評価
展示会の費用対効果の計算方法
式・記入表・改善策まで
結論:展示会の費用対効果(ROI)は「(出展から生まれた金額 − 出展費用) ÷ 出展費用 × 100」で計算します。 あわせてリード獲得単価(費用 ÷ 有効リード数)と商談単価(費用 ÷ 商談数)を出すと、受注がまだ出ていない段階でも前回と比べられます。この記事は、式・費用の範囲・記入表・改善策を、そのまま社内で使える形でまとめました。
結論
展示会の費用対効果は、出展にかけた費用と、その出展から生まれた金額を比べたものです。難しいのは計算式ではなく、分母(費用)にどこまで入れるかと、分子(成果)をいつ締めるかの2点です。ここを決めずに出した数字は年によって意味が変わり、比較に使えません。
まず使う計算式(一覧)
展示会の評価で使う式は、次の表でほぼ足ります。 受注が出るまで時間がかかる商材ほど、下の段(単価と転換率)が先に使えます。
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか | 使える時期 |
|---|---|---|---|
| ROI(費用対効果) | (成果の金額 − 出展費用) ÷ 出展費用 × 100 | 投じた費用に対して、いくら上乗せで戻ったか | 受注を締めた後 |
| 粗利ベースのROI | (成果の粗利 − 出展費用) ÷ 出展費用 × 100 | 売上ではなく、実際に残ったお金で見た回収 | 受注を締めた後 |
| 回収倍率 | 成果の金額 ÷ 出展費用 | 費用の何倍が戻ったか(社内説明で伝わりやすい) | 受注を締めた後 |
| リード獲得単価 | 出展費用 ÷ 有効リード数 | 見込み客1件をいくらで得たか | 会期直後 |
| 商談単価 | 出展費用 ÷ 商談化した件数 | 商談1件をいくらで得たか | 会期から数週間後 |
| 受注単価 | 出展費用 ÷ 受注件数 | 受注1件をいくらで得たか | 受注を締めた後 |
| 商談化率 | 商談化した件数 ÷ 有効リード数 | ブースで集めた相手の質 | 会期から数週間後 |
| 受注率 | 受注件数 ÷ 商談化した件数 | 会期後の営業の進め方 | 受注を締めた後 |
| パイプライン金額 | 商談化した案件の想定金額の合計 | 受注前でも見込める金額 | 会期から数週間後 |
Point
売上で出すか粗利で出すかは、最初に決めて固定してください。 売上で出すとROIは大きく見えます。利益率の違う商材を並べる会社では、粗利で出したほうが判断を誤りません。
注意
リード獲得単価・商談単価は、他の集客手段(広告、ウェビナー、紹介など)の同じ単価と並べられるのが利点です。手段どうしを同じ物差しで比べられます。
計算の手順(5ステップ)
- 01
費用の範囲を決める
出展料から会期後のフォロー費まで、どの費目を入れるかを決めて書き残す。人件費の扱いもここで決める(次の節)。
- 02
成果の段階を定義する
接触/有効リード/商談化/受注の4段階。有効リードの条件は会期前に、観測できる言葉で書く。
- 03
会期中・会期後に記録する
段階ごとの件数と、商談の想定金額、受注時の「どこで知ったか」を同じ表に入れる。
- 04
評価時点で締める
「会期から何か月後」と先に決めた時点で一度締め、その時点の数字を残す。
- 05
式に入れて前回と並べる
上の表の式で計算し、同じ範囲・同じ評価時点の前回と並べる。変えたやり方も一緒に書く。
分母——費用の内訳と、どこまで入れるか
毎回違う範囲で計算すると、前回と比べられなくなります。 費目ごとに入れるかどうかを決めておきます。
| 費目 | 入れるか | 注意 |
|---|---|---|
| 出展料・小間代 | 入れる | 早割で変わるので、定価ではなく実額で |
| ブース施工・装飾 | 入れる | 再利用した什器の扱いを決める(初回に全額か、回数で割るか)。外注先の比べ方は展示会出展代行サービスの比較 |
| 電気・備品レンタル | 入れる | 主催者への追加申込は請求が後から来る |
| 印刷物・ノベルティ | 入れる | 余って持ち帰った分も含める(ノベルティの選び方) |
| 運搬・保管 | 入れる | 見落としやすい |
| 出張費 | 入れる | 宿泊・交通 |
| 社員の人件費 | 決めて固定する | 下の注を参照 |
| 事前の集客費 | 入れる | 招待状、広告、メール(招待状) |
| 会期後のフォロー費 | 入れる | 分子を会期後に置くなら、費用も会期後まで |
Point
社員の人件費を入れるかどうかは、どちらでも構いません。ただし決めて、毎回同じにしてください。 入れないと出展は安く見え、入れると高く見えます。前回と揃っていないことのほうが、入れる入れないより比較を壊します。
注意
人件費を入れるなら、準備期間中に担当者の工数を控えておく必要があります。出展が終わってからでは作れない数字です。
分子——何を成果と数えるか
名刺の枚数は成果ではありません。金額に換算できるところまで持っていきます。
| 段階 | 定義の書き方(例) | 記録する項目 |
|---|---|---|
| 接触 | 名刺交換・バッジスキャンをした | 件数 |
| 有効リード | 課題・予算・導入時期のいずれかを聞けた | 件数、聞けた内容 |
| 商談化 | 会期後に打ち合わせの日程が決まった | 件数、想定金額 |
| 受注 | 契約・発注を受けた | 件数、受注金額(または粗利)、出どころ |
Point
いちばん効くのは「受注の出どころを記録する」ことです。 費用の集計は後からでもできますが、出どころは、そのとき記録しなければ二度と分かりません。
注意
記録の置き場所はCRMでもスプレッドシートでも構いません。会期中に入力できる形にしておくことが大事です。会期後にまとめて入力すると記憶で埋まります。名刺の整理は名刺リストの作り方にあります。
そのまま使える記入表
この表を出展ごとに1枚作り、前回の列と並べてください。 空欄が埋まらない行が、次回までに記録の仕組みを作るべき箇所です。
| 項目 | 今回 | 前回 | メモ(変えた点など) |
|---|---|---|---|
| 費用の範囲(人件費を含むか) | |||
| 出展費用の合計 | |||
| 接触件数 | |||
| 有効リード件数 | |||
| 商談化件数/想定金額の合計 | |||
| 受注件数/受注金額(売上か粗利か) | |||
| 評価時点(会期から何か月後) | |||
| リード獲得単価 | |||
| 商談単価 | |||
| 商談化率/受注率 | |||
| ROI/回収倍率 | |||
| 小間の位置・人数・事前集客などの変更 |
注意
上司への報告書にまとめる場合は展示会報告書の書き方、次回の出展を申請する場合は展示会出展の稟議書に、この表の数字をそのまま使えます。
出展の目的別に、見る指標を変える
目的が違えば、主に見る指標も違います。 会期前に、今回の主目的を1つ決めてから指標を選んでください。
| 主な目的 | 主に見る指標 | 補助で見る指標 |
|---|---|---|
| その場での販売・受注 | ROI、回収倍率 | 受注単価 |
| 新規の見込み客を集める | リード獲得単価、有効リード件数 | 商談化率 |
| 商談を作る | 商談単価、パイプライン金額 | 受注率 |
| 新製品の認知 | 接触件数、デモを見た人数 | 会期後の問い合わせ件数 |
| 既存客との関係づくり | 来場した既存客の件数 | 追加発注・継続 |
| 採用 | 応募・面談につながった件数 | — |
Point
数字で目標を置くのは会期前です。 主に見る指標について「前回より何件」「単価をいくら以下」と書いておくと、会期後の評価が言い訳になりません。目標の立て方は展示会の目標設定にあります。
受注までのずれをどう扱うか
展示会の難しさは、費用が先に出て、成果が後から来ることです。
- 評価の時点を先に決める——「会期から◯か月後」。自社の過去の受注にかかった期間に合わせる
- その時点で一度締めて、記録を残す——後から足していくと、いつの数字か分からなくなる
- 締めるまでは中間指標で見る——リード獲得単価・商談単価・パイプライン金額
- 締めたあとの受注は別に記録する——次回の評価時点を決める材料になる
- 評価時点は毎回同じにする——ここが揃わないと比較できない
Point
検討期間を知らないまま評価時点を決めると、ほぼ早すぎます。 過去の受注が、初回接触から何か月かかっているか。先にそれを調べてください。
費用対効果を上げる打ち手と、効く指標
打ち手は「どの式のどこを動かすか」で選ぶと、次回の評価で効果を確かめられます。
| 打ち手 | 具体的にやること | 動く指標 |
|---|---|---|
| 来てほしい相手を決める | 業種・役職・課題を書き出し、展示会と小間の位置をそれに合わせて選ぶ | 商談化率 |
| 会期前に呼ぶ | 既存客・見込み客への招待状、商談の事前予約 | 有効リード件数、商談化件数 |
| 当日の役割を分ける | 声かけ・説明・商談・記録の担当を分け、記録漏れをなくす(ブーススタッフの役割) | 有効リード件数 |
| 会期中に温度感を付ける | 名刺に有効リードの条件を満たしたかを書き込む | フォローの優先順位 |
| 会期後すぐに連絡する | お礼メールと電話の順番・期限を会期前に決めておく(お礼メール・フォロー電話) | 商談化率 |
| 費用を次回に持ち越す | 什器・パネルを次回も使える設計にする、印刷物の部数を前回の実績で決める | 出展費用(分母) |
| 出る展示会を絞る | 単価の悪い展示会をやめ、良い展示会に費用を寄せる | 全体のROI |
よくある失敗
- 名刺の枚数で評価する——枚数が増えても、有効リードが増えていなければ意味がない
- 費用の範囲が毎回違う——人件費や施工費の扱いが変わり、前回と比べられない
- 有効リードの定義を会期後に決める——都合のよい線引きになる
- 会期直後にROIを出して「赤字」と判断する——受注はまだ来ていない
- 受注の出どころを記録していない——展示会経由かどうか後から分からない
- 売上と粗利が混ざる——年によって数字の意味が変わる
- 業界の目安と比べて安心・落胆する——目的の違う出展の平均は、自社の判断材料にならない(次の節)
「目安」より自社の前回と比べる理由
「展示会の費用対効果の目安」を探す人は多いのですが、この記事では目安の数値を出しません。
Point
理由は、出展の目的が会社ごとに違うからです。 その場で売る出展と、長い検討期間の入口を作る出展では、同じ金額をかけても回収の時期が何か月もずれます。平均値は、目的の違う出展をまとめて割った数字です。
注意
比べる相手は、自社の前回です。 同じ目的・同じ商材・同じ営業体制の前回と比べれば、変わったのは出展のやり方だけになります。初めての出展なら、他の集客手段のリード獲得単価・商談単価と並べるのが現実的です。一次情報で裏が取れない数値は載せない方針です(編集方針)。
出るか出ないかを決めるときのチェックリスト
- 1回の結果で決めていない——出展は年による振れが大きい
- 費用の範囲・評価時点・売上か粗利かが前回と揃っている
- やり方を変えた点を記録している——小間の位置、人数、事前集客
- 費用対効果以外の目的も書き出した——既存客との接点、採用、競合の観察
- 出ない場合の試算もした——同じ費用を別の手段に回したら、単価はどうなるか
- 判断の根拠を1枚に残した——来年、同じ議論を最初からやらないために
この記事の要点
- ROIは「(成果の金額 − 出展費用) ÷ 出展費用 × 100」。 受注前はリード獲得単価・商談単価で見る。
- 分母の範囲を決めて固定する。 人件費を入れるか、売上か粗利かは、どちらでもよいが毎回同じにする。
- 名刺の枚数は成果ではない。 接触/有効リード/商談化/受注に分け、金額まで持っていく。
- 有効リードの定義と数値目標は会期前に書く。
- 受注の「どこで知ったか」は、そのとき記録しないと二度と分からない。
- 評価時点を先に決め、比べる相手は業界の目安ではなく自社の前回。
FAQ
よくある質問
ROIは「(出展から生まれた金額 − 出展費用) ÷ 出展費用 × 100」で計算します。費用には出展料・小間代、ブース施工、電気や備品のレンタル、印刷物とノベルティ、運搬と保管、出張費、事前の集客費、会期後のフォロー費まで入れ、人件費は入れるかどうかを決めて毎回同じにします。成果は接触・有効リード・商談化・受注に分けて記録し、先に決めた評価時点で締めて、自社の前回と比べてください。
リード獲得単価(出展費用 ÷ 有効リード数)、商談単価(出展費用 ÷ 商談化した件数)、商談化した案件の想定金額の合計で評価します。これらは会期直後から数週間で出せるうえ、広告やウェビナーなど他の集客手段の単価と同じ物差しで比べられます。
どちらでも構いませんが、決めて毎回同じにしてください。売上で出すとROIは大きく見えます。利益率の違う商材を扱う会社では、粗利で出したほうが判断を誤りにくくなります。
この記事では目安の数値を出していません。出展の目的が会社ごとに違い、その場で売る出展と長い検討期間の入口を作る出展では回収の時期が大きくずれるためです。比べる相手は自社の前回にしてください。初めての出展なら、他の集客手段のリード獲得単価・商談単価と並べるのが現実的です。
出展料・小間代、ブース施工と装飾、電気や備品のレンタル、印刷物とノベルティ、運搬と保管、出張費、事前の集客費、会期後のフォロー費までを含めるのが基本です。社員の人件費を入れるかはどちらでも構いませんが、決めて毎回同じにしてください。
過去の受注が初回接触から何か月かかったかを調べ、それに合わせて「会期から何か月後」と評価時点を決めます。その時点で一度締めて記録を残し、締めたあとの受注は別に記録して次回の評価時点を決める材料にします。締めるまでは中間指標で見てください。
まず会期後のフォローの順番と期限を会期前に決めることです。せっかく集めた有効リードが商談にならないと、どの式でも成果が出ません。次に、来てほしい相手を決めて事前に招待し、什器や印刷物を次回も使える形にして分母を下げます。
1回の結果では決めないでください。出展は年による振れが大きく、変えた点を記録していないと何が原因か分かりません。数字に出ない目的も書き出し、同じ費用を別の手段に回した場合の試算と並べて判断してください。