社内
インナーブランディングのイベント
イベントは起点であって、答えではない
インナーブランディングのイベントで最も多い失敗は、開催することが目的になることです。立派な全社集会をやっても、翌週には何も残っていない。残るかどうかは、当日の内容ではなく、その後に何が続くかで決まります。
結論
インナーブランディングは、自社の価値観や方向性を社内に浸透させる取り組みです。イベントはその起点をつくる手段であって、イベント自体が目的ではありません。設計で決めるのは①何を変えたいのか ②誰の行動が変わればよいのか ③当日以降に何が続くのかの3つです。
何を変えたいのかを、行動で書く
| ありがちな目的 | 行動に落とすと |
|---|---|
| 一体感を高めたい | 部署をまたいだ相談が増える |
| 理念を浸透させたい | 判断に迷ったとき、理念を参照する人が増える |
| エンゲージメントを上げたい | 離職が減る/推奨度が上がる |
| 方針を伝えたい | 部下に自分の言葉で説明できる管理職が増える |
Point
「一体感」のままでは設計できません。 何が起きていれば成功なのかを、行動で書いてください。部署をまたいだ相談を増やしたいなら、全社集会で社長が話すより、混ぜたグループで作業させるほうが直接的です。
注意
変えたい行動が決まると、形式が自動的に決まります。 聞かせたいのか、話させたいのか、混ぜたいのか、称えたいのか。形式から入ると、目的と噛み合わなくなります。
形式の使い分け
| 形式 | 向く目的 | 限界 |
|---|---|---|
| 全社集会 | 方針を同時に伝える | 一方向。聞いただけでは変わらない |
| ワークショップ | 自分の言葉にする | 人数が増やせない |
| 表彰 | 何を評価するかを示す | 基準が不透明だと逆効果 |
| 部門横断のグループ | 関係をつくる | 準備が重い |
| 経営との対話 | 距離を縮める | 答えにくい質問が出る覚悟が要る |
| 懇親 | 関係の潤滑 | 強制すると逆効果 |
Point
表彰は「何を評価する会社か」を最も強く伝えます(表彰式の進行)。だからこそ基準が不透明だと、逆のメッセージになります。「なぜあの人が」と思われた時点で、他の施策の効果まで削ります。
全社集会を年度初めに置くなら、キックオフイベントの設計も参考になります。
注意
経営との対話を入れるなら、答えにくい質問が出る前提で設計してください。 用意された質問だけを拾うと、「形だけ」と受け取られ、やらないより悪い結果になります。
参加を強制することの副作用
- 就業時間内にやる——時間外に強制すると、内容以前の問題になる
- 参加できない人がいる前提で設計する(交代勤務、育児、介護、療養)
- 録画と資料を用意する——参加できなかった人を置き去りにしない
- 懇親は任意にする
- 発言を強制しない——書く形式なら参加しやすい
- 服装・余興の負担を課さない
Point
「全員参加」と書いた時点で、来られない人に負荷がかかります。 現場・交代勤務・在宅の人がいます。録画と資料を必ず用意し、「後から見ても分かる」状態にしてください。 それ自体が、会社の姿勢として伝わります。
当日以降に続くもの
- 01
当日のうちに言葉を回収する
グループで出た意見を、その場で集める。 後から集めても出てきません。
- 02
回収したものを公開する
「出た意見」を全社に返す。 返さないと、次回から誰も書きません。
- 03
何を変えたかを示す
1つでよいので、意見を受けて変えたことを明示する。 ここが効きます。
- 04
現場で続く仕組みに落とす
部署での対話、1on1の話題、評価の観点。イベントの外に出す。
- 05
管理職に説明できる材料を渡す
部下に伝えるのは管理職です。 資料と想定問答を渡す。
- 06
次の接点を日付で示す
「また実施します」ではなく、いつ何があるか。
Point
「意見を受けて変えたこと」を1つでも示してください。 これが無いと、次回のワークショップで誰も本音を書きません。社内施策の信頼は、ここで決まります。
注意
管理職への事前共有を飛ばさないでください。 全社集会で初めて聞いた管理職は、部下に説明できません。先に説明する場を分けて持つほうが、浸透は速くなります。
測り方
- 当日のアンケートだけで判断しない——直後は高く出ます
- 3か月後にもう一度聞く——残っているかを見る
- 行動で測る——部署をまたいだ相談、提案の数、離職
- 自由記述を読む——点数より、書かれた言葉
- 参加できなかった人にも聞く
- 管理職と一般社員を分けて見る——温度差がどこにあるか
Point
当日のアンケートは高く出ます。 その場の空気で答えるためです。3か月後に同じ質問をして、下がり幅を見てください。 それが実際に残った量です。
注意
アンケートの設計はPost-Event Survey(英語)、社内行事の費用の扱いは懇親会費用と交際費を参照してください。
この記事の要点
- 1回のイベントで意識は変わらない。 残るかどうかは、その後に何が続くかで決まる。
- 目的は行動で書く。「一体感」のままでは設計できない。
- 変えたい行動が決まれば形式は自動的に決まる。 形式から入ると噛み合わなくなる。
- 表彰は「何を評価する会社か」を最も強く伝える。 基準が不透明だと逆のメッセージになる。
- 「意見を受けて変えたこと」を1つでも示す。 無いと次回は誰も本音を書かない。
- 当日のアンケートは高く出る。 3か月後に同じ質問をして、残った量を見る。
FAQ
よくある質問
目的で選びます。方針を同時に伝えるなら全社集会、自分の言葉にしてもらうならワークショップ、何を評価する会社かを示すなら表彰、距離を縮めるなら経営との対話です。全社集会は一方向なので聞いただけでは変わりにくく、表彰は基準が不透明だと逆効果になります。いくつかを組み合わせ、当日以降に続く仕組みを用意してください。
何を変えたいのかを行動で書くところからです。「一体感を高めたい」のままでは設計できません。部署をまたいだ相談が増える、判断に迷ったとき理念を参照する人が増える、部下に自分の言葉で説明できる管理職が増える——このように行動に落とすと、形式が自動的に決まります。形式から入ると目的と噛み合わなくなります。
全社集会は方針を同時に伝えるのに向きますが、一方向なので聞いただけでは行動は変わりません。ワークショップは自分の言葉にするのに向きますが人数を増やせません。関係をつくりたいなら部門横断のグループ、評価軸を示したいなら表彰、距離を縮めたいなら経営との対話です。目的から選んでください。
「全員参加」と書いた時点で、来られない人に負荷がかかります。交代勤務、育児、介護、療養の人がいます。就業時間内に実施し、録画と資料を必ず用意して「後から見ても分かる」状態にしてください。それ自体が会社の姿勢として伝わります。懇親は任意にし、発言や余興を強制しないでください。
当日以降に何も続いていないからです。当日のうちにグループで出た意見をその場で集め、それを全社に返し、意見を受けて変えたことを1つでも明示してください。これが無いと、次回のワークショップで誰も本音を書きません。あわせて部署での対話や1on1の話題に落とし、管理職には部下へ説明するための資料と想定問答を渡してください。
当日のアンケートだけで判断しないでください。その場の空気で答えるため高く出ます。3か月後に同じ質問をして、下がり幅を見てください。それが実際に残った量です。あわせて部署をまたいだ相談や提案の数といった行動で測り、自由記述を読み、参加できなかった人にも聞き、管理職と一般社員を分けて温度差を見てください。