個人情報
住宅展示場イベントの個人情報
アンケートと来場特典の設計
結論から書きます。 住宅展示場のイベントで来場者にアンケートを書いてもらうなら、①何に使うか(営業の連絡を含むか)を記入欄より上に書く、②特典を渡すのに要る項目と営業のための項目を分ける、③出展社・提携先に渡すなら、その旨を記入前に示す、④「連絡を止めてほしい」と言われた人を記録して二度と送らない、の4つが要点です。あわせて、来場特典は景品表示法の確認も要ります。この記事では条文を示したうえで、そのまま直して使える文例・声かけ例・チェックリストをまとめます。
結論
来場時にアンケート用紙や来場予約フォームに記入してもらうことは、個人情報保護法第21条第2項の「本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合」に当たりえます(同項の「書面」には、括弧書きで電磁的記録が含まれています)。この場合はあらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならず、利用目的は第17条第1項によりできる限り特定されている必要があります。
まず押さえる5点(早見表)
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
| 論点 | 根拠 | 現場でやること |
|---|---|---|
| 何に使うかを先に示す | 第17条第1項・第21条第2項 | 用紙の記入欄より上に利用目的を書く。営業の連絡に使うならそう書く |
| あとから目的を足せない | 第17条第2項 | 使い道はイベント前に全部洗い出して書く |
| 出展社・提携先に渡す | 第27条第1項・第5項 | 同意をもらうか、共同利用の5項目をあらかじめ示す |
| 連絡を止めてほしいと言われた | 第35条(請求に当たる場合) | 受付の手順と停止した人の記録を用意する |
| 来場特典を渡す | 景品表示法 | 総付景品の限度額を別途確認する |
Point
消費者庁は、来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当するとしています。 総付景品の最高額は、取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2です(消費者庁「景品規制の概要」)。住宅のように取引価額の考え方が場面で変わるものは、個人情報とは別に確認してください。
注意
不動産の売買・交換・賃貸やその代理・媒介を業とする事業者には不動産業の景品告示があり、懸賞によらない景品類は「取引の価額の十分の一又は百万円のいずれか低い金額の範囲」とされています。分譲住宅の販売会などは不動産業のイベントもあわせて確認してください。
アンケートでよく聞く項目と、分け方
来場アンケートの項目は、特典を渡すために要るものと営業・提案のために聞きたいものが混ざりがちです。分けて考えると、必須にする範囲と利用目的の書き方が決まります。
| 項目 | 特典の受け渡しに要るか | 主な用途 | 設計のポイント |
|---|---|---|---|
| 氏名 | 要ることが多い | 受付・特典の確認 | 必須にしやすい |
| 電話番号・メールアドレス | 予約特典なら要る場合あり | 連絡・営業 | 営業に使うなら利用目的に明記 |
| 住所 | 郵送特典なら要る | 資料送付・営業 | 郵送しないなら任意にできないか検討 |
| 家族構成・年齢 | 通常は要らない | 提案内容の検討 | 任意にする |
| 職業・勤務先・年収・勤続年数 | 要らない | 資金計画の提案 | 任意にし、聞く理由を書く |
| 建築予定時期・予算・土地の有無 | 要らない | 提案・営業の優先度 | 任意にする |
| 来場のきっかけ | 要らない | 集客施策の振り返り | 統計に使うならその旨を書く |
| 車いす利用・体調などの申し出 | 要らない | 当日の配慮 | 要配慮個人情報に触れうる。同意の取り方を設計する |
注意
第2条第3項の要配慮個人情報には「病歴」などが含まれ、第20条第2項は原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで取得することを禁じています。バリアフリーの要望欄などを設ける場合は、本記事では当てはめを断定しませんが、同意の取り方を別に検討してください。
利用目的の文例(場面別)
以下は構成要素を示すための文例です。自社の実際の使い方に合わせて書き換え、最終的には弁護士などの専門家に確認してください。この文例を使えば適法になる、というものではありません。
単独のハウスメーカー・工務店のモデルハウス
ご記入いただいた情報は、①来場特典のお渡し、②当社の住宅・イベントに関するご案内(お電話・メール・郵送)、③ご要望に沿ったプランのご提案に利用します。②のご案内が不要な方は、下の「案内を希望しない」に印をつけてください。
総合住宅展示場(運営会社と出展各社)
ご記入いただいた情報は、展示場運営会社〇〇が来場特典のお渡しと展示場イベントのご案内に利用します。また、ご記入いただいた方の同意を得たうえで、下欄で選んだ出展会社に提供し、各社から住宅のご案内をいたします。提供を希望しない方は、出展会社を選ばずにご提出ください。
来場予約フォーム(Web)
ご入力いただいた情報は、来場予約の受付・確認のご連絡、来場特典のご用意、当日のご案内に利用します。予約の確認以外のご案内(新しいイベントのお知らせなど)は、下のチェック欄に同意いただいた方にのみお送りします。
特典の受け渡しだけに使う場合
ご記入いただいたお名前は、来場特典のお渡しの確認にのみ利用し、営業のご連絡には利用しません。
自動車ショールームの試乗イベント
ご記入いただいた情報は、試乗の受付、運転免許証の確認記録、試乗車に関するご連絡、および当社の車両・サービスのご案内に利用します。
リフォーム相談会
ご記入いただいた情報は、ご相談内容の確認、現地調査・お見積りのご連絡、当社のリフォームに関するご案内に利用します。ご案内が不要な方はその旨をお申し付けください。
Point
どの文例でも共通するのは「営業の連絡に使うか」が読み取れることです。 「当社サービスの向上のため」だけでは、後日の電話や訪問に使うことが読み取りにくくなります。第17条第2項により、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて目的を変えることはできません。
総合住宅展示場で、出展社に渡すときの整理
総合住宅展示場では、運営会社が受付でアンケートを集め、出展しているハウスメーカー各社に渡す形がありえます。運営会社と出展社は別の事業者なので、渡し方を整理しておく必要があります。
| 渡し方 | 条文 | 記入前に必要なこと |
|---|---|---|
| 本人の同意を得て提供する | 第27条第1項 | あらかじめ本人の同意を得る(どの会社に渡るかが分かる形が望ましい) |
| 共同利用 | 第27条第5項第3号 | 共同利用する旨、項目、利用する者の範囲、利用目的、管理責任者の氏名・名称・住所(法人は代表者氏名)の5項目を、あらかじめ通知するか容易に知り得る状態に置く |
| 委託(受付業務だけを外注など) | 第27条第5項第1号・第25条 | 利用目的の達成に必要な範囲内であること。委託元は委託先を監督する |
Point
「同じ展示場の出展社どうしだから自由に共有できる」わけではありません。 共同利用の5項目は「あらかじめ」示すことが条件で、イベントが終わってから足すことはできません。詳しくは共催イベントの共同利用で整理しています。
用紙の設計
来場時に記入してもらう用紙は、その場で、立ったまま、短時間で書かれます。長い文面は読まれません。
- 記入欄と同じ面に利用目的がある(裏面の下部ではない)
- 記入欄より上にある(書き終わってから目に入らない)
- 営業連絡に使うならその旨が書かれている
- 必須と任意が分かれている
- 特典の受け取りに必要な項目と、営業のための項目が区別されている
- 「案内を希望しない」を選べる欄がある
- 出展社・提携先・施工会社に渡す予定があるならその旨
- 問い合わせ窓口が書かれている(第32条第1項第3号の手続の案内先)
注意
記入率を上げるために全部必須にすると、取得する情報が増え、管理も請求対応も重くなります。(申込フォームの設計)
アンケートなしで来場できる選択肢
来場者の側には「書くと営業の電話が来るのでは」というためらいがあります。アンケートを書かなくても見学できる枠や日を用意すると、このためらいに直接応えられます。
| 設計 | 来場者から見た利点 | 主催者から見た利点 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全項目記入で特典 | 特典がもらえる | 見込み客の情報が集まる | 営業の連絡が来ることを記入前に示す |
| 氏名だけで特典、詳細は任意 | 書く量が少ない | 記入のためらいが減る | 任意項目の利用目的も同じ面に書く |
| アンケートなしの見学枠 | 営業を気にせず見られる | 初期検討の層が来やすい | 特典の有無を告知で明確にする |
注意
どの設計を選ぶかは集客の判断です。いずれの場合も、告知文と受付の説明が実際の運用と食い違わないことが前提です。
受付・営業の声かけ例
用紙を整えても、受付の一言が食い違うと意味がありません。そのまま使える言い方を場面別にまとめます。
| 場面 | 声かけ例 |
|---|---|
| 記入をお願いする | 「よろしければアンケートにご記入ください。いただいた情報は、上に書いてあるとおり特典のお渡しと当社からのご案内に使わせていただきます。」 |
| 任意項目を説明する | 「お名前以外は任意です。差し支えない範囲でご記入ください。」 |
| 記入を断られた | 「かしこまりました。アンケートなしでもご見学いただけます。どうぞごゆっくりご覧ください。」 |
| 営業の連絡が来るか聞かれた | 「ご案内が不要でしたら、こちらの欄に印をつけていただければお送りしません。」 |
| 出展社に渡るか聞かれた | 「選んでいただいた会社にだけお渡しします。選ばなければどこにもお渡ししません。」(実際の運用どおりに言う) |
| 担当者の変更を頼まれた | 「承知しました。担当を変更いたしますので、ご希望があればお聞かせください。」 |
連絡停止の依頼を受けたとき(電話)
「ご連絡いただきありがとうございます。今後のご案内を停止いたします。念のため、ご登録のお名前と電話番号を確認させていただけますか。停止の手続きが終わりましたら、その後はご案内をお送りしません。」
連絡停止の依頼を受けたとき(メール返信)
〇〇様 ご連絡ありがとうございます。ご依頼のとおり、今後の当社からのご案内(電話・メール・郵送)を停止いたしました。行き違いでお届けしてしまった場合はご容赦ください。ご不明な点は本メールへの返信でお知らせください。
注意
停止を受けたら、その場で停止リストに記録するところまでを受付・営業の手順に入れてください。開示・訂正・利用停止の請求の流れは本人からの請求への対応で扱っています。
その後の営業連絡
取得した情報を営業に使う場合、利用目的に入っていることが前提です。そのうえで、運用として決めることがあります。
- 連絡の頻度と期間を決めている
- 連絡を止めてほしいと言われたときの手順がある(第35条の利用停止等の請求に当たる場合も含めて)
- 止めた人のリストを管理して、再度送らない仕組みがある
- 出展社・提携先・施工会社に渡す場合、第27条の整理ができている
- 使わなくなった情報を消す時期を決めている(第22条は消去の努力義務)
- 複数の店舗・拠点・グループ会社で共有する場合の整理ができている
- 紙の用紙の保管場所と持ち出しのルールがある(第23条の安全管理措置)
注意
事後の名簿の扱いはイベント後の個人データの扱い、名簿の管理は参加者名簿の管理を参照してください。
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 利用目的が裏面の下に小さく書いてある | 書き終わってから目に入り、営業の連絡に驚かれる | 記入欄と同じ面の上部に移す |
| 「サービス向上のため」とだけ書いてある | 電話・訪問に使うことが読み取れない | 「当社からのご案内(電話・メール・郵送)」と具体的に書く |
| 全項目を必須にしている | 管理する情報と請求対応が増える | 特典に要る項目以外を任意にする |
| 出展社への提供をイベント後に決めた | 事前に示していないため渡せない | 企画段階で渡し先と渡し方を決め、用紙に書く |
| 停止依頼を担当者がメモしただけ | 別の担当者や一斉配信で再び送ってしまう | 全社共通の停止リストで配信前に除外する |
| 受付の説明と用紙の内容が違う | 「渡さないと言われた」などの苦情になる | 声かけ例を用紙の内容に合わせて統一する |
| 記入済み用紙を受付に置いたまま | 他の来場者に見られる | 回収箱を使い、終了後すぐ保管場所へ移す |
設計を点検する手順
- 01
用紙に書かれている利用目的を読む
自分で読んでみてください。 その場で立ったまま読める長さか、営業に使うことが読み取れるか。
- 02
実際の使い方と照らす
書いてある利用目的の範囲で、実際の営業活動が収まっているか。 収まっていないなら、イベント前に用紙を直します。
- 03
項目を特典用と営業用に分ける
特典を渡すために要る項目と、営業のために要る項目。後者を任意にできないかを検討します。
- 04
渡し先を決める
出展社・提携先・グループ会社に渡すなら、同意か共同利用かを決め、用紙に書きます。
- 05
配置と声かけをそろえる
記入欄と同じ面の上部に置き、受付の説明を用紙の内容に合わせます。
- 06
停止の仕組みを作る
連絡を止めてほしいと言われたときの手順と、止めた人のリスト。
- 07
特典の金額を景表法で確認する
総付景品の限度額の論点です(景品表示法)。
- 用紙の利用目的を自分で読んで、その場で読める長さか確認した
- 営業の連絡に使うことが利用目的に書かれている
- 実際の営業活動が、書いてある利用目的の範囲に収まっている
- 特典用の項目と営業用の項目を分け、営業用を任意にできないか検討した
- 「案内を希望しない」を選べる欄がある
- 利用目的を記入欄と同じ面の上部に配置した
- 出展社・提携先・グループ会社への提供の整理ができている
- 受付の声かけが用紙の内容と一致している
- 連絡停止の手順と、止めた人のリストを持つ仕組みがある
- 特典の金額を景品表示法の観点で確認した
注意
アンケート用紙全般の設計はアンケートの注意書き、文面の構成要素は個人情報の取扱いの書き方を参照してください。
この記事の要点
- 営業の連絡に使うなら、利用目的にそう書き、記入欄より上に置く。 第21条第2項は「あらかじめ」「明示」を求めている。
- 第17条第2項により、利用目的はあとから自由に足せない。使い道はイベント前に洗い出す。
- 特典に要る項目と営業のための項目を分け、後者は任意にできないか検討する。
- 総合展示場で出展社に渡すなら、本人の同意か共同利用の5項目の事前提示が要る。
- 受付の声かけを用紙と一致させ、「止めてほしい」と言われた人のリストで再送を防ぐ。
- 来場特典は景品表示法の総付景品の論点でもある。個人情報とは別に確認する。
FAQ
よくある質問
利用目的に入っていることが前提です。第17条第1項は利用目的をできる限り特定することを求め、第21条第2項は本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合にあらかじめ明示することを求めています。第17条第2項により、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて目的を変えることはできないため、使い道はイベント前に書いておく必要があります。
記入欄と同じ面の、記入欄より上です。来場時の用紙はその場で立ったまま短時間で記入されるため、裏面の下部に小さく載せると、書き終わってから目に入ることになります。第21条第2項は「あらかじめ」「明示」を求めているため、置き場所と見え方が要件に関わります。
第21条第2項の「書面」には電磁的記録が含まれると条文に書かれています。そのため、予約フォームで入力してもらう場合も、送信ボタンより前の、入力欄と同じ画面で利用目的が読めるようにしてください。
運営会社が渡し方をどう定めているかによります。別の事業者に渡すには、第27条第1項による本人の同意か、第27条第5項第3号の共同利用の5項目をあらかじめ示すことなどが必要です。主催者側は、どの会社に渡るのかが記入前に分かるように用紙を作ってください。
年収や勤続年数は、第2条第3項の要配慮個人情報の定義に列挙されている項目ではありません。ただし、聞く以上は利用目的として示す必要があり、特典の受け渡しには通常要らない項目です。任意項目にし、資金計画の提案に使うなど聞く理由を用紙に書くことを検討してください。
特典の条件をどう決めるかは主催者の判断です。重要なのは、告知と受付の説明で条件を明確にし、記入する人が営業の連絡に使われることを事前に分かるようにすることです。あわせて、特典の金額は景品表示法の総付景品の限度額を確認してください。
第35条は、本人が利用停止等や第三者提供の停止を請求できる場面を定めています。請求に当たるかどうかにかかわらず、重要なのは、対応したあとに同じ人へ再度送らない仕組みです。全社共通の停止リストに記録し、次の配信や電話の前に除外されるようにしてください。
景品表示法の総付景品の論点です。消費者庁は、懸賞によらずに提供される景品類を総付景品とし、来店の先着順により提供される金品等も該当するとしています。最高額は取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2です。不動産業の事業者には別の告示があるため、取引価額の考え方とあわせて別記事で確認してください。