手順
上司への提案の仕方
伝え方の順番と、提案書の骨子・そのまま使える言い方
上司や社内への提案は、思いついた案を話すのではなく、相手が「決められる形」にして渡すのがこつです。やり方の要点は、いまの困りごとを先に言う、案は一つに絞る、効果と必要なもの(手間・費用・人)を並べる、最後に「何を決めてほしいか」を言うの四つです。見本の言い方は「◯◯課長、◯◯の件で一つ提案があります。いま◯◯の集計に毎週手作業で時間がかかっているので、◯◯の形に変えてはどうかと考えています。まず来月の一か月だけ、私の担当分で試してもよろしいでしょうか」。これなら、上司は「やるか・やらないか」だけを答えればよくなります。イベントの企画書・提案書はイベント企画書の書き方、費用の決裁を取る書類は稟議書の書き方にまとめているので、このページでは上司・社内に提案を持ちかけるときの手順と言い方に絞ります。
結論
提案の伝え方は①いまの困りごと(事実) ②案 ③期待できる効果 ④必要なもの(手間・費用・人・期間) ⑤お願いしたいことの五つです。締めの一言は「◯◯について、試してよいかご判断いただけますか」のように、相手に決めてほしいことを一つにします。
提案するときの手順
- 01
困りごとを事実で書き出す
「なんとなく非効率」ではなく、何に、どのくらいの手間がかかっているか、誰が困っているかを、自分の業務の記録から書き出します。数字を出すときは、自分で数えたもの・記録にあるものだけにします。
- 02
案を一つに絞り、ほかの案と比べておく
案が三つあっても、話すときは一番よいと思う案を一つにします。ほかの案と比べた理由は、聞かれたときに答えられるよう手元に残しておきます。
- 03
必要なものと、うまくいかなかったときの戻し方を考える
手間・費用・人・期間のほか、やめるときにどう元に戻すかも考えておきます。戻し方があると、上司は試すことを決めやすくなります。
- 04
決める人と、話を通す順番を確かめる
誰が決められる話かは会社の決まり(決裁の範囲)に従います。まず直属の上司に話し、ほかの部署に関わる話なら、上司と相談して誰に先に話すかを決めます。
- 05
時間をもらって、短く伝える
立ち話で済ませず、「◯分ほどお時間をいただけますか」と時間をもらいます。一枚にまとめた資料を見せながら、上の五つの順で話します。
- 06
決まったことと次の一歩を確かめる
その場で決まらなくても、「いつまでに、何があれば判断できそうか」を聞いて終えます。
Point
提案でいちばん大切なのは、最後に「何を決めてほしいか」を言うことです。案の説明だけで終わると、上司は「いい考えだね」と言ったまま、何も決まらないことがあります。
提案書の骨子(A4一枚)
| 見出し | 書くこと | 書き方のこつ |
|---|---|---|
| 件名 | 何についての提案か | 「◯◯の集計方法の変更について(提案)」のように中身が分かる名前 |
| お願いしたいこと | 判断してほしいこと | 冒頭に置く。「◯月から試行してよいか」 |
| いまの困りごと | 事実と、誰が困っているか | 自分で確かめた事実だけを書く |
| 案 | 何をどう変えるか | 変える前と後を並べると伝わりやすい |
| 期待できる効果 | 何がよくなるか | 見込みは「見込み」と書き、言い切らない |
| 必要なもの | 手間・費用・人・期間 | 費用がかかる場合は、稟議など会社の手続きに従う |
| 進め方と戻し方 | 試す範囲・期間、やめる条件 | 小さく試して、結果を見て広げる形にする |
| 添付 | 比べた案、元の記録 | 本文には入れず、聞かれたら見せる |
社内の提案は、短いほど読んでもらえます。詳しい比較や記録は添付に回し、一枚目で「何を決めてほしいか」が分かるようにします。数字や事実の見せ方は報告書の書き方、事実と意見の分け方はファクト・ロジカルの意味も参考にしてください。
そのまま使える言い方(場面別)
上司に時間をもらう
◯◯課長、いま少しよろしいでしょうか。
◯◯の進め方について一つ提案があり、◯分ほどお時間をいただけますか。
今日でなくても大丈夫です。ご都合のよい時間を教えてください。
業務のやり方を変える提案(口頭)
◯◯の件で提案があります。
いま、毎週の◯◯の集計を手作業で行っていて、担当の三人がそれぞれ半日ほどかけています。
これを◯◯の形にまとめれば、入力が一度で済むと考えています。
まずは来月の一か月、私の担当分だけで試してみてもよろしいでしょうか。
うまくいかなければ、今の形にすぐ戻せます。
注意
例文中の人数や時間は、自分で確かめた事実に置き換えて使ってください。確かめていない数字は言わないほうが、提案全体の信頼を守れます。
チャットで提案の時間をお願いする
◯◯課長
お疲れさまです。◯◯です。
◯◯の手順について改善の提案があり、一枚にまとめました(添付)。
今週中に◯分ほど、ご説明のお時間をいただけますでしょうか。
ご判断いただきたいのは「来月から試してよいか」の一点です。
費用がかかる提案
◯◯の道具を新しく使う提案です。
費用がかかるため、進めてよいと判断いただけた場合は、会社の手続きに沿って稟議を上げます。
まずは、方向として進めてよいかをご相談させてください。
前任者や他部署のやり方を変える提案
今のやり方は、◯◯の事情があって決められたと伺っています。
その事情は残したまま、◯◯の部分だけ変えられないかと考えました。
◯◯部にも関わるので、進めてよい場合は、どなたから先にお話しするのがよいか教えていただけますか。
今のやり方を決めた人がいる場合は、否定から入らず、決めた理由を尊重する一言を先に置きます。他部署への話の通し方は、このあとの根回しの仕方を見てください。会議の場で資料を映して提案を発表する場合は社内プレゼンのやり方も参考にしてください。
上司から「考えておく」と言われたとき
ありがとうございます。
ご判断に足りない材料があれば集めますので、気になる点を教えていただけますか。
来週の◯曜日に、改めて伺ってもよろしいでしょうか。
よくある失敗と直し方
| よくある失敗 | 困ること | 直し方 |
|---|---|---|
| 案から話し始める | なぜ変えるのかが分からず、聞き手が判断できない | 困りごとを先に言う |
| 案をいくつも並べる | 上司が選ぶ手間が増え、決まらない | 一番よい案を一つ出し、比べた案は手元に |
| 効果を言い切る | 外れたときに提案した人の信頼が下がる | 「見込み」と言い、試して確かめる形にする |
| 必要な手間や費用を言わない | 後から分かって、話が止まる | 手間・費用・人・期間を先に並べる |
| 直属の上司を飛ばして話す | 上司の立場をつぶし、反対されやすくなる | まず直属の上司に話し、順番を相談する |
| 会議の場でいきなり出す | 関係者が初めて聞く話に身構える | 関係する人には事前に話しておく |
言ってはいけない・避けたい言い方
| 避けたい言い方 | 気になる点 | こう言う |
|---|---|---|
| 今のやり方はおかしいと思います | 決めた人を責める言い方になる | ◯◯の部分を、こう変えられないかと考えました |
| 絶対にうまくいきます | 根拠のない言い切りに聞こえる | ◯◯がよくなる見込みです。まず小さく試させてください |
| 他の会社ではみんなやっています | 確かめていない一般論は説得力がない | ◯◯社の事例では◯◯だったと、◯◯で読みました(出典を示す) |
| ご検討させていただけますか | 検討するのは上司なので、自分の動作に使う「させていただく」は合わない | ご検討いただけますか |
| ご覧になられましたか | 「ご覧になる」に「られる」を重ねている | ご覧になりましたか |
会議の場で上司や他の人の案に反対するときの言い方は会議で反対意見を言うときの言い方にまとめています。
後日のフォロー(お礼・報告・お詫び)
提案を聞いてもらったお礼
◯◯課長
お疲れさまです。◯◯です。
本日は、◯◯の件でお時間をいただき、ありがとうございました。
ご指摘いただいた◯◯の点を確かめ、◯日までに改めてご報告します。
試してみた結果の報告
◯◯課長
お疲れさまです。◯◯です。
◯月から試していた◯◯の件、結果をご報告します。
・よかった点:◯◯
・うまくいかなかった点:◯◯
・今後の案:◯◯
続けるかどうか、ご判断をお願いできますでしょうか。
見送りになったとき
◯◯課長
ご検討いただき、ありがとうございました。
◯◯の点はまだ詰めが足りなかったと分かりました。
状況が変わったときには、改めてご相談させてください。
提案の内容に誤りがあったときのお詫び
◯◯課長
お疲れさまです。◯◯です。
先日お出しした提案書のうち、◯◯の記録の読み取りに誤りがありました。申し訳ありません。
正しくは◯◯です。直したものを添付します。結論は変わりませんが、◯◯の見込みは控えめに改めました。
注意
見送りになっても、聞いてもらったことへのお礼は必ず伝えます。次の提案を聞いてもらいやすくなります。お礼のメールの形は上司・先輩へのお礼も参考にしてください。
この記事の要点
- 提案は困りごと→案→効果→必要なもの→お願いしたいことの順。
- 案は一つに絞り、比べた案は聞かれたら見せる。
- 効果は言い切らず、小さく試して確かめる形で出す。
- まず直属の上司に話し、決める人は会社の決まりで確かめる。
- 見送りでもお礼を伝え、試した後は結果を報告する。
FAQ
よくある質問
よいかどうかは職場の雰囲気にもよりますが、困りごとを事実で示し、小さく試す形にすれば、受け止めてもらいやすくなります。最初は「提案」と構えず、「◯◯について、こう変えられないかと考えたのですが、どう思われますか」と相談の形で切り出すのも一つの方法です。
小さな変更なら口頭やチャットで十分なこともあります。関係する人が多い、費用がかかる、あとで経緯を確かめたい、といった場合は一枚にまとめておくと、上司がさらに上の人に説明するときにも使えます。会社に提案制度や決まった書式がある場合は、それに従ってください。
改善提案は今の仕事のやり方を変える話で、困りごとと効果が中心になります。新しい企画の提案は、目的や対象、実施の中身まで書く必要があります。イベントの企画書は別の記事にまとめています。
断られた理由を聞き、「何があれば判断できるか」を確かめてください。費用、手間、時期、関係する部署の了解など、理由によって次の一手が変わります。範囲を小さくして試す形に変えると、通りやすくなることがあります。
基本は直属の上司に先に話します。上司を飛ばすと、内容がよくても進めにくくなります。社内の提案制度などで直接出せる仕組みがある場合は、会社の決まりに従ってください。