ビジネス用語
踏襲の意味と読み方
例文22選・言い換え・反対語
「踏襲」は、前の人のやり方や方針をそのまま受け継ぐことです。読み方は「とうしゅう」。使い方は「来年度も、今年度の運営方針を踏襲します。」。言葉そのものに良し悪しはありませんが、「前例踏襲」と言うと新しく考えずに前と同じことを繰り返すという否定的な響きになりやすい点に注意します。このページでは、意味と由来、使い方の型、担当交代・方針の継続・会議・メールなど場面別の例文22本、似た言葉と反対の表現、使う前のチェックリストをまとめました。
結論
「踏襲」は、先人のやり方・考え方・方針などを、そのまま受け継いで行うことを表す言葉です。読みは「とうしゅう」。名詞としても、「踏襲する」の形で動詞としても使います。常用漢字表では「踏」の音「トウ」の語例として「踏襲」が載っています。
30秒でわかる「踏襲」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意味 | 前の人のやり方・方針・形式などを、そのまま受け継ぐこと |
| 読み方 | とうしゅう |
| 使い方の型 | ◯◯を踏襲する/◯◯を踏襲した△△/基本は踏襲し、◯◯だけ変える |
| よく組む言葉 | 方針・路線・形式・手順・前例・デザイン・前任者のやり方 |
| 言い換え | 引き継ぐ、受け継ぐ、継承する、倣う、準じる |
| 反対の表現 | 刷新する、一新する、見直す、改める |
| 注意点 | 「前例踏襲」は批判的に聞こえやすい。相手のやり方を評して使わない |
「踏襲」の意味と由来
「踏」はふむ、「襲」は「襲名」「世襲」にも使われるように受け継ぐ意味を持つ字です。前の人が歩いた跡を踏み、そのまま受け継ぐところから、前のやり方をそのまま続ける意味になったと説明されます。
よい意味でも、批判の意味でも使われる
「踏襲」そのものは中立の言葉で、うまくいっているやり方を続けるときにも使えます。一方で「前例踏襲」は、前にそうしたからという理由だけで同じことを続ける姿勢を指して、批判的に使われることが多い言葉です。「前例踏襲を改める」「前例踏襲からの脱却」のように、見直しを求める文脈で目にします。
| 言い方 | 受け取られ方 | 例 |
|---|---|---|
| ◯◯を踏襲する | 中立。うまくいっている点を続ける | 昨年の運営方針を踏襲する |
| 基本は踏襲しつつ、◯◯を変える | 前向き。残す点と変える点が明確 | 基本は踏襲しつつ、受付だけ変える |
| 前例踏襲 | 批判的に聞こえやすい | 前例踏襲の運営を見直す |
Point
「踏襲」=前のやり方をそのまま受け継ぐこと。読みは「とうしゅう」。「前例踏襲」は否定的に聞こえやすいので、使う相手と場面を選びます。
使い方の型:何を、どう踏襲するか
「踏襲」は受け継ぐ対象を「を」で示し、「踏襲する」「踏襲した」「踏襲しつつ」の形で使うのが基本です。対象になりやすいのは、形のある物よりも、やり方・決まり・考え方です。
| 型 | 使い方 | 例 |
|---|---|---|
| ◯◯を踏襲する | 前のやり方をそのまま続ける | 前任者の進め方を踏襲する |
| ◯◯を踏襲した△△ | 前のものを下敷きにした物事を説明する | 昨年度の構成を踏襲した企画書 |
| ◯◯を踏襲しつつ(しながら) | 続けながら、別のことも加える | 方針を踏襲しつつ、申込の締切だけ早める |
| 基本は踏襲し、◯◯だけ変更する | 残す点と変える点を分けて伝える | 日程は踏襲し、会場だけ変更する |
| ◯◯の踏襲 | 名詞として使う(文書・見出し向き) | 従来方針の踏襲を前提とする |
注意
「財産を踏襲する」「地位を踏襲する」のように、物や地位を受け継ぐときは「継承」「相続」のほうが自然です。「踏襲」はやり方を受け継ぐ言葉と覚えておくと使い分けやすくなります。
場面別の例文22選
新任・担当交代のとき(4本)
まずは前任の◯◯さんのやり方を踏襲し、慣れてきた段階で改善点をご相談させてください。
◯◯さんが作った受付の流れは評判がよかったので、基本的に踏襲しつつ、案内表示だけ見直します。
引き継ぎ書の手順を踏襲して進めていますが、判断に迷う点が二つあります。
担当は替わりますが、これまでのお取り決めはそのまま踏襲いたします。
組織の方針・計画を続けるとき(4本)
新体制でも、前期の中期計画の基本方針を踏襲します。
本プロジェクトは、第一期の進め方を踏襲した形で第二期を開始します。
評価の基準は昨年度を踏襲し、項目の説明文だけをわかりやすく書き直しました。
社長交代後も、顧客第一の路線は踏襲される見込みです。
イベント・行事の運営で(4本)
式次第は昨年のものを踏襲しますが、来賓の挨拶は短くしていただくようお願いしましょう。
会場レイアウトは前回を踏襲し、動線の混雑した入口付近だけ配置を変えます。
毎年の進行台本を踏襲すると準備は早いのですが、今年は参加者層が違うので一度見直しませんか。
記念式典は伝統の形式を踏襲しつつ、オンライン配信を新たに加えます。
資料・デザイン・手順で(3本)
資料の構成は前回の提案書を踏襲し、数字の部分だけ最新のものに差し替えました。
新しいパンフレットも、これまでの配色とロゴの使い方を踏襲しています。
検品の手順は従来どおりの方法を踏襲し、記録の付け方だけ変更します。
会議・提案で見直しを求めるとき(4本)
毎年同じ内容を踏襲してきましたが、参加者の声を聞いて、今年は一部を変えてみませんか。
前例を踏襲するだけでなく、目的に照らして必要かどうかを一度確認したいと考えています。
これまでのやり方のよい点は踏襲し、時間のかかっている集計作業を見直す案です。
慣例の踏襲が続いている業務を洗い出し、残すものと変えるものを分けてはいかがでしょうか。
面談・評価で(3本)
前任者のやり方を踏襲するのは大事だけれど、やってみて変えたほうがいいと思った点があれば、遠慮なく提案してください。
今期は既存の手順を踏襲して安定させることを目標にし、来期に改善へ取り組みましょう。
先輩の資料を踏襲するだけでなく、自分なりに工夫した点も説明できると評価につながります。
注意
自分が前任者や上司の方針を受け継ぐときに「踏襲いたします」と言うのは、目上の人や取引先にも使える言い方です。業務の引き継ぎで残しておくことは引き継ぎ書の書き方にまとめています。
そのまま使えるメール文例
上司へ:方針を引き継ぐ報告
件名:◯◯の運営方針について
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
来年度の◯◯は、今年度の運営方針を踏襲し、会場と日程のみ変更する案で準備を進めたいと考えております。
変更点の一覧を添付しましたので、ご確認いただけますでしょうか。
取引先へ:担当交代のご挨拶
件名:担当交代のご挨拶
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
このたび、前任の◯◯に代わり、貴社を担当させていただくことになりました。
これまでの進め方を踏襲しながら、より一層お役に立てるよう努めてまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
社内へ:方針継続の周知
件名:【周知】下期の進め方について
各位
お疲れさまです。◯◯部の□□です。
下期の進め方は、上期の方針を踏襲いたします。
変更点は申請書の提出先のみで、詳細は添付資料をご覧ください。
ご不明な点があれば、□□までお知らせください。
上司へ:見直しの提案
件名:◯◯の進め方に関するご提案
◯◯課長
お疲れさまです。□□です。
◯◯の進め方について、基本の流れは踏襲しつつ、集計の手順を見直す案をまとめました。
残す点と変える点を一覧にしておりますので、お手すきの際にご確認いただけますと幸いです。
イベントの仕事での使い方
毎年恒例の周年行事や社員総会、定例のセミナーなど、前回の形がある案件では「踏襲」を使う場面が多くあります。大切なのは、何を踏襲し、何を変えるのかを一文で分けて伝えることです。踏襲の判断は「前回うまくいったか」だけでなく、今回の目的と参加者に合っているかでも確かめます。
恒例行事で、前年の進行を踏襲するか判断するとき
- 01
前回の記録を集める
進行台本・タイムテーブル・アンケート・事後の振り返りメモをそろえ、前回の形を確認する
- 02
今回の目的と条件の違いを書き出す
参加者層・会場・予算・主催者の意向など、前回から変わった点を洗い出す
- 03
項目ごとに「踏襲/変更」を決める
式次第・会場レイアウト・受付・配信・演出などに分け、変える理由がある項目だけ変更にする
- 04
踏襲の判断を主催者と合意する
「基本は踏襲し、◯◯だけ変える」形で一覧にし、打ち合わせで確認してもらう
【社内チャット】来月の社員総会、進行は昨年の台本を踏襲する前提で組みます。ただ今年は拠点からのオンライン参加が増えるので、表彰パートの映し方だけ別案を出しますね。
【口頭・定例ミーティングで】周年式典の式次第は前回を踏襲で問題ないと思います。ただ、昨年のアンケートで閉会後の待ち時間に不満が出ていたので、退場の誘導だけは変えたいです。
企画書で「昨年の形式を踏襲しつつ」と書くとき
企画書では、踏襲する部分を短くまとめ、変更点とその理由を目立たせると、読み手がどこを判断すればよいか分かります。
| 項目 | 今回の方針 | 理由 |
|---|---|---|
| 式次第・進行 | 昨年を踏襲 | 主催者・参加者とも満足度が高く、変える理由がない |
| 会場レイアウト | 一部変更 | 参加人数が増えるため、受付と待機の場所を広く取れる配置にする |
| 配信 | 新規追加 | 現地に来られない社員が参加できるようにする |
【企画書の本文】本年度の創立記念パーティーは、昨年の形式を踏襲しつつ、受付動線の見直しとオンライン配信の追加を行います。
クライアントへの提案で使うとき
【メール・クライアントのご担当者へ、初回打ち合わせ前に】昨年ご好評いただいた進行の流れは踏襲し、懇親会の時間配分のみ見直す案をご用意しました。打ち合わせの際にご意見をいただけますと幸いです。
【口頭・提案の場で】これまでの形を大きく変えるとご準備の負担も増えますので、全体は踏襲しながら、参加者の方が交流しやすくなる工夫を一点だけ加える案です。
踏襲しない変更点を伝えるとき
前回の担当者や主催者が決めた形を変えるときは、前回を否定する言い方を避け、変える理由を「今回の条件」に置くと角が立ちにくくなります。
【メール・主催者の事務局へ、準備開始時に】今回は会場が変わり収容の条件も異なるため、座席配置は前回を踏襲せず、新しい会場に合わせた案を作成いたしました。その他の進行は前回どおりです。
【社内チャット・前任の担当者へ】昨年の運営マニュアル、とても助かっています。受付の流れはそのまま踏襲しますが、今年は事前登録制にするので、当日受付の部分だけ書き換えさせてください。
注意
「前例踏襲」はイベントの現場でも「工夫がない」と受け取られやすい言葉です。主催者や前任者の前では、「前回のよい形を引き継ぐ」「昨年の流れを踏襲する」のように、受け継ぐ理由が伝わる言い方を選びます。運営の記録の残し方はイベント報告書の書き方も参考にしてください。
似た表現・言い換え・反対の表現
| 言葉 | 表す内容 | 踏襲との違い・使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 引き継ぐ | 前の人から仕事や物事を受け取って続けること | 最も使いやすい言い換え。会話・メールどちらにも |
| 継承 | 地位・財産・伝統などを受け継ぐこと | 受け継ぐ対象が大きく、伝統や事業に使いやすい |
| 倣う(ならう) | 手本としてまねる | 「前例に倣う」など、やわらかめの文書 |
| 準じる | あるものを基準にして、それに合わせる | 「規程に準じて扱う」など、完全に同じでなくてよいとき |
| 準拠 | よりどころとして従うこと | 規程や基準に合わせるとき(「規程に準拠する」) |
| 刷新(反対の表現) | 悪いところを除いて、すっかり新しくすること | 方針・体制を大きく変えるとき |
| 一新(反対の表現) | すっかり新しくすること | デザインや内容を新しくするとき |
| 脱却(反対の向き) | よくない状態から抜け出すこと | 「前例踏襲からの脱却」のように使われる |
「踏襲」「継承」「引き継ぐ」「準じる」の使い分け
| 受け継ぐもの | 合う言葉 | 例 |
|---|---|---|
| 方針・やり方・形式 | 踏襲する/引き継ぐ | 前任者の進め方を踏襲する |
| 伝統・技術・事業・地位 | 継承する | 家業を継承する |
| 担当業務・案件 | 引き継ぐ | ◯◯案件を引き継ぐ |
| 規程・基準 | 準じる/準拠する | 社内規程に準じて処理する |
「踏襲」はやり方をそのまま続けることに重みがあり、「継承」は受け継ぐ対象そのものに重みがある言葉です。古いものを生かして新しく考える姿勢を表す言葉には「温故知新」もあります。
間違えやすい使い方
| ありがちな使い方 | 気になる点 | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 「とうしゅう」以外の読みで読む | 読みは「とうしゅう」(常用漢字表の「踏」の音はトウ) | 読みに自信がなければ「引き継ぐ」と言い換える |
| (褒めるつもりで)前例踏襲ですね | 否定的に受け取られやすい | これまでのよいやり方を引き継いでいますね |
| 「踏襲」を「少し変えて続ける」の意味で使う | 本来はそのまま受け継ぐ意味 | 基本は踏襲し、◯◯だけ変更する、と分けて書く |
| 「踏襲を受け継ぐ」 | 意味が重なっている | ◯◯を踏襲する/◯◯を受け継ぐ |
| 「財産を踏襲する」 | 物や地位には合わない | 財産を相続する/事業を継承する |
注意
「踏襲」を含め、ビジネスで読み間違えやすい漢字はビジネスで読み間違えやすい漢字一覧にもまとめています。
目上・社外に使うときの注意
自分が受け継ぐ立場で「方針を踏襲いたします」と言うのは問題ありません。気をつけたいのは、相手や上司のやり方を評して「踏襲」と言う場面です。「◯◯部長は前例を踏襲されていますね」のような言い方は、新しいことをしていないと批判しているように聞こえるおそれがあります。
| 相手・場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 取引先への担当交代の挨拶 | これまでの進め方を踏襲しながら、努めてまいります |
| 上司に方針を報告する | 今年度の方針を踏襲し、◯◯のみ変更いたします |
| 上司のやり方を受け継ぐことを伝える | ◯◯部長のやり方を引き継いでまいります |
| 見直しを提案したい | これまでのやり方のよい点は残しつつ、◯◯を見直してはいかがでしょうか |
見直しを提案するときは、これまでのやり方を否定する言い方にせず、残す点と変える点を分けて示すと受け入れられやすくなります。
「踏襲」を使う前のチェックリスト
- 受け継ぐのはやり方・方針・形式か(物や地位なら「継承」「相続」)
- そのまま続けるのか、一部を変えるのか(変えるなら変更点を併記)
- 相手や上司のやり方を評する文になっていないか
- 「前例踏襲」を褒め言葉のつもりで使っていないか
- 読み手が迷いそうなら「引き継ぐ」に言い換えたほうが伝わらないか
- 「踏襲を受け継ぐ」のような意味の重なりがないか
この記事の要点
- 「踏襲」は前のやり方や方針をそのまま受け継ぐこと。読みは「とうしゅう」。
- 受け継ぐ対象はやり方・方針・形式。物や地位なら「継承」「相続」。
- 自分が受け継ぐときの「方針を踏襲いたします」は目上・社外にも使える。
- 「前例踏襲」は否定的に聞こえやすいので、相手のやり方を評して使わない。
- 少し変えるなら「基本は踏襲し、◯◯だけ変える」と分けて書く。
FAQ
よくある質問
「とうしゅう」と読みます。常用漢字表でも「踏」の音「トウ」の語例として「踏襲」が載っています。
言葉自体はどちらでもなく、前のやり方をそのまま続けることを表します。ただし「前例踏襲」は、考えずに同じことを続ける姿勢を指して批判的に使われることが多い言い方です。
前にそうしたからという理由で、同じやり方を繰り返すことです。「前例踏襲を改める」「前例踏襲からの脱却」のように、見直しを求める文脈で使われます。
決まった一語の対義語があるわけではありませんが、反対の向きの表現として「刷新」「一新」「変革」などが使われます。
「踏襲」はやり方や方針をそのまま続けることに重みがあります。「継承」は地位・伝統・事業など、受け継ぐ対象そのものに重みがある言葉です。
「踏襲」はそのまま受け継ぐ意味なので、「基本は踏襲し、◯◯だけ変更する」のように、残す点と変える点を分けて書くと誤解がありません。
自分が前任者や上司の方針を受け継ぐときに「踏襲いたします」と言うのは問題ありません。ただし、相手のやり方を評して「前例を踏襲されていますね」と言うと、批判しているように聞こえることがあります。
恒例行事や定例イベントで、前回の進行や形式を引き継ぐときに使います。企画書や提案では「昨年の形式を踏襲しつつ、◯◯を変更します」のように、踏襲する部分と変える部分を分け、変える理由を添えて伝えると判断しやすくなります。