ビジネス用語
醸成の意味とは?
読み方・使い方の例文と言い換え
結論:「醸成(じょうせい)」は、場の空気や機運、人の意識を、時間をかけて少しずつ育てることです。もとは酒やしょうゆを発酵の力で仕込むことを表す言葉で、その「じっくり仕込んで育てる」イメージがビジネスの使い方にも残っています。一文で使うなら「部署をまたいだ勉強会を続けて、チームの一体感を醸成していきたい。」。このページでは、二つの意味と字の成り立ち、組み合わせる言葉の一覧、場面別の例文(会議・メール・挨拶・面談・報告書)、言い換えと似た言葉との違い、間違えやすい使い方、使う前のチェックリストをまとめました。
結論
「醸成」には、(一)酒・しょうゆ・みそなどを発酵の力で仕込んで造ること、(二)場の空気や機運、人の意識を、時間をかけて少しずつ育てること、の二つの意味があります。ビジネスで使うのはほとんどが(二)で、「一体感」「機運」「信頼関係」「当事者意識」などと組み合わせます。品詞は名詞で、「醸成する」「醸成される」「〜の醸成」の形で使います。
「醸成」の二つの意味と字の成り立ち
| 意味 | 対象 | 使った一文 |
|---|---|---|
| (一)酒・しょうゆなどを発酵の力で仕込んで造る | 酒・しょうゆ・みそなど | 米と麹を仕込み、蔵で酒を醸成する。 |
| (二)場の空気・機運・人の意識を、時間をかけて育てる | 一体感・機運・信頼関係・風土など | 地域で子育てを支える機運を醸成する。 |
「醸」はかもすと読み、発酵させて酒などを造る意味の字です。「成」はなす・できあがる。合わせて「かもして、できあがらせる」という組み立てです。
同じ字を使う言葉に「醸造(じょうぞう)」「吟醸(ぎんじょう)」「醸す(かもす)」「醸し出す(かもしだす)」があります。酒づくりが時間をかけて進むように、人の気持ちや場の空気が少しずつ育っていく様子にも「醸成」を使います。
Point
醸成=場の空気や機運、人の意識を、時間をかけて少しずつ育てること。「すぐに」「一気に」とは相性がよくない言葉です。
「醸成」と組み合わせる言葉の一覧
「醸成」は、目に見えず、少しずつ育つものと組み合わせます。よく使う組み合わせを、ねらい別にまとめました。
| ねらい | 組み合わせる言葉 | 使った形 |
|---|---|---|
| チームのまとまり | 一体感・連帯感・仲間意識 | 一体感を醸成する |
| 前向きな動き | 機運・気運・意欲 | 改革の機運が醸成される |
| 人と人の関係 | 信頼関係・協力関係・相互理解 | 取引先との信頼関係を醸成する |
| 職場の空気 | 風土・文化・雰囲気・安心感 | 挑戦を歓迎する風土の醸成 |
| 一人ひとりの意識 | 当事者意識・危機意識・帰属意識 | 安全への当事者意識を醸成する |
| 社会全体の考え | 世論・合意・理解 | 制度への理解を醸成する |
注意
「不信感が醸成される」「対立の空気が醸成される」のように、好ましくない雰囲気に使うこともあります。誤りではありませんが、社内の文書で前向きな取り組みとして書くときは、よい雰囲気を育てる意味で使うと誤解がありません。
使い方の例文(場面別)
会議で(社内)
新制度を定着させるには、まず現場で「使ってみよう」という機運を醸成することが先だと思います。
部署間の信頼関係を醸成するために、月に一度の合同ミーティングを続けてみませんか。
数字の目標だけを掲げても、当事者意識は醸成されません。まず現場の声を聞く場をつくりましょう。
企画書・方針の文書で
本施策のねらいは、拠点をまたいだ相互理解の醸成と、情報共有の習慣化です。
挑戦を歓迎する組織風土の醸成に向け、失敗事例の共有会を四半期ごとに開催します。
メールで(社内の上司へ)
件名:社内交流会の企画について(ご相談)
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
部署をまたいだ交流会の企画案をお送りします。
ねらいは、普段接点の少ないメンバー同士の一体感を醸成することです。
一度きりではなく、◯か月ごとに続ける形を考えております。
ご意見をお聞かせいただけますでしょうか。
注意
社内イベントの企画の考え方は社内イベントのアイデアも参考になります。
メールで(取引先へ)
今回の共同セミナーを通じて、地域の事業者の皆様の間で、連携の機運が醸成されていくことを願っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
長年のお取引の中で醸成された信頼関係を大切に、引き続き誠実に対応してまいります。
式典・キックオフの挨拶で
このプロジェクトは長丁場です。立場の違いを越えて、何でも言い合える空気を皆さんと一緒に醸成していきたいと思います。
注意
挨拶全体の組み立てはキックオフの挨拶にまとめています。
朝礼で
失敗を責めるより、早めに共有した人に感謝する。そんな雰囲気を、このチームで少しずつ醸成していきたいと思います。
面談・評価コメントで
◯◯さんには、新人が質問しやすい空気を醸成する役をお願いしたいと思っています。(上司から部下へ)
勉強会を自ら立ち上げ、チーム内に学び合う雰囲気を醸成した点を高く評価します。(評価コメント)
報告書・振り返りで
合同研修の実施後、部署間で相談しやすい雰囲気が醸成されつつあります。引き続き、定例の場を設けて定着を図ります。
イベントの仕事での使い方
周年イベント・社員総会・懇親会・取引先向けイベントは、「場の空気を育てる」ことが目的になりやすい仕事です。そのため企画書や報告書で「醸成」を使う機会が多くあります。一方で、イベントは一日で終わるので、「醸成した」と言い切るより「醸成のきっかけ」「醸成に向けた一歩」と書くほうが、時間をかけて育つという言葉の意味と合います。
| 書く場所 | 「醸成」の置き方 | 添えると伝わること |
|---|---|---|
| 企画書・提案書の目的欄 | 社内の一体感の醸成/ブランドへの信頼の醸成 | 当日の何がその目的につながるか(プログラム名) |
| 周年イベント・社員総会の狙い | ◯周年を機に、新たな挑戦への機運を醸成する | イベント後に続ける取り組み(社内報・部署横断の会など) |
| 懇親会・社内交流会の狙い | 部署をまたいだ相互理解の醸成 | 席の決め方や交流の仕掛け |
| 実施報告書の効果欄 | 醸成のきっかけとなった/醸成されつつある | アンケートの声や参加者の様子など、実際に見えたこと |
そのまま使える例文
本総会の目的は、拠点ごとに分かれて働く社員同士の一体感の醸成です。そのため、後半は部署を混ぜたグループで来期の目標を話し合う時間を設けます。(企画書の目的欄/総務部が社員総会の企画書を役員会に出すとき)
◯周年の記念式典を、創業からの歩みを振り返るだけでなく、これからの挑戦に向けた機運を醸成する場にしたいと考えております。式典後も社内報で連載を続ける案をあわせてご提案いたします。(メール/イベント会社の担当者が、周年事業の担当部署へ提案書を送るとき)
今回の懇親会は、新しく合流した二つのチームの相互理解を醸成するのが狙いですので、席は部署ごとに固めず、くじで決める形にしてはいかがでしょうか。(チャット/懇親会の幹事が、開催前に上長へ席次の相談をするとき)
お客様向けの体験会は、製品を売り込む場というより、ブランドへの信頼を醸成する場と位置づけてはいかがでしょうか。当日はデモよりも、開発担当の方とお客様が直接話せる時間を長めにとる構成をご提案します。(口頭/打ち合わせで、プロデューサーがクライアントの販促担当者に構成案を説明するとき)
アンケートでは「他部署の人と初めてゆっくり話せた」という声が多く、部署間の一体感を醸成するきっかけになったと考えます。この流れを止めないよう、時期をおいて小規模な交流の場を設けることを提案します。(実施報告書の効果欄/社内イベントの終了後に担当者がまとめるとき)
本日はありがとうございました。今回の場で生まれたつながりをきっかけに、皆さまの間で連携の機運が醸成されていくよう、今後も交流の場を設けてまいります。(お礼メール/取引先向けイベントの翌日に、主催者側の担当者が参加企業へ送るとき)
注意
報告書では、「一体感が醸成された」と断定するより、参加者の声や当日の様子など実際に見えたことを先に書き、「醸成のきっかけになった」「醸成されつつある」とつなげると、読み手が納得しやすくなります。
言い換えと、似た言葉との違い
| 表現 | 意味 | 使い分けの目安 |
|---|---|---|
| 醸成 | 場の空気・機運・意識を時間をかけて育てる | 書き言葉。企画書・方針・挨拶文 |
| 醸造 | 発酵させて酒・しょうゆなどを造る | 製造の話だけに使う。「機運を醸造する」とは言わない |
| 熟成 | 時間をかけて味や状態がよくなる | 「熟成」はもとあるものの質が上がること。「醸成」は空気や意識を育てていくこと |
| 醸し出す | 雰囲気や気分を自然に生じさせる | 「落ち着いた雰囲気を醸し出す」など、結果として漂う感じ |
| 育む | 大切に育てる | 和語の言い換え。話し言葉でもやわらかい |
| 培う | 長い時間をかけて養う | 「経験を培う」「信頼を培う」など、力や関係に使う |
| 構築 | 組み立てて築く | 「体制を構築する」など、仕組みや制度に使う |
| 高める | 程度を上げる | 「意識を高める」。最も分かりやすい言い換え |
| 損なう/冷え込む | よい雰囲気や関係が弱まる | 醸成と反対の向き |
言い換えた例文
| 醸成を使った文 | やわらかく言い換えた文 |
|---|---|
| 一体感を醸成する | チームのまとまりを少しずつ育てていく |
| 改革の機運を醸成する | 変えていこうという空気をつくる |
| 信頼関係を醸成する | 信頼関係を育む/築いていく |
| 当事者意識を醸成する | 一人ひとりが自分ごととして考えられるようにする |
「構築」は仕組みや体制を組み立てる言葉、「醸成」は空気や気持ちが育っていく言葉です。「体制を醸成する」「一体感を構築する」は、意味は通じても不自然に聞こえることがあります。
間違えやすい使い方
| ありがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| じょうなり/じょうぜい | 読み間違い | じょうせい |
| 一日の研修で一体感を醸成した | 時間をかけて育つ意味合いと合わない | 一体感を醸成するきっかけになった |
| 新しい体制を醸成する | 仕組みや制度には「構築」「整備」が合う | 新しい体制を構築する/整える |
| 計画を醸成させる | 計画は空気や意識ではないため合わない | 計画を練り上げる |
| 機運を醸造する | 醸造は酒などを造ることだけを指す | 機運を醸成する |
| 一体感を醸成します(具体策なし) | 何をするのかが伝わらない | 月例の合同会議を通じて、一体感を醸成します |
目上の人・社外に使うときの注意
「醸成」は改まった書き言葉で、目上の人や社外への文書、式典の挨拶でも使えます。一方、話し言葉ではかたく聞こえやすく、具体的に何をするのかが見えにくいのが弱点です。
| 場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 企画書・方針の文書 | 一体感の醸成をねらいとします |
| 社外への挨拶・メール | 連携の機運が醸成されていくことを願っております |
| 上司への説明(口頭) | 部署同士が話しやすい雰囲気をつくりたいと考えています |
| 話し言葉でやわらかく | 少しずつ育てていく/つくっていく |
「醸成」を使う前のチェックリスト
- 対象は雰囲気・気運・意識・関係など、目に見えないものか(仕組みなら「構築」)
- 時間をかけて育つ話になっているか(一回で終わる話なら「きっかけ」)
- 文のあとに具体的な取り組み(会議・勉強会・面談など)を書いたか
- 口頭で言うなら、「育てていく」「つくっていく」のほうが伝わらないか
- 「醸造」「熟成」と取り違えていないか
この記事の要点
- 「醸成(じょうせい)」は場の空気や機運、人の意識を時間をかけて少しずつ育てること。
- もとは酒などを発酵させて造る意味。「醸す(かもす)」の字で、醸造・吟醸と同じ字。
- 「一体感」「機運」「信頼関係」「風土」「当事者意識」と組み合わせる。
- 仕組み・制度には「構築」、質を上げるのは「熟成」。一度で終わる話には使わない。
- 文書では具体的な取り組みを添える。話し言葉では「育てていく」「つくっていく」と言い換える。
FAQ
よくある質問
「じょうせい」と読みます。「醸」は訓読みで「かもす」です。
酒などを発酵の力で仕込んで造ること、そこから転じて、場の空気や機運、人の意識を時間をかけて少しずつ育てることです。ビジネスでは主に後者の意味で使います。
チームや組織のメンバーが「同じ方向を向いている」と感じられる雰囲気を、時間をかけてつくっていくことです。
「醸造」は発酵させて酒・しょうゆなどを造ることだけを指します。「醸成」はその意味に加えて、場の空気や機運を育てる意味でも使います。
「構築」は体制や仕組みを組み立てるときに、「醸成」は雰囲気や気持ちが育っていくときに使います。
あります。「不信感が醸成される」のように、好ましくない雰囲気が少しずつ広がる場合にも使えます。
企画書の目的欄では「社内の一体感の醸成」「ブランドへの信頼の醸成」のように狙いとして書き、当日のどのプログラムがその狙いにつながるかを添えます。イベントは一日で終わるため、報告書では「醸成した」と言い切るより「醸成のきっかけになった」と書き、参加者の声などを根拠に示すと伝わりやすくなります。
「育む」「培う」「高める」「つくり出す」などがあります。話し言葉では「少しずつ育てていく」と言うと伝わりやすくなります。