法令
株主総会の普通決議と特別決議
第309条が定める3つの要件
株主総会の決議要件は、議案によって変わります。 そして会社法第309条は、定款で加重したり緩和したりできる箇所を複数置いています。つまり条文だけでは自社の要件が確定しません。 条文と定款の両方を見る必要があります。
結論
会社法第309条は決議の要件を3つに分けています。第1項が普通決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数)、第2項が特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上)、第3項が特殊決議です。いずれも定款の定めで変わる部分があります。
根拠と、この記事の範囲
本記事の条文はe-Gov法令検索の会社法から取得しています(2026年10月時点)。
Point
どの議案がどの決議に当たるかは、第309条第2項の各号に列挙されています。 12号まであり、他の条文を参照する形で書かれているため、本記事では全部を列挙しません。 個別の議案については、会社法の条文と自社の定款を直接確認し、弁護士・司法書士に相談してください。
第1項 — 普通決議
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。(第309条第1項)
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 定足数 | 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 |
| 可決要件 | 出席した株主の議決権の過半数 |
| 定款 | 「定款に別段の定めがある場合を除き」——定款で変えられる |
Point
冒頭の「定款に別段の定めがある場合を除き」が重要です。 普通決議の定足数は、定款で排除している会社が多くあります。自社の定款を見ないと、実際の要件は分かりません。
第2項 — 特別決議
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。(第309条第2項)
| 要素 | 原則 | 定款で変えられる範囲 |
|---|---|---|
| 定足数 | 議決権の過半数を有する株主の出席 | 3分の1以上の割合まで引き下げ可 |
| 可決要件 | 出席株主の議決権の3分の2以上 | これを上回る割合に引き上げ可 |
Point
定足数は下げられ、可決要件は上げられるという非対称な構造です。条文は定足数について「三分の一以上の割合を定款で定めた場合」、可決要件について「これを上回る割合を定款で定めた場合」としています。
さらに第2項の後段は、「当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない」としています。頭数の要件を上乗せできる、という構造です。
注意
第2項各号に列挙されている議案は12号まであります。 本記事では列挙しません。他の条文を参照する形で書かれているため、正確に把握するには会社法の条文を直接確認する必要があります。
第3項 — 特殊決議
第3項は、一定の株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く)について、さらに重い要件を定めています。
…当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。(第309条第3項)
Point
「株主の半数以上」という頭数の要件が入っているのが特徴です。議決権の割合だけでなく、人数でも要件がかかります。
注意
どの決議が第3項に当たるかは、同項の各号に定められています。 本記事では列挙しません。
3つを並べる
| 定足数 | 可決要件 | 定款で変わる部分 | |
|---|---|---|---|
| 普通決議(第1項) | 議決権の過半数 | 出席議決権の過半数 | 「別段の定めがある場合を除き」 |
| 特別決議(第2項) | 議決権の過半数 | 出席議決権の3分の2以上 | 定足数は3分の1以上まで引下げ可/可決要件は引上げ可 |
| 特殊決議(第3項) | 株主の半数以上 | その株主の議決権の3分の2以上 | いずれも引上げ可 |
Point
この表だけで自社の要件は確定しません。 第1項は「定款に別段の定めがある場合を除き」、第2項・第3項は定款で割合を変えられます。必ず自社の定款と突き合わせてください。
運営として準備すること
- 01
議案ごとに決議の種類を確認する
条文と定款の両方を見ます。弁護士・司法書士に確認してください。議案の性質で要件が変わります。
- 02
定足数を満たす見込みを計算する
議決権の分布から、どれだけ出席・議決権行使がないと成立しないかを把握します。
- 03
議決権行使の方法を揃える
当日の出席、委任状、書面投票、電子投票。合計して定足数に届くかを事前に見ます(委任状の扱い)。
- 04
集計の手順を決める
誰が、どう数えるか。議案ごとに要件が違うなら、集計も議案ごとになります。
- 05
議長の進行に要件を書き込む
各議案の決議の種類と要件を、進行台本に書いておく。当日に調べることになりません。
- 06
想定問答を用意する
決議要件についての質問が出る可能性があります。
- 議案ごとの決議の種類を確認した(条文+定款)
- 定款の別段の定め・割合の変更を確認した
- 定足数を満たす見込みを計算した
- 委任状・書面投票・電子投票を合算して見ている
- 集計の手順と担当を決めた
- 進行台本に各議案の要件を書いた
- 弁護士・司法書士に確認した
注意
当日の運営は株主総会の運営実務、招集通知はいつまでに出すか、委任状は代理権を証明する書面を参照してください。
この記事の要点
- 普通決議(第1項)は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数。
- 特別決議(第2項)は、議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上。
- 定足数は3分の1以上まで引き下げられ、可決要件は引き上げられるという非対称な構造。
- 普通決議は「定款に別段の定めがある場合を除き」。定足数を排除している会社が多い。
- 特殊決議(第3項)は「株主の半数以上」という頭数の要件が入る。
- 条文だけでは自社の要件が確定しない。 必ず定款と突き合わせ、専門家に確認する。
FAQ
よくある質問
第309条第1項は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の過半数で決議すると定めています。つまり「出席の過半数」と「賛成の過半数」の2段階です。特別決議は、出席の要件は同じで、賛成が出席株主の議決権の3分の2以上になります。定款で動く部分があるため、自社の定款を確認してください。
会社法第309条第1項の普通決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で成立します。第2項の特別決議は、同じく議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上で成立します。どの議案がどちらに当たるかは第2項の各号に列挙されています。
変えられる部分があります。普通決議は第1項が「定款に別段の定めがある場合を除き」としており、定足数を排除している会社が多くあります。特別決議は第2項が、定足数について3分の1以上の割合を定款で定めた場合はその割合以上、可決要件について定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合、としています。定足数は下げられ、可決要件は上げられるという非対称な構造です。
会社法第309条第3項が定める決議で、一定の株主総会について、議決権を行使することができる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上の多数を要するとしています。議決権の割合だけでなく、株主の頭数でも要件がかかるのが特徴です。どの決議がこれに当たるかは同項の各号に定められています。
会社法第309条第2項と第3項の各号を確認してください。ただし各号は他の条文を参照する形で書かれており、第2項だけで12号あります。正確な把握には条文を直接読む必要があり、さらに自社の定款で要件が変わっている可能性があります。弁護士・司法書士に確認してください。
議案ごとの決議の種類と要件を進行台本に書き込んでおいてください。当日に調べることになりません。あわせて、議決権の分布から定足数を満たす見込みを計算し、当日の出席・委任状・書面投票・電子投票を合算して届くかを事前に見ておきます。議案ごとに要件が違う場合は、集計も議案ごとになります。