社内イベント
防災イベントの企画
アイデア35選と、決める順番・当日の台本
防災イベントの企画は、①目的(何を持ち帰ってもらうか)→②対象(社員・住民・来店客・親子)→③体験の型(訓練・運動と野外・体感・食・地図・卓上・展示と講習)→④訓練部分の調整(防火管理者・ビル管理者・消防署)→⑤当日の台本の順に決めると迷いません。アイデアから選び始めると「楽しかったが何も残らない」行事になりがちです。この記事では、すぐ選べるアイデア35選を7つの型と対象別に整理し、企画書のひな形、進行表、放送・告知・アンケートの文例まで、そのまま使える形でまとめます。
結論
防災イベントは、災害への備えを参加者が体験・確認する行事です。社内で開く場合は、消防法に基づく防火管理の訓練と、会社として独自に行う防災の取り組み(備蓄品の確認、安否確認の手順、家庭での備えなど)を区別して組み立てます。消防法施行令第3条の2第2項は、防火管理者は消防計画に基づいて「消火、通報及び避難の訓練の実施」などの防火管理上必要な業務を行わなければならないと定めています。社内・来客・近隣へのお知らせの文面は避難訓練のお知らせ 例文にまとめています。この記事は、訓練を含む行事全体の企画を扱います。
結論:企画は5つの順番で決める
| 順番 | 決めること | 決め方の例 |
|---|---|---|
| ①目的 | 参加者に持ち帰ってほしい行動・知識を1つか2つに絞る | 「避難経路を自分で歩ける」「家族と安否確認の方法を決める」「自宅の備蓄を見直す」 |
| ②対象 | 誰に来てもらうか。年齢・人数・参加の形(必須か任意か) | 全社員(必須)/希望者と家族(任意)/地域の住民/来店客 |
| ③体験の型 | 下の7つの型から、目的に合うものを2〜3個組み合わせる | 訓練(避難)+食(非常食の試食)+ゲーム(クイズ) |
| ④訓練部分の調整 | 避難・消火・通報の訓練を含むなら、防火管理者・ビル管理者・消防署と内容を決める | 非常ベル・館内放送を使えるか、消防機関への通報が要るか |
| ⑤当日の台本 | 進行表、役割、放送文、中止の判断と連絡の方法 | この記事の進行表と文例を自社の手順に合わせて直す |
Point
迷ったら、「訓練(体で覚える)+持ち帰り(家庭や自分の生活につなげる)」の2つを必ず入れてください。体験だけでは日常に残らず、訓練だけでは「並んで階段を降りるだけ」になります。
企画が「残る」かを確かめる6つの問い
アイデアを選んだら、企画書を出す前に次の6つを確かめます。答えられない問いがあれば、そこが当日「楽しかっただけ」で終わる原因になります。
| 問い | 答えられる状態の例 | 答えられないときの直し方 |
|---|---|---|
| 終わったあと、参加者が今日中にできる行動が1つあるか | 「帰り道で集合場所を通る」「夜に家族と171の使い方を話す」 | 配布物に書き込む欄を作り、行動を1つ選んで書いてもらう |
| 自分の建物・地域の情報が入っているか | 使う階段、備蓄の保管場所、地域で想定される浸水の深さ | 自治体のハザードマップと自社の消防計画から、問題や地図を作り直す |
| 正解に根拠があるか | クイズの答えに官公庁・自治体・事業者の出典を示せる | 根拠を示せない問題は外すか、話し合いの題材に変える |
| 参加者が手を動かす時間が半分以上あるか | 講話は短くし、歩く・書く・試す時間を中心にする | 説明の一部を配布物に回し、体験の時間を延ばす |
| 支援が要る人を想定しているか | 足の不自由な人、妊娠中の人、子ども連れ、日本語が得意でない人の参加方法が決まっている | 誘導係と避難の方法を決め、案内文をやさしい言葉にする |
| 次回と比べられる記録が残るか | 避難にかかった時間、詰まった場所、アンケートの結果 | 記録係を置き、同じ項目を毎回取る |
注意
開催時期は、防災の日(9月1日)や防災週間(8月30日〜9月5日)に合わせると告知の理由を作りやすくなります。
防災イベントのアイデア35選(7つの型)
「向く対象」は、社=社内、地=自治会・マンション・地域、施=商業施設・店舗、親=子ども・親子です。外部の器材や講師が要るものは、早めに問い合わせてください。
A. 訓練そのものを変える(6)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 1. 発生場所を伏せた避難訓練 | 日時だけ告知し、火元や通れない階段は当日に知らせる | 社・施 | 防火管理者と想定を決める。初回は内容まで告知してから段階的に伏せる |
| 2. 想定を変える訓練 | 昼休み・来客が多い時間・地震後の火災など、毎回違う想定にする | 社・施 | 前回の記録を見て、課題が出そうな想定を選ぶ |
| 3. 初期消火と通報の役割練習 | 訓練用消火器での放射体験、通報役が住所と状況を伝える練習 | 社・地 | 訓練用器具の貸出や指導を、所轄の消防署や取引のある業者に相談する |
| 4. 安否確認の一斉テスト | 安否確認システムや連絡網で一斉に送り、返信までの流れを確かめる | 社 | 在宅勤務者・出張者・休暇中の人を含めるかを決め、回答の集計役を置く |
| 5. 災害用伝言ダイヤル(171)の体験 | 家族への伝言の録音と再生を実際に試す | 社・地・親 | NTT東日本は体験利用日を公表している。開催日が体験利用日か確認する |
| 6. 帰宅困難を想定した待機訓練 | 交通機関が止まった想定で、社内に残る人・帰る人の判断と、備蓄品の配り方を確かめる | 社 | 宿泊はしない形でも、毛布や食料の配布手順まで確認できる |
B. 運動と野外で動く(5)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 7. 防災運動会 | バケツリレー、毛布担架リレー、防災借り物競走などをチーム対抗で行う | 社・地・親 | けが防止のため走らせすぎない種目にし、救護担当を置く |
| 8. 防災スタンプラリー | 消火器・AED・備蓄倉庫・避難場所などを回り、各地点でクイズに答える | 社・地・施・親 | 回る向きを決めておくと地点ごとの渋滞が減る。台紙が埋まったら記念品と交換する形にする |
| 9. 防災キャンプ(避難所の宿泊体験) | 集会所や体育館で夜を明かし、寝る場所づくり・トイレ・食事の配り方で困る点を書き出す | 地・親 | 施設の使用許可、夜間の見守り体制、食事の衛生管理を決める |
| 10. 毛布・担架での搬送体験 | けが人役を毛布や担架で運び、声のかけ方と持ち方を練習する | 社・地 | けが人役は軽い人にし、低い位置で行う |
| 11. 持ち出し袋で屋外ランチ | 持ち出し袋と備蓄食だけを持って公園などへ行き、その中身で昼食をとって足りない物を書き出す | 地・親 | 公園の利用ルールを確認する。ごみは持ち帰る |
C. 揺れ・煙・暗さを体感する(5)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 12. 起震車での揺れ体験 | 地震の揺れを再現する車両で、身を守る姿勢を体験する | 社・地・施・親 | 自治体や消防本部に貸出・出張の有無と申込時期を問い合わせる。設置場所の広さと平らさを確認する |
| 13. 煙体験 | 訓練用の無害な煙で視界が利かない通路を、口と鼻を覆いながら壁づたいに出口まで歩く | 社・地・親 | 器材の手配先と使用場所の条件を確認する。気分が悪くなった人の退出路を作る |
| 14. VR防災体験 | ゴーグルで地震・火災・水害の場面を見て、取るべき行動を考える | 社・施・親 | 酔いやすい人への配慮、年齢の制限は器材の提供元の条件に従う |
| 15. 防災館・防災センターの見学 | 自治体の防災体験施設を団体で訪れ、体験コーナーを回る | 社・地・親 | 団体予約の方法と受付状況を施設に確認する |
| 16. 停電を想定した暗闇体験 | 照明を落とした部屋で、懐中電灯や足元灯だけで移動・作業する | 社・地・親 | 段差や障害物を取り除き、誘導係を置く |
D. 食べて備蓄を確かめる(5)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 17. 非常食の試食・食べ比べ | ご飯・パン・おかず類を食べ比べ、好みと量を確かめる | 社・地・施・親 | 期限の近い備蓄品を回すと入れ替えも進む。アレルギーの確認方法を決める |
| 18. 備蓄の入れ替えの仕組みづくり | 普段食べる物を多めに買い、使った分を買い足す方法を、社内の備蓄にも当てはめて考える | 社・地 | 備蓄品の一覧と期限を、その場で担当者と見直す |
| 19. 炊き出し体験 | 大鍋やかまどで汁物やご飯を作り、配る流れまで体験する | 地・親 | 調理と提供の衛生管理、火気の使用を施設管理者や所轄の消防署に確認する |
| 20. ポリ袋調理(パッククッキング)教室 | 一つの鍋の湯で、袋に分けた主食とおかずを同時に加熱し、水と燃料の使い方を学ぶ | 地・親 | 湯せんに使えるかを袋の製品表示で確認する。やけどに注意する |
| 21. 備えを語る茶話会 | 近所や同じ部署の数人で、過去の地震や台風で困ったこと、家での備えを順番に話す | 地・社 | 話しやすい少人数の席にし、聞き役を置く |
E. 地図に書き込む(5)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 22. 防災まち歩き | 避難場所、消火栓、危ないブロック塀などを歩いて確かめ、地図に書き込む | 地・親・社 | 交通量の多い道を避け、誘導係を前後に置く |
| 23. ハザードマップの読み解き | 自宅・職場・通勤経路で想定される浸水や土砂災害を確かめる | 社・地・施 | 自治体のハザードマップを使う。個人の住所を他の人に見せない形にする |
| 24. マイ・タイムラインづくり | 台風が近づく3日前から当日まで、自分と家族が取る行動と避難先を表に埋める | 地・社・親 | 書き込み用の用紙を用意し、家に持ち帰って家族と見直してもらう |
| 25. 災害図上訓練(DIG) | 地域や敷地の地図の上に、狭い道・古い建物・支援が要る人の住まいなどを色分けして書き、被害の広がり方と手の打ち方を話し合う | 地・社 | 地図とシート、油性ペンを用意する。進行役が論点を整理する |
| 26. 徒歩帰宅ルートの確認 | 職場から自宅までの歩いて帰る道と、休める場所を地図で確かめる | 社 | 本人の住所を共有させず、各自で確認してもらう形にする |
F. 卓を囲んで考える・解く(6)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 27. 避難所運営ゲーム(HUG) | 次々に届く避難者や出来事のカードを、運営する側の立場で受け付け、部屋割りや対応を決めていく | 地・社 | 教材の入手方法と利用条件は提供元に確認する |
| 28. クロスロード | 「全員分はない食料を配るか」のような答えの割れる問いに、各自が札で答え、選んだ理由を聞き合う | 社・地 | 正解を決めつけず、判断の理由を出し合う進行にする |
| 29. 防災クイズ大会 | チーム対抗で、備え・避難・連絡手段などの問題に答える | 社・地・施・親 | 答えの根拠を官公庁・自治体の資料にし、解説で出典を示す |
| 30. 防災謎解き | 謎を解くと避難経路や備蓄の場所にたどり着く仕掛けにする | 社・親・施 | 作り方は謎解きイベントの企画を参照 |
| 31. 持ち出し袋の中身点検ワーク | 持ってきた袋の中身を並べ、足りない物と重すぎる物を確かめる | 社・地・親 | 点検シートを配り、家で書き足してもらう |
| 32. 身近な物で作る道具 | ごみ袋の雨具、ラップを敷いた紙皿、段ボールの座布団など、家にある物で代用品を作る | 地・親・施 | 作り方の手順を紙に書いて配る。子どもには刃物を使わせない |
G. 見て・触って・操作する(3)
| アイデア | 内容 | 向く対象 | 準備・注意 |
|---|---|---|---|
| 33. 持ち出し袋の中身見本の展示 | 1人分・家族分・職場用の持ち出し袋を開いて並べ、重さを持ち比べてもらう | 施・地・社 | 特定商品の宣伝にならないよう、用途ごとに並べる |
| 34. スマートフォンの防災設定講座 | 緊急速報の受け取り設定、自治体の防災情報の登録、ハザードマップの見方を一緒に操作する | 地・社 | 操作の手順書を用意し、補助役を複数置く |
| 35. 応急手当・AEDの講習 | 心肺蘇生とAEDの使い方を、訓練用の人形で練習する | 社・地・親 | 地域の消防本部などが行う救命講習を利用できるか確認する |
注意
家族を招いて開くなら会社のファミリーデー、クイズの作り方はクイズ大会の問題の作り方も参考になります。
対象別のおすすめの組み合わせ
| 対象・場面 | 組み合わせの例(番号は上のアイデア) | 設計のポイント |
|---|---|---|
| 社内(全社・必須参加) | 1または2(訓練)→4(安否確認)→17(試食)→29(クイズ) | 訓練の部分は業務時間内に全員で行い、体験は短く区切る |
| 社内(部署・希望制) | 23(ハザードマップ)+26(徒歩帰宅ルート)+31(持ち出し袋) | 家庭の備えにつなげる。個人の住所は共有させない |
| 社内(家族を招く日) | 7(防災運動会)+12(起震車)+5(171体験) | 家族で連絡方法を決めるところまでを一連にする。5は171の体験利用日に開く場合に入れる |
| 自治会・マンション | 22(まち歩き)+25(DIG)+19(炊き出し) | 高齢の人や小さな子どもがいる世帯の避難の仕方も話題にする |
| 商業施設・店舗 | 8(スタンプラリー)+33(展示)+29(クイズ) | 買い物のついでに短時間で回れる構成にする。従業員の避難誘導訓練とは分けて考える |
| 子ども・親子 | 8(スタンプラリー)+13(煙体験)+32(身近な物で作る道具) | 保護者が一緒に参加する種目を入れる。迷子の対応を決めておく |
| 在宅勤務が多い職場 | 4(安否確認)+34(スマートフォンの防災設定)+24(マイ・タイムライン)をオンラインで | 画面共有で操作を一緒に行い、成果物を提出してもらう |
訓練を含めるなら最初に確認すること(防火管理者・消防署との関係)
防災イベントの中に避難訓練や消火訓練を入れるなら、まず建物の防火管理者と、テナントビルならビル管理者(防災センター)に相談します。訓練は消防計画に基づいて行うもので、イベント担当者が単独で決めるものではありません。
| 確認すること | 根拠・理由 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| その訓練が消防計画のどの訓練に当たるか | 防火管理者は消防計画に基づき消火・通報・避難の訓練を行う(消防法施行令第3条の2第2項) | 自社の防火管理者 |
| 実施の回数の決まりがある建物か | 消防法施行規則第3条第10項は、一部の防火対象物(消防法施行令別表第一のうち同項が掲げる用途)の防火管理者に、消火訓練及び避難訓練を「年二回以上」実施するよう定めている | 自社の防火管理者、ビル管理者 |
| 消防機関への事前の通報が要るか | 同条第11項は、前項の防火管理者が消火訓練・避難訓練を実施する場合、「あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない」と定めている | 自社の防火管理者、所轄の消防署 |
| ビル全体の訓練との関係 | テナントビルでは、ビル全体の消防計画や合同訓練があることが多い | ビル管理者・防災センター |
| 非常ベル・放送・避難器具を使えるか | 設備の扱いは建物の管理者が決める | ビル管理者 |
| 火気・調理・器材の持ち込み | 炊き出しや煙体験、起震車の設置は場所の条件がある | 施設管理者、所轄の消防署、器材の提供元 |
Point
自社の建物がどの用途に当たるか、何を消防署に通報する必要があるかは、防火管理者と所轄の消防署に確認してください。この記事では、建物ごとの判断はできません。
企画書のテンプレート(そのまま使える)
上司や防火管理者に相談するときは、次の項目を1枚にまとめると話が早く進みます。
件名:防災イベント(◯月◯日)実施のご相談
1. 目的:◯◯(例:全員が自分のフロアの避難経路を歩ける状態にする/家族との連絡方法を決めてもらう)
2. 日時・場所:◯月◯日(◯)◯時〜◯時、本社◯階・集合場所◯◯
3. 対象:全社員(在宅勤務者は安否確認のテストのみ参加)
4. 内容:(1)避難訓練(想定:◯◯)(2)非常食の試食(3)防災クイズ
5. 訓練に当たる部分:消防計画の◯◯訓練として実施したい。消防機関への通報の要否を確認したい
6. 外部の協力:◯◯(例:訓練用消火器の貸出、救命講習)
7. 費用:◯◯円(内訳:景品◯円、試食の補充◯円)
8. 安全対策:救護担当、中止の判断者、アレルギーの確認方法
9. 記録と振り返り:避難時間の記録、アンケート、防火管理者への報告
注意
費用の金額は自社の見積もりで埋めてください。期限の近い備蓄品を試食に回すと、試食の費用を抑えられます。
準備のスケジュール(やる順番)
- 01
目的と、訓練に当たる部分を決める
防火管理者と相談し、その日に行う訓練(消火・通報・避難)と、体験企画を分けて決めます。
- 02
ビル管理者・消防署と調整する
ビル全体の訓練との関係、非常ベル・放送の使用、消防機関への通報の要否を確認します。訓練の指導や器具の貸出を頼むなら、ここで相談します。
- 03
外部の器材・講師・施設を押さえる
起震車、煙体験の器材、救命講習、防災館の見学などは受付の時期が決まっていることがあるため、企画が固まり次第問い合わせます。
- 04
日時と対象を決める
全員参加か、部署ごとか、家族や住民も招くか。来客の多い時間、在宅勤務者の扱い、業務を止める範囲を決めます。
- 05
体験企画の内容と担当を決める
講師、備蓄品の確認、クイズの作成、景品など、担当と準備物を決めます。クイズの答えの出典もここで確かめます。
- 06
告知する
目的、日時、当日の流れ、参加者にしてほしいこと(ハザードマップの確認、持ち出し袋の持参など)を伝えます。文面は下の文例と避難訓練のお知らせ 例文を使えます。
- 07
来客・近隣への連絡を行う
非常ベルや放送を使う場合、来客や近隣が本物の災害と誤解しないように知らせます。
- 08
前日までに設備と配置を確認する
避難経路の障害物、集合場所、点呼の方法、体験コーナーの配置、救護の場所を確認します。
- 09
終了後に振り返りを行う
避難にかかった時間の記録、分かった課題(通れなかった経路、伝わらなかった放送)、アンケートをまとめ、防火管理者に共有します。
当日の進行例
社内(訓練+体験)の進行例
| 順番 | 内容 | 運営のポイント |
|---|---|---|
| 1 | 訓練の開始(地震・火災の想定を放送) | 放送の文面は「訓練」であることを必ず入れる |
| 2 | 初期対応(身の安全の確保、通報、初期消火の役割) | 役割ごとの動きを見る担当を置き、記録する |
| 3 | 避難・集合場所での点呼 | 点呼の方法と、来客・不在者の扱いを確認する |
| 4 | 講評 | 防火管理者や、指導に来た消防署の方からの講評 |
| 5 | 体験コーナー(消火体験・救命講習・備蓄品めぐり・クイズなど) | グループに分けて順番に回ると、待ち時間が減る |
| 6 | 非常食の試食・持ち出し品の点検 | アレルギーの確認をしてから配る |
| 7 | まとめ・アンケート | 今日分かった課題と、次回までにやることを伝える |
地域・施設(来場型)の進行例
| 時間帯 | 内容 | 運営のポイント |
|---|---|---|
| 開場前 | スタッフの集合、役割と中止の判断者の確認、器材の安全点検 | 雨・暑さの場合の変更点もここで共有する |
| 開場 | 受付でスタンプ台紙・アンケート用紙を配る | 受付で迷子・急病のときの集合場所を案内する |
| 前半 | 体験ブース(起震車・煙体験・搬送体験など)を自由に回る | 人気のブースは整理券や時間の区切りで待ち列を短くする |
| 中盤 | ステージでのクイズ大会、救命講習の実演 | ブースの混雑が落ち着く時間に置く |
| 後半 | 炊き出し・試食の配布 | アレルギーの表示と、配布の列の誘導係を置く |
| 閉会 | 景品の引き換え、アンケートの回収、家で取り組むことの案内 | 持ち帰り用の点検シートを手渡す |
決めておくことと判断の基準
| 決めること | 選択肢 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 訓練の想定 | 地震/火災/地震後の火災/水害 | 消防計画と、建物や地域で起きやすい事態から防火管理者と決める |
| 事前告知の範囲 | 日時と内容をすべて告知/日時のみ告知/事前告知なし | 抜き打ちに近づけるほど実態に近いが、来客や業務への影響が大きい。初回は日時と内容を告知する |
| 業務を止める範囲 | 全社/部署ごと/希望者のみ | 訓練に当たる部分は対象者全員が参加する形を基本に、体験企画は希望制にもできる |
| 在宅勤務者・出張者 | 対象外/安否確認のテストだけ参加/オンラインの企画に参加 | 安否確認の手順は在宅勤務者を含めて確かめる |
| 外部の協力 | なし/消防署の指導/自治体の器材/防災用品業者・講師 | 器具の貸出や講習の受付状況は、相手ごとに異なるため早めに問い合わせる |
| 雨天・暑さのとき | 屋内に切り替え/縮小/延期 | 屋外の企画は、切り替え先と判断の時刻を前もって決める |
| 記録の取り方 | 避難時間/課題のメモ/写真/アンケート | 次回の改善に使える形で残す。防火管理者に共有する |
そのまま使える文例(告知・放送・アンケート)
社内告知(メール・掲示)
件名:【全員対象】◯月◯日(◯)防災訓練と防災体験会のお知らせ
各位
総務部の◯◯です。◯月◯日(◯)◯時から、防災訓練と体験会を行います。
■内容:避難訓練(地震を想定)、点呼、非常食の試食、防災クイズ
■お願い:当日までに、自宅と職場周辺のハザードマップを一度ご確認ください。持ち出し袋をお持ちの方はご持参ください。
■来客対応:当日◯時〜◯時の来客予定は、できるだけ避けてください。
■食物アレルギーのある方は、◯日までに◯◯へお知らせください。
在宅勤務の方は、◯時に届く安否確認の通知に回答をお願いします。
地域・施設向けの案内文(チラシ・掲示)
家族で体験しよう!◯◯防災フェア
日時:◯月◯日(◯)◯時〜◯時 会場:◯◯
揺れの体験、煙の中を進む体験、非常食の試食、親子防災クイズなど。スタンプを集めると記念品をお渡しします。
申込は不要です。どなたでもご参加いただけます。
※雨天時は◯◯で一部の内容を変更して開催します。
主催:◯◯ お問い合わせ:◯◯
訓練開始の放送文例
訓練、訓練。ただいまから防災訓練を開始します。地震が発生したとの想定です。まず身の安全を確保してください。揺れがおさまったら、誘導係の指示に従い、階段を使って集合場所の◯◯へ避難してください。エレベーターは使用しないでください。訓練、訓練。
注意
この放送文と下の火災想定の放送文は例です。地震のあとに建物の外へ避難するか、館内の安全な場所にとどまるか、火災のときにどの階から避難するか、どの階段を使うかは、建物の消防計画やビルの手順で決まっています。防火管理者・ビル管理者が決めた手順に合わせて文面を作ってください。
火災想定の放送文例
訓練、訓練。◯階◯◯付近で火災が発生したとの想定です。◯階の方は、◯◯階段を使って避難してください。その他の階の方は、誘導係の指示があるまでその場で待機してください。訓練、訓練。
訓練中止の放送文例
訓練を中止します。訓練を中止します。これは訓練ではありません。誘導係の指示に従ってください。
体験コーナー開始のアナウンス文例
避難訓練へのご協力、ありがとうございました。このあとは、グループごとに体験コーナーを回っていただきます。名札に書いてあるグループの番号の場所へお進みください。非常食の試食コーナーでは、アレルギーのある方はスタッフにお申し出ください。
来場者向けの開会アナウンス文例
本日は◯◯防災フェアにお越しいただき、ありがとうございます。会場内の体験ブースは自由に回ることができます。スタンプを集めた方は、出口の受付で記念品とお引き換えください。お子さまとはぐれた場合や、気分が悪くなった場合は、◯◯のテントにいるスタッフにお声がけください。
終了後アンケートの設問例
- 01今日の内容で、いちばん役に立ったものはどれですか(選択式)
- 02避難経路・集合場所を、今日の前より説明できるようになりましたか(はい/少し/いいえ)
- 03家に帰ってからやろうと思うことはありますか(備蓄の見直し・家族との連絡方法の確認・ハザードマップの確認・その他)
- 04訓練中に分かりにくかったこと、通りにくかった場所はありましたか(自由記述)
- 05次回、取り入れてほしい企画はありますか(自由記述)
防災クイズの問題例(根拠つき)
クイズは答えの根拠を示せる問題だけにします。下の問題は、官公庁・事業者の公表している内容を根拠にしています。
| 問題 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 「防災の日」は何月何日? | 9月1日 | 内閣府(閣議了解) |
| 「防災週間」はいつからいつまで? | 8月30日〜9月5日 | 内閣府(中央防災会議決定) |
| 災害用伝言ダイヤルの番号は? | 171 | NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)」 |
| 災害用伝言ダイヤルを災害がない日に試せるのは、毎月何日? | 1日と15日(ほかに正月三が日、防災週間、防災とボランティア週間) | NTT東日本「体験利用のご案内」 |
注意
自社の備蓄品の保管場所、集合場所、使う階段など、自社・地域だけの問題を半分ほど混ぜると、知識の確認が実際の行動につながります。
準備のチェックリスト
- 目的(参加者に持ち帰ってほしいこと)を1つか2つに絞った
- 対象と参加の形(必須・任意、家族や住民を招くか)を決めた
- 防火管理者と、その日の訓練が消防計画のどの訓練に当たるかを確認した
- 消防機関への事前の通報が要るかを、防火管理者・所轄の消防署に確認した
- テナントビルの場合、ビル管理者・防災センターと非常ベル・放送の扱いを調整した
- 起震車・煙体験・講師などの外部の手配を、受付の時期を確かめて申し込んだ
- 火気・調理を伴う企画について、施設管理者・所轄の消防署に確認した
- 社内への告知で、目的・日時・流れ・参加者にしてほしいことを伝えた
- 来客・近隣に、訓練であることを事前に知らせた
- 避難経路の障害物と、集合場所・点呼の方法を確認した
- 訓練中のけがを防ぐ注意(階段で走らない・押さない、足の不自由な人や妊娠中の人など支援が要る人の避難方法)を、誘導係と共有した
- 非常食の試食・炊き出しについて、アレルギーの確認方法と表示を決めた
- クイズ・ゲームの答えの出典を確認した
- 在宅勤務者・出張者の扱い(安否確認のテストなど)を決めた
- 雨天・暑さのときの切り替え先と判断の時刻を決めた
- 中止の判断者と、中止の放送文を用意した
- 避難時間と課題を記録する担当を決めた
- 持ち帰りの資料(点検シートなど)とアンケートを用意し、防火管理者への共有の方法を決めた
当日の役割
| 役割 | やること |
|---|---|
| 防火管理者・統括 | 訓練の開始と終了の判断、講評、本物の災害や体調不良が起きたときの中止の判断 |
| 放送係 | 決めた文面での放送。「訓練」であることを必ず入れる |
| 各フロアの誘導係 | 担当フロアの避難誘導と、残っている人の確認 |
| 点呼係 | 集合場所での点呼と、不在者・来客の確認を統括に報告する |
| 記録係 | 各段階の時刻、通れなかった経路、聞き取れなかった放送などを記録する |
| 体験コーナー担当 | 各コーナーの運営、器具の安全確認、参加者の誘導 |
| 救護・迷子対応 | 体調不良者の対応、AEDの位置の把握、迷子の受付と呼び出し |
Point
訓練中に本当に体調を崩した人が出たり、実際の災害や事故が起きたりしたときに、誰が訓練を中止し、どう知らせるかを決めておいてください。「これは訓練ではありません」と伝える放送文も用意します。
注意
急病人への対応とAEDの確認はイベントの救護所と急病人対応、訓練後の社内連絡の例文は避難訓練のお知らせ 例文にあります。
よくある失敗
- アイデアから選び始める:楽しい企画が並ぶだけで、参加者が何を持ち帰るのかが決まっていない
- イベント担当者だけで訓練の内容を決める:防火管理者やビル管理者との調整が漏れ、非常ベルや放送が使えない
- 放送に「訓練」と入れない:来客や近隣が本物の災害と誤解する
- 毎回同じ想定・同じ流れにする:参加者が流れを覚えてしまい、課題が見つからない
- 子ども向けだけにする:保護者が見ているだけになり、家庭の備えにつながらない
- クイズの答えに根拠がない:誤った知識を広めてしまう
- 外部の器材を直前に頼む:起震車や講師の予定が埋まっていて呼べない
- 記録を取らない:避難にかかった時間や詰まった場所が分からず、次回に改善できない
- 訓練中のけがへの備えがない:急がせすぎて階段で転ぶ、支援が要る人の避難方法を決めておらず置き去りになる
- 体験コーナーに人が集中する:グループ分けや時間の区切りがなく、待ち時間が長くなる
- 在宅勤務者を対象から外す:安否確認の手順が、出社していない人で機能するか確かめられない
この記事の要点
- 企画は「目的→対象→体験の型→訓練部分の調整→当日の台本」の順に決める。
- 訓練(体で覚える)と持ち帰り(家庭や自分の生活につなげる)の2つを必ず入れる。
- アイデアは7つの型(訓練・運動と野外・体感・食・地図・卓上・展示と講習)から2〜3個を組み合わせる。
- 訓練の内容は防火管理者と決め、テナントビルではビル管理者・防災センターと調整する。回数や消防機関への通報の扱いは所轄の消防署に確認する。
- 放送には「訓練」を必ず入れ、中止の放送文と判断者を決める。記録と振り返りを次回に生かす。
FAQ
よくある質問
目的に合わせて、訓練(避難・初期消火・通報・安否確認)、運動と野外の企画(防災運動会・スタンプラリー・防災キャンプ)、体感(起震車・煙体験・VR)、食(非常食の試食・炊き出し)、地図(まち歩き・ハザードマップ・DIG)、卓上(HUG・クロスロード・クイズ)、展示と講習を組み合わせます。この記事のアイデア35選から2〜3個を選んでください。
想定(地震・火災・地震後の火災)や発生場所を毎回変える、事前告知の範囲を段階的に狭める、訓練のあとに体験コーナーやクイズを組み合わせる、といった方法があります。訓練の部分は防火管理者と内容を決め、楽しさのために訓練の目的を損なわないようにしてください。
災害時の判断を話し合うクロスロード、避難所運営ゲーム(HUG)、災害図上訓練(DIG)、マイ・タイムラインづくり、防災まち歩き、チーム対抗の防災運動会などは、大人同士で考えたり競ったりする要素があります。
防災スタンプラリー、煙体験、起震車、家にある物で道具を作る企画、持ち出し袋での屋外ランチなどが向いています。保護者も一緒に解く問題や、家族で連絡方法を決める時間を入れると、家庭の備えにつながります。
期限の近い備蓄品を試食に回す、自治体や消防本部の器材の貸出や講習を利用できるか問い合わせる、自治体のハザードマップなど公開されている資料を使う、といった方法があります。
防災の日(9月1日)や防災週間(8月30日〜9月5日)に合わせると告知の理由を作りやすくなります。災害用伝言ダイヤル(171)を体験する企画なら、NTT東日本が公表している体験利用日(毎月1日・15日など)に合わせてください。
消防法施行規則第3条第10項は、一部の防火対象物(消防法施行令別表第一のうち同項が掲げる用途)の防火管理者に、消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施するよう定めています。自社の建物がこれに当たるかは、防火管理者と所轄の消防署に確認してください。
消防法施行規則第3条第11項は、同条第10項の防火管理者が消火訓練・避難訓練を実施する場合、あらかじめその旨を消防機関に通報しなければならないと定めています。自社の建物が対象か、どのように通報するかは、防火管理者と所轄の消防署に確認してください。
ビル全体の消防計画や合同訓練との関係、非常ベル・館内放送・避難器具を使えるかを、ビル管理者・防災センターに確認します。他のテナントや来訪者が本物の災害と誤解しないよう、事前の連絡も調整してください。
目的、日時、想定、当日の流れ、参加者にしてほしいこと、来客対応を書きます。この記事の社内告知の文例のほか、社内・来客・近隣向けの例文を避難訓練のお知らせ 例文にまとめています。