言葉の使い分け
収める・納める・治める・修める
使い分けと例文、覚え方
結論から言うと、ビジネス文書でよく使うのは「納める」と「収める」です。見分け方のコツは、税・会費・注文の品のように、渡すべき先に引き渡すなら「納める」、中に入れる・成果を手にする・騒ぎが落ち着くなら「収める」。使った一文は「ご注文の品は、◯月◯日までに納める予定です。」のような形です。痛みやせきが落ち着くときは「治まる」、学問を身に付けるときは「修める」と書きます。このページでは、文化審議会国語分科会の報告「「異字同訓」の漢字の使い分け例」に沿ってそれぞれの意味を整理し、早見表、場面別の例文、迷いやすい例、覚え方をまとめました。
結論
文化審議会国語分科会の報告「「異字同訓」の漢字の使い分け例」では、「収まる・収める」は「中に入る。収束する。手に入れる。良い結果を得る。」、「納まる・納める」は「あるべきところに落ち着く。とどめる。引き渡す。終わりにする。」、「治まる・治める」は「問題のない状態になる。統治する。」、「修まる・修める」は「人格や行いを立派にする。身に付ける。」と説明されています。
四つの「おさめる」それぞれの意味
収める:中に入れる・成果を得る・落ち着く
報告の用例には「博物館に収まる」「目録に収める」「争いが収まる」「丸く収まる」「手中に収める」「効果を収める」「成功を収める」が挙がっています。何かの中に入れる、騒ぎが落ち着く(収束する)、良い結果を手に入れるときの字です。
納める:引き渡す・あるべきところに落ち着く・終わりにする
用例は「国庫に納まる」「税を納める」「社長の椅子に納まる」「胸に納める」「注文の品を納める」「歌い納める」「見納め」です。納めるべき先に渡す(税・品物)、しまっておく(胸に納める)、最後にする(〜納め)ときの字で、「納品」「納税」「仕事納め」の「納」と同じです。
治める:問題のない状態にする・統治する
用例は「痛みが治まる」「せきが治まる」「領地を治める」「国内がよく治まる」です。体の不調が落ち着くときや、国や地域を治めるときに使います。
修める:行いを正す・学問などを身に付ける
用例は「身を修める」「学を修める」「ラテン語を修める」です。経歴の紹介で学問や技術を身に付けたことを言うときに使います。
Point
同じ報告は、この使い分け例を「一つの参考として提示するもの」とし、異なる使い分けを否定する趣旨ではない、仮名で書くことも妨げないとしています。迷ったときは、ひらがなで「おさめる」と書く方法もあります。
使い分けの早見表
| 言葉 | 意味(報告の説明から) | よく組む語 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 収める・収まる | 中に入る。収束する。手に入れる。良い結果を得る。 | 成功・効果・写真・記録・争い・丸く | おかげさまで、展示会は成功を収めることができました。 |
| 納める・納まる | あるべきところに落ち着く。とどめる。引き渡す。終わりにする。 | 税・会費・注文の品・胸に・〜納め | ご注文の品は、◯月◯日に納めます。 |
| 治める・治まる | 問題のない状態になる。統治する。 | 痛み・せき・国・領地 | おかげさまで、痛みもすっかり治まりました。 |
| 修める・修まる | 人格や行いを立派にする。身に付ける。 | 学・学問・身・技術 | ◯◯さんは大学で建築を修め、当社に入社されました。 |
ビジネス文書・メールでの例文(場面別)
納品日を連絡する(納める)
件名:◯◯の納品日のご連絡
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご注文いただいた◯◯は、◯月◯日(◯)の午前中に貴社へ納めます。
当日は◯◯様宛てにお届けいたしますので、ご確認をお願いいたします。
会費の納入をお願いする(納める)
件名:◯◯年度 年会費納入のお願い
会員各位
平素より当会の活動にご協力いただき、ありがとうございます。
◯◯年度の年会費を、◯月◯日(◯)までに下記の口座へお納めくださいますよう、お願い申し上げます。
イベントのお礼(成功を収める)
件名:◯◯展示会へのご来場のお礼
◯◯様
先日はお忙しいなか、当社の展示ブースにお立ち寄りいただき、誠にありがとうございました。
皆さまのおかげで、展示会は成功を収めることができました。
ご案内した◯◯の資料をお送りしますので、ご覧いただけますと幸いです。
記録・写真に残す(収める)
当日の様子は、カメラマンが写真に収めています。共有の準備ができましたら、改めてご案内します。
トラブルが落ち着いたことを報告する(収まる)
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
午前中に発生した◯◯の件は、先方と話し合い、丸く収まりました。
経緯は明日までに文書でご報告いたします。
体調を気づかうメールへの返信(治まる)
◯◯様
お気遣いいただき、ありがとうございます。
おかげさまで、熱もせきもすっかり治まり、本日から通常どおり勤務しております。
ご迷惑をおかけした分、しっかり取り組んでまいります。
講師・新任者の紹介文(修める)
◯◯先生は、大学で経営学を修めたのち、長く◯◯の分野で研究を続けてこられました。
年末の挨拶(〜納め)
本日が今年の仕事納めです。一年間、大変お世話になりました。
注意
年末の挨拶の文例は仕事納めの挨拶の例文、贈り物に添える「お納めください」は「ご笑納ください」と「お納めください」、講師の紹介文は講師紹介の例文にまとめています。
迷いやすい例と正しい書き方
| 迷いやすい書き方 | 気になる点 | 報告の用例に沿った書き方 |
|---|---|---|
| 成功を納める | 良い結果を得るのは「収める」 | 成功を収める |
| 税金を収める | あるべきところに引き渡すのは「納める」 | 税を納める |
| 注文の品を収める | 引き渡すのは「納める」 | 注文の品を納める |
| 争いが納まる | 収束する意味は「収まる」 | 争いが収まる |
| 痛みが収まる | 体の不調が落ち着くのは「治まる」 | 痛みが治まる |
| 学問を収める | 身に付けるのは「修める」 | 学を修める |
「胸におさめる」のように、どの字にするか迷いやすい言い回しもあります。報告の用例では「胸に納める」が挙がっていますが、前に触れたとおり、ほかの書き方を否定するものではありません。社内の文書ルールがあればそれに合わせ、なければ報告の用例にそろえておくと迷いません。
覚え方
Point
収=収穫(手に入れる・中に入れる)、納=納品・納税(渡す・しまう・終わり)、治=治療・政治(落ち着かせる・統治)、修=修学(身に付ける)。熟語に置き換えると、どの字かが見えてきます。
たとえば「成功をおさめる」は「成功を収穫する」に近いので「収」、「会費をおさめる」は「会費を納入する」なので「納」、「せきがおさまる」は「せきが治った」に近いので「治」、「学問をおさめる」は「学問を修得する」なので「修」です。
この記事の要点
- 中に入れる・成果を得る・騒ぎが落ち着くは「収める・収まる」。
- 税・会費・注文の品を渡す、〜納めは「納める」。
- 痛みやせきが落ち着く、統治するは「治まる・治める」。
- 学問や行いを身に付けるのは「修める」。
- 文化審議会国語分科会の使い分け例は一つの参考。迷ったらひらがなでもよい。
FAQ
よくある質問
文化審議会国語分科会の報告「「異字同訓」の漢字の使い分け例」では、「収める」の用例に「成功を収める」「効果を収める」が挙がっています。
「納める」です。同じ報告では「納める」の説明に「引き渡す」があり、用例に「税を納める」が挙がっています。会費も、納めるべき先に渡すものなので「納める」と書くのが一般的です。
「治まる」です。同じ報告では「治まる」の用例に「痛みが治まる」「せきが治まる」が挙がっています。
「治める」は問題のない状態にする・統治すること、「修める」は人格や行いを立派にする・学問などを身に付けることです。「国を治める」「学を修める」のように使い分けます。
差し支えありません。同じ報告は、使い分け例は一つの参考であり、必要に応じて仮名で書くことを妨げるものではないとしています。