敬語
「僭越ながら」の意味と使い方
乾杯・スピーチ・メールの例文
「僭越ながら」は、自分の立場では出過ぎたことだと分かったうえで、あえて務めさせてもらうときのへりくだった前置きです。読み方は「せんえつながら」。目上の人が大勢いる宴会で乾杯の音頭を任されたとき、上司や取引先に意見を伝えるときに使えます。そのまま使える一文は「ご指名をいただきましたので、僭越ながら乾杯の音頭を取らせていただきます。」。主催者や社長が自分の役目として挨拶するときには使いません。乾杯の挨拶全体の組み立ては乾杯の挨拶の例文にまとめているので、このページでは「僭越ながら」という言葉そのものに絞って、使える場面の表、言い換え、スピーチとメールの例文を並べました。
結論
「僭越(せんえつ)」は、自分の身分や立場を越えて、出過ぎたことをすることです。「〜ながら」を付けた「僭越ながら」は、出過ぎたことと承知のうえでという意味の前置きになり、そのあとに「乾杯の音頭を取らせていただきます」「一言申し上げます」などを続けます。改まった場では「僭越ではございますが」とも言います。
「僭越ながら」の意味と成り立ち
「僭」は分を越えて上の立場のことをする、「越」は越えるという意味の字です。合わせた「僭越」は、自分の立場にふさわしくない出過ぎたふるまいを指します。
「僭越ながら」と言うときは、本当に出過ぎたことをしているわけではなく、指名されて役目を引き受けたことを、へりくだって表しているのが普通です。目上の人がいる前で話し始めるとき、その場の人たちへの敬意を示す役割があります。
Point
「僭越ながら」は、自分より目上の人がいる場で、目立つ役目を務めるときの前置き。自分の立場どおりの役目をこなすときには必要ありません。
使える場面・使わないほうがよい場面
| 場面 | 「僭越ながら」 | 代わりに使う言葉 |
|---|---|---|
| 若手・中堅が指名されて乾杯の音頭を取る | 使える | ― |
| 宴会の中締め・締めの挨拶を任される | 使える | ― |
| 取引先の祝賀会で来賓として挨拶する | 使える | ― |
| 社員を代表して送別の言葉を述べる | 使える | ― |
| 上司・取引先に意見や提案を伝える | 使える(一度だけ) | ― |
| 目上の人が集まる場で司会を任される | 使える | (社内の気軽な会なら)本日の司会を務めます |
| 主催者・社長が主催者として挨拶する | 合わない | 主催者を代表して、ご挨拶申し上げます |
| 上司が部下だけの席で話す | 合わない(へりくだる必要がない) | 一言だけ話をさせてください |
注意
「僭越ながら」は聞き手に目上の人がいるときに意味を持つ言葉です。同期や後輩だけの気軽な飲み会では大げさに聞こえることもあります。そうした場では「乾杯の音頭を取ります」と簡潔に言えば十分です。
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
| 言い方 | 丁寧さ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 僭越至極ではございますが | 最も改まった言い方 | 式典・格式の高い祝賀会 |
| 僭越ではございますが | 改まった言い方 | 来賓としての挨拶・改まった文書 |
| 僭越ながら | 改まった言い方 | 乾杯・中締め・代表挨拶・提案のメール |
| 恐れながら | 改まった言い方(やや古風) | 目上に異を唱える前置き |
| 恐縮ではございますが | 丁寧 | お願いや発言の前置き |
| 失礼ながら | 丁寧 | 相手の誤りの指摘や質問の前 |
| 私から一言 | 標準 | 社内の気軽な集まり |
「恐縮ではございますが」は相手に手間や負担をかける申し訳なさを表し、「僭越ながら」は自分が出過ぎたことをする申し訳なさを表します。乾杯の音頭や意見のように自分が前に出るときは「僭越ながら」、お願いの前は「恐縮ですが」が合います。使い分けは「恐縮ですが」と「恐れ入りますが」の違いも参考にしてください。
場面別の例文(スピーチ・メール)
スピーチ:社内の懇親会で乾杯の音頭を取る(若手)
ご指名をいただきました、◯◯部の□□です。
僭越ながら、乾杯の音頭を取らせていただきます。
今日は部署を越えて皆さんとお話しできるのを楽しみにしてきました。
それでは皆さん、グラスをお持ちください。皆さんのご健康と、◯◯のますますの発展を祈念して、乾杯!
スピーチ:取引先の祝賀会で来賓として乾杯する
ただいまご紹介にあずかりました、株式会社△△の□□でございます。
◯◯株式会社様、創業◯周年、誠におめでとうございます。
僭越ではございますが、ご指名により乾杯の発声を務めます。
◯◯株式会社様のますますのご発展と、本日お集まりの皆様のご健勝を祈念いたしまして、乾杯。
スピーチ:忘年会の中締めを任される
◯◯部の□□です。宴もたけなわではございますが、僭越ながら中締めのご挨拶を申し上げます。
今年一年、皆さんに支えていただいたおかげで、◯◯をやり遂げることができました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、一本締めで締めたいと思います。お手を拝借。よーお!
メール:乾杯の音頭の依頼を引き受ける返信
件名:Re:◯◯懇親会での乾杯のご依頼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
このたびは乾杯のご指名をいただき、ありがとうございます。
僭越ではございますが、謹んでお引き受けいたします。
当日の流れや、乾杯の前にお話しする時間の目安がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
メール:上司に進め方の提案をする(社内)
件名:◯◯の進め方についての提案
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
◯◯の準備について、僭越ながら一点提案させてください。
現在は受付と案内を同じ担当が兼ねていますが、開場直後に混雑が予想されるため、受付だけを先に別の担当へ分けてはいかがでしょうか。
必要であれば、担当の割り振り案をまとめてお持ちします。ご検討いただけますと幸いです。
メール:取引先に人を紹介する
件名:◯◯の件でのご紹介(株式会社◯◯ ◯◯様)
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日お話のあった◯◯の件で、僭越ながらご紹介したい方がおります。
株式会社◯◯の◯◯様で、同様の催しの運営に長く携わっていらっしゃいます。
ご関心がございましたら、お二人のご都合を伺ったうえで、顔合わせの場を設けます。
注意
乾杯の挨拶は「僭越ながら」の前置きのあと、短く本題に入ると締まります。乾杯の挨拶全体の型は乾杯の挨拶の例文、宴会で誰がどの順番で挨拶するかは宴会の挨拶の順番、締めの言葉はスピーチの締めの一言を見てください。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 潜越ながら | 漢字の書き間違い。「せん」は「僭」 | 僭越ながら |
| 僭越ながら、乾杯の音頭を取らさせていただきます | 「取る」には「取らせて」と続くので、「さ」が余分(さ入れ言葉) | 僭越ながら、乾杯の音頭を取らせていただきます |
| (社長が自社の式典で)僭越ながら、社長としてご挨拶いたします | 自分の立場どおりの役目なので、へりくだる必要がなく不自然に聞こえることがある | 本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます |
| 「僭越ながら」「恐縮ですが」「失礼ながら」を前置きで重ねる | 前置きが長くなり、本題が遅れる | 前置きは一つだけにして、すぐ本題に入る |
| 僭越ながら、と言ったあとで自分の話を長く続ける | へりくだった前置きと、話の長さが釣り合わないと感じる人もいる | 乾杯や中締めは短くまとめる |
「僭越ながら」と言われたとき・頼まれたときの返事
部下や後輩から「僭越ながら」と前置きして意見をもらったときは、意見をくれたことへのお礼を返し、どう扱うかを伝えます。へりくだった前置きには触れなくて構いません。
□□さん
提案ありがとうございます。受付を分ける案、良いと思います。
担当の割り振り案をまとめて、◯日までに共有してもらえますか。
自分が乾杯の音頭を頼まれて、ほかに適任者がいると思うときは、引き受けるかどうかを早めに伝えます。引き受けるなら「僭越ではございますが、謹んでお引き受けいたします」、辞退するなら理由を一言添えて、代わりに誰が良いかを相談します。
この記事の要点
- 「僭越ながら」は出過ぎたことと承知のうえでという、へりくだった前置き。読みは「せんえつながら」。
- 使うのは目上の人がいる場で、乾杯・中締め・代表挨拶などを任されたとき。
- 主催者や社長が自分の役目として話すときには使わない。
- 「取らさせていただきます」ではなく「取らせていただきます」。
- 前置きは一つだけにして、すぐ本題に入る。
FAQ
よくある質問
「せんえつながら」と読みます。「僭」の字は「潜」と書き間違えやすいので注意してください。
使えます。目上の人がいる場で、自分が前に出て話すときや意見を伝えるときの、へりくだった前置きです。逆に、目上の人が部下に向かって使う言葉ではありません。
決まりではありません。目上の人が多い場で指名されたときに添えると、へりくだった気持ちが伝わります。同期や後輩だけの集まりなら「乾杯の音頭を取ります」と簡潔に言っても問題ありません。
意味は同じで、「僭越ではございますが」のほうが改まった言い方です。来賓としての挨拶や改まった文書では「僭越ではございますが」、社内の宴会では「僭越ながら」が使いやすいです。
おかしくはありません。目上の人が集まる場で進行を任されたことを、へりくだって伝える言い方として使われています。社内の気軽な会なら「本日の司会を務めます、□□です」でも十分です。