本 | 当日の技術・運営・統括 | 企画力はあるが当日の人手と技能がない |
| 職種直発注型 | 全体統括、企画、進行管理 | 音響・照明・映像・施工を個別に直発注 | 社内に経験者がおり、相場観がある |
職種直発注型は統括会社の管理費が乗らない分、見積の合計は下がることがありますが、取りまとめの責任と工数がすべて自社に来ます。当日、業者間の調整を担える担当者が自社にいるかが分かれ目です。
責任の隙間を作らない4つのルール
- 01工程表に担当者名を書く:「自社」「委託先」ではなく、個人名まで書きます。組織名だと隙間が生まれます
- 02接続点を明文化する:内製工程の成果物を、いつ、どの形式で外注先に渡すかを決めます(例:登壇者資料は本番5日前までにPDFで提出)
- 03当日の指揮系統を1本にする:内製部分と外注部分で指揮者が分かれると、現場で判断が止まります。当日の最終決定者を1人決めてください
- 04連絡手段を統一する:自社はチャット、外注先はメールという状態だと、情報が片方に欠けます
Point
ハイブリッドで最も事故が起きるのは「自社がやるつもりだった」と「委託先がやってくれると思っていた」の間です。工程表で担当が空欄の行がないか、キックオフで1行ずつ読み合わせてください。
工程表の作り方はイベントのスケジュール設計、当日の役割分担はイベントの役割分担を参照してください。
外注するときの依頼先の選び方
外に出すと決めたら、次は依頼先の見極めです。会社の規模や知名度より、自社が出す工程をその会社が得意としているかで選びます。比較の詳しい手順はイベント会社の選び方にまとめています。
| 確認項目 | 見るポイント | 打ち合わせで聞くこと |
|---|---|---|
| 同じ種類のイベントの実績 | 社内向けか対外向けか、規模、形式が近いか | 近い規模・形式の事例で、何を担当しましたか |
| 対応できる範囲 | 企画から当日まで一括か、一部だけでも受けるか | 当日の技術だけ、事務局だけの依頼も受けていますか |
| 見積の透明さ | 費目ごとに単価と数量が出ているか | 「一式」の中身を分けて出せますか |
| 体制と担当者 | 当日の責任者が誰か、打ち合わせの担当と同じか | 当日の現場責任者はどなたですか |
| 連絡の速さと進め方 | 質問への返答の速さ、議事録や工程表を出すか | 定例の頻度と、議事録の共有方法を教えてください |
| 安全とトラブル対応 | 雨天・機材故障・急病時の手順、保険 | 中止や延期の判断と費用の扱いはどうなりますか |
| 納品物と事後対応 | 進行表・図面・記録写真・報告書を渡すか | 終了後に受け取れる資料は何ですか |
依頼範囲は口頭ではなく文書で渡します。書き方は業務委託の仕様書の書き方、複数社への提案依頼はRFPの書き方、契約で決めておく項目はイベントの契約を参照してください。
そのまま使える例文:相談・依頼・切り替え
内製か外注かを決める場面で、そのまま使える文面を場面別に用意しました。◯◯の部分を自社の内容に置き換えてください。
上長に一部外注を相談する(社内チャット・メール)
◯月◯日の◯◯(イベント名)の運営体制について、ご相談です。
準備の工数を工程ごとに見積もったところ、当日の音響・映像と現場統括は社内に経験者がおらず、内製すると担当者の本業が◯週間ほど止まる見込みです。
そこで、目的設定・集客・アンケートは私たちで持ち、当日の技術と運営だけを外部に依頼する形を考えています。
・外注する範囲:当日の音響・映像、現場統括、設営・撤去
・自社で持つ範囲:企画、登壇者調整、集客、受付、効果測定
・費用:見積を◯社から取り、比較表を添えてご報告します
この方向で見積の依頼を進めてよろしいでしょうか。
内製で進めると報告する(上長向け)
◯月の◯◯(イベント名)は、前回と同じ規模・会場のため、今回も内製で進めます。
前回の工程表と進行台本を流用でき、必要な工数は担当2名で◯時間ほどと見積もりました。繁忙期とも重なりません。
なお、準備が予定より遅れた場合や、参加人数が大きく増えた場合は、当日運営のみ外部に依頼する案に切り替えます。その判断の時期は◯月◯日とさせてください。
依頼先に一部だけの見積を頼む(社外メール)
◯◯株式会社
◯◯様
はじめてご連絡いたします。◯◯株式会社 ◯◯部の◯◯と申します。
弊社が◯月◯日に開催する◯◯(参加予定◯名、会場:◯◯)について、当日の運営の一部をご依頼したく、お見積りをお願いできますでしょうか。
■ご依頼したい範囲
・音響・映像の機材と操作
・当日の現場統括と進行
・設営・撤去
■弊社で担当する範囲
・企画、登壇者との調整、集客と申込管理、受付、アンケート
費目ごとの単価と数量が分かる形でお出しいただけますと幸いです。◯月◯日までにご回答をいただけますでしょうか。
ご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
準備の途中で外注に切り替えたいと相談する(社外メール)
◯◯株式会社
◯◯様
◯◯株式会社の◯◯です。
◯月◯日に開催予定の◯◯について、これまで社内で準備を進めてまいりましたが、当日の運営体制が十分に組めない見込みとなりました。
本番まで◯週間と日が迫っておりますが、当日の現場統括と技術を中心にご支援いただけないかご相談させてください。
現在の進行状況(決まっていること・未定のこと)を添付の資料にまとめました。
ご対応の可否と、可能な場合のおおよその進め方を伺えますでしょうか。急なお願いで恐縮ですが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
委託先に記録と資料の納品をお願いする(社外メール)
先日はありがとうございました。おかげさまで無事に終えることができました。
次回以降の準備に役立てたいため、次の資料をお送りいただけますでしょうか。
・進行表と香盤表の最終版
・会場のレイアウト図
・当日の記録写真
・費目ごとの精算の内訳
あわせて、振り返りの打ち合わせを◯月◯日頃に1時間ほどお願いできれば幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。
社員に当日スタッフをお願いする(社内通知)
各位
◯月◯日(◯)に開催する◯◯の運営にあたり、当日スタッフとしてご協力いただける方を募集します。
・担当:受付、会場内の誘導、資料の配布
・時間:◯時集合〜◯時解散(事前説明会:◯月◯日 ◯時から30分)
・人数:◯名
業務への影響を確認のうえ、所属長の了承を得てから、◯月◯日までに◯◯へご連絡ください。
当日の流れと持ち物は、決まりしだい参加者の皆さんにお送りします。
注意
社外宛ての例文は、初めて連絡する相手を想定しています。取引のある相手なら「はじめてご連絡いたします」を「いつもお世話になっております」に替えてください。見積依頼の文面の型をさらに知りたい場合は見積依頼メールの例文、社内の承認の取り方は稟議書の書き方を参照してください。
ノウハウを社内に残す方法
外注しても、設計次第でノウハウは社内に残せます。逆に内製しても、記録がなければ何も残りません。残るかどうかは内製か外注かではなく、残す仕組みがあるかで決まります。
外注しながら学ぶ仕組み
- 自社の担当者を打ち合わせに同席させる:業者との打ち合わせに必ず出席し、議論の内容を把握します
- 成果物の原本を受け取る:進行表、香盤、図面、台本、見積の内訳。契約時に納品物として明記しておきます
- 見積の内訳を毎回保存する:費目別の単価と数量が蓄積すると、翌年の相場観になります
- 当日は「なぜそうするか」を聞く:現場の判断には理由があります。その場で聞くのが最も学びが多い
- 振り返りに委託先を同席させる:反省点を発注者側だけで整理すると、原因の特定を誤ります
残すべき記録の一覧
- 実施概要(日時、会場、参加人数、体制)
- 工程表(計画と実績の両方)
- 見積の内訳と、最終的な精算額
- 協力会社の一覧と、対応の評価メモ
- 進行台本・香盤の最終版
- 会場の制約条件(搬入時間、電源、回線、規定)
- 当日発生したトラブルと対応の記録
- アンケート結果と、事後の行動指標
- 次回への申し送り(変えるべき点を3つ)
蓄積を効かせる運用
- 01
保存場所を1か所に決める
案件ごとにフォルダを切り、上記の一覧を定型の構成で残します。個人のPCに置かないでください。
- 02
終了後2週間以内に振り返る
記憶が鮮明なうちに行います。時間が経つほど「概ねうまくいった」という感想しか出なくなります。
- 03
テンプレート化する
2回目以降は、前回の工程表と台本を複製して差分を変える運用にします。ここで内製の効率が大きく上がります。
- 04
相場表を作る
見積の内訳を費目別に蓄積すると、次回の見積の妥当性を自社で判断できるようになります。
- 05
内製範囲を1工程ずつ広げる
一気に内製化すると破綻します。毎回1工程ずつ自社に取り込むのが現実的です。
Point
内製化は「今回から全部やる」ではなく「毎回1工程ずつ増やす」のが成功する進め方です。3回実施すれば、3工程が自社に移ります。同時に、外注し続けるべき工程(技術系・安全系)も明確になります。
チェックリストの型はイベント運営チェックリストを参照してください。
この記事の要点
- 内製か外注かはイベント単位でなく工程単位で決める。全部内製も全部外注も最適になりにくい。
- 対外的・大規模・初開催・技術の比重が大きいほど外に出す工程を増やす。社内向けの小規模なら内製で回る。
- 内製は無料ではない。担当者の人件費、内製でも払う費用、止まる本業を同じ表に並べて比べる。
- 工数見積では打ち合わせ時間を必ず数える。作業時間だけの見積は実態を大きく下回る。
- 目的設定・集客・効果測定は内製、技術系と安全系は外注が基本形。
- ハイブリッドの事故は責任の隙間で起きる。工程表に個人名を書き、指揮系統を1本にする。
- ノウハウが残るかは内製か外注かでなく、記録を残す仕組みがあるかで決まる。
FAQ
よくある質問
イベント単位ではなく工程単位で決めます。目的とKPIの設定、集客、アンケートと効果測定は自社の顧客や事業を知っている方が質が上がるため内製、音響・照明・施工・警備のように専門技能と安全が絡む工程は外注が基本形です。そのうえで、担当者の人件費と止まる本業を金額に換算し、外注費と比べてください。
懇親会や小規模な社内向けイベントは、会場や料理を会場側に任せれば内製で十分に回ります。社員総会や周年式典のように音響・映像・配信が絡むもの、経営層や来賓が登壇するものは、技術と当日統括だけでも外に出すと担当者の負担が大きく減ります。
外注費はかかりませんが、担当者の人件費と、その人が本業でできなくなった業務の損失が発生します。特に経験のない工程を内製すると、相場が分からず個別発注が割高になり、総額が下がらないことがあります。人件費込みで算出して比較してください。
残ります。目的の決定、依頼範囲の整理、打ち合わせへの出席、社内の承認、集客、当日の最終判断は自社の仕事です。費用を比べるときは、外注した場合に自社に残る工数も入れてください。
目的とKPIの設定、集客、アンケートと効果測定からです。いずれも自社の顧客や事業文脈を知っている方が質が上がり、データも自社に残ります。逆に音響・照明・施工・警備は専門技能と安全が絡むため、外注を続ける方が合理的です。
工程を作業レベルまで分解し、作業時間に加えて打ち合わせ・調整時間、当日と前後日、手戻りのバッファを積みます。バッファの大きさは過去案件の実績から決め、実績がなければ多めに置きます。未経験の作業は、経験者の見積より時間がかかる前提で置いてください。最後に、その時間を担当者が本当に空けられるか上長と確認します。
できますし、実務では最も安定します。統括ごと外注する型、当日の運営と技術だけ外注する型、職種ごとに直発注する型が代表的です。ただし切り分けた境目で責任の隙間が生まれやすいため、工程表に個人名まで書き、当日の最終決定者を1人に定めてください。
自社が出す工程を得意としているかで選びます。近い規模・形式の実績、一部だけの依頼を受けるか、見積が費目ごとに分かれているか、当日の現場責任者が誰か、終了後に受け取れる資料は何か、を打ち合わせで確認してください。
設計次第です。打ち合わせに自社担当者が必ず同席する、進行表や図面などの成果物を納品物として契約に明記する、見積の内訳を毎回保存する、振り返りに委託先を同席させる。この4つを運用すると、外注しながらでも蓄積は進みます。
準備が予定より2週間以上遅れている、リハーサルの日程が取れていない、本番2週間前に人員配置表が白紙、といった兆候が複数出た時点です。直前になるほど依頼できる会社と手段が減るため、判断は早いほど有利です。
小規模で社内向けのイベントなら現実的な選択です。ただし社員の当日稼働は本業が止まる時間であり、無料ではありません。また受付や誘導は経験差が出る業務のため、対外イベントで来場者の第一印象に関わる配置は、経験のあるスタッフに任せる方が安全です。