スピーチ
スピーチの始め方と最初のつかみ
第一声の型と場面別の例文
スピーチの始め方は、呼びかけ → 名乗り → お礼 → つかみの一文 → 本題の予告の順にすると迷いません。最初の挨拶(名乗りとお礼)は短く済ませ、つかみは、その場にいる全員が分かる話題か、本題につながる一場面から入ります。笑いを取る必要はありません。聞き手が「この話を聞こう」と顔を上げてくれれば、つかみとしては十分です。このページでは、第一声の型、つかみの種類、場面別にそのまま使える書き出しを並べました。原稿全体の長さはスピーチの文字数と時間の目安、覚え方はスピーチを覚えるコツにまとめています。
結論
スピーチの最初のつかみとは、名乗りとお礼のあとに置く、聞き手の注意を本題へ向ける一文のことです。型は①その場の話題 ②問いかけ ③場面から入る ④結論から入るの四つを覚えておけば、たいていの場で使えます。
第一声の型:五つの部品を順に並べる
| 順番 | 部品 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 呼びかけ | 皆さん、おはようございます。/皆さま、こんばんは。 |
| 2 | 名乗り | ただいまご紹介にあずかりました、◯◯部の◯◯です。 |
| 3 | お礼 | 本日はこのような場でお話しする機会をいただき、ありがとうございます。 |
| 4 | つかみの一文 | 今朝、駅からの道で◯◯を見かけました。 |
| 5 | 本題の予告 | 今日は、その◯◯の話から、私たちの◯◯についてお話しします。 |
1〜3は最初の挨拶、4と5がつかみです。最初の挨拶は場の決まりごとなので、型どおりで構いません。工夫するのは4の一文だけです。司会に紹介されていない場面では、2を「◯◯部の◯◯です」とだけ言えば足ります。
Point
「ご紹介にあずかりました」は「与る(あずかる)」で、「預かる」ではありません。原稿に書くときは、ひらがなで「あずかりました」とすると迷いません。
つかみの種類と、合う場面
| つかみの型 | 書き出しの例 | 合う場面 |
|---|---|---|
| その場の話題 | 今日は朝から冷え込みましたが、会場に入ったら熱気で上着が要らなくなりました。 | 宴席・式典・イベントの開会 |
| 問いかけ | 皆さんは、入社した日のことを覚えていますか。 | 歓迎会・研修・入社式 |
| 場面から入る | ◯年前の春、私はこの会議室で、一枚の企画書を前に頭を抱えていました。 | 受賞・送別・周年 |
| 結論から入る | 今日お伝えしたいことは一つです。◯◯を、今月中に終わらせましょう。 | 朝礼・会議・キックオフ |
| 人に触れる | ◯◯さんと初めて話したのは、◯◯の現場でした。 | 送別会・歓迎会・表彰の祝辞 |
迷ったら「場面から入る」が使いやすい型です。「いつ・どこで・何があったか」を一文で言うと、聞き手は情景を思い浮かべ、続きを聞く姿勢になります。問いかけは、聞き手に答えてもらう必要はありません。少し間を置いて、自分で話を続けます。
注意
その場の話題は、天気・会場・料理・季節の行事など、全員が同じものを見たり感じたりしているものを選びます。季節の話題を探すときは時候の挨拶の一覧も参考になります。
場面別の書き出し例文
朝礼
皆さん、おはようございます。◯◯課の◯◯です。
今日は結論から申し上げます。今週は◯◯の締め切りが重なっています。
そこで、一つお願いがあります。
おはようございます。◯◯です。
昨日、お客様から一本の電話をいただきました。その話を少しさせてください。
朝礼のスピーチは短いので、名乗りのあとすぐにつかみに入ります。ネタの探し方は朝礼スピーチの例文とネタにまとめています。
歓迎会(迎える側)
皆さん、こんばんは。◯◯部の◯◯です。
まずは◯◯さん、◯◯部へようこそ。
皆さんは、この部署に来た最初の日のことを覚えていますか。私は、コピー機の場所が分からずに一日うろうろしていました。
送別会(送る側)
皆さま、こんばんは。◯◯部の◯◯です。
◯◯さん、長い間お疲れさまでした。
◯◯さんと初めて一緒に仕事をしたのは、◯年前の◯◯のときでした。あの日のことは、今でもよく覚えています。
送別・歓迎の挨拶の全体は送別会の挨拶と歓迎会の挨拶にあります。
表彰の受賞者として
ただいまご紹介にあずかりました、◯◯部の◯◯です。
このような賞をいただき、ありがとうございます。
正直に申し上げますと、名前を呼ばれたとき、一番驚いたのは私自身でした。
受賞の挨拶の続きは表彰式の挨拶 例文を見てください。
研修・勉強会の講師として
皆さん、こんにちは。本日の講師を務めます、◯◯部の◯◯です。
始める前に一つ質問です。この中で、◯◯で困ったことがある方はいらっしゃいますか。
……ありがとうございます。今日は、その困りごとを一つでも減らして帰っていただくための時間です。
社外向けイベントの主催者として
皆さま、本日はお忙しい中お越しいただき、誠にありがとうございます。
主催の株式会社◯◯で◯◯を務めております、◯◯と申します。
受付で皆さまのお名前を拝見しながら、◯◯でお世話になった方のお顔が何人も浮かびました。
避けたい始め方と、言い換え
| 避けたい始め方 | 理由 | 言い換え |
|---|---|---|
| 「話が下手なので、お聞き苦しいと思いますが」 | 聞き手が身構え、話の中身より不安が残る | 「短くお話しします」 |
| 「僭越ながら」「恐縮ですが」を何度も重ねる | 前置きが長くなり、本題が遅れる | 一度だけ使い、すぐ本題に入る |
| 「急に頼まれたので何も準備していませんが」 | 頼んだ人や主催者が気まずくなる | 「お声がけいただきありがとうございます」 |
| 一部の人にしか分からない内輪の話から入る | それ以外の人が置いていかれる | 全員が知っている場面か、説明を一言添える |
| 誰かをからかう話から入る | 本人が嫌な思いをすることがある | その人のよいところに触れる場面を選ぶ |
謙遜の言葉を入れる場合も、一つで十分です。重ねるほど、聞き手は本題を待たされます。
書き出しを決めるときのチェックリスト
- 名乗りで、所属と名前をはっきり言っているか
- お礼は一文に収まっているか
- つかみの一文は、本題とつながっているか(つかみだけ浮いていないか)
- その場にいる全員が分かる話題か
- 冒頭の数文を声に出して言ってみて、言いにくい言葉がないか
- 前の人と同じ話題にならないか(同じ会で複数人が話すとき)
最初の数文だけは、原稿を見なくても言えるようにしておくと、話し出しが安定します。話し方そのものの準備はスピーチの話し方のコツとマイクの持ち方、終わり方はスピーチの締め・最後の一言にまとめました。
この記事の要点
- 第一声は呼びかけ・名乗り・お礼・つかみ・本題の予告の順。
- 工夫するのはつかみの一文だけ。最初の挨拶は型どおりでよい。
- 迷ったら「いつ・どこで・何があったか」の場面から入る。
- つかみは全員が分かる話題で、本題とつながるものを選ぶ。
- 謙遜や前置きは一つだけにして、早く本題に入る。
FAQ
よくある質問
「皆さん、こんにちは」などの呼びかけのあと、「◯◯部の◯◯です」と名乗り、「本日はお話しする機会をいただき、ありがとうございます」とお礼を一文述べれば足ります。司会に紹介された場合は「ただいまご紹介にあずかりました、◯◯です」と始めます。
その必要はありません。つかみの役目は、聞き手の注意を本題に向けることです。無理に笑いを狙うより、その場の話題や、本題につながる場面を一文で話すほうが、話の流れが自然になります。
どちらも使えます。「ご紹介にあずかりました」は改まった場でよく使われる言い方で、「ご紹介いただきました」は少しやわらかい言い方です。式典や来賓のいる場では前者、社内の会では後者というように、場の改まり具合で選ぶとよいでしょう。
名乗りのあとに、所属や担当を一言添え、そこから話題につなげます。たとえば「◯◯を担当している◯◯です。この仕事を始めて、一番驚いたことからお話しします」とすると、自己紹介とつかみを一度に済ませられます。自己紹介の例文は自己紹介の例文にまとめています。
答えてもらう前提にしないのが基本です。「覚えていますか」と問いかけたら、少し間を置き、「私は……」と自分の話を続けます。手を挙げてもらう問いかけをするときは、自分も手を挙げて見せると、聞き手が反応しやすくなります。