法令
株主総会の委任状
代理権は「総会ごとに」授与する
株主総会の委任状でつまずくのは、「一度もらえば継続して使える」と考えてしまうときです。会社法第310条第2項は「代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない」と明記しています。この記事は、条文が定めている要素を整理します。
結論
会社法第310条第1項は、株主が代理人によって議決権を行使することができるとし、その場合に株主または代理人が代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならないとしています。第2項は授与が株主総会ごとであること、第6項は会社が株主総会の日から3か月間その書面を本店に備え置くことを定めています。
根拠と、この記事の範囲
本記事の条文はe-Gov法令検索の会社法から取得しています(2026年10月時点)。
注意
委任状の文面そのものは本記事では示しません。 記載すべき事項や様式は、会社の定款と実務上の運用によります。弁護士・司法書士に確認してください。 本記事は条文が何を定めているかを整理するものです。
第310条が定めていること
株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。(第310条第1項)
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 代理人による議決権行使が可能。代理権を証明する書面の提出が必要 |
| 第2項 | 代理権の授与は株主総会ごとにしなければならない |
| 第3項 | 書面の提出に代えて、会社の承諾を得て電磁的方法により提供できる |
| 第4項 | 株主が第299条第3項の承諾をした者である場合、会社は正当な理由がなければ第3項の承諾を拒めない |
| 第5項 | 会社は出席できる代理人の数を制限できる |
| 第6項 | 株主総会の日から3か月間、書面等を本店に備え置く |
| 第7項・第8項 | 株主の閲覧謄写請求と、会社が拒める場合 |
Point
第2項の「株主総会ごとに」が実務の肝です。 包括的に、将来の総会すべてについて代理権を与える形は、この条文の文言と整合しません。毎回取り直す前提で運用を組んでください。
代理人の数の制限
株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。(第310条第5項)
Point
「制限することができる」です。 制限するかどうかは会社が決めます。多くの会社が定款で定めていますので、自社の定款を確認してください。
注意
代理人の資格(株主に限るか)についての定款の定めは、本記事では扱いません。 第310条の条文はこれを直接定めておらず、定款と判例の解釈に関わる論点です。弁護士に確認してください。
3か月間の備置と、閲覧謄写
株式会社は、株主総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。(第310条第6項)
第7項は、株主が営業時間内はいつでも、理由を明らかにして、書面の閲覧謄写等を請求できるとしています。
第8項は、会社が請求を拒める場合を4つ挙げています。
- 01請求者が権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき
- 02請求者が会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき
- 03請求者が閲覧謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき
- 04請求者が過去2年以内に、閲覧謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき
Point
条文は「次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない」という書き方です。 つまり原則は応じる構造で、拒むには第8項の各号に当たることが必要です。
注意
備置の期間は3か月間です。総会が終わっても、すぐに処分できません。保管の担当と場所を決めておいてください。 個人情報としての扱いも並行して必要です(個人情報保護法)。
運営として準備すること
- 委任状の様式を用意した(弁護士・司法書士に確認済み)
- 総会ごとに取り直す運用になっている(第310条第2項)
- 電磁的方法を認めるかを決めた(第3項・第4項)
- 代理人の数の制限について定款を確認した(第5項)
- 受付での確認手順を決めた(誰が、何を照合するか)
- 3か月間の備置の場所と担当を決めた(第6項)
- 閲覧謄写請求への対応手順を決めた(第7項・第8項)
- 個人情報としての扱いを整理した
Point
当日の受付での確認が最も混みます。 代理人として来た方の本人確認と、書面の照合。誰が、何を見て、どう判断するかを事前に決めて、受付担当に共有してください(受付の設計)。
注意
招集通知の期限は招集通知はいつまでに出すか、決議の要件は普通決議と特別決議、当日の運営全体は株主総会の運営実務を参照してください。
この記事の要点
- 第310条第2項「代理権の授与は、株主総会ごとに」。 一度もらって継続して使う形は条文と整合しない。
- 代理人による議決権行使には代理権を証明する書面の提出が必要(第1項)。
- 会社は出席できる代理人の数を制限できる(第5項)。するかどうかは定款の定めによる。
- 株主総会の日から3か月間、本店に備え置く(第6項)。終わってもすぐ処分できない。
- 閲覧謄写請求は原則応じる構造。拒めるのは第8項の4つの場合に限られる。
- 当日の受付での確認手順を事前に決める。 本人確認と書面の照合で混む。
FAQ
よくある質問
第310条が求めているのは、株主または代理人が代理権を証明する書面を株主総会ごとに会社に提出することで、条文に書式は定められていません。会社が招集通知に同封する様式がある場合はそれを使ってください。会社として様式を用意する場合は、どの株主総会についての代理権かが分かるようにし、定款に代理人に関する定めがないかもあわせて確認します。
会社法第310条第2項は「前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない」と定めています。包括的に将来の総会すべてについて代理権を与える形は、この条文の文言と整合しません。毎回取り直す前提で運用を組んでください。
第310条第5項は「株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる」と定めています。制限するかどうかは会社が決めるもので、多くの会社が定款で定めています。自社の定款を確認してください。なお代理人の資格を株主に限れるかという論点は、条文が直接定めておらず定款と判例の解釈に関わるため、弁護士に確認してください。
第310条第6項は、株主総会の日から3か月間、代理権を証明する書面および電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録を本店に備え置かなければならないとしています。総会が終わってもすぐには処分できません。保管の場所と担当を決めておいてください。個人情報としての扱いも並行して必要です。
第310条第7項は、株主が営業時間内はいつでも、請求の理由を明らかにして閲覧謄写等を請求できるとしています。第8項は「次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない」という書き方で、原則は応じる構造です。拒めるのは、権利の確保・行使に関する調査以外の目的、業務の遂行を妨げる目的、知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため、過去2年以内に同様の通報をしたことがある場合の4つです。
代理人として来場した方の本人確認と、代理権を証明する書面の照合です。ここが最も混むので、誰が、何を見て、どう判断するかを事前に決めて受付担当に共有してください。判断に迷う場合に誰につなぐかも決めておくと、列が止まりません。