マナー
お酌のマナー
注ぎ方・受け方・断り方と、そのまま使える例文
お酌のマナーで押さえることは三つです。①注ぐ前に相手に尋ねる、②瓶やとっくりは両手で持ってゆっくり注ぐ、③受ける側は器を両手で持ち、テーブルに置いたまま受けない。声かけは「よろしければ、お注ぎいたします」、受けるときは「ありがとうございます。頂戴します」、断るときは「ありがとうございます。まだこちらがございますので」で通じます。ワインだけは例外で、グラスは置いたまま注いでもらいます。この記事では、飲み物ごとの注ぎ方・受け方の早見表、お酌のタイミングと回る順番、場面別の例文、やりがちなNG、当日のチェックリストを順に載せます。乾杯の挨拶の文面は乾杯の挨拶の例文、飲み会でのハラスメントの防ぎ方は飲み会のハラスメント防止にまとめています。
結論
お酌は、相手の飲み物が少なくなったときに、次の一杯を気にかけるための作法です。お酒を飲ませることが目的ではないので、飲まない人、もう十分という人にはすすめません。注ぎ方の細かな作法(ラベルの向き、つぎ足しをするか、手酌をしてよいか)は地域や職場で考え方が違うため、周りや会社の慣習に合わせれば十分です。迷ったら「お注ぎしてもよろしいですか」と尋ねるのがいちばん確実です。
飲み物別・注ぎ方と受け方の早見表
| 飲み物 | 注ぐ側 | 受ける側 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 瓶ビール | ラベルを上に向け、右手で瓶の胴、左手を下から添える。最初はゆっくり、途中で少し勢いをつけ、最後にまたゆっくり泡を整える | グラスを両手で持ち、最初は少し傾け、注がれるにつれてまっすぐに戻す | 瓶の口をグラスに当てない。泡が多すぎたら少し待ってから注ぎ足す |
| 日本酒(とっくり) | 右手でとっくりの胴を持ち、左手を下に添える。おちょこの縁から少し下までを目安に、細く注ぐ | おちょこを右手で持ち、左手を底に添えて少し差し出す | テーブルに置いたおちょこには注がない。とっくりを振ったり、のぞき込んだりして残りを確かめない |
| ワイン | 改まった店では店の人が注ぐので、客同士では注がないことが多い。注ぐならボトルの胴を持ち、グラスの太いところより下まで | グラスはテーブルに置いたまま。台(脚の下)に指を軽く添える程度 | グラスを持ち上げて受けない。乾杯は当てずに軽く掲げることもある |
| 焼酎・ハイボールなど | 店の人に頼むか、本人の好み(濃さ・割り方)を聞いてから作る | お礼を言って受け取る | 勝手に濃く作らない。割り方は本人に任せる |
| ソフトドリンク・お茶 | 空きそうなら「何か追加しましょうか」とメニューを渡す | お酒の人と同じようにお礼を言う | お酒を飲まない人への気配りも、お酌と同じ扱い |
注意
右手・左手の使い分けや、ラベルの向きは「そうするとよいとされることが多い」作法で、決まりではありません。両手で丁寧に扱っていれば、細部の違いで失礼になることはまずありません。
瓶ビールの注ぎ方・受け方(手順)
注ぐとき
- 01
相手に尋ねる
グラスの残りが少なくなったら「よろしければ、お注ぎいたします」と声をかけ、相手がグラスを持つのを待ちます。
- 02
両手で瓶を持つ
ラベルを上にして、右手で胴を、左手を下から添えます。片手で注ぐのは避けます。
- 03
最初はゆっくり
グラスの口に近づけ、細く注ぎ始めます。瓶の口はグラスに当てません。
- 04
途中で泡をつくる
少し勢いをつけて泡を立て、グラスの上のほうまで注ぎます。
- 05
最後にまたゆっくり
泡がグラスの縁にそろう程度で止め、瓶の口を少し上げてしずくを切ります。
受けるとき
- 01
グラスを持つ
注いでもらう前にグラスを両手で持ちます。中身が残っていたら、一口飲んで少なくしてから差し出すと注ぐ側が楽です。
- 02
少し傾けて差し出す
最初は少し傾け、注がれるにつれてまっすぐに戻します。
- 03
お礼を言って一口
「ありがとうございます。頂戴します」と言い、一口つけてからテーブルに置きます。
- 04
お返しを申し出る
相手のグラスが空いていれば「◯◯様も、よろしければお注ぎいたします」と返します。
お酌のタイミングと、回る順番
- 乾杯の直後:最初の一杯を飲んだら、近くの目上の人のグラスに気を配ります。
- グラスの残りが少なくなったとき:空になる前に「次は何をお飲みになりますか」と尋ねます。中身が残っているのにつぎ足すことを好まない人もいるので、尋ねてからにします。
- 話が一区切りしたとき:相手が話している最中に瓶を差し出すのは避けます。
- 料理が出てきたとき・席を移るとき:声をかけやすい区切りです。
席を回るときは、上座の人(主賓、役職の高い人、取引先)から順に挨拶します。自分のグラスと、必要なら瓶を持って行き、「失礼いたします。少しお邪魔してもよろしいでしょうか」と声をかけます。相手が食事中や話し中なら、少し待ちます。席の上下の考え方は席次のマナーにまとめています。
乾杯のときのグラスの扱い
- 01
全員の飲み物がそろうまで待つ
お酒を飲まない人の飲み物も同じように確認します。乾杯までは口をつけません。
- 02
挨拶の間はグラスを置いておく
話している人のほうを向いて聞き、「乾杯」の発声に合わせてグラスを持ちます。
- 03
目上の人より少し低く合わせる
近くの人とは、相手のグラスより少し低い位置で軽く合わせます。強く当てません。
- 04
遠くの人とは掲げて会釈
席を立って合わせに行く必要はありません。グラスを軽く掲げ、目を合わせて会釈します。
- 05
一口飲んでから置く
乾杯の後に拍手をする会もあります。周りに合わせます。
注意
ワイングラスなど薄いグラスを使う席や改まった席では、グラスを当てずに軽く掲げるだけにすることもあります。
場面別の例文(そのまま使える言い方)
お酌をするとき
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 上司に | 「部長、何かお飲みになりますか。ビールでしたら、お注ぎいたします。」 |
| 取引先に | 「◯◯様、よろしければお注ぎいたします。ほかのお飲み物がよろしければ、注文いたしますのでおっしゃってください。」 |
| 飲み物が分からないとき | 「◯◯様、次は何になさいますか。メニューもございますので、お持ちしましょうか。」 |
| グラスに中身が残っているとき | 「お注ぎしてもよろしいですか。」 |
| 日本酒の席で | 「◯◯様、お注ぎいたします。こちらのお酒、すっきりしていて飲みやすいそうです。」 |
| お酒を飲まない人に | 「◯◯さん、お飲み物は何かお持ちしましょうか。メニューをお渡ししますね。」 |
| お返しをするとき | 「ありがとうございます。◯◯様も、よろしければお注ぎいたします。」 |
| 席を回って挨拶するとき | 「失礼いたします。少しお邪魔してもよろしいでしょうか。本日はありがとうございます。」 |
お酌を受けるとき
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 基本 | 「ありがとうございます。頂戴します。」 |
| 上司に注いでもらったとき | 「恐れ入ります。ありがとうございます。」 |
| 少なめにしてほしいとき | 「ありがとうございます。少しだけお願いいたします。」 |
| 注いでもらった後に話をつなぐ | 「ありがとうございます。◯◯様は、普段はどんなお酒を召し上がるのですか。」 |
お酌を断るとき
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| まだ残っているとき | 「ありがとうございます。まだこちらがございますので、どうぞお気遣いなく。」 |
| お酒を飲まないとき | 「ありがとうございます。お酒は控えておりますので、こちらのお茶でご一緒させてください。」 |
| もう十分なとき | 「ありがとうございます。もう十分いただきましたので、この後はお茶にいたします。」 |
| 車で来たとき | 「ありがとうございます。本日は車で参りましたので、ソフトドリンクでご一緒させてください。」 |
| 翌日早いとき | 「ありがとうございます。明日の朝が早いため、本日はこのあたりで控えさせていただきます。」 |
| 何度もすすめられるとき | 「お気持ちだけ頂戴します。◯◯様こそ、何かお注ぎしましょうか。」 |
断るときの理由は一言で十分です。体質や事情を詳しく説明する必要はありません。グラスに手を軽くかざす、少し残しておくと、言葉にしなくても伝わります。
やりがちなNG
| NG | なぜ避けるか | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 片手で瓶やとっくりを持って注ぐ | ぞんざいな印象になる | 両手で持つ |
| テーブルに置いたままのグラス・おちょこに注ぐ | 受ける準備ができていない相手に注ぐことになる(ワインは例外) | 声をかけ、相手が持つのを待つ |
| 尋ねずに、中身が残ったグラスにつぎ足す | つぎ足しを好まない人がいる | 「お注ぎしてもよろしいですか」と尋ねる |
| とっくりを振る・のぞき込む | 残りを確かめる仕草が目立つ | 持ったときの重さで判断し、少なければ追加を頼む |
| 瓶の口をグラスに当てる | 音が出て、グラスを傷めることもある | 少し離して注ぐ |
| 相手の話をさえぎって瓶を差し出す | 話の腰を折る | 話の区切りを待つ |
| 目上の人の前で手酌ばかりする | 周りに気を配っていないように見える(手酌が普通の職場もある) | 近くの人に「何かお飲みになりますか」と声をかける |
| 断られたのに重ねてすすめる | 相手が飲めない・飲みたくない事情を無視することになる | 飲み物の希望だけ聞く |
| 自分が飲みすぎる | 周りに気を配れなくなる | お酒の合間に水を頼んで飲む |
言わないほうがよい言い方
| 避けたい言い方 | 理由 | 代わりの言い方 |
|---|---|---|
| 「まあまあ、一杯だけ」 | 断った人に飲むことを強いている | 「では、お茶をお持ちしましょうか」 |
| 「飲めないなんて言わずに」 | 相手の体質や事情を否定している | (すすめない。飲み物の希望だけ聞く) |
| 「グラスが空いてますよ、ほら」 | 飲むことを急かしているように聞こえる | 「次は何をお飲みになりますか」 |
| 「一気、一気」 | 一気飲みをあおる。命に関わることがある | (言わない。止める側に回る) |
| 「上司の酒は断れないでしょう」 | 立場を使って飲ませている | (言わない) |
| 「乾杯だけは酒で」 | 飲まない人に飲酒を求めている | 「乾杯はお好きな飲み物でどうぞ」 |
Point
お酒をすすめてはいけない相手もいます。道路交通法第65条第3項は、酒気を帯びて運転するおそれがある人に酒類を提供したり、飲酒をすすめたりすることを禁じています。また、二十歳未満の人の飲酒は法律で禁じられています。車で来た人や、新入社員の年齢が分からないときは、お酒ではなく飲み物の希望を尋ねてください。止め方の例文は飲み会のハラスメント防止にあります。
当日のチェックリスト
始まる前
- 上座・下座と、自分の席の位置を確認した
- お酒を飲まない人、車で来た人がいるか把握した
- 全員の飲み物がそろうまで口をつけずに待った
最中
- 乾杯で目上の人より少し低くグラスを合わせた
- 近くの人のグラスの残りに気を配り、尋ねてから注いだ
- 瓶・とっくりは両手で持った
- 注いでもらうときは器を持って受け、お礼を言った
- 断られたら重ねてすすめなかった
- 自分もお酒の合間に水を飲み、飲みすぎていない
終わった後
- 帰る前に幹事・主催者にお礼を伝えた
- 翌朝、上司や取引先にお礼を伝えた(失礼があれば短くお詫び)
後日のフォロー(お礼・お詫び)
ごちそうになった場合や、上司・取引先と同席した場合は、翌日の朝に一言お礼を伝えます。社内なら口頭やチャットで、社外ならメールで送ります。
上司へ(翌朝、口頭またはチャットで)
昨日はありがとうございました。◯◯のお話を伺えて、とても勉強になりました。ごちそうさまでした。
飲みすぎて失礼があったとき(お詫び)
昨夜は大変失礼いたしました。途中から気が緩み、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。今後は気をつけます。
お詫びは言い訳を重ねず、短く。取引先との会食のお礼メールは会食のお礼メール、会社の飲み会のお礼は忘年会のお礼の例文が使えます。
この記事の要点
- お酌は尋ねてから、両手で、ゆっくり。
- 受けるときは器を両手で持つ。置いたまま受けない(ワインは置いたまま)。
- 乾杯は目上の人より少し低く、遠くの人とは掲げて会釈。
- 断るときはお礼+一言。すすめる側は一度断られたらすすめない。
- 車で来た人・二十歳未満の人にはお酒をすすめない。
FAQ
よくある質問
空になる少し前に「次は何をお飲みになりますか」と尋ねるのが気の利いたタイミングです。中身が残っているのにつぎ足すことを好まない人もいるので、注ぐ前に「お注ぎしてもよろしいですか」と確認すると安心です。
ラベルを上にして、右手で瓶の胴を持ち、左手を下から添えるとされることが多いです。持ち方の細部は職場によって違うので、両手で丁寧に持っていれば十分です。
最初は少し傾けて差し出し、注がれるにつれてまっすぐに戻すと泡がきれいにできます。注いでもらった後は一口つけてから置きます。
置いたままではなく、おちょこを手に持ち、もう片方の手を添えて受けます。注ぐ側も、置いてあるおちょこには注がず、相手が持つのを待ちます。
ワインは反対で、グラスはテーブルに置いたまま注いでもらうとされることが多いです。台に指を軽く添える程度で構いません。
失礼にはなりません。「ありがとうございます。まだこちらがございますので」「お酒は控えておりますので」と、お礼を添えて断れば十分です。すすめる側も、一度断られたら重ねてすすめないのがマナーです。
グラスに少し残しておく、手を軽くかざす、「お気持ちだけ頂戴します」と言う、の三つが使えます。途中から水やお茶に切り替えても構いません。
必ずしなければならないものではありません。お酌をしない、手酌で飲むという方針の職場もあります。大切なのは、周りの人の飲み物に気を配ることです。
ソフトドリンクやお茶で乾杯して構いません。グラスの中身が何であっても、乾杯の作法は同じです。