敬語
「ご多忙」と「ご多用」の違い
使い分けと場面別例文30
結論から言うと、「ご多忙」は相手がとても忙しいこと、「ご多用」は相手に用事が多いことを敬って言う言葉で、仕事のメールではどちらを使っても失礼にはあたりません。違いは語感で、「ご多忙」は忙しさに目を向けたやや強い言い方、「ご多用」は忙しさを直接言わないやわらかい言い方です。迷ったら「ご多用」。結婚式の招待状や式典のあいさつでは、「忙」の字を気にする人に配慮して「ご多用」が選ばれることがあります。そのまま使える一文は「ご多用のところ恐縮ですが、ご検討いただけますと幸いです。」。このページでは、判断の早見表、依頼・お礼・招待状・開会あいさつ・スピーチ・年賀状まで30を超える例文、よくある間違い、送る前のチェックリストを並べました。「お忙しいところ」との詳しい違いや「ご多忙の折」の意味は「お忙しいところ恐縮ですが」の使い方にまとめています。
結論
「多忙」はすることが多くて非常に忙しいこと、「多用」は用事が多いことです。相手の状態に「ご」を付けた「ご多忙」(ごたぼう)と「ご多用」(ごたよう)は、どちらも相手の忙しさを気づかう言い方で、「ご多忙のところ」「ご多忙中」「ご多用のところ」「ご多用中」「ご多用のなか」の形で、お願いやお礼の前置き(クッション言葉)として使います。
30秒でわかる結論と選び方
| こんなとき | 選ぶ言葉 | そのまま使える形 |
|---|---|---|
| 取引先・上司にお願いする | どちらでもよい | ご多用のところ恐縮ですが |
| 役職者に、忙しさへの気づかいをはっきり示したい | ご多忙 | ご多忙のところ大変恐縮ですが |
| 来てもらった・協力してもらったお礼 | どちらでもよい | ご多用のなか、ありがとうございました |
| 結婚式の招待状・祝賀会・式典 | ご多用 | ご多用中にもかかわらず |
| 会議・セミナーの開会あいさつ(話し言葉) | ご多用 | ご多用のところ足をお運びいただき |
| 年末のあいさつ・季節の手紙 | どちらでもよい | ご多忙のことと存じます |
| 社内の同僚・後輩 | どちらも使わない | 忙しいところごめんなさい/お忙しいところすみません |
| 自分の忙しさを伝える | どちらも使わない | 立て込んでおり |
Point
迷ったら「ご多用」。仕事のメールでも慶事でも使え、気にする人がいても引っかかりません。
「ご多忙」と「ご多用」の意味と読み方
「多忙」は「多く忙しい」と書くとおり、手がふさがって慌ただしい状態を表します。「ご多忙のところ」と言うと、相手が実際に忙しくしていることに目を向けた、気づかいの強い前置きになります。
「多用」は用事が多いことで、忙しさを直接言わない分、やわらかく落ち着いた響きがあります。なお「多用」には「同じ言葉を多用する」のようにたくさん使うという別の意味もありますが、「ご多用」と相手に使うときは用事が多いことを指します。
| 比べる点 | ご多忙 | ご多用 |
|---|---|---|
| 読み方 | ごたぼう | ごたよう |
| もとの意味 | 非常に忙しいこと | 用事が多いこと |
| どこに目を向けるか | 忙しさそのもの | 用事の多さ(忙しさは言わない) |
| 響き | 気づかいが強く、やや硬い | やわらかく落ち着いている |
| 書き言葉/話し言葉 | 主に書き言葉 | どちらでも使いやすい |
| 仕事の依頼・お礼メール | 使える | 使える |
| 結婚式の招待状などの慶事 | 避ける人もいる | 選ばれることがある |
| 年末のあいさつ | 使える | 使える |
慶事で「ご多用」が選ばれることがあるのは、「忙」の字に「亡」が含まれることを気にする人がいるためです。お祝いの場で使ったからといって誤りになるわけではありませんが、招待状や祝賀会の案内では「ご多用」にしておくと、気にする人がいても引っかかりません。
前置きの形と、あとに続ける言葉
| 前置きの形 | 合う用件 | 続ける言葉の例 |
|---|---|---|
| ご多忙のところ/ご多用のところ | お願い | 恐縮ですが、ご確認いただけますでしょうか |
| ご多忙中/ご多用中 | お願い・案内 | 誠に恐縮ではございますが、ご出席くださいますよう |
| ご多忙の中/ご多用のなか | お礼 | お越しいただき、ありがとうございました |
| ご多用中にもかかわらず | お礼(改まった場) | ご出席を賜り、厚く御礼申し上げます |
| ご多忙のことと存じますが | あいさつ・案内 | ご一読いただけますと幸いです |
| ご多用の折 | 手紙・案内状 | くれぐれもご自愛ください |
「〜のところ」はお願いの前置き、「〜の中」「〜にもかかわらず」はお礼と組み合わせることが多い言い方です。どちらの言葉でも、一通のメールで何度も繰り返さないようにします。
そのまま使える一文(お願い・お礼)
お願いの一文
- ご多用のところ恐縮ですが、ご出欠を◯月◯日(◯)までにお知らせくださいますようお願いいたします。
- ご多忙のところ大変恐縮ですが、契約書の修正箇所にお目通しをお願いできますでしょうか。
- ご多用中誠に恐縮ではございますが、ご出席くださいますようお願い申し上げます。
- ご多忙のことと存じますが、お手すきの際にご一読いただけますと幸いです。
- ご多用のところ恐れ入りますが、ご都合のよい日時をお知らせいただけますでしょうか。
- ご多忙中とは存じますが、率直なご意見をお聞かせいただけますと幸いです。
お礼の一文
- 本日はご多用のなか、お時間をいただき誠にありがとうございました。
- ご多忙の中、急なお願いにもかかわらず日程を空けていただき、感謝申し上げます。
- ご多用中にもかかわらず、温かいお祝いのお言葉を頂戴し、心より御礼申し上げます。
- ご多忙のところ、アンケートにご協力いただきありがとうございました。
- ご多用のなか、遠方までお越しいただき恐縮です。
- ご多忙の折、丁寧なご返信をいただき、ありがとうございました。
あいさつ・結びの一文
- 年末を迎え、ご多忙のことと存じます。
- ご多用の日々が続くかと存じますが、どうぞご自愛ください。
- ご多忙の折、くれぐれもお体を大切になさってください。
- 長文となり失礼いたしました。ご多用のところ、最後までお読みいただきありがとうございます。
メールの例文(依頼・お礼・案内)
取引先にアンケートの協力をお願いする
件名:◯◯ご利用に関するアンケートのお願い
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の改善に向けて、ご利用いただいている皆さまにアンケートをお願いしております。
ご多用のところ恐れ入りますが、◯月◯日(◯)までにご回答いただけますと幸いです。
・回答フォーム:(URL)
・所要時間:五分ほど
役職者に講演をお願いする
件名:◯◯セミナーでのご講演のお願い
◯◯株式会社
代表取締役 ◯◯様
突然のご連絡失礼いたします。株式会社△△の□□と申します。
このたび、◯◯をテーマにしたセミナーを企画しており、ぜひ◯◯様にご講演をお願いしたく、ご連絡いたしました。
ご多忙のところ大変恐縮ですが、ご検討いただけますでしょうか。
詳細は添付の企画書にまとめております。
資料の確認をお願いする
件名:◯◯企画書のご確認のお願い
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日お打ち合わせした◯◯の企画書を添付いたしました。
ご多用のところ恐縮ですが、◯月◯日(◯)までにご確認いただけますでしょうか。
修正が必要な点があれば、遠慮なくお知らせください。
打ち合わせに来てもらったお礼
件名:本日のお打ち合わせのお礼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日はご多忙の中、弊社までお越しいただき、誠にありがとうございました。
いただいたご要望をもとに、◯日までに修正案をお送りいたします。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
イベントに来てもらったお礼
件名:◯◯発表会へのご来場のお礼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
昨日はご多用のなか、◯◯発表会にお越しいただき、誠にありがとうございました。
会場でいただいたご意見は、さっそく開発の担当者と共有いたしました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
祝賀会の招待状(慶事)
件名:創立記念祝賀会のご案内
◯◯株式会社
◯◯様
いつも格別のお引き立てをいただき、誠にありがとうございます。
おかげさまで、弊社は創立の節目を迎えることとなりました。
つきましては、日ごろの感謝を込めて、ささやかではございますが祝賀会を催します。
ご多用中誠に恐縮ではございますが、ご出席くださいますようご案内申し上げます。
・日時:◯月◯日(◯)◯時から
・会場:◯◯ホテル ◯階◯◯の間
年末のあいさつ
件名:年末のごあいさつ
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
年末を迎え、ご多忙のことと存じます。
本年は◯◯の件で大変お世話になり、誠にありがとうございました。
来年も変わらぬお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
自分が立て込んでいて返事が遅れるとき
件名:Re:◯◯のお見積もりについて
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
お問い合わせいただき、ありがとうございます。
あいにく今週は社内の行事が重なっており、詳しいお見積もりは◯月◯日(◯)にお送りいたします。
お待たせして申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
注意
最後の例文のように、自分の忙しさを伝えるときは「ご多忙」「ご多用」を使わず、「立て込んでおり」「行事が重なっており」と事情を書き、いつ返せるかを必ず添えます。年末のあいさつメール全体は年末のあいさつメールの例文にまとめています。
結婚式・式典・スピーチ・年賀状の例文
話し言葉やお祝いの場では、「ご多用」を使うと無難です。声に出すときは「ごたよう」とはっきり読みます。
会議・セミナーの開会あいさつ
皆さま、こんにちは。ご多用のところ足をお運びいただき、誠にありがとうございます。本日の◯◯セミナーで司会を務めます、株式会社△△の□□と申します。開始に先立ちまして、本日の流れをご説明いたします。
定刻となりましたので、◯月度の定例会議を始めます。ご多用のなかお時間をいただき、ありがとうございます。本日の議題は三つです。
結婚式の招待状(本人から)
謹啓 ◯◯の候 皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます
このたび 私たちは結婚式を挙げることになりました
つきましては 日ごろお世話になっている皆様に ささやかな披露宴を催したいと存じます
ご多用中誠に恐縮ではございますが ぜひご出席くださいますようお願い申し上げます
謹白
注意
結婚式の招待状は句読点を使わずに一字あけで書く書き方もあります。式場や印刷所の文例があれば、そちらに合わせます。
披露宴のウェルカムスピーチ(新郎新婦から)
皆さま、ようこそお越しくださいました。ご多用のなか、遠くから駆けつけてくださった方もいて、二人とも感激しています。今日は、これまで支えてくださった皆さまに感謝を伝えたくて、この日を迎えました。短い時間ですが、どうぞごゆっくりお楽しみください。
親族代表のあいさつ
◯◯家を代表いたしまして、ひと言ごあいさつを申し上げます。ご多用中にもかかわらず、こうして大勢の皆さまに二人の門出を見届けていただき、親族一同、心より感謝しております。皆さまからの温かいお言葉を、二人はきっと忘れないと思います。今後とも、変わらぬお付き合いのほどお願い申し上げます。
式典・祝賀会の主催者あいさつ
本日はご多用の折にもかかわらず、弊社創立記念の祝賀会にご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。皆さまのお力添えのおかげで、今日の日を迎えることができました。
年賀状(取引先あて)
謹んで新春のお慶びを申し上げます
旧年中は格別のお引き立てを賜り 厚く御礼申し上げます
ご多用の日々かと存じますが 皆様のご健勝を心よりお祈りいたします
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
| 言い方 | 丁寧さ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| ご多用中誠に恐縮ではございますが | 最も改まった言い方 | 招待状・依頼状 |
| ご多忙のところ大変恐縮ですが | 改まった言い方 | 役職者・大切なお客様へのお願い |
| ご多用のところ恐れ入りますが | 改まった言い方 | 取引先へのお願い |
| ご多用のなか、ありがとうございました | 改まった言い方(お礼) | 来社・出席のお礼 |
| お忙しいところ恐れ入りますが | 丁寧 | 社内外どちらにも使いやすい |
| お忙しいところすみません | 標準 | 社内の同僚・後輩 |
注意
社内の同僚や後輩に「ご多忙のところ」と書くと、かしこまりすぎて距離を感じることもあります。社内では「お忙しいところ」で十分な場面が多いです。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| ただいまご多忙のため、返信が遅れます | 自分の状態に「ご」を付けている | ただいま立て込んでおり、返信が遅れます |
| ご多用中のところ/ご多忙中のところ | 「中」と「ところ」が同じ意味で重なっていると感じる人もいる | ご多用中/ご多用のところ |
| ご多様のところ | 「多様」は種類が多いことで、変換の誤り | ご多用のところ |
| ご多望のところ | 「多望」は将来に望みが多いこと(前途多望)で、変換の誤り | ご多忙のところ |
| (結婚式の招待状で)ご多忙中 | 「忙」の字を気にする人もいる | ご多用中 |
| ご多忙のところ、お忙しいなか | 同じ気づかいを二度書いている | どちらか一つにする |
| 冒頭と結びの両方に「ご多用のところ」 | くどく見える | 前置きは一か所だけにする |
| ご多用のところ恐縮ですが、本日中にお願いします | 気づかいと急な期限がかみ合わない | 期限の理由を添えるか、余裕のある日を示す |
送る前のチェックリスト
- 相手(目上・社外)の状態に使っているか。自分の忙しさに「ご」を付けていないか
- 慶事・式典・あいさつなら「ご多用」にしたか
- 「ご多用中のところ」のように「中」と「ところ」を重ねていないか
- 「ご多様」「ご多望」と変換していないか
- お願いなら「〜のところ恐縮ですが」、お礼なら「〜の中ありがとうございました」と組み合わせたか
- 一通の中で前置きを繰り返していないか
- 期限やお願いの中身が、相手の忙しさへの気づかいと矛盾していないか
- 社内の同僚・後輩には「お忙しいところ」で足りないか
「ご多用のところ」と言われたときの返事
「ご多用のところ恐縮ですが」は前置きなので、返事では頼まれた用件に答えることが中心です。気づかいに触れるなら、「お気遣いいただき、ありがとうございます」と一言添える程度で十分です。
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご講演のご依頼、ありがとうございます。お気遣いいただき恐縮です。
◯月◯日(◯)であれば、喜んでお引き受けいたします。
当日の流れについて、改めてご相談できますでしょうか。
お礼のメールで「ご多用のなか、ありがとうございました」と言われたら、「こちらこそ、お招きいただきありがとうございました」と返し、当日の感想を一言添えます。
この記事の要点
- 「ご多忙」は非常に忙しいこと、「ご多用」は用事が多いことを敬って言う言葉。
- 仕事のメールではどちらも目上に使え、意味の差はほとんどない。違いは語感。
- 迷ったら「ご多用」。慶事・式典・スピーチでは「忙」の字を気にする人に配慮して選ばれることがある。
- 「ご多用中のところ」は重ねず、「ご多用中」か「ご多用のところ」のどちらかに。
- 自分の忙しさには使わず「立て込んでおり」と事情と返せる日を書く。
FAQ
よくある質問
丁寧さに差はありません。「ご多忙」は忙しさに目を向けた言い方、「ご多用」は用事が多いことを言うやわらかい言い方です。仕事のメールではどちらを使っても失礼にはあたりません。
「ごたよう」と読みます。「ご多忙」は「ごたぼう」です。
誤りではありませんが、「忙」の字に「亡」が含まれることを気にする人もいるため、慶事の招待状では「ご多用」が選ばれることがあります。迷ったら「ご多用中」としておくと安心です。
「中」と「ところ」はどちらも「〜しているときに」の意味なので、重ねるとくどいと感じる人もいます。「ご多用中」か「ご多用のところ」のどちらか一つにしておけば気になりません。
使えます。開会のあいさつや披露宴のスピーチでは「本日はご多用のところ」「ご多用のなか」が使いやすく、聞き手が多い場では「ご多用」を選んでおくと無難です。
「ご」を付けなければ使えます。ただ、忙しさを理由にしているように見えると感じる人もいるので、「立て込んでおり」などと書き、いつ対応できるかを添えると印象がやわらぎます。
失礼ではありませんが、かしこまりすぎて距離を感じさせることがあります。社内では「お忙しいところすみません」程度で十分な場面が多いです。