検証
イベント法務、ウェブと条文の食い違い
自分が間違っていた3点も載せます
イベント実務の記事を書くために、30の法令をe-Gov法令検索のAPIから取得して条文で確認してきました。その過程で、ウェブ上の説明と条文が食い違う箇所が繰り返し見つかります。この記事はそれを公開するものですが、同じ基準で、私たち自身が古かった点も載せます。 片側だけ書くと、観測ではなく主張になるためです。
結論
この記事が扱うのは①ウェブ上の説明が条文と食い違っている点 ②私たちの過去の記述が古かった・不足していた点の2種類です。特定のサイトは名指ししません。 検索結果は日々変わるため、検索日を明記します。条文はすべて出典URLと取得日を添えています。
この記事の立場
- 特定のサイトを名指ししません。 観測された傾向として書きます
- 検索日を明記します。 検索結果は変わるためです(本記事の実測は2026年10月15日)
- 条文は一次情報から取得します。 e-Gov法令検索のAPIからXMLを取得し、本則にあることを確認します
- 自分の誤りも同じ基準で載せます。 下の「私たちが古かった点」を参照してください
- 引用を歓迎します。 条文の出典は各項に記載しています
Point
ここに書いた内容も、いずれ古くなります。 法令は改正され、経過措置は期限を迎え、ウェブの記述も更新されます。最終的には、ご自身で条文を確認してください。 その手順は末尾に書きました。
ウェブの説明が条文と食い違っていた点
1. 特定原材料は「8品目」ではなく9品目。ただし経過措置がある
2026年10月15日に検索したところ、特定原材料を「8品目」とする解説が上位に複数あり、列挙にカシューナッツが含まれていませんでした。都道府県のページや、食品を扱う事業者のサイトも含まれます。
別表第十四(第三条関係) えび カシューナッツ かに くるみ 小麦 そば 卵 乳 落花生(食品表示基準 2026年10月取得)
9品目です。 ただし、ここで止めると不正確になります。同じ府令の附則にこうあります。
令和十年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、第一条の規定による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。(同 附則第二条)
Point
つまり、2028年3月31日までは、カシューナッツの表示がない加工食品が適法に流通します。 「9品目だから表示されているはずだ」という前提で来場者に答えると、事故につながります。この経過措置まで書いている解説を、私たちは見つけられませんでした。私たち自身も書いていませんでした(イベントと食品表示)。
2. 交際費の飲食費は「5,000円」ではなく一万円
2026年10月15日の検索では、「5,000円基準」を見出しに置いた解説が上位に複数あり、本文で「1人あたり5,000円以下は交際費から除外できる」と現在形で説明していました。
…前項に規定する飲食費として支出する金額を当該飲食費に係る飲食その他これに類する行為に参加した者の数で除して計算した金額とし、同号に規定する政令で定める金額は、一万円とする。(租税特別措置法施行令第37条の5第1項 2026年10月取得)
注意
引き上げられたこと自体は多くの記事が触れていますが、見出しと本文が旧基準のまま残っているものが上位にあります。社内規程が5,000円のままになっていないか確認してください。なお、この基準の「飲食費」は専ら役員・従業員・その親族に対する接待等のための支出を除いて定義されているため、社内の人だけの飲み会には使えません(懇親会費用と交際費)。
3. 下請法は、題名も用語も変わっている
現行の題名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です(法令番号は昭和31年法律第120号のまま)。用語も変わっています。
| 旧 | 現行 |
|---|---|
| 親事業者 | 委託事業者 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 下請代金 | 製造委託等代金 |
注意
あわせてフリーランス法(令和5年法律第25号)には資本金区分がありません。自社が小さくても適用されうる、という点が下請法と異なります(制作会社・フリーランスへの発注)。
4. CDを流すことも、著作権法上の「演奏」に含まれる
この法律において、「上演」、「演奏」又は「口述」には、著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること…を含むものとする。(著作権法第2条第7項 2026年10月取得)
注意
「生演奏ではないから演奏権は関係ない」という整理は、この条文からは出てきません(イベントでBGMを流すときの著作権)。
5. 券面に「転売禁止」と書くだけでは、法律の対象にならない
チケット不正転売禁止法の対象は「特定興行入場券」で、第2条第3項が要件を定めています。3つを全部満たすものだけが対象です。券面の記載だけでは足りません(主催者側から読む)。
6. 公園での催しの占用は、施行令で3月が上限
都市公園法第6条の占用について、同法施行令第14条第4号が催しのための占用の期間を3月としています。法律の条文だけを見ても出てこない数字です(公園の占用許可)。
私たちが古かった・不足していた点
この記事を改訂するにあたり、同じ検索を自分たちの記述にも向けました。3点、こちらが古いか、不足していました。
A. 「合理的配慮はまだ努力義務と書かれている」は、もう当たっていない
旧版では、ウェブ上に「事業者は努力義務」という古い説明が残っている、という趣旨で書いていました。2026年10月15日に検索したところ、上位は2024年4月1日の義務化を正しく説明していました。
Point
こちらの指摘のほうが古くなっていました。 自治体のページも事業者向けの解説も更新済みです。この項目は取り下げます(イベントのバリアフリーと合理的配慮)。
B. 講演料の源泉徴収で、復興特別所得税を書いていなかった
所得税法第205条第1号の100分の10だけを書き、「実際の率は税務署か税理士に確認してください」で止めていました。検索上位は10.21%/20.42%を正しく示しており、こちらのほうが不十分でした。
前項の規定により徴収すべき復興特別所得税の額は、…徴収して納付すべき所得税の額…に百分の二・一の税率を乗じて計算した金額とする。(復興財源確保法第28条第2項 2026年10月取得)
Point
取得していないものは書かない、という方針が、必要な情報を落とす方向に働いていました。 条文を取得して追記しました。方針の問題ではなく、取得すべきものを取得していなかった、というのが正しい整理です(講演料の源泉徴収)。
C. 「仮設建築物は3か月」の混同は、公的なページには無い
建築基準法第85条は項ごとに別の内容で、イベントの仮設は第6項です。「3か月」は応急仮設建築物(第3項)の話です。この混同自体は一般の解説に残っていますが、検索すると上位は自治体のページで、第6項・1年以内を正しく説明していました。
注意
「ウェブは間違っている」という書き方は強すぎました。 正確には「一般の解説に混同が残るが、公的なページは正しい」です(仮設テント・仮設ステージ)。
どうやって確認しているか
再現できる形で書きます。同じ手順で、この記事の内容も検証できます。
- 01
e-Gov法令検索のAPIからXMLを取得する
curl -s https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/<法令ID>。ブラウザで開くとSPAのため本文が取得できません。 - 02
本則にあることを確認する
附則にも同じ条番号があります。
<MainProvision>の中にあるかを見ます。 - 03
「政令で定める」を追いかける
法律の条文だけでは数値が出ないことが多い。 公園の3月も、交際費の一万円も、政令側にあります。
- 04
附則の経過措置を読む
ここを飛ばすと、今回のカシューナッツのような取りこぼしが起きます。 本則が変わっていても、当面は従前の例によれる場合があります。
- 05
出典URLと取得日を記録する
法令は改正されます。いつ時点のものかが分からない記述は、使えません。
- 06
数値を機械で照合する
記事中の金額・割合・期間を抽出し、記録のない数値が1つでもあれば公開を止めています。
- 07
検索結果は日付とともに記録する
「ウェブにはこう書いてある」は、いつの話かで意味が変わります。
Point
この記事の引用を歓迎します。 条文の出典URLと取得時期は各項に記載しています。誤りのご指摘もお待ちしています。確認のうえ修正し、修正したことを記事に残します(編集方針)。
この記事の要点
- 特定原材料は9品目。ただし2028年3月31日までは従前の表示も適法。 経過措置まで書いている解説を見つけられなかった。
- 交際費の飲食費は一万円。「5,000円基準」を見出しに置いた解説が、現在も上位にある。
- 下請法は題名も用語も変わっている。 フリーランス法には資本金区分がない。
- 合理的配慮について「ウェブは古い」という指摘は、こちらが古かった。 取り下げる。
- 講演料の源泉徴収で復興特別所得税を書いていなかったのは、こちらの不足。 10.21%/20.42%を追記した。
- 「政令で定める」と附則の経過措置を飛ばすと、本則だけ読んでも間違う。
FAQ
よくある質問
特定のサイトは名指ししません。2026年10月15日に検索した結果として、どのような説明が上位に見られたかを傾向として書いています。検索結果は日々変わるため、検索日を明記しています。また同じ基準で、私たち自身の記述が古かった点・不足していた点も載せています。片側だけ書くと観測ではなく主張になるためです。
食品表示基準の別表第十四は9品目(えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)です。ただし同府令の附則第二条により、令和10年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品の表示は従前の例によることができます。つまり2028年3月31日までは、カシューナッツの表示がない加工食品が適法に流通します。「9品目だから表示されているはず」という前提で来場者に答えないでください。
租税特別措置法施行令第37条の5第1項は一万円としています。2024年4月1日以後に支出する飲食費から適用されています。ただし2026年10月時点でも「5,000円基準」を見出しに置き、本文で現在形のまま説明している解説が検索上位にあります。社内規程が5,000円のままになっていないか確認してください。なお勘定科目をどうするかは税務の当てはめであり、税理士に確認してください。
片側だけを書くと、観測ではなく主張になるからです。この記事を改訂するにあたって同じ検索を自分たちの記述にも向けたところ、合理的配慮については私たちの指摘のほうが古く、講演料の源泉徴収については復興特別所得税を書いておらず不足していました。どちらも取り下げ・追記しています。
e-Gov法令検索のAPIからXMLを取得してください。ブラウザで開くとSPAのため本文が取得できません。取得したら、附則にも同じ条番号があるため本則の中にあることを確認します。さらに「政令で定める」とある数値は政令側を追い、附則の経過措置を読んでください。公園の3月も交際費の一万円も政令側にあり、カシューナッツの扱いは附則にあります。
歓迎します。条文の出典URLと取得時期は各項に記載しています。誤りのご指摘もお待ちしています。確認のうえ修正し、修正したことを記事に残します。