社内文書
業務の引き継ぎ書の書き方
テンプレートと異動・退職・休業の記入例
業務の引き継ぎ書は、まず担当業務を一覧にし、次に業務ごとのやり方・期限・関係者を書き、最後に進行中の案件と引き継ぎ後の問い合わせ先をまとめる順で作ると漏れが出にくくなります。合格ラインは、前任者がいなくなった後、後任者が引き継ぎ書だけを見て最初の一回を回せるかです。たとえば一つの業務なら「月次の請求書発行/毎月◯日まで/手順は共有フォルダの◯◯/例外:◯◯社は郵送/判断に迷ったら◯◯課長」と一行で書ければ、骨組みはできています。イベント案件の引き継ぎはイベントの引き継ぎ資料、取引先への担当変更の連絡は担当変更の挨拶メールにまとめています。
結論
引き継ぎ書は①基本情報(業務名・引き継ぎ日・前任と後任) ②担当業務の一覧 ③業務ごとの手順・頻度・期限 ④進行中の案件と次にやること ⑤関係者・取引先 ⑥資料・データの保存場所 ⑦判断の基準と過去の経緯 ⑧注意点 ⑨引き継ぎ後の問い合わせ先で構成します。細かな作業手順は手順書に分けて、引き継ぎ書からは保存場所を示すだけにすると読みやすくなります。
引き継ぎ書に書く項目
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 業務名・引き継ぎ日・前任者と後任者・作成日 | 経理課 請求業務/◯月◯日付で□□から◯◯へ |
| 担当業務の一覧 | 持っている仕事をすべて。小さな仕事も一行で | 請求書発行、入金確認、経費精算の一次確認、備品の発注 |
| 業務ごとのやり方 | 頻度・期限・使う道具・手順書の場所 | 毎月◯日まで。会計システムで作成。手順は「請求書発行手順」 |
| 進行中の案件 | 今どこまで進んだか・次に何をするか・期限 | ◯◯社の請求額の修正:先方の回答待ち。◯日までに再発行 |
| 関係者・取引先 | 名前・部署・連絡方法・何を頼む相手か | ◯◯社 経理 ◯◯様(請求書の宛先・メール連絡) |
| 資料・データの場所 | フォルダ名・ファイル名・紙の保管場所 | 共有フォルダ「経理/請求」、紙の控えは◯◯の棚 |
| 判断の基準と経緯 | なぜそうしているか・例外の理由 | ◯◯社だけ郵送なのは、先方の社内規程による |
| 注意点 | 過去につまずいたこと・間違えやすいこと | 月末が休日のときは、締め日が前倒しになる |
| 引き継ぎ後の問い合わせ先 | 迷ったときに誰に聞くか・いつまで前任者に聞けるか | ◯◯課長。前任□□へは◯月◯日まで内線で可 |
Point
いちばん抜けやすいのは「判断の基準と経緯」です。手順は見れば分かっても、「なぜこの取引先だけ例外なのか」は前任者の頭の中にしかありません。例外を見つけたら、理由を一行添えてください。
引き継ぎ書のテンプレート
そのままコピーして、空欄を埋めて使えます。業務が多い場合は、「業務ごとの詳細」の欄を業務の数だけ繰り返します。
業務引き継ぎ書
作成日:◯年◯月◯日
業務名:
引き継ぎ日:◯月◯日
前任者:(部署・氏名・連絡先)
後任者:(部署・氏名)
確認者:(上司の氏名)
■担当業務の一覧
・(業務名)/頻度/期限
・(業務名)/頻度/期限
■業務ごとの詳細
業務名:
やること:
頻度・期限:
使う道具・システム:
手順書の場所:
関係者:
例外と理由:
注意点:
■進行中の案件
案件名/いまの状況/次にやること/期限
■資料・データの保存場所
■引き継ぎ後の問い合わせ先
注意
パスワードや暗証番号は、引き継ぎ書に書かないでください。会社の決まった方法で渡すか、「◯◯のアカウントは情報システム担当に再発行を依頼」と、手続きだけを書きます。
職種・場面別の記入例
経理(請求書の発行)
業務名:請求書の発行
頻度・期限:毎月、締め日の翌営業日までに発行
使う道具:会計システム(請求書メニュー)
手順書の場所:共有フォルダ「経理/手順書/請求書発行」
例外と理由:◯◯社は紙の請求書を郵送。先方の社内規程で電子の請求書を受け付けていないため
注意点:金額の修正が出たら、再発行の前に◯◯課長の確認を取る
営業(取引先の担当を引き継ぐ)
取引先:◯◯株式会社(担当:購買部 ◯◯様)
取引の内容:◯◯の定期納品
いまの状況:来期の見積もりを提出済み。◯月◯日に回答をいただく予定
次にやること:回答をいただいたら、◯◯課長と条件を相談
先方の特徴:連絡はメールを好まれる。急ぎのときだけ電話
経緯:昨年、納期の遅れがあり、それ以降は納品の前日に確認の連絡を入れている
取引先のこれまでの経緯は、良いことも悪いことも事実だけを書きます。担当者の人柄についての感想は書かず、「連絡はメールを好まれる」のように、後任者が動くときに役立つことに絞ります。
総務(備品と社内行事)
業務名:備品の発注
頻度:在庫が少なくなったとき(目安は棚の在庫表で確認)
発注先:◯◯(発注は購買システムから)
注意点:コピー用紙は月末に注文が重なるので、早めに発注する
業務名:社内行事の準備
次の予定:◯月の社員総会。会場は仮押さえ済み(◯◯ホール、◯◯様)
資料の場所:共有フォルダ「総務/行事/社員総会」
採用担当
進行中の案件:◯◯職の中途採用
いまの状況:書類選考が終わり、面接の日程調整中(候補者◯名)
次にやること:面接官の◯◯部長と日程を確定し、候補者へ連絡
注意点:候補者の個人情報は、採用管理システムの中だけで扱う。個人のメールやチャットに転記しない
情報システム(社内の問い合わせ対応)
業務名:社内からの問い合わせ対応
受付窓口:社内チャットの「ヘルプ」チャンネル
よくある問い合わせ:パスワードの再設定、プリンターの接続
手順書の場所:共有フォルダ「情報システム/対応手順」
外部への連絡:機器の故障は保守業者◯◯へ(連絡先は手順書に記載)
アカウント:管理者の権限は、上司の承認を得て後任者に付け替える
産休・育休前の一時的な引き継ぎ
引き継ぎ期間:◯月◯日〜復帰まで(復帰の時期は決まり次第、◯◯課長から共有)
代わりに担当する人:業務Aは◯◯さん、業務Bは□□さん
休業中の連絡:原則として連絡しない。どうしても必要な判断は◯◯課長へ
復帰後に戻す業務:業務A・業務B(業務Cはそのまま◯◯さんが担当)
休業前の挨拶は産休・育休前の挨拶、復帰したときの挨拶は復帰の挨拶を参考にしてください。休業中の連絡の取り方や期間の扱いは、就業規則と上司との取り決めに従ってください。
退職するときの引き継ぎ
最終出社日:◯月◯日
引き継ぎの進め方:◯月◯日までに引き継ぎ書を渡し、残りの期間は後任者と一緒に業務を回す
取引先への挨拶:◯◯社・◯◯社は後任者と同行して挨拶済み。そのほかはメールで連絡済み
退職後の問い合わせ先:◯◯課長(前任者への連絡はしない前提で書いています)
注意
退職するときの引き継ぎ期間や、最終出社日までの進め方は会社によって違います。就業規則を確認し、上司と相談して決めてください。退職の挨拶は退職の挨拶にまとめています。
避けたい書き方
| 避けたい書き方 | 困ること | 書き直し |
|---|---|---|
| いつもの通りにやってください | 後任者には「いつも」が分からない | 毎月◯日に、◯◯の手順で作成してください |
| ◯◯さんに聞けば分かります | その人が不在・異動したら止まる | ◯◯の判断は◯◯課長。手順は「◯◯手順書」 |
| 特になし | 本当に無いのか、書き忘れか分からない | 現時点で進行中の案件はありません(◯月◯日時点) |
| たぶん大丈夫です | 後任者が確かめようがない | ◯月◯日に◯◯様に確認済みです |
| 適宜対応してください | どこまでやればよいか分からない | 問い合わせが来たら、その日のうちに一次回答をしてください |
| パスワードは◯◯です | 引き継ぎ書が漏れると危ない | パスワードは会社の決まった方法で別に渡します |
相手の悪口や、前任者自身の不満は書かないでください。引き継ぎ書は後任者だけでなく、上司や次の担当者も読む文書です。困った経緯は「◯月に◯◯の行き違いがあり、以降は◯◯している」と、事実と、今どうしているかだけを書きます。
引き継ぎ後のお礼・お詫び
後任者から前任者へのお礼(社内メール)
□□さん
お疲れさまです。◯◯です。
引き継ぎ書をありがとうございました。
例外の理由まで書いていただいていたので、◯◯社の請求も迷わずに対応できました。
分からない点が出てきたら、◯月◯日までにまとめてご相談させてください。
前任者から後任者への、引き継ぎ漏れのお詫び
◯◯さん
お疲れさまです。□□です。
引き継ぎ書に、◯◯社への月末の在庫報告を書き漏らしていました。申し訳ありません。
毎月末日までに、在庫表を◯◯様へメールで送る業務です。
手順と過去の送付例は、共有フォルダ「◯◯/在庫報告」に入れました。
引き継ぎ書にも追記しましたので、ご確認ください。
注意
漏れが見つかったら、引き継ぎ書そのものにも追記してください。次に同じ業務を引き継ぐ人が、また同じところでつまずかずに済みます。社内でのミスの報告は上司へのミスの報告メールも参考になります。
この記事の要点
- 引き継ぎ書は業務一覧→やり方と期限→進行中の案件→関係者→資料の場所→判断の基準→問い合わせ先。
- 合格ラインは後任者が一人で最初の一回を回せるか。
- 抜けやすいのは例外とその理由。一行添える。
- パスワードは書かず、会社の決まった方法で渡す。
- 漏れが見つかったら、お詫びと一緒に引き継ぎ書にも追記する。
FAQ
よくある質問
基本情報、担当業務の一覧、業務ごとの手順・頻度・期限、進行中の案件と次にやること、関係者、資料の保存場所、判断の基準と過去の経緯、注意点、引き継ぎ後の問い合わせ先を書きます。細かな作業手順は手順書に分け、引き継ぎ書には保存場所を書くと読みやすくなります。
異動や退職が決まったら、できるだけ早く担当業務の一覧から作り始めます。一覧があれば、上司が後任者の割り振りを決めやすくなります。引き継ぎにかける期間は会社や業務によって違うので、会社の決まりに従い、上司と相談して決めてください。
業務マニュアルは、その業務を誰が担当しても使えるように、やり方とルールをまとめた文書です。引き継ぎ書は、ある担当者から次の担当者へ渡すときに、進行中の案件や経緯、関係者など「いまの状況」をまとめた文書です。マニュアルがあれば、引き継ぎ書からは保存場所を示すだけで済みます。
仕事で連絡するための名前・部署・連絡方法は書いて構いません。ただし、引き継ぎ書を置く場所を社内で必要な人だけが見られるところにし、個人的な事柄や感想は書かないでください。個人情報の扱いは会社の決まりに従います。