企画
イベント予算書・予算案の作り方
承認される書式と、確定までの更新
予算書が通らない理由は、金額が高いからではなく、根拠が見えないからであることがほとんどです。承認する側は「この数字は何でできているのか」「どこまで動く可能性があるのか」を知りたい。この記事は、承認を得るための書式と、確定するまでの更新のしかたをまとめます。
結論
イベントの予算書は、①総額 ②費目ごとの内訳 ③各費目の根拠 ④確度(概算か確定か) ⑤予備費で構成されます。企画段階で出すものを予算案、見積が揃って確定したものを予算書と呼び分けることがありますが、名称よりどこまでが概算でどこからが確定かが明示されていることが重要です。
承認者が見ている3点
予算書を読む側の関心は、意外と単純です。
- 01総額はいくらか — 予算枠に収まるか
- 02何にいくらかかるのか、その根拠は何か — 言い値なのか、見積があるのか
- 03どこまで動く可能性があるのか — 上振れしたとき、いくらになるか
Point
3番目が抜けている予算書が多い。 「この金額でやります」とだけ書かれていると、承認する側は上振れのリスクを読めません。どの費目が動きやすいかを明示すると、むしろ通りやすくなります。隠すより、先に出すほうが信用されます。
注意
相場の金額は本記事では示しません。 会場・規模・時期・地域で大きく変わるものを、記事の数字で代用すべきではないからです。相見積もりの実額を入れて使ってください。 費目の立て方と比率の考え方はイベント予算の内訳に整理しています。
予算案と予算書を分ける
同じ表を企画から実施まで使い回すと、どこが確定でどこが推測か分からなくなります。
| 段階 | 呼び方 | 数字の性質 | 承認の意味 |
|---|---|---|---|
| 企画の初期 | 概算・予算案 | 過去実績や経験からの見込み | 方向性の合意 |
| 業者選定後 | 予算書(暫定) | 見積ベース。未確定項目あり | 発注の承認 |
| 発注後 | 予算書(確定) | 発注金額 | 実行の承認 |
| 終了後 | 実績 | 請求額 | 精算 |
Point
表に「確度」の列を作ってください。 「概算/見積取得済/発注済/確定」の4段階で十分です。これがあるだけで、読む側は上振れのリスクを自分で判断できます。
同じ表で管理する
段階ごとに別ファイルを作ると、どれが最新か分からなくなります。1つの表に「当初予算」「現在見込」「確定額」の列を持たせて、横に伸ばしていくのが管理しやすい形です。
費目の立て方
費目は発注先の単位で立てるのが実務的です。会計上の分類ではなく、誰にいくら払うかで並べると、見積と突き合わせやすくなります。
- 会場費(基本料金・延長・付帯設備)
- 設営・施工
- 音響・照明・映像
- 制作費(企画・ディレクション)
- 人件費(当日スタッフ・司会・警備)
- 制作物(印刷・サイン・ノベルティ)
- 飲食
- 登壇者・出演者(謝礼・交通費・宿泊)
- 配信・撮影
- システム(申込フォーム・配信ツール)
- 運搬・交通
- 予備費
Point
「制作費」と「実費」を混ぜないでください。 ディレクション費のような手数料と、会場費のような実費では性質が違います。承認者が見たときに、どこが交渉できてどこが動かせないかが分かる並びにしてください。
ディレクション費や管理費がどう決まるかはイベント運営代行の料金の内訳で整理しています。予算書の費目と見積の費目をそろえておくと、突き合わせが楽になります。
予備費をどう置くか
注意
予備費の比率を、本記事では示しません。 規模とリスクの大きさで変わるためです。ただし予備費の行を作らない予算書は、上振れしたときに追加承認が必要になります。 比率は自社で決めて、根拠(何に備えているか)を1行書いてください。
根拠を1行で書く
金額の横に根拠を書くだけで、予算書の説得力が変わります。
| 根拠の書き方 | 承認者の受け取り方 |
|---|---|
| (空欄) | この数字は何だ? |
| 「概算」 | まだ分からないのだな |
| 「前回実績」 | 根拠はあるな |
| 「A社見積(10/3取得)」 | 確度が高い |
| 「A社・B社の相見積もり中。上限で計上」 | 上振れしない |
Point
「相見積もり中なので上限で計上」は非常に有効です。 承認時点では高い数字が載りますが、確定時に下がる。追加承認を取りに行く事態を避けられます。上に振れない予算書は信用されます。
注意
見積の取り方は見積の比較、見積書そのものの作り方はイベント見積書の作り方を参照してください。
Excelでの管理
予算管理表のテンプレートを配布しています(登録不要)。費目一覧つきで、金額は空欄です。相見積もりの実額を入れて使ってください。
列の構成
| 列 | 用途 |
|---|---|
| 費目/項目 | 発注先の単位で立てる |
| 当初予算 | 承認を取った金額。あとで書き換えない |
| 現在見込 | 最新の見込み。見積が入るたびに更新 |
| 確定額 | 発注後に埋める |
| 確度 | 概算/見積取得済/発注済/確定 |
| 根拠 | 1行。「A社見積(10/3)」など |
| 差異 | 当初予算との差。自動計算 |
| 発注先 | 誰に払うか |
| 支払予定日 | 資金繰りに効く |
Point
「当初予算」の列を書き換えないのが肝です。 書き換えてしまうと、何がどれだけ増えたのかが消えます。当初と現在の差分が見えるからこそ、途中で軌道修正できます。
更新のタイミング
- 見積が1社入るたびに「現在見込」を更新する
- 発注したら「確定額」と「確度=発注済」を埋める
- 週1回、差異の列を見て、当初予算との開きを確認する
- 開きが出たら、その時点で相談する(終わってから報告しない)
Point
予算超過は、終わってから報告すると事故になります。 途中で分かっていれば、削る判断ができます。差異の列を週1回見るだけで、この事故はほぼ防げます。
承認を取りに行くとき
- 01
総額と予算枠の関係を最初に言う
「予算枠◯◯に対して、総額◯◯です」。結論から。 内訳の説明から入ると、聞く側は総額が気になって集中できません。
- 02
動く可能性がある費目を自分から挙げる
隠さない。 「この2費目はまだ相見積もり中で、上限で計上しています」と先に言うと、信用されます。
- 03
削れる候補を用意しておく
「予算を◯◯下げるなら、ここを削ります」という案を持っていくと、その場で決まります。削る順番の考え方はイベント予算の内訳に整理しています。
- 04
予備費の根拠を1行で言えるようにする
「何に備えているのか」。答えられないと、真っ先に削られます。
- 05
次に数字が動くタイミングを伝える
「◯月◯日に見積が出揃うので、そこで再度ご報告します」。次の報告を予告すると、途中の変更を受け入れてもらいやすくなります。
- 総額と予算枠の関係を1行で言える
- 確度の列を埋めている
- 各費目に根拠を1行書いている
- 動く可能性がある費目を自分から挙げられる
- 予備費の根拠を言える
- 削る候補を用意している
- 次に数字が動くタイミングを伝えられる
注意
企画書に予算を載せる場合の書き方はイベント企画書の書き方、終了後の報告はイベント報告書を参照してください。
この記事の要点
- 承認者が見るのは①総額 ②根拠 ③どこまで動くか。3番目が抜けている予算書が多い。
- 「確度」の列を作る。 概算/見積取得済/発注済/確定の4段階で、読む側が自分でリスクを判断できる。
- 費目は発注先の単位で立てる。 会計の分類ではなく、誰にいくら払うかで並べると見積と突き合わせやすい。
- 「相見積もり中なので上限で計上」は有効。 確定時に下がるので、追加承認を取りに行かずに済む。
- 「当初予算」の列は書き換えない。 差分が見えるから軌道修正できる。
- 差異の列を週1回見るだけで、予算超過の事後報告という事故はほぼ防げる。
FAQ
よくある質問
費目一覧つきの予算管理表のテンプレートを配布しています(登録不要)。金額は空欄なので、相見積もりの実額を入れて使ってください。列は「費目」「当初予算」「現在見込」「確定額」「確度」「根拠」「差異」「発注先」「支払予定日」の構成で、見積が入るたびに現在見込を更新していく使い方を想定しています。
総額、費目ごとの内訳、各費目の根拠、確度(概算か確定か)、予備費が基本の構成です。承認する側が知りたいのは、総額が枠に収まるか、数字の根拠は何か、どこまで動く可能性があるか、の3点です。3番目が抜けている予算書が多いので、動きやすい費目を自分から明示してください。隠すより先に出すほうが信用されます。
名称の使い分けより、どこまでが概算でどこからが確定かが明示されていることが重要です。企画初期は過去実績からの見込み、業者選定後は見積ベース、発注後は発注金額、終了後は請求額と、同じ費目でも数字の性質が変わります。表に「確度」の列を作り、概算/見積取得済/発注済/確定の4段階で示してください。
発注先の単位で立てるのが実務的です。会計上の分類ではなく、誰にいくら払うかで並べると、見積と突き合わせやすくなります。会場費、設営・施工、音響・照明・映像、制作費、人件費、制作物、飲食、登壇者、配信・撮影、システム、運搬・交通、予備費といった並びです。制作費のような手数料と、会場費のような実費は混ぜないでください。
比率は本記事では示しません。規模とリスクの大きさで変わるためです。ただし予備費の行がない予算書は、上振れしたときに追加承認が必要になります。比率は自社で決めて、何に備えているのかを1行書いてください。根拠を言えないと真っ先に削られます。
表に「当初予算」「現在見込」「確定額」「差異」の列を持たせ、見積が入るたびに現在見込を更新し、週1回差異の列を見てください。当初予算の列は書き換えないのが肝です。書き換えると何がどれだけ増えたか分からなくなります。開きが出た時点で相談すれば削る判断ができますが、終わってから報告すると事故になります。