株主総会
株主総会の運営
準備から当日・事後まで
株主総会の運営で最初に決めるのは「会社法と定款で決まる期限」と「運営で詰める段取り」を分けることです。期限は条文から逆算し、段取りは会場・受付・シナリオ・想定問答・リハーサルの順に固めます。この記事は運営担当の目線で、そのまま使える議長シナリオの例文とチェックリストまで載せています。招集手続や決議の判断など法務上の判断は、自社の法務部門と顧問弁護士の確認を前提にしてください。
結論
結論:株主総会の運営は、①期限の逆算 ②体制と外部委託範囲の確定 ③会場の確保と設営 ④受付と議決権の集計体制 ⑤議長シナリオと想定問答 ⑥リハーサル ⑦当日運営 ⑧事後処理(議事録・登記・振り返り)の8工程で進めます。公開会社の招集通知は総会の2週間前まで(会社法第299条第1項)、電子提供措置をとる会社はさらに早く始まる(第325条の3)ため、スケジュールの骨格はこの2つから組みます。
まず押さえる基礎:定時総会・臨時総会と法定の期限
定時株主総会は「毎事業年度の終了後一定の時期に」招集しなければならず、臨時株主総会は必要がある場合にいつでも招集できます(会社法第296条第1項・第2項)。運営の段取りは同じですが、定時総会は毎年同じ時期に来るため、前年の記録をそのまま翌年の台本と問答集の土台にできる点が大きく違います。
| 期限・ルール | 条文の内容(要旨) | 運営への影響 |
|---|---|---|
| 基準日 | 基準日株主が行使できる権利は、基準日から3か月以内に行使するものに限る(第124条第2項) | 事業年度末を基準日にする会社は、総会をその3か月以内に開く前提で会場を押さえる |
| 招集通知 | 公開会社は総会の日の2週間前まで。公開会社でない会社は原則1週間前まで(書面・電子投票を定めた場合は2週間前まで。取締役会設置会社でない会社は定款で短縮できる場合あり)(第299条第1項) | 印刷・封入・発送の作業日を、この期限から逆算して確保する |
| 電子提供措置 | 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある会社は、書面・電子投票を定めた場合や取締役会設置会社の場合(第299条第2項各号)、総会の日の3週間前の日または招集通知の発送日のいずれか早い日から措置を開始し、総会の日後3か月を経過する日まで継続(第325条の3第1項) | Webに掲載する資料の確定日が、紙の発送より前に来る |
| 委任状の備置 | 代理権を証明する書面等を、総会の日から3か月間、本店に備え置く(第310条第6項) | 当日回収した委任状の保管場所と期間を体制表に書く |
| 議事録 | 総会の日から10年間、本店に備え置く(第318条第2項) | 記録担当のメモと録音を、議事録作成者へ確実に渡す |
| 変更登記 | 登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店所在地で変更の登記(第915条第1項) | 役員選任などの議案がある年は、総会後の書類回収を急ぐ |
注意
上の期限は会社の類型と定款で変わります。自社にどの期限が適用されるかは、必ず法務部門・顧問弁護士と定款で確認してください。決議要件は普通決議と特別決議の違い、招集通知の期限の詳細は招集通知はいつまでに出すかにまとめています。
運営担当の守備範囲と、法務・外部に委ねる範囲
| 領域 | 運営側が主に担う | 法務・顧問弁護士の確認が必須 |
|---|---|---|
| 招集 | 印刷・封入・発送の手配、スケジュール管理 | 招集通知の記載事項、発送期限、電子提供措置 |
| 受付 | 受付動線、スタッフ配置、機材 | 本人確認の基準、代理出席の可否判断 |
| 議決権 | 集計作業の体制、機材、人員 | 議決権の有効・無効の判断、集計方法 |
| 議事進行 | シナリオの作成、時間管理、進行補助 | 議長の権限行使、決議の宣言、動議の取り扱い |
| 質疑 | マイク運び、時間管理、記録 | 説明義務の範囲、回答の適否 |
| オンライン | 配信環境、機材、通信の安定 | バーチャル総会の位置づけ、出席の扱い |
| 事後 | 撤収、資料の回収、記録の引き渡し | 議事録の作成、登記手続 |
注意
上場企業では信託銀行等の株主名簿管理人が実務の多くを支援します。会場運営は運営代行会社に委託することもできます。どこまでを外部に委ねるかを最初の打ち合わせで決め、委託契約に書き込んでください。
準備スケジュール(3月決算・6月開催の例)
3月末を基準日とする会社は、基準日株主が行使できる権利が基準日から3か月以内のものに限られるため(第124条第2項)、6月末までに総会を開くのが前提になります。以下はその前提で、運営作業を逆算した例です。法定期限そのものは法務部門の指示に従ってください。
| 時期の目安 | 運営側のタスク | 法務・IRと合わせる点 |
|---|---|---|
| 前年秋〜年明け | 会場の仮押さえ/開催日の候補決定/前年の振り返り資料の読み直し | 開催日の取締役会決議の時期 |
| 4月 | 運営体制の組成/外部委託の範囲確定/配信の要否と方式の決定 | 議案の骨子、株主提案の有無 |
| 5月 | 会場の下見と設営プラン/必要人員の算定/シナリオ初稿/想定問答の領域洗い出し | 招集通知の原稿確定、電子提供措置の開始日 |
| 総会の3週間前まで | 電子提供措置の掲載確認(定款の定めがある場合)/各部門へ回答案を依頼 | 掲載内容の最終確認 |
| 総会の2週間前まで | 招集通知の発送完了(公開会社)/議決権行使書の返送受付と集計体制の稼働 | 発送日の記録 |
| 1週間前 | 読み合わせ・想定問答の練習/スタッフ説明会/緊急時対応の確認 | シナリオの法的文言の最終確認 |
| 前日 | 会場設営/機材の動作確認/会場リハーサル | 定足数の見込み |
| 当日 | 早朝の最終確認/受付/総会運営/撤収 | 出席株主数と議決権数の確定 |
| 総会後2週間以内 | 記録の引き渡し/決議通知の発送手配/振り返り | 議事録作成、変更登記(該当する場合) |
運営体制の役割
| 役割 | 担当すること | 当日の持ち物 |
|---|---|---|
| 統括(事務局長) | 全体の進行責任、運営上の判断、法務への連絡 | 体制表、無線、全資料 |
| 受付責任者 | 受付動線と本人確認の運用、混雑時の判断 | 受付マニュアル、判断者の連絡先 |
| 集計責任者 | 出席株主数・議決権数の集計(判断は法務と連携) | 集計表、電卓・PC |
| 会場責任者 | 設営、音響、照明、空調、座席誘導 | レイアウト図、機材リスト |
| 進行補助(議長付き) | 時間の合図、シナリオのページ管理、メモの受け渡し | シナリオ控え、合図カード |
| 質疑担当 | マイク運び、質問者の記録、回答者への引き継ぎ | ハンドマイク、記録用紙 |
| 想定問答担当 | 質問を聞いて該当する回答を探し、回答者に渡す | 検索できる問答集 |
| 記録担当 | 発言と時刻の記録(議事録の基礎資料) | 記録シート、録音機材 |
| 配信担当 | オンライン配信の運用と監視 | 予備回線、監視用端末 |
| 誘導・警備 | 入退場、救護、トラブル対応 | 避難経路図、救護連絡先 |
会場の選定と設営
会場選定の基準
- アクセス:株主が来場しやすいか。招集地の扱いは法務に確認
- 収容人数:過去の出席実績を基準に余裕を持たせる。第2会場の要否も検討
- 控室の数:役員控室、スタッフ控室、集計作業室、救護スペース
- 音響設備:発言が全席に届くか。マイクの本数と予備
- 配信の可否:有線回線、独立した電源、カメラ位置
- 受付スペース:開場直後の混雑時に滞留できる広さ
- バリアフリー:段差、エレベーター、車いす席
レイアウトの要素
| エリア | 設計のポイント |
|---|---|
| 受付 | 複数レーン。行使書持参者・未持参者・代理人で分けると流れが速い |
| 株主席 | 通路幅を広めに。発言者が立ちやすく、マイクを運びやすい配置 |
| 役員席・議長席 | 株主から見える位置。議長の手元に時計と合図が見えるか確認 |
| 事務局席 | 議長の近くに置き、メモを素早く渡せる距離にする |
| スクリーン | 後方席から読めるサイズと明るさか |
| 集計作業室 | 株主席から離れた個室。作業の様子が見えない場所 |
| 想定問答チーム席 | 議場の声が聞こえ、事務局席へ回答を渡せる位置 |
Point
会場設営で最も見落とされるのは音響です。後方席で聞き取りにくいという不満は、質疑の荒れにもつながります。実際に後方席に座って聞く確認を、必ずリハーサルで行ってください。
受付と本人確認、議決権行使書の扱い
受付は株主が最初に接する場所であると同時に、開会時に報告する出席株主数と議決権数を集める場所でもあります。
- 01
受付方法を決める
議決権行使書の持参、バーコード読み取り、株主番号の照合など。本人確認の基準は法務部門の指示に従い、運営側は手順書に落とし込みます。
- 02
レーンを分ける
行使書持参者、未持参者、代理人で列を分け、案内表示を大きく出します。
- 03
開場時刻を決める
開会の30〜60分前が目安です。早くから並ぶ株主への対応も決めておきます。
- 04
代理出席の扱いを確認する
代理人は代理権を証明する書面を提出する必要があり、代理権の授与は総会ごとに行います(第310条第1項・第2項)。代理人の資格を定款で定めている会社もあるため、受付で判断せず判断者へ回す手順を決めます。
- 05
集計の流れを決める
受付データから出席株主数と議決権数を集計し、開会前に議長へ報告する時刻と方法を決めます。
受付スタッフの応対例文
- 通常:「おはようございます。議決権行使書をお持ちでしたら、こちらにお出しください。」
- 行使書を忘れた株主:「お手数ですが、右手の受付でお名前とご住所を確認させてください。」
- 代理人:「代理でご出席の方は、委任状をこちらでお預かりします。確認いたしますので、少々お待ちください。」
- 判断に迷うとき:「確認いたしますので、こちらでお待ちいただけますか。担当の者がすぐに参ります。」
- 手荷物・撮影の案内:「会場内での撮影と録音はご遠慮いただいております。ご協力をお願いいたします。」
議決権行使書・委任状の扱い
| 項目 | 運営側の実務 | 確認が必要な点 |
|---|---|---|
| 事前返送分 | 到着日ごとに仕分け、保管場所を固定 | 受付期限の扱いは法務に確認 |
| 集計 | 集計担当を専任化し、二重チェック | 有効・無効の判断は法務・株主名簿管理人 |
| 当日持参分 | 受付で回収し、集計室へ運ぶ動線を作る | 当日の取り扱い |
| 電子行使 | システムの集計結果を受け取る手順を確認 | 締切時刻 |
| 委任状 | 受付で分けて保管 | 総会の日から3か月間、本店に備え置く(第310条第6項) |
Point
受付スタッフには「その場で判断しない、責任者を呼ぶ」を徹底してください。スタッフ説明会で、判断してはいけない事項を具体的に伝えておく必要があります。
議長シナリオの作り方と例文
株主総会のシナリオは通常のイベント台本より逐語的に作ります。下の例文は運営の叩き台です。定足数、議案の説明、採決と決議の宣言など法的意味を持つ文言は、必ず法務が確認したものに差し替えてください。〇〇の部分は自社の内容に置き換えます。
| シナリオに書き込むもの | 理由 |
|---|---|
| 議長の発言(逐語) | 法的意味を持つ文言を正確に述べるため |
| 各パートの想定所要時間 | 時間超過時の判断材料にするため |
| 映像・スライドの切り替え点 | オペレーターと同期するため |
| スタッフの動き | 誰が何をするかを固定するため |
| 例外時の分岐(動議、質問多数、中断) | その場で考えずに済むようにするため |
場面別の例文
| 場面 | 例文(叩き台) |
|---|---|
| 開会前のアナウンス | 「ご来場の皆さま、本日はお越しいただきありがとうございます。まもなく開会いたします。携帯電話は電源をお切りいただくか、マナーモードに設定をお願いいたします。会場内での撮影・録音はご遠慮ください。」 |
| 議長就任・開会 | 「定款第〇条の定めにより、私が議長を務めます。ただいまから第〇回定時株主総会を開会いたします。」 |
| 出席状況の報告 | 「本総会において議決権を行使できる株主数は〇〇名、その議決権数は〇〇個でございます。本日ご出席の株主数は、事前に議決権を行使された方を含め〇〇名、その議決権数は〇〇個でございます。」 |
| 事業報告 | 「それでは、第〇期の事業報告につきまして、お手元の資料とスクリーンの映像によりご報告いたします。」 |
| 議案の上程 | 「第〇号議案『〇〇の件』を上程いたします。内容は招集通知〇ページに記載のとおりでございます。」 |
| 質疑の受付 | 「これより、報告事項および決議事項に関するご質問をお受けいたします。ご発言の際は挙手のうえ、係の者がマイクをお持ちしましたら、出席票の番号をおっしゃってからお願いいたします。お一人様一問ずつでお願いいたします。」 |
| 担当役員へ回答を振る | 「ただいまのご質問には、担当の取締役〇〇よりお答えいたします。」 |
| 議題に関係しない質問 | 「ご質問の内容は本総会の目的である事項に関わらないため、回答を差し控えさせていただきます。」(説明を拒める場合の判断は第314条に基づき法務が行う) |
| 質疑の終了 | 「多数のご質問をいただきましたが、予定の時間となりましたので、質疑を終了させていただきたいと存じます。ご賛同いただける方は拍手をお願いいたします。」 |
| 採決 | 「それでは、第〇号議案につき、賛成の株主様の拍手をお願いいたします。」(決議の宣言文言は法務の確認版を使う) |
| 不規則発言への注意 | 「ご発言は議長の指名を受けてからお願いいたします。議事の進行にご協力ください。」 |
| 閉会 | 「以上をもちまして、本日の議事はすべて終了いたしました。これにて閉会いたします。ご出席いただき、誠にありがとうございました。」 |
| 閉会後の案内 | 「お帰りの際は、係の者の誘導に従い、お近くの出口からご退場ください。お忘れ物のないようお気をつけください。」 |
注意
議長は総会の秩序を維持し議事を整理する権限を持ち、命令に従わない者などを退場させることができます(第315条)。退場を命じる段階の文言と判断の基準は、事前に法務と決めた文言だけを使うのが安全です。
想定問答の作り方
取締役等は、株主から特定の事項について説明を求められた場合、必要な説明をしなければなりません。ただし、総会の目的である事項に関しない場合などは説明を拒めます(第314条)。想定問答は、この説明義務を果たすための準備です。
- 01
質問が出そうな領域を洗い出す
業績、配当・株主還元、役員人事・報酬、事業戦略、不祥事や訴訟、株価、サステナビリティ、人的資本。前年の質問と直近1年の開示内容が出発点です。
- 02
各部門に回答案を依頼する
経理、経営企画、人事、法務、IR。担当部門が書いた回答を法務が確認する流れにします。
- 03
回答の長さを揃える
1問あたり1〜2分を目安にします。長い回答は他の株主の質問機会を奪います。
- 04
回答者を指定する
議長が答えるか担当役員に振るかを、問答表に書いておきます。
- 05
回答を控える場合の文言を用意する
個別の取引先、係争中の案件、未公表情報など。控えるかどうかの判断は法務です。
- 06
当日探せる形にまとめる
カテゴリ別の索引、頻度の高い質問を冒頭に、タブレットでのキーワード検索。
| 問答表の欄 | 書くこと |
|---|---|
| No.・カテゴリ | 検索用の番号と分類(業績/配当/人事など) |
| 想定質問 | 株主が実際に言いそうな言葉で書く |
| 回答の要点 | 30秒で言える結論を先に |
| 詳細回答 | 補足の数字・経緯(開示済みの範囲で) |
| 回答者 | 議長/担当取締役の氏名 |
| 注意点 | 触れてはいけない情報、言い換え |
| 確認者・日付 | 法務の確認済みかどうか |
Point
想定問答は作ることより、当日探せることが重要です。分厚いバインダーは当日めくれません。リハーサルで、質問を聞いてから回答を議長に渡すまでの時間を実際に測ってください。
当日の流れ(開会から閉会まで)
| 時刻の目安 | 内容 |
|---|---|
| 開会の3時間前 | スタッフ集合、設営の最終確認、機材テスト |
| 開会の2時間前 | 役員集合、最終リハーサル、想定問答の最終共有 |
| 開会の30〜60分前 | 開場、受付開始、出席者数の集計開始 |
| 開会の10分前 | 着席案内、開会前アナウンス、出席状況の議長への報告 |
| 閉会後すぐ | 退場誘導、資料回収、記録の確認 |
| 閉会後 | 集計の確定、議事録作成に必要な記録の整理、撤収 |
- 01議長就任・開会宣言:定款に基づき議長が就任し、開会を宣言
- 02出席状況の報告:出席株主数と議決権数を報告(法務確認の文言)
- 03監査報告:監査役等による報告
- 04報告事項の報告:事業報告、計算書類など。映像を使う場合は切り替え点を台本に明記
- 05決議事項の上程・説明:議案ごとに読み上げ
- 06質疑応答:一括審議か個別審議かは事前に法務と決める
- 07採決:議案ごとに採決し、結果を宣言
- 08新任役員の紹介(役員選任がある場合)
- 09閉会宣言・退場案内
不測の事態への備え
| 事態 | 運営側の初動 | 法務と事前に決めておくこと |
|---|---|---|
| 動議が出た | 記録担当が発言を正確に記録し、事務局が議長へメモ | 議事進行の動議・修正動議の扱い方と議長の文言 |
| 質問が止まらない | 時間を議長に合図、マイクの回し方を調整 | 質疑を打ち切る目安と手順 |
| 議場が混乱した | 誘導・警備を配置、議長の指示を待つ | 退場を命じる基準と文言(第315条) |
| 急病人 | 救護スペースへ誘導、救急要請 | 議事を一時中断するかどうか |
| 停電・災害 | 避難誘導を最優先 | 延期・続行の扱い(第317条) |
| 配信の通信障害 | 予備回線へ切り替え、オンライン参加者へ告知 | 障害時に議事を続けるかどうか |
注意
株主総会でその延期または続行について決議があった場合、招集の決定と招集通知の規定は適用されません(第317条)。実際にどう扱うかは法的判断を含むため、中断時の判断者と連絡手段だけは前日までに必ず決めてください。
バーチャル株主総会・配信
オンラインを併用する形式が広がっています。法的な位置づけと必要な手続は形式ごとに異なるため、方式は必ず法務部門・顧問弁護士と決めてください。
| 形式 | 概要 | 運営上の留意点 |
|---|---|---|
| 物理会場のみ | 従来型 | 会場の収容と音響が中心 |
| 参加型(視聴中心) | 会場を開き、オンラインは視聴 | 配信の安定性、オンラインからの質問の扱い |
| 出席型 | オンラインからの出席を認める | 本人確認、議決権行使、質問受付の仕組み |
| 完全バーチャル | 物理会場を設けない | 実施できる要件が限られる。法務との事前確認が前提 |
- 回線は有線で独立確保し、予備回線への切り替え手順を決める
- 音声は音響卓から分岐する。カメラの内蔵マイクは使わない
- 視聴モニター担当を置き、外部端末で実際に見る
- スライドは映像として直接取り込む。スクリーンをカメラで撮ると読めない
- オンライン質問の処理フロー:受付、選別、回答者への引き継ぎを誰が行うか
配信の技術的な構成はハイブリッドイベントの設計も参照してください。
リハーサルの進め方
| 段階 | 時期 | 内容 | 参加者 |
|---|---|---|---|
| 読み合わせ | 2週間前 | シナリオの通読、文言の確認、時間の測定 | 事務局、法務、進行担当 |
| 想定問答の練習 | 1〜2週間前 | 質問役を立てて回答する練習。厳しい質問、長い質問、議題外の質問も入れる | 議長、役員、法務、事務局 |
| 会場リハーサル | 前日または当日早朝 | 実際の会場で通す。音響、映像、動線、配信を確認 | 全スタッフ、役員、オペレーター |
| 直前確認 | 当日開場前 | 機材、配置、連絡手段の最終確認 | 全スタッフ |
会場リハーサルでは、動議が出た場面、質問が止まらない場面、通信障害の場面を一度ずつ演じておくと、当日の初動が速くなります。
事後処理:議事録・登記・振り返り
株主総会の議事については、法務省令に従って議事録を作成しなければなりません(第318条第1項)。議事録には日時・場所、議事の経過の要領とその結果、出席した役員の氏名、議長の氏名などを記載します(会社法施行規則第72条第3項)。運営側の役割は、記録担当のメモ・時刻・録音を作成者へ漏れなく渡すことです。
- 01当日中:出席株主数・議決権数の確定、発言記録と時刻の整理、委任状・行使書の保管
- 02翌日以降:議事録作成者への記録の引き渡し。作成と記載事項の判断は法務
- 032週間以内:役員の変更などがあれば変更登記(第915条第1項)。必要書類の回収を急ぐ
- 04決議通知・問い合わせ対応:発送手配と窓口の設置
- 05振り返り:出た質問、時間配分、受付の混雑を記録し、翌年の台本と問答集に反映
議事録の記載事項と保存の詳細は株主総会の議事録とAI活用を参照してください。
よくある失敗と防ぎ方
| 失敗 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 電子提供措置の開始が遅れた | 紙の発送期限だけで逆算した | 第325条の3の開始日を先にスケジュールへ入れる |
| 受付スタッフが委任状の有効性をその場で判断した | 判断してはいけない事項を伝えていなかった | スタッフ説明会で具体例を示し、判断者の連絡先を持たせる |
| 後方席から「聞こえない」と声が出た | 音響を前方でしか確認していなかった | リハーサルで後方席に座って聞く |
| 想定問答が見つからず回答が詰まった | 問答集が紙のバインダーだけだった | 索引とキーワード検索、探す担当を専任にする |
| 動議が出て議長が固まった | シナリオに分岐がなかった | 動議・質疑打ち切り・中断の分岐を台本に入れて練習する |
| 議事録に必要な発言の記録が抜けた | 記録担当が記録すべき項目を知らなかった | 施行規則第72条第3項の項目を記録シートに印刷しておく |
運営チェックリスト
準備段階
- 自社に適用される招集通知の期限と電子提供措置の開始日を法務と確認した
- 外部委託の範囲(株主名簿管理人・運営代行・配信)を契約に書いた
- 会場の収容人数が過去の出席実績を上回り、第2会場の要否を判断した
- 体制表に役割、担当者、連絡手段、エスカレーション先を書いた
- 議長シナリオの法的文言を法務が確認した
- 想定問答に回答者と法務確認の欄があり、当日検索できる
前日・当日
- 議長が実際に演台に立ち、手元資料と時計の見え方を確認した
- マイクの音量を後方席で聞いて確認し、電池の予備がある
- スライド・映像の切り替えを本番同様に通した
- 配信を外部端末で視聴して確認し、予備回線の切り替えを試した
- 受付レーンの案内表示と、判断に迷う事例の連絡手順を全スタッフが把握している
- 非常口と避難経路、救護スペースを全スタッフが把握している
- 記録担当が議事録に必要な項目を把握している
- 中断時の判断者と連絡手段を全員が持っている
進行台本の作り方は進行表(香盤表)の作り方、人員配置はイベントの人員配置、リスク対応はイベントのリスク管理を参照してください。
運営の役割は、議長が議事に集中できる状態を作ることに尽きます。
この記事の要点
- スケジュールは招集通知(公開会社は2週間前まで)と電子提供措置(3週間前の日または発送日の早い方から)の2つの期限から逆算する。
- 法務の判断領域と運営の実務領域を最初に線引きし、外部委託の範囲を契約に書く。
- 議長シナリオは逐語で作り、動議・質疑打ち切り・中断の分岐まで入れる。法的文言は法務の確認版を使う。
- 受付スタッフには「その場で判断しない、責任者を呼ぶ」を徹底する。
- 想定問答は当日探せることが重要。探す担当を専任にし、時間を測って練習する。
- 総会後は議事録の記録引き渡しと、役員変更があれば2週間以内の変更登記を急ぐ。
FAQ
よくある質問
最初に、自社に適用される法定の期限(招集通知の発送期限、電子提供措置の開始日)を法務部門と確認し、そこから逆算して会場の確保と運営体制の組成に入ります。あわせて、株主名簿管理人や運営代行会社にどこまで任せるかを決めておくと、後の作業が重複しません。
公開会社は総会の日の2週間前まで、公開会社でない会社は原則1週間前までですが、書面や電磁的方法による議決権行使を定めた場合は2週間前までになります(会社法第299条第1項)。取締役会設置会社でない会社は定款でさらに短くできる場合があります。電子提供措置をとる会社は、総会の日の3週間前の日または招集通知の発送日のいずれか早い日から措置を始めます(第325条の3)。自社の類型と定款で必ず確認してください。
開会前のアナウンス、議長就任と開会、出席状況の報告、事業報告、議案の上程、質疑、採決、閉会までの議長の発言を逐語で書きます。各パートの想定時間、映像の切り替え点、スタッフの動き、動議や質疑打ち切りなど例外時の分岐も入れます。法的意味を持つ文言は法務が確認したものを使ってください。
会場設営、受付運営、進行補助、配信、集計作業の人員手配といった運営実務は委託できる領域です。招集手続、議決権の有効性判断、議事録の作成、決議の適法性に関わる判断は法務部門・顧問弁護士および株主名簿管理人の領域です。委託範囲を契約に書き、判断が必要な場面の連絡手順を決めておいてください。
議決権行使書の持参や株主番号の照合で確認するのが基本ですが、基準は法務部門の指示に従います。代理人は代理権を証明する書面を提出する必要があり、代理権の授与は総会ごとに行います(第310条)。代理人の資格を定款で定めている会社もあるため、受付スタッフが判断せず判断者へ回す体制を作ってください。
取締役等は株主から求められた事項について必要な説明をしなければなりませんが、総会の目的である事項に関しない場合や、株主の共同の利益を著しく害する場合などは説明を拒めます(第314条)。どの質問がこれに当たるかの判断は法務が行い、運営側は回答を控える際の文言を事前に用意しておきます。
議長は総会の秩序を維持し議事を整理する権限を持ち、命令に従わない者その他秩序を乱す者を退場させることができます(第315条)。ただし実際に退場を命じる場面は慎重な判断が必要なため、注意から退場までの段階と文言を事前に法務と決め、シナリオに書いておくのが安全です。
視聴中心の参加型、オンラインからの出席を認める出席型、物理会場を設けない完全バーチャルでは、法的な位置づけと必要な手続が異なります。実施の可否と方式は必ず法務部門・顧問弁護士に確認してください。運営側は決まった方式に応じて配信環境、本人確認、質問受付の仕組みを設計します。
シナリオの読み合わせ、想定問答の練習、会場での通しリハーサルの3段階を基本にします。会場リハーサルでは議長が実際に演台に立ち、音響を後方席で聞き、配信を外部端末で視聴するところまで行います。動議や通信障害の場面を一度演じておくと、当日の初動が速くなります。
議事録の作成(第318条第1項)に必要な記録の引き渡し、役員の変更などがあれば2週間以内の変更登記(第915条第1項)、委任状の備置、決議通知の発送、問い合わせ窓口の設置、そして翌年に向けた振り返りです。議事録は総会の日から10年間本店に備え置きます(第318条第2項)。