ビジネス用語
マストの意味とビジネスでの使い方
ベター・ウォントとの違いと例文
ビジネスで使う「マスト」は、必ずやらなければならないこと・絶対に外せない条件のことです。日本語に言い換えるなら「必須」「必ず」「欠かせない」。例文は「金曜までの提出はマストで、図の差し替えはできればお願いします。」。組で使われる「ベター」は、必須ではないがそのほうが望ましいこと、「ウォント」は、あれば望ましい条件です。このページでは、三つの違いの比較表、「マスト事項」「マストで」などの言い方、会議・メール・チャット・取引先向けにそのまま使える例文、社外や目上の人への言い換え、優先度の取り違えを防ぐ確認の仕方までまとめました。
結論
「マスト」は英語の must から来た言葉で、必須・絶対に外せない条件を指します。英語の must は「〜しなければならない」を表す助動詞ですが、日本語の「マスト」は「〜はマストです」「マスト事項」のように名詞として使われるのが特徴です。「ベター」(better)はそのほうが望ましいこと、「ウォント」(want)はあれば望ましい条件を指し、仕事では依頼・要件・条件の優先度を分けて伝えるときに組で使われます。
結論:マスト・ベター・ウォントの違い早見表
| 言葉 | 意味 | 日本語の言い換え | やらなかったら | 一文の例 |
|---|---|---|---|---|
| マスト | 必ずやる・外せない | 必須/必ず/絶対条件 | 目的が果たせない・やり直しになる | 提出期限はマストです |
| ウォント | あれば望ましい条件 | 希望条件/できれば | 目的は果たせるが、満足度が下がる | 控室はウォント条件です |
| ベター | 比べるとそのほうが良い | 望ましい/〜のほうが良い | 大きな問題はない | 対面のほうがベターです |
Point
迷ったら「それが無いと目的が果たせないか」で判断します。果たせないならマスト、果たせるならウォントかベターです。
「マスト」の意味と英語の must との違い
英語の must は「〜しなければならない」を表す助動詞です。名詞として「欠かせないもの」の意味でも使われ、a must のような形になります。日本語の「マスト」はこの名詞の使い方に近く、「〜はマスト」=「〜は必須」の形で定着しています。
| 日本語の「マスト」 | 英語の must | |
|---|---|---|
| 主な品詞 | 名詞(〜はマスト、マスト事項) | 助動詞(You must ...) |
| よくある形 | マストです/マストで/マスト◯◯ | must + 動詞、a must |
| 強さ | 必須だが、会話では軽く使われることもある | 義務や強い必要を表す |
英語で話すときに「マストです」をそのまま It is must. とは言わない点に注意しましょう。英語では You must ...、It is a must.、It is required. のように言い換えます。
注意
船の帆を張る柱も「マスト」と呼びますが、こちらは英語の mast で、必須の意味の must とは別の言葉です。
ビジネスでよく使う「マスト」の言い方
| 言い方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ◯◯はマストです | ◯◯は必須です | 参加者名簿の提出はマストです |
| マストで(お願いします) | 必ず(お願いします) | 明日の朝までにマストでお願いします |
| マスト事項/マスト要件 | 必ず満たす項目 | マスト事項だけ先に確認させてください |
| マスト条件 | 絶対条件 | 駅から歩けることがマスト条件です |
| マストではない | 必須ではない | 資料の印刷はマストではありません |
| マストアイテム | 欠かせない持ち物・道具 | 雨の日の外現場ではレインウェアがマストアイテムです |
| マストバイ | 買うべきもの(販促の文脈で) | この秋のマストバイとして紹介されている商品です |
「マストアイテム」「マストバイ」はファッションや買い物の話題で使われることが多く、仕事の依頼で使う「マスト」より柔らかい「ぜひ」に近い響きです。
「ウォント」「ベター」との使い分け
要件や条件を整理するとき、「マスト(必須)」と「ウォント(希望)」に分ける方法がよく使われます。会場選び・採用の条件・発注先選びなど、候補を絞り込む場面で向いています。
「ベター」は二つ以上の案を比べて、片方を勧めるときの言葉です。「オンラインより対面のほうがベター」のように、何と比べているかを添えると伝わりやすくなります。
さらに細かく分けたいときは、要件を Must have・Should have・Could have・Won't have(今回はやらない)の四つに分ける MoSCoW(モスクワ)と呼ばれる整理の仕方もあります。
| 優先度 | カタカナ | 日本語の言い換え | 例 |
|---|---|---|---|
| 必ずやる | マスト/マストハブ | 必須/必ず/欠かせない | 提出期限は必ず守ってください |
| できればやる | ウォント/ベター | できれば/望ましい/推奨 | 図があると望ましいです |
| 余裕があればやる | ナイストゥハブ | 余裕があれば/任意 | 時間があれば参考資料も |
| 今回はやらない | ― | 対象外/今回は見送り | 英語版は今回は対象外です |
そのまま使える例文(場面別)
会議で条件を整理する
「会場選びの条件を整理します。駅から歩けることがマスト、控室があるのはウォント、という順で探しましょう。」
「今回の改修で、ログイン画面の修正はマストです。デザインの調整は時間が足りなければ次回に回します。」
「A案とB案なら、費用を抑えられるA案のほうがベターだと考えています。」
部下・後輩に仕事を頼む
「この見積もりは今日中がマストです。表の体裁は明日でも大丈夫です。」
「お客様への確認電話はマストで、議事録はできれば今週中にお願いします。」
上司に優先度を確認する
「確認させてください。こちらの修正は必須でしょうか、それとも可能であればの範囲でしょうか。」
「◯◯と□□が同じ期限で重なっています。どちらを優先すべきか、ご指示いただけますか。」
社内メールで依頼する
件名:◯◯資料の作成のお願い
◯◯さん
お疲れさまです。□□です。
◯◯の説明会で使う資料の作成をお願いします。優先度を分けて書きますので、余力に合わせて進めてください。
・必須:◯月◯日(◯)までに、当日の流れと申し込み方法を一枚にまとめる
・できれば:過去の開催の写真を一点入れる
・余裕があれば:よくある質問を数件添える
必須の部分だけでも期限内にもらえれば大丈夫です。
取引先へのメールで(日本語に言い換えて使う)
件名:◯◯会場のご相談
◯◯ご担当者様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯月◯日(◯)の◯◯について、会場のご相談をさせてください。
条件は次のとおりです。
・必須の条件:◯名が着席できること、プロジェクターが使えること
・できれば:控室が一室あること
上記を満たすお部屋がございましたら、ご案内いただけますと幸いです。
恐れ入りますが、ご契約手続きのため、◯月◯日(◯)までに書類のご返送をお願いいたします。期日を過ぎますと、当日のご案内が難しくなります。
チャットで
「明日の朝イチ共有はマストでお願いします!表の色合わせはできればで大丈夫です。」
「確認です。この修正はマストですか?それとも、できればの範囲ですか?」
「ご参考まで:今回はスライドの翻訳はマストではありません。」
イベントの仕事での使い方(場面別の例文)
イベントの準備では、会場・機材・人員・制作物など決めることが多く、相手も社内・クライアント・会場・協力会社と分かれます。条件を「必須」と「あれば望ましい」に分けておくと、見積もりの比較や当日の判断が早くなります。ここでは、イベントの現場でよくある場面ごとに、そのまま使える例文をまとめました。
| 場面 | 相手 | マストに入りやすいもの | ウォント・ベターに入りやすいもの |
|---|---|---|---|
| 会場探し | 会場・施設の担当者 | 収容人数、開催日に押さえられること、搬入できる時間 | 控室の数、駅からの近さ、ロビーの広さ |
| 機材の発注 | 音響・映像などの協力会社 | マイクの本数、映写できる画面、配信の有無 | 予備機材、照明の演出、収録 |
| 要望ヒアリング | クライアント | 開催の目的、日程、参加者数の目安、予算の上限 | 演出の雰囲気、記念品、懇親会 |
| 仕様書・RFP | 提案を依頼する会社 | 必ず満たす要件、提出期限、提出形式 | 加点したい提案、任意の追加提案 |
会場・機材の要件を整理して発注する(メール)
件名:◯月◯日 ◯◯セミナー 音響・映像機材のご相談
◯◯株式会社 ◯◯様
いつもお世話になっております。□□です。
◯月◯日(◯)の◯◯セミナーで使う機材について、条件を二つに分けてお送りします。
・必須:ハンドマイク◯本、ピンマイク◯本、スライドを映す画面一式
・あれば望ましい:予備のハンドマイク、登壇者用の手元モニター
必須の分だけでお見積もりいただき、望ましい分は別の行で金額を分けていただけますと、社内で判断しやすく助かります。
件名:◯月◯日 ◯◯説明会 搬入・設営の条件のご確認
◯◯ご担当者様
お世話になっております。□□です。
◯月◯日(◯)の説明会の搬入・設営について、確認させてください。
・必須:前日の夕方に機材を搬入できること、受付用の長机を二台お借りできること
・できれば:搬入口の近くに台車を置ける場所があること
必須の二点が難しい場合は代わりの方法を検討しますので、◯日までにお知らせいただけますと幸いです。
クライアントに要望をヒアリングする(口頭・打ち合わせ)
「進め方を決めるために、ご要望を『必ず実現したいこと』と『できれば入れたいこと』に分けて伺えますか。たとえば懇親会は、必ず実施したいものでしょうか。」
「いただいたご要望を、必須と、ご予算に余裕があれば、の二つに分けて整理しました。この分け方で認識が合っているか、ご確認いただけますでしょうか。」
社内の制作チームに共有する(チャット)
「【◯◯展示会ブース】クライアント確認済みの優先度です。ロゴ入りのバックパネルと受付カウンターはマスト。モニター用は静止画より映像のほうがベターですが、制作が間に合わなければ静止画で代えます。」
「明日の下見で見るポイントです。搬入口から会場までの経路と電源の位置はマストで確認、喫煙所とトイレの場所は余裕があればお願いします!」
RFP・仕様書で要件を書き分ける
| 区分 | 書き方の例 |
|---|---|
| 必須要件 | 以下の項目は必ず満たしてください。満たさない提案は検討の対象外となります。 |
| 任意(推奨)要件 | 以下の項目は必須ではありませんが、ご提案いただける場合は内容と費用を分けて記載してください。 |
| 対象外 | 今回の依頼範囲には含みません(例:オンライン配信)。 |
仕様書やRFPは社外の複数の会社が読む文書なので、「マスト」「ウォント」ではなく「必須」「任意」「推奨」と日本語で書くと、会社ごとの受け取り方の差が出にくくなります。必須の項目を書いたら、満たさなかった場合にどう扱うかまで添えておくと、提案の比較がしやすくなります。
注意
当日の判断にも使えます。準備の段階で「これが無いと開催できない」ものを一覧にしておくと、トラブルのときに何を守り、何を諦めるかを素早く決められます。準備の抜け漏れ確認はイベントのチェックリスト、会場の選び方は会場選びのポイントも参考にしてください。
社外・目上の人に使ってよいか
社内や、IT・広告など日頃からカタカナ語が多い業界では通じやすい言葉です。一方で、取引先や目上の人に「マストでお願いします」と書くと、命令のように強く聞こえることがあります。社外では「必須」「必ず」「できれば」と日本語で書くと誤解がありません。
| カタカナのまま | 言い換え(社外・目上向け) |
|---|---|
| ◯日の提出はマストでお願いします | 恐れ入りますが、◯日までのご提出をお願いいたします |
| ◯◯はマストです | ◯◯は必須の条件となります |
| ◯◯のほうがベターです | ◯◯のほうが望ましいかと存じます |
| ◯◯はウォントです | ◯◯は、可能でしたらで構いません |
| マストではありません | 必須ではございませんので、ご無理のない範囲でお願いいたします |
優先度を誤解なく伝える手順
- 01
目的を一文で書く
「◯◯の説明会で参加者が迷わないように」など、何のための仕事かを先に伝えます。
- 02
マストを絞り込む
無いと目的が果たせないものだけをマストにします。多くても数個にとどめます。
- 03
ウォント・ベターを分けて書く
「できれば」「余裕があれば」を見出しのように分け、必須ではないことを明記します。
- 04
それぞれに期限を付ける
マストの期限と、ウォントの期限が違う場合は分けて書きます。
- 05
文字で残す
口頭で伝えたあとも、メールやチャットに同じ内容を書き残します。
- マストが多すぎて、どれも同じ重さに見えていないか
- 「ベター」と書いたとき、何と比べているかが分かるか
- 必須ではないことに「必須ではありません」と書いてあるか
- 期限がマストとウォントで分けて書いてあるか
- 社外・目上の相手にカタカナのまま送っていないか
よくある失敗と直し方
| 言い方 | 気になる点 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|---|
| 全部マストでお願いします | どれが本当に外せないのか分からない | 必須と、できればを分けて書く |
| ベターでお願いします(とだけ伝える) | やるべきかどうか、受け取る人によって解釈が分かれることがある | できれば◯◯をお願いします(必須ではありません) |
| (目上の人に)マストで | 指示・命令のように聞こえることがある | ◯日までにいただけますと助かります |
| 口頭だけでマスト・ウォントを伝える | あとで「どちらだったか」の食い違いが起きやすい | メールやチャットに必須・できればを書き残す |
| 英語で It is must. と言う | 英語としては不自然 | It is a must. / It is required. |
頼まれた側は、優先度が分からないときに「これはマストですか、できればですか」と確認するだけで手戻りが減ります。抱えている仕事が多いときの伝え方はキャパオーバーの伝え方も参考にしてください。
この記事の要点
- 「マスト」は必須・絶対に外せないこと。言い換えは「必須」「必ず」。
- 「ウォント」はあれば望ましい条件、「ベター」は比べてそのほうが良いこと。
- 日本語の「マスト」は名詞として使う。英語では It is a must. のように言う。
- 依頼では必須・できれば・余裕があればに分け、期限も分けて書く。
- 社外・目上には「マストで」を日本語に言い換える。
FAQ
よくある質問
「必ずやらなければならないこと・欠かせないこと」です。日本語なら「必須」「必ず」「絶対条件」が近い言い方です。
「必須ではないが、そのほうが望ましい」という意味で使われます。英語の better は比べる言い方なので、「対面のほうがベター」のように何と比べているかを添えると伝わりやすくなります。
「マスト」は必ず満たすべき条件、「ウォント」はあれば望ましい条件です。会場や取引先を選ぶときなど、条件を整理する場面で組にして使われます。
マストは無いと目的が果たせないもの、ベターは複数の案を比べたときにそのほうが良いものです。ベターは選ばなくても大きな問題は起きません。
失礼な言葉ではありませんが、命令のように強く聞こえることがあります。「恐れ入りますが、◯日までのご提出をお願いいたします」「必須の条件となります」のように日本語にすると誤解がありません。
必ず満たさなければならない項目のことです。「必須事項」と言い換えられます。
英語の must は主に助動詞として使われるため、「It is must.」のような言い方は不自然です。名詞として使うなら It is a must. 、仕事の要件なら It is required. のように言います。
会場・機材・制作物などの条件を「必須」と「あれば望ましい」に分けて伝えるときに使います。社内のチャットでは「マスト」のままでも通じやすいですが、会場や協力会社への発注メール、仕様書では「必須」「できれば」「任意」と日本語で書き、望ましい項目は見積もりの金額を分けてもらうと判断しやすくなります。
依頼するときに「必須」「できれば」「余裕があれば」の段階に分け、それぞれの期限を書くことです。口頭だけでなく、メールやチャットに書き残しておくと食い違いが起きにくくなります。