ビジネスの慣用句
姑息(こそく)の意味と使い方
卑怯との違い・例文20と言い換え
結論から言うと、「姑息(こそく)」の意味は一時しのぎ・その場しのぎです。根本的な解決をしないで、その場だけを切り抜けることを表し、本来は「ひきょう」「ずるい」という意味を含みません。例文は「値引きで乗り切るのは姑息な対応で、根本的な解決にはならない。」です。ただし、文化庁「国語に関する世論調査」(令和3年度)では「ひきょうな」の意味を選んだ人が73.9%と多数派です。このページでは、由来、調査の数字、場面別の例文20、「卑怯」との違い、言い換えと対義語、送る前のチェックリストをまとめました。
結論
「姑息」は、その場だけを取りつくろい、根本的な手を打たないことを表します。「姑息な手段」「姑息な対応」「姑息な策」のように使い、本来は「ひきょう」「ずるい」という意味を含みません。
30秒でわかる「姑息」
| 項目 | 答え |
|---|---|
| 読み方 | こそく |
| 本来の意味 | 一時しのぎ・その場しのぎ(根本的な解決をしないこと) |
| よくある受け取り方 | 「ひきょうな」「ずるい」(本来の意味とは異なるとされる) |
| よく使う形 | 姑息な手段/姑息な対応/姑息な手/姑息な策/姑息なやり方 |
| 言い換え | 一時しのぎ・その場しのぎ・場当たり的・暫定的・応急処置 |
| 反対の向き | 抜本的・根本的・恒久的 |
| 仕事での使い方 | 誤解されやすいので、文書では言い換えるのが無難。社外の相手の対応には使わない |
「姑息」の意味と由来
漢字を分けると、「姑」は「しばらく・ひとまず」、「息」は「休む」を表します。二字で「ひとまず休む」となり、そこから一時の間に合わせを指す言葉になったと説明されます。
出典としてよく挙げられるのが、中国の古典『礼記』檀弓上の、曾子(孔子の弟子)の言葉です。
君子之愛人也以德,細人之愛人也以姑息。
(君子は徳によって人を愛し、細人=小人物は姑息によって人を愛する)
重い病の床にあった曾子は、そばの童子に「それは大夫(高い身分の人)用の敷物では」と指摘され、季孫氏から贈られた敷物を自分の身分に合ったものへ取り替えるよう求めます。息子の曾元が「病状が重いので、朝になってから替えましょう」と先延ばしを願い出たのに対して返したのがこの言葉です。ここでの「姑息」は、相手を楽にさせたい思いから、すべきことを先送りしてその場をしのぐこと。「目の前を楽にするだけで、筋の通った対応をしない」という向きで使われており、「ひきょう」とは別の意味だとわかります。
Point
姑息=一時しのぎ・その場しのぎ。「ひきょう」の意味は、本来の意味とは異なるとされます。
「ひきょう」の意味で受け取る人は約7割(文化庁調査)
文化庁「国語に関する世論調査」では、例文「姑息な手段」の意味を尋ねています。
| 選んだ意味 | 平成22年度 | 令和3年度 |
|---|---|---|
| (ア)「一時しのぎ」という意味(辞書等で主に本来の意味とされてきた方) | 15.0% | 17.4% |
| (イ)「ひきょうな」という意味 | 70.9% | 73.9% |
注意
令和3年度の報告書は、調査方法が変わったため、平成22年度の結果との比較には注意が必要だとしています。どちらの年度でも「ひきょうな」が7割を超えている点が読み取れます。
つまり、本来の意味で正しく使っても、聞き手の多くは「ひきょうな」と受け取るおそれがあります。これが、仕事の文書では言い換えをすすめる理由です。同じ調査では「割愛する」も本来とは違う意味が多く選ばれました(割愛の意味と使い方)。
本来の意味で使うときの型
- 01
何の対応かを示す
「在庫を移すだけでは」「値引きで乗り切るのは」など、指している手段を先に具体的に書く。
- 02
「姑息な〜」で評する
「姑息な対応」「姑息な手」と、一時しのぎであることを述べる。
- 03
根本の対策をつなげる
「原因から見直しましょう」「仕組みから変えましょう」と、何をすべきかまで言う。誤解されても「ひきょう」の話ではないと伝わる。
人そのものを「姑息な人」と評する言い方は、本来の意味でも相手への批判になり、「ひきょうな人」と受け取られるとさらに強く聞こえます。人ではなく手段・対応に対して使うのが基本です。
使い方の例文20(場面別)
会議で(本来の意味)
- 01在庫を別の倉庫に移すだけでは姑息な対応にとどまります。発注の仕組みから見直しましょう。
- 02人を増やして残業を減らすのは姑息な策で、業務量そのものは変わっていません。
- 03クレームが来た案件だけ個別に値引きするのは姑息です。料金表の見直しを提案します。
- 04手作業で数字を合わせるのは姑息な手段なので、来月までに集計の仕組みを直したいと考えています。
報告・企画書で(本来の意味)
- 01前回の施策は姑息な手当てにとどまり、離脱率は元の水準に戻りました。
- 02本提案は姑息な延命策ではなく、受注の流れそのものを変えるものです。
- 03広告費を上積みするだけでは姑息なので、商品ページの改善を優先します。
- 04サーバーの再起動でしのぐのは姑息な対処にすぎないため、原因の特定を進めています。
面談・振り返りで(本来の意味)
- 01締め切り直前に人を足すのは姑息な手だから、次の案件では最初から体制を考えておこう。
- 02毎回徹夜で間に合わせるのは姑息なやり方だと、自分でも感じています。
- 03その場で謝って終わりにするのは姑息なので、再発を防ぐ手順まで決めておきましょう。
朝礼・挨拶で(本来の意味)
- 01今年は、問題を先送りする姑息なやり方ではなく、原因から手を打つ一年にしたいと考えています。
- 02姑息な対応を重ねるより、一度立ち止まって根本から考える時間を取りましょう。
注意
自分たちの仕事の進め方について話す形なので、目上の人がいる場でも使えます。聞き手が誤解しないよう、「一時しのぎの」と言い添えるとより確実です。
日常の会話で(本来の意味)
- 01散らかった物を押し入れに詰め込むのは姑息な片付けだね。
- 02痛み止めで我慢するのは姑息だから、一度病院で診てもらったほうがいい。
- 03テスト前だけ詰め込むのは姑息な勉強法で、すぐ忘れてしまう。
言い換えた形(文書・社外向け)
- 01◯◯の不具合について、本日、一時的な回避策を実施いたしました。原因を調査のうえ、恒久的な対策を◯月◯日(◯)までにご報告いたします。
- 02暫定的な対応となり大変恐縮ですが、まずは◯個を◯月◯日(◯)に納品いたします。
- 03現在の運用は応急処置にとどまっておりますので、根本的な対策について一度ご相談できればと存じます。
- 04その場しのぎの対応にならないよう、原因の切り分けから進めてまいります。
メール全文(社内の上司へ)
件名:◯◯の不具合への対応について(ご報告)
◯◯課長
お疲れさまです。□□です。
◯◯の不具合について、本日、一時的な回避策を実施いたしました。
あくまで応急的な措置ですので、原因を調査のうえ、恒久的な対策を◯月◯日(◯)までにご報告いたします。
メール全文(取引先へ)
件名:◯◯の納品について
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の件、暫定的な対応となり大変恐縮ですが、まずは◯個を◯月◯日(◯)に納品いたします。
残りにつきましては、◯月◯日(◯)までに改めてご連絡いたします。
注意
社外には「暫定的な対応」が使いやすい言い方です。断りや条件付きの返事の書き方はお断りメールの例文も参考になります。
「姑息」と「卑怯」の違い
| 姑息(本来の意味) | 卑怯 | |
|---|---|---|
| 意味 | 一時しのぎ・その場しのぎ | 正々堂々としていない、ずるい |
| 評している点 | やり方が根本的でないこと | やり方が不正・不誠実であること |
| ルール違反か | 違反とは限らない(正当な手段でも一時しのぎなら姑息) | ずるさ・不正を含む |
| 例 | 値引きで乗り切るのは姑息だ(根本解決にならない) | 相手の弱みにつけ込むのは卑怯だ |
「ずるい」と言いたいときに「姑息」を使うと、本来の意味では「一時しのぎ」になり、言いたいことと合わなくなります。ずるさを伝えたいなら「卑怯」「不誠実」、または何が問題かを具体的に書くほうが誤解がありません。
言い換え・類語・対義語
| 表現 | 意味 | 使い方の目安 |
|---|---|---|
| 一時しのぎ/その場しのぎ | その場だけを切り抜けること | 姑息の言い換え。意味がはっきりする |
| 場当たり的 | 計画がなく、その場その場で対応する | やり方を批判するとき |
| 付け焼き刃 | その場に間に合わせるために、にわかに覚えたこと | 知識や技術の急ごしらえに |
| 急場しのぎ | 差し迫った場面を何とか切り抜けること | 急な対応を振り返るとき |
| 暫定的 | 正式に決まるまでの、仮の | 社外・目上への報告に使いやすい |
| 応急処置 | 差し当たっての手当て | トラブル対応の報告で使いやすい |
| 抜本的/根本的 | 原因の根本から改めること | 姑息の反対の向き |
| 恒久的 | 長く変わらずに続くこと | 「恒久的な対策」として、暫定的の反対に使う |
よくある失敗と直し方
| ありがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 他社が姑息な手を使って契約を取った(ひきょう、のつもり) | 本来の意味では「一時しのぎの手」になり、言いたいことと合わない | 具体的に何が問題なのかを書く(例:契約条件の説明が不十分だった) |
| (取引先に)御社の姑息な対応には困っています | 本来の意味でも「その場しのぎ」と非難することになり、ひきょうの意味に受け取られるとさらに角が立つ | 根本的な対策について、一度ご相談できればと存じます |
| (自社の対応を)姑息な対応で申し訳ございません | 本来は「一時しのぎ」のつもりでも、「ひきょうな対応」と読まれるおそれがある | 暫定的な対応となり、申し訳ございません |
| あの人は姑息だ | 人を評する形になり、どちらの意味でも強い批判に聞こえる | 人ではなく対応を指す(例:今回の対応は一時しのぎだった) |
注意
読み間違えやすいビジネスの漢字はビジネスで読み間違えやすい漢字一覧にまとめています。
目上の人・社外に使うときの注意
「姑息」は、本来の意味でも「その場しのぎ」と相手のやり方を批判する言葉です。さらに「ひきょう」の意味で受け取られると、強い非難に聞こえます。目上の人や社外の方の対応について「姑息」と言うのは避けます。
| 場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 自社の対応を説明する(社外) | 暫定的な対応となり恐縮ですが |
| 上司への報告 | 一時的な回避策を実施しました/応急的な措置です |
| 相手に根本的な対応をお願いする | 根本的な対策について、一度ご相談できればと存じます |
| 社内で進め方を見直す | 一時しのぎではなく、原因から手を打ちましょう |
相手に見直しを提案するときの伝え方はフィードバックの意味と伝え方も参考にしてください。
「姑息」を使う前のチェックリスト
- 「ひきょう」ではなく「一時しのぎ」の意味で使っている
- 人ではなく、手段・対応・やり方に対して使っている
- 何が一時しのぎなのか、具体的な対応を書いている
- 根本的な対策(何をすべきか)まで続けて書いている
- 社外・目上の相手の対応を評していない
- 誤解されると困る文書では「一時しのぎ」「暫定的」に言い換えた
この記事の要点
- 「姑息(こそく)」は一時しのぎ・その場しのぎの意味で、本来は「ひきょう」を含まない。
- 出典は『礼記』の曾子の言葉とされ、「姑=しばらく」「息=休む」から一時の間に合わせの意味になったと説明される。
- 文化庁「国語に関する世論調査」(令和3年度)では、「ひきょうな」の意味を選んだ人が73.9%だった。
- 人ではなく手段・対応に使い、根本的な対策まで続けて書く。
- 誤解されやすいので、文書では「一時しのぎ」「暫定的」「応急処置」と言い換える。反対の向きは「抜本的」「根本的」「恒久的」。
FAQ
よくある質問
根本的な解決をせずに、その場を一時的に切り抜けること、つまり一時しのぎ・その場しのぎの意味です。
「ひきょうな」の意味で受け取る人は多いのですが、本来の意味とは異なるとされています。「ひきょう」と言いたいなら、その言葉を使うほうが誤解がありません。
「こそく」と読みます。
本来の意味では、一時しのぎの手段、その場しのぎのやり方のことです。ただ、「ひきょうな手段」と受け取る人も多いので、仕事の文書では「一時しのぎの手段」と書くのが無難です。
中国の古典『礼記』檀弓上にある曾子の言葉「君子之愛人也以德,細人之愛人也以姑息」が出典としてよく挙げられます。「姑」は「しばらく」、「息」は「休む」を表し、一時の間に合わせの意味になったと説明されます。
本来の意味では「その場しのぎをする人」ですが、人を批判する形になるうえ、「ひきょうな人」と受け取られやすい言い方です。仕事では、人ではなく「今回の対応は一時しのぎだった」のように対応を指すほうが角が立ちません。
決まった一語の対義語があるわけではありませんが、反対の向きの言葉として「抜本的」「根本的」「恒久的」が使えます。
「一時しのぎ」「その場しのぎ」「暫定的」「応急処置」などがあります。社外への説明には「暫定的な対応」、トラブルの報告には「応急的な措置」が使いやすい言い方です。