言葉の使い分け
「決裁」と「決済」の違い
意味・使い分けと例文集
「決裁」と「決済」は、どちらも「けっさい」と読みます。結論から言うと、承認・稟議の話なら「決裁」、お金の支払いの話なら「決済」です。見分けるときは「人が判断するのか(裁く)、お金のやり取りを終えるのか(済ませる)」を考えます。両方を使った一文は「部長の決裁が下りたので、来週カード決済で発注します。」。順番は決裁が先、決済が後になるのがふつうです。このページでは、意味と早見表、稟議・承認・決算など似た言葉との違い、決裁の流れ、場面別の例文、誤用の直し方、送信前のチェックリストをまとめました。
結論
決裁は、権限を持つ人が、部下などから出された案件を認めるかどうか決めることを指し、「決裁を仰ぐ」「決裁が下りる」「決裁者」の形で使われます。決済は、代金の支払いや受け取りによって売り買いの取引を済ませることを指し、「カード決済」「決済方法」「決済日」の形で使われます。
まず結論:見分ける質問
| 見分ける質問 | はい なら | 例 |
|---|---|---|
| 上の立場の人が「やってよいか」を判断する話か | 決裁 | 部長の決裁を仰ぐ/決裁が下りる |
| 代金を払う・受け取る話か | 決済 | カード決済/決済方法/決済が完了する |
| その書類は稟議書・申請書か | 決裁 | 決裁欄/決裁者/決裁日 |
| その書類は請求書・申込みフォームか | 決済 | 決済期日/決済手段 |
Point
判断は「裁」、支払いは「済」。迷ったら「承認」「お支払い」に置き換えて、意味が通るほうの字を選びます。
それぞれの意味
決裁:権限のある人が可否を決める
「決裁」は、上の立場にある人が、案件を認めるか認めないかを決めることです。会社では、稟議書や申請書に対して部長や役員が判断することを指して使われます。「決裁を仰ぐ」「決裁を受ける」「決裁が下りる」「決裁権限」のように、人の判断と組みます。判断の結果は「認める」だけでなく、「認めない」「条件を付けて認める」「差し戻す」もあり得ます。
決済:お金のやり取りで取引を済ませる
「決済」は、代金を支払う(受け取る)ことで売り買いを終えることです。「クレジットカード決済」「電子決済」「決済方法」「決済手数料」のように、支払いの手段や手続きと組みます。会社どうしの取引なら請求書にもとづく振込、個人のお客様相手ならカードやコード払いなど、場面によって手段は変わりますが、どれも「決済」です。
使い分けの早見表
| 項目 | 決裁 | 決済 |
|---|---|---|
| 何を決める・終えるか | 案件を進めてよいかどうか | 代金のやり取り |
| 誰が行うか | 決裁権限のある人(部長・役員など) | 支払う人と受け取る人 |
| よく出る書類 | 稟議書、申請書、起案書 | 請求書、領収書、申込みフォーム |
| よく組む語 | 決裁を仰ぐ、決裁が下りる、決裁者、決裁権限、決裁印、電子決裁 | カード決済、決済方法、決済日、決済手数料、決済システム、電子決済 |
| 動詞の形 | 決裁する/決裁を受ける | 決済する/決済が完了する |
| 言い換え | 承認、許可 | 支払い、お支払い、支払い手続き |
| 例文 | 本件は部長の決裁を受けてから進めます。 | お支払いはカード決済にも対応しています。 |
「決裁」は社内の承認の流れ、「決済」はお金の流れの言葉です。一つの案件で両方が出てくることも多いので、文の中で何を指しているかを確かめて書き分けます。
起案・稟議・承認・決算との違い
「決裁」のまわりには似た言葉が多く、混ぜて使うと「誰が何をする段階か」が伝わりにくくなります。役割で並べると次のとおりです。
| 言葉 | 意味 | 主に行う人 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 起案 | 案を考えて文書にまとめること | 担当者 | 新しい受付方法について起案しました。 |
| 稟議 | 案を文書で関係者に回し、認めてもらう手続き | 担当者が回し、関係者が見る | 会場の契約について稟議を上げます。 |
| 承認 | 内容を認めること。途中の段階の上司が認める場合にも使う | 課長・関係部署など | 課長の承認が済み、部長に回っています。 |
| 決裁 | 最終的に認めるかどうか決めること | 決裁権限のある人 | 部長の決裁が下りました。 |
| 決議 | 会議で話し合って決めること | 取締役会・委員会などの会議体 | 取締役会で決議されました。 |
| 決済 | 代金の支払いで取引を済ませること | 支払う人・受け取る人 | 請求書の金額を振込で決済します。 |
| 決算 | 一定の期間のお金の出入りをまとめ、損益や財産を確定させること | 経理・会社全体 | 決算の時期は経理が立て込みます。 |
とくに「承認」と「決裁」は近い言葉です。途中の上司が目を通して認めるのが「承認」、最後に権限のある人が可否を決めるのが「決裁」と分けておくと、「いまどこまで進んでいるか」を正確に伝えられます。社内で呼び方が決まっている場合はそれに合わせます。稟議書の組み立ては稟議書の書き方と例文、申請書は申請書の書き方にまとめています。
決裁から決済までの流れ
備品の購入や会場の予約など、お金が出ていく案件は、社内の「決裁」が済んでから、取引先との「決済」に進みます。流れの中で、どちらの字を使うかを確かめておきましょう。
- 01
起案する(決裁の準備)
担当者が目的・内容・金額・期限をまとめ、稟議書や申請書を作ります。見積書など判断に必要な資料を添えます。
- 02
承認を回す(決裁の手前)
上司や関係部署が順に内容を確かめます。差し戻されたら、指摘を直して回し直します。
- 03
決裁を受ける
決裁権限のある人が可否を判断します。認められたら「決裁が下りた」、認められなければ「却下された」「差し戻された」と書きます。
- 04
発注・契約する
決裁の結果を受けて、取引先に正式に申し込みます。決裁前に発注を約束しないのが安全です。
- 05
支払う(決済)
請求書にもとづく振込や、カード払いなどで代金を支払います。ここからは「決済」の字です。
- 06
記録を残す
決裁済みの書類と、支払いの記録(請求書・領収書など)をひも付けて保管します。後で「誰が認めた支払いか」をたどれるようにしておきます。
注意
決裁を受けられる金額の上限や、誰が決裁者になるかは会社ごとの規程で決まります。上司が不在のときに別の人が代わりに決裁する(代決)扱いがあるかどうかも、社内の規程で確かめてください。
「電子決裁」と「電子決済」の違い
| 言葉 | 何を電子化したか | 例 |
|---|---|---|
| 電子決裁 | 稟議や申請の承認を、紙と印鑑ではなくシステム上で行うこと | ワークフローシステムで稟議を回す、画面上で承認ボタンを押す |
| 電子決済 | 代金の支払いを、現金ではなく電子的な手段で行うこと | クレジットカード、コード払い、電子マネー、ネットバンキングでの振込 |
社内の仕組みの話なのに「電子決済システムで稟議を回す」と書くのは、取り違えやすい例です。稟議・承認の仕組みは「電子決裁」、支払いの仕組みは「電子決済」です。システムの導入を提案する資料では、件名からどちらの話かがわかるように書きます。
よく使う言い回し一覧
| 言い回し | 使う場面 | 文例 |
|---|---|---|
| 決裁を仰ぐ | 上の人に判断をお願いする | 本件につき、部長の決裁を仰ぎたく存じます。 |
| ご決裁をお願いいたします | 稟議書・メールの結び | 上記の内容につき、ご決裁をお願いいたします。 |
| 決裁が下りる | 認められたことを伝える | 昨日、決裁が下りました。 |
| 決裁を回す | 社内で書類を順に回す | 午前中に決裁を回しておきます。 |
| 決裁待ち | 判断を待っている状態 | 見積りは現在、決裁待ちです。 |
| 決裁権限 | 判断できる権限の範囲 | この金額は課長の決裁権限を超えます。 |
| 決済する | 代金を支払う | 仕入代金を月末に決済します。 |
| 決済が完了する | 支払いが済んだことを伝える | 決済が完了しましたので、ご確認ください。 |
| 決済方法・決済手段 | 支払いの方法を示す | 決済方法はカードと銀行振込から選べます。 |
| 決済期日 | 支払いの期限 | 決済期日は請求書に記載の日付です。 |
場面別の例文
【決裁】稟議書の本文
下記の展示会への出展について、ご決裁をお願いいたします。費用は会場への支払いのほか、ブースの施工費を含みます。出展を見送った場合の影響は別紙にまとめました。
【決裁】上司へのメール(期限つきのお願い)
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
◯◯の購入について、稟議書を回付しました。
先方の都合で◯月◯日(◯)までに発注したいため、それまでにご決裁いただけますと幸いです。
ご不明な点があれば、資料をお持ちして説明いたします。
【決裁】上司へのやわらかい確認(催促)
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
先日お回しした◯◯の稟議について、発注の期限が◯月◯日(◯)に迫っております。
ご判断に足りない資料があればすぐにご用意しますので、お申し付けください。
【決裁】差し戻しを受けたあとの返信
◯◯部長
ご確認ありがとうございます。
ご指摘いただいた費用の内訳を見直し、見積りを二社分そろえて稟議書を修正しました。
あらためてご決裁をお願いいたします。
【決裁】決裁が下りたことのチーム報告(社内チャット)
共有です。会場の申込みについて、部長の決裁が下りました。本日中に先方へ申し込みます。
【決裁】取引先へのメール(社内の承認待ちを伝える)
お見積りをお送りいただき、ありがとうございます。
現在、社内で決裁の手続きを進めております。正式なご発注は◯月◯日(◯)頃になる見込みです。
お待たせして恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
【決裁】取引先へのメール(決裁が下りて発注する)
先日はお見積りをありがとうございました。
社内の決裁が下りましたので、お見積りの内容で正式に発注いたします。
発注書を添付いたしますので、ご確認をお願いいたします。
【決済】取引先へのメール(支払い方法の確認)
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご請求の件につきまして、お支払いの方法を確認させてください。
銀行振込のほか、クレジットカードでの決済にもご対応いただけるか、お教えいただけますと幸いです。
【決済】支払いを済ませたことの連絡
◯月◯日付のご請求につきまして、本日、銀行振込にてお支払いいたしました。
お手数ですが、ご確認をお願いいたします。
【決済】イベントの申込み案内(参加費)
参加費は、お申込みの際にクレジットカードで決済いただけます。決済の完了をもって、お申込みの受付とします。受付完了のメールが届かない場合は、お問い合わせ窓口までご連絡ください。
【決済】決済がうまくいかなかった方への案内
お申込みの手続きで、カード決済が完了していないようです。
お手数ですが、カード情報をご確認のうえ、もう一度お手続きをお願いいたします。
銀行振込をご希望の場合は、このメールにご返信ください。
【両方】社内の段取りを説明する一文
部長の決裁が下りしだい発注し、支払いは請求書が届いてから振込で決済します。
注意
展示会の出展で決裁を取るなら展示会出展の稟議書、請求書まわりはイベントの請求書と請求書送付のメール、支払いが遅れたときは支払い遅延のお詫びメールを参考にしてください。
よくある誤りと直し方
| 誤りやすい書き方 | 気になる点 | 直した書き方 |
|---|---|---|
| 部長の決済をもらう | 支払いではなく、承認の話 | 部長の決裁をもらう/部長の決裁を受ける |
| カード決裁に対応しています | 人の判断ではなく、支払いの話 | カード決済に対応しています |
| 決済者の欄に押印してください(稟議書で) | 承認する人の欄を指している | 決裁者の欄に押印してください |
| 電子決済システムで稟議を回します | 稟議の承認の仕組みなら「決裁」 | 電子決裁システムで稟議を回します |
| 決裁方法:銀行振込 | 支払いの手段を表している | 決済方法:銀行振込(またはお支払い方法:銀行振込) |
| 決算が下りたので発注します | 「決算」は期間のお金をまとめる経理の言葉 | 決裁が下りたので発注します |
| 決裁を回したので、もう発注できます | 回しただけでは、まだ認められていない | 決裁が下りたので、発注できます |
変換ミスは、同じ読みの候補から選ぶときに起こります。社内文書を送る前に「けっさい」を検索して、一つずつ字を確かめるだけでも防げます。読み手に紛らわしいと感じたら、「承認」「お支払い」と言い換えるのも一つの方法です。
覚え方
「裁」は「裁判」「裁く」の裁。物事の良し悪しを判断する字なので、上の人が判断する「決裁」に使います。
「済」は「返済」「済ませる」の済。お金のやり取りを終える「決済」に使います。「支払い済み」の済、と結び付けても思い出せます。
順番で覚える方法もあります。「裁いてから、済ませる」。判断(決裁)が先で、支払い(決済)が後です。
送信前のチェックリスト
- 稟議・申請・承認の話の「けっさい」は「決裁」になっている
- 支払い・カード・振込の話の「けっさい」は「決済」になっている
- 「決算」と打ち間違えていない
- 「決裁を回した(途中)」と「決裁が下りた(済んだ)」を取り違えていない
- 決裁が下りる前に、取引先へ発注を約束する書き方になっていない
- 取引先や一般の方向けの案内では、「お支払い方法」などの言い換えも検討した
- 上司へのお願いには、期限と理由を添えた
この記事の要点
- 決裁は権限のある人が案件の可否を決めること。「決裁を仰ぐ」「決裁が下りる」。
- 決済は代金の支払いで取引を済ませること。「カード決済」「決済方法」。
- 流れは起案→承認→決裁→発注→決済。決裁が先、決済が後。
- 稟議の仕組みは「電子決裁」、支払いの仕組みは「電子決済」。「決算」は別の言葉。
- 紛らわしいときは「承認」「お支払い」と言い換えてもよい。
FAQ
よくある質問
権限のある人が案件を認めるかどうか決めるのが「決裁」、代金の支払いで取引を済ませるのが「決済」です。承認の話か、お金の話かで書き分けます。
稟議書は上の立場の人に案件を認めてもらうための書類なので「決裁」です。「決裁者」「決裁欄」「決裁日」も同じ字です。
どちらも「認める」意味ですが、途中の段階で上司や関係部署が認めることを「承認」、最終的に可否を決めることを「決裁」と分けて使う場合があります。社内で呼び方が決まっていれば、それに合わせます。
「稟議」は案を文書で回して認めてもらう手続きそのもの、「決裁」はその手続きの最後に権限のある人が下す判断です。「稟議を上げて、決裁をもらう」という関係です。
「決算」は、一定の期間のお金の出入りをまとめて、損益や財産を確定させることです。承認を表す「決裁」とも、支払いを表す「決済」とも別の言葉です。
「ご決裁をお願いいたします」「ご決裁いただけますと幸いです」が使いやすい言い方です。期限があるときは、理由と日付を添えると判断してもらいやすくなります。
どちらの書き方も見かけます。社内で表記をそろえているならそれに合わせ、決まりがなければ文書の中でどちらかに統一すれば読みやすくなります。
「支払い」「お支払い」「支払い手続き」などがあります。取引先や一般の方への案内では「お支払い方法」と書くほうが伝わりやすいこともあります。