敬語
「拝借」の意味と使い方
お知恵を拝借の例文・言い換え一覧
結論:「拝借(はいしゃく)」は「借りる」をへりくだって言う謙譲語です。目上の相手から、物・知恵・時間・名前などを借りるときに使います。いちばん使う一文は「◯◯の件で、お知恵を拝借できますでしょうか。」。守ることは3つだけです。①自分が借りるときだけ使う(相手には「お使いください」) ②「ご拝借」と「ご」を付けない ③返さない物には使わず「頂戴する」にする。このページでは、何に使えるかの一文例、そのまま使えるメール例文、言い換えの比較表、送信前のチェックリストまで並べました。
結論
「拝借」は、「拝」(自分の動作をへりくだる字)と「借」(かりる)を合わせた言葉で、自分が相手から借りることをへりくだって言う謙譲語です。読み方は「はいしゃく」。「拝借する」「拝借いたします」「拝借できますでしょうか」のように動詞の形でも使い、物だけでなく、知恵・時間・名前・力(手)など形のないものを借りる場面にも使います。
まず結論:「拝借」早わかり
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 意味 | 「借りる」の謙譲語。自分を低くして、貸してくれる相手を立てる |
| 読み方 | はいしゃく |
| 使う人 | 借りる側の自分(自分の会社・身内を含む) |
| 使う相手 | 取引先・お客様・上司など、目上や社外の人 |
| よく使う形 | お知恵を拝借/お時間を拝借/お名前を拝借/資料を拝借 |
| 使わない場面 | 相手が借りるとき・返さない物を受け取るとき・同僚に気軽に借りるとき |
| 迷ったときの言い換え | お借りする(社内外どちらでも使いやすい) |
「拝借」の意味と成り立ち
「拝」は「拝見」「拝受」「拝読」などにも使われる字で、自分の動作をへりくだり、相手を立てるはたらきがあります。「拝借」も同じ仲間で、借りる側の自分を低くして、貸してくれる相手を敬う言い方です。
「借りる」は、いずれ返すことが前提の言葉です。そのため「拝借」も、資料・備品・会場のように返す物や、知恵・時間・名前のように「使わせてもらう」物に使います。試供品やお土産のようにもらって返さない物は「頂戴する」「いただく」のほうが合います。
Point
「拝借」は、自分が借りるときだけに使う言葉。相手が借りるときは「お使いください」「お持ちください」と言います。同じ「拝」の仲間の使い方は「拝見しました」「拝受しました」の使い分けを見てください。
何を「拝借」できる? 対象別の一文例
「◯◯を拝借」の◯◯に入る言葉ごとに、そのまま使える一文を並べました。メールの用件の行に差し込めます。
| 借りる物 | 意味 | そのまま使える一文 |
|---|---|---|
| お知恵 | 相談に乗ってもらう | ◯◯の進め方について、お知恵を拝借できますでしょうか。 |
| お知恵(改まった依頼状) | 同上・より硬く | ◯◯につきまして、お知恵を拝借できれば幸甚に存じます。 |
| お時間 | 少し時間をもらう | 10分ほどお時間を拝借してもよろしいでしょうか。 |
| お時間(会議の場で) | 発言の時間をもらう | 冒頭で少しお時間を拝借し、◯◯についてご報告いたします。 |
| お名前 | 紹介・推薦で名前を出す | ご紹介の際、◯◯様のお名前を拝借してもよろしいでしょうか。 |
| お力 | 手伝ってもらう | 当日の受付が手薄なため、◯◯様のお力を拝借できるとありがたく存じます。 |
| お手 | 手締めで一緒に手を打ってもらう | それでは皆さま、お手を拝借いたします。 |
| 資料 | 参考に資料を借りる | 昨年度の◯◯の資料を拝借できますでしょうか。 |
| 備品・機材 | 物を借りる | ◯日の展示で使う長机を、2台ほど拝借できますでしょうか。 |
| 会場・部屋 | 場所を借りる | ◯◯の会議室を、◯日の午後に拝借できればと存じます。 |
| お言葉 | 相手の言葉を引いて話す | ◯◯様のお言葉を拝借すると、「◯◯」ということかと存じます。 |
| 写真・図 | 資料に載せる | ◯◯の写真を、社内資料に拝借してもよろしいでしょうか。 |
注意
写真・図・文章などを資料に載せるときは、言葉が丁寧でも持ち主の許可が要ることに変わりはありません。「拝借してもよろしいでしょうか」と使う前に聞き、使い道(社内資料か、外部に出すか)も添えて確認します。
使える場面・使わないほうがよい場面
| 場面 | 使い方 | 代わりの言い方・例 |
|---|---|---|
| 取引先・上司に相談したい | 使える | お知恵を拝借できますでしょうか |
| 資料・備品を借りたい | 使える | ◯◯の資料を拝借できますでしょうか |
| 借りた物を返す | 使える | 拝借していた◯◯をお返しいたします |
| 紹介や推薦で相手の名前を使いたい | 使える(必ず事前に許可を取る) | ◯◯様のお名前を拝借してもよろしいでしょうか |
| 相手に物を貸す | 使わない | どうぞお使いください |
| 試供品・資料のコピーなど、返さない物をもらう | 使わない | 頂戴いたします/いただきます |
| 同僚・後輩から借りる | かしこまりすぎる | 借りてもいいですか |
注意
同僚にペン一本を借りるような場面で「拝借」を使うと、言葉の重さと用件が釣り合わず、冗談めかして聞こえることがあります。社内の気軽なやりとりでは「お借りしてもよろしいですか」「借りてもいいですか」で十分です。
「お借りする」「借用」「頂戴」との違い
| 言葉 | どんな言葉か | 返す前提 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 拝借する | 「借りる」の謙譲語。硬め | あり | 社外・目上への依頼、知恵や名前を借りる |
| お借りする | 「借りる」の謙譲語。やわらかい | あり | 社内外どちらにも。日常の依頼 |
| 借用する | 敬語ではなく、事務的な言葉 | あり | 借用書・貸出の記録など書類 |
| お力を借りる/お知恵を借りる | 「拝借」をやわらげた言い方 | — | 会話・社内のメール |
| 頂戴する | 「もらう」の謙譲語 | なし | 資料・名刺・品物をもらう |
| 拝受する | 「受け取る」の謙譲語 | なし | 書類・メールを受け取った報告 |
迷ったら、返すなら「お借りする」、返さないなら「頂戴する」と覚えておけば外しません。「拝借」は、その中でも改まった依頼や、知恵・名前など相手にとって大切なものを借りるときに選ぶと、言葉の重さが用件に合います。
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
| 言い方 | 丁寧さ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| お知恵を拝借できれば幸甚に存じます | 特に改まった言い方 | 改まった依頼状 |
| お知恵を拝借できますでしょうか | 改まった言い方 | 取引先・上司への相談のお願い |
| ご助言をいただけますでしょうか | 改まった言い方 | 専門的な意見がほしい |
| ご意見をお聞かせいただけますでしょうか | 改まった言い方(やわらかい) | 意見・感想を聞きたい |
| お力添えいただけますでしょうか | 改まった言い方 | 手伝い・協力をお願いしたい |
| お借りしてもよろしいでしょうか | 丁寧 | 社内外どちらにも使いやすい |
| ご相談させてください | 丁寧(社内向け) | 社内の上司・先輩 |
| 借りてもいいですか | 標準 | 同僚・後輩 |
協力のお願いは「お力添え」の使い方、教えてもらうお願いは「ご教示ください」の使い方も参考にしてください。
「拝借」を使った依頼メールの組み立て方
- 01
何を借りたいかを一言で書く
件名と本文の最初に「◯◯の件でご相談のお願い」「◯◯の資料をお借りできますか」と、借りたい物をはっきり書きます。
- 02
なぜその人に頼むのかを添える
「同様の催しを手がけてこられた◯◯様に」のように、相手を選んだ理由を一文入れると、頼まれた側が引き受けやすくなります。
- 03
「拝借できますでしょうか」で頼む
依頼の文は一つにまとめ、「拝借できますでしょうか」「拝借してもよろしいでしょうか」と相手に判断をゆだねる形にします。
- 04
期間・返し方・使い道を書く
物ならいつまで借りて、どう返すか。名前や写真ならどこで使うか。相談なら所要時間と方法(対面・オンライン)を書きます。
- 05
返したあとにお礼を送る
「拝借していた◯◯をお返しいたしました」と返却の報告と、役に立ったことを伝えて締めます。
場面別のメール例文
取引先に相談をお願いする(お知恵を拝借)
件名:◯◯の運営についてご相談のお願い
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
このたび、弊社で初めて◯◯のイベントを開くことになりました。
同様の催しを数多く手がけてこられた◯◯様に、ぜひ一度お知恵を拝借できればと考えております。
ご多用のところ恐縮ですが、◯月中に30分ほどお時間をいただけますでしょうか。オンラインでも構いません。
社内の上司に資料を借りる
件名:◯◯の過去資料をお借りできますか
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
◯◯の企画書を作るにあたり、昨年度の◯◯の報告書を拝借できますでしょうか。
参考にした箇所は企画書の中で明記し、◯日までにお返しいたします。
取引先から機材・備品を借りる
件名:◯日の◯◯で使う機材についてのお願い
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯日の◯◯にあたり、御社の◯◯(機材名)を1台拝借できますでしょうか。
当日の朝に弊社の者が受け取りに伺い、終了後その日のうちにお返しいたします。
万一の破損に備え、取り扱いは担当者が責任を持って行います。
借りた物を返すときのお礼
件名:拝借していた◯◯の返却について
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日拝借した◯◯を、本日宅配便にてお返しいたしました。
おかげさまで、◯◯を無事に終えることができました。
ご厚意に心より感謝申し上げます。
相談に乗ってもらったあとのお礼
件名:先日のご相談のお礼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日はお忙しいところ、お知恵を拝借する機会をいただき、ありがとうございました。
お話しいただいた◯◯の進め方を取り入れ、社内で計画を練り直しております。
形になりましたら、改めてご報告いたします。
紹介の際に相手の名前を使わせてもらう
件名:◯◯社へのご紹介の件
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日お話しした××社の××様へご連絡する際、◯◯様からのご紹介であるとお伝えしたく、お名前を拝借してもよろしいでしょうか。
ご了承いただけましたら、××様へのメールにその旨を書き添えます。
会議の冒頭で少し時間をもらう(社内)
件名:明日の定例会議での◯◯のご報告について
◯◯課長
お疲れさまです。□□です。
明日の定例会議の冒頭で、5分ほどお時間を拝借して◯◯の進み具合をご報告してもよろしいでしょうか。
資料は事前に共有フォルダに置いておきます。
研修や勉強会で講師に相談する
件名:◯◯研修の内容についてのご相談
◯◯先生
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯月の研修について、受講者の経験に差があり、進め方に迷っております。
お忙しいところ恐縮ですが、内容の組み立てについてお知恵を拝借できますでしょうか。
受講者の一覧を添付いたしますので、ご覧いただけますと幸いです。
宴会の締めで「お手を拝借」と言う
それでは、本日の会の成功と皆さまのますますのご活躍を祈念いたしまして、一本締めで締めたいと思います。
皆さま、お手を拝借いたします。よーお!(パン)
ありがとうございました。
「お手を拝借」は「一緒に手を打ってください」という意味の掛け声です。締めの挨拶全体の流れは締めの挨拶の例文にまとめています。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| ご拝借ください/ご拝借ありがとうございます | 「拝借」は自分の動作に使う謙譲語で、「ご」を付けて相手の動作にはしない | どうぞお使いください/お貸しいただき、ありがとうございます |
| 弊社の資料を拝借してください | 相手が借りる場面には使わない | 弊社の資料をお使いください |
| サンプルを拝借いたしました(返さない物) | 「借りる」は返す前提の言葉 | サンプルを頂戴いたしました |
| 拝借させていただきます | 「拝借」だけでへりくだる意味があり、許可をもらう場面でなければくどく感じる人もいる | 拝借します/お借りします |
| (同僚に)ペンを拝借 | 言葉が重く、改まった場面でなければ浮く | ペンを借りてもいいですか |
| (許可を取らずに)◯◯様のお名前を拝借しました | 言葉が丁寧でも、無断で名前を出したことになる | 事前に「お名前を拝借してもよろしいでしょうか」と聞く |
「させていただく」は、文化審議会の「敬語の指針」で、相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場合に使われる形と説明されています。名前の使用を許してもらった場面などでは「拝借させていただきます」と言う人もいますが、迷ったら「拝借します」「お借りします」と短くしておけば足ります。詳しくは「させていただく」の使い方と二重敬語の一覧を見てください。
送る前のチェックリスト
- 「拝借」を使っているのは自分(自社)が借りる場面か
- 「ご拝借」「拝借してください」のように相手の動作にしていないか
- 借りる物は返す物、または使わせてもらう物か(返さない物なら「頂戴」)
- 名前・写真・文章を使うときは、使う前に許可を取り、使い道を書いたか
- 物を借りるときは、期間と返し方を書いたか
- 相談のお願いでは、所要時間と方法を書いたか
- 同僚への気軽な依頼で、大げさになっていないか
- 一通の中で「拝借」を何度も繰り返していないか(二度目からは「お借りする」で十分)
「お知恵を拝借したい」と頼まれたときの返事
相談を頼まれた側は、引き受けられるかどうかと、都合のよい日時や方法を返します。「お役に立てるかわかりませんが」と一言添えると、相手の気持ちを軽くできます。
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご相談の件、承知いたしました。どこまでお役に立てるかわかりませんが、喜んでお話しいたします。
◯月◯日(◯)◯時以降でしたら時間を取れますので、ご都合をお知らせください。
物を貸してほしいと頼まれたとき
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の件、承知いたしました。どうぞお使いください。
◯日までにご返却いただければ問題ございません。受け渡しの方法はご都合に合わせます。
借りた物を返されたら、「お役に立てて何よりです」と短く返せば十分です。
この記事の要点
- 「拝借」は「借りる」の謙譲語。読みは「はいしゃく」。
- 相談のお願いは「お知恵を拝借できますでしょうか」。
- 自分が借りるときだけ使う。相手には「お使いください」。
- 返さない物は「頂戴する」。迷ったら返すなら「お借りする」。
- 「ご拝借」とは言わない。名前や写真を借りるときは必ず事前に許可を取る。
FAQ
よくある質問
「借りる」をへりくだって言う謙譲語です。目上の人から物や知恵、時間、名前などを借りるときに、自分を低くして相手を立てる言い方です。
「はいしゃく」と読みます。
使えます。目上の人から借りるときにこそ使う言葉です。ただ、同僚との気軽なやりとりでは大げさに聞こえることがあります。
相手の知識や考えを貸してもらう、つまり相談に乗ってもらうことをへりくだって言う言い方です。「お知恵を拝借できますでしょうか」の形で、相談のお願いに使います。
どちらも「借りる」の謙譲語です。「拝借」のほうが硬く改まった響きがあり、社外への依頼状や、知恵・名前を借りる場面に向いています。日常のメールでは「お借りする」で十分です。
へりくだる言葉の「拝借」に、改まって述べる「いたす」を添えた形で、「拝見いたします」と同じ組み立てです。ビジネスメールでも使われている言い方ですが、硬いと感じる人もいるので、気になる場合は「拝借します」「お借りします」とします。
返さない物には合いません。「借りる」は返すことが前提の言葉なので、試供品や資料のコピーなどもらう物には「頂戴いたします」「いただきます」を使います。
宴会や式の締めで手締めをするときの掛け声で、「皆さんの手を貸してください(一緒に手を打ってください)」という意味です。