発注
イベント警備を外注する手順
依頼文例・見積比較・警備業法の確認点
結論:イベント警備の外注は「認定を受けた警備業者に、業務を分けて、同じ条件で見積を取る」の3点で決まります。 警備業は警備業法第4条により都道府県公安委員会の認定を受けた事業者しか営めず、業務の種別によっては検定の合格証明書を持つ警備員の配置が義務になります(第18条)。人数と単価だけで比べると、この差が見えません。この記事では、発注の手順、そのまま使える依頼メールの例文、見積比較表、契約前のチェックリスト、よくある失敗を、条文と警察の公表資料を根拠にまとめます。
結論
警備業法第2条第1項は「警備業務」を他人の需要に応じて行うものとして4つの号に分けており、来場者の誘導や入退場の整理は第2号(人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務)に当たります。警備業を営むには第4条により都道府県公安委員会の認定が必要で、第18条は国家公安委員会規則で定める種別の業務について検定の合格証明書を持つ警備員に実施させることを義務づけています。
結論:外注は5つの手順で進める
- 01
頼みたい業務を書き出し、号ごとに分ける
入退場の整理、会場の巡回、手荷物検査、駐車場の車両誘導、売上金の輸送、出演者の身辺警護。「警備一式」で頼まず、業務ごとに分けて伝えます。分け方は下の「業務を号ごとに分ける」の表を使ってください。
- 02
依頼先が第4条の認定業者かを確かめる
第2条第3項により、認定を受けていない事業者は法律上の「警備業者」ではありません。認定の有無は、見積依頼の段階で書面での回答を求めます。
- 03
同じ資料を渡して見積を依頼する
会場図、時間割、想定来場者数、業務の一覧を全社に同じものを渡す。下の依頼メール例文をそのまま使えます。
- 04
配置図つきの見積を、表に並べて比べる
ポストごとの人数と時間、検定の合格証明書を持つ警備員の配置、含まれる費用と別料金を同じ列に並べて比べます。比較表のひな形を載せています。
- 05
契約前に、指揮命令と変更時の条件を決める
当日の連絡系統、来場者が想定を超えたときの増員、雨天時の扱い、再委託の有無を契約書か発注書に書く。チェックリストを最後に載せています。
根拠となる法令と資料
本記事の条文はe-Gov法令検索の警備業法から取得しています(2026年10月時点)。雑踏警備業務の該当・非該当の例は、神奈川県警察「雑踏警備配置基準質疑応答集」(2026年7月7日更新)を参照しています。
注意
本記事は発注する側が何を確認すべきかを整理したものです。具体的な必要人数や料金の相場は示しません。個別の判断は所轄警察署と警備会社に確認してください。
業務を号ごとに分ける — 警備業法第2条第1項
警備業法第2条第1項は、「警備業務」を他人の需要に応じて行うものとしたうえで、4つの号に分けています。発注の前に、自分のイベントで頼みたい業務をこの表に当てはめてください。
| 号 | 業務(条文の文言) | イベントでの例 |
|---|---|---|
| 第1号 | 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(警備業務対象施設)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務 | 会場・機材置場の警備、夜間の立哨、会場内の巡回、手荷物検査 |
| 第2号 | 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務 | 来場者の誘導、入退場の整理、待機列の整理 |
| 第3号 | 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務 | 物販の売上金の輸送、展示品の輸送 |
| 第4号 | 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務 | 来賓・出演者の身辺警護 |
「雑踏警備業務」に当たるかは、契約書の内容と実態で判断される
神奈川県警察の質疑応答集は、個々の業務が雑踏警備業務に当たるかを「委託契約書等の内容、業務の実態等から」判断するとしています(問3)。同じ資料では次のように整理されています。
| 業務 | 質疑応答集での扱い |
|---|---|
| 人の雑踏の整理 | 雑踏警備業務に該当する(問4) |
| 手荷物検査、警備区域内の巡回 | 通常は1号業務で、雑踏警備業務には該当しない。ただし手荷物検査の警備員が入場客に整列の呼び掛けも行うような場合は該当する(問6) |
| 駐車場での車両の誘導 | 雑踏警備業務には該当しない。ただし駐車場で多数の歩行者の整理を行うなど「人の雑踏の整理」を行う場合は該当する(問7) |
| 検定合格警備員の配置 | イベントの種類・規模、屋内外を問わず、すべての雑踏警備業務について配置が必要(問1) |
Point
発注側にとっての意味:依頼書や契約書に業務をどう書くかが、配置すべき警備員の要件に関わります。「警備一式」とまとめず、ポストごとに何をする人かを書いてください。上の整理は神奈川県警察の資料です。開催地の都道府県警察の扱いは所轄警察署に確認してください。
「他人の需要に応じて行うもの」という限定
注意
第2条第1項の定義には「他人の需要に応じて行うもの」という文言が入っています。主催者が自社の従業員で自社のイベントを警備する場合の扱いについて、本記事では「対象外です」と断定しません。 条文の文言だけからは確定しないためです。自社スタッフだけで誘導を行う計画がある場合は、所轄警察署に相談してください。
依頼先の条件 — 第4条の認定と第14条
警備業を営もうとする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の認定を受けなければならない。(第4条)
第2条第3項は、「警備業者」を第4条の認定を受けて警備業を営む者と定義しています。認定を受けていない事業者は、法律上の「警備業者」ではありません。
Point
相見積もりに極端に安い先が混じっていたら、まずここを確認してください。 認定の有無は、見積書・契約書の段階で書面で回答してもらうのが確実です。
第14条 — 18歳未満は警備員になれない
十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。(第14条第1項)
第2項で、警備業者はこれらの者を警備業務に従事させてはならないとされています。学生アルバイトに誘導を任せる計画を立てる前に、この条文を確認してください。
注意
来場者の案内・受付・サインの掲出といった運営スタッフの業務と、警備業務との線引きは実態によって判断が分かれます。「スタッフと呼べば警備ではない」ということにはなりません。
見積額の差が出るところ — 第18条の検定合格警備員
警備業者は、警備業務(第二条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するものに限る。)のうち、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別のものを行うときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その種別ごとに第二十三条第四項の合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない。(第18条)
- 対象は第2条第1項第1号から第3号までの警備業務のうち、国家公安委員会規則で定める種別
- 該当する場合、第23条第4項の合格証明書の交付を受けている警備員に実施させる
- 「実施させなければならない」——努力義務ではない
- 検定は公安委員会が種別に応じて行い、合格者に合格証明書が交付される(第23条第1項・第4項)
Point
相見積もりでは「合格証明書を持つ警備員を、どのポストに、何時から何時まで、何名置くか」を全社に同じ形式で聞いてください。 ここが揃っていない見積を金額だけで比べても、比較になりません。配置基準の詳細はイベント警備の人員配置で解説しています。
また、第21条第2項により、警備業者は警備員に対し内閣府令で定めるところにより教育を行い、必要な指導及び監督をしなければなりません。事前の現地説明や当日の打合せの時間を見積に含めるかも、あわせて確認します。
そのまま使える依頼メールの例文
最初の依頼で情報が揃っているほど、見積の精度が上がり、やり取りが減ります。場面ごとに3つ用意しました。◯の部分を差し替えて使ってください。
例文1:初めての警備会社に見積を依頼する
株式会社◯◯
ご担当者様
突然のご連絡失礼いたします。◯◯株式会社の◯◯と申します。
◯月◯日に開催するイベントの警備業務について、お見積りをお願いしたくご連絡いたしました。
■イベントの概要
・名称:◯◯
・日時:◯月◯日 開場◯時/終演◯時(設営◯時から、撤去完了◯時)
・会場:◯◯(屋内/屋外。会場図を添付します)
・想定来場者数:◯人(開場前と終演後に集中する見込み)
・物販・飲食:あり/なし ・駐車場:あり(◯台)/なし
■お願いしたい業務(会場図のポスト番号と対応)
・P1〜P3:入場口の待機列の整理と入場誘導
・P4:会場内の巡回
・P5:手荷物検査
・P6:駐車場の車両誘導
・夜間:機材置場の警備(◯時〜翌◯時)
■お見積りに含めていただきたい内容
・各ポストの人数と配置時間(配置図でお示しください)
・検定の合格証明書を持つ警備員の配置の有無と人数
・無線・誘導灯・制服等の備品、交通費、事前打合せの費用の扱い
・来場者が想定を超えた場合の増員の可否と条件、雨天時の扱い
・公安委員会の認定の有無(認定番号)と、再委託の有無
恐れ入りますが、◯月◯日までにご回答いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
◯◯株式会社 ◯◯
電話:◯◯ メール:◯◯
例文2:見積の内容を揃えてもらうために追加で確認する
株式会社◯◯ ◯◯様
お見積りをお送りいただき、ありがとうございます。
社内で比較するにあたり、次の点を確認させてください。
1. 入場口(P1〜P3)の配置人数の内訳と、そのうち検定の合格証明書を持つ警備員の人数
2. 配置時間に、開場前の待機列の整理と終演後の退場誘導が含まれているか
3. 備品(無線・誘導灯など)と交通費が金額に含まれているか、別料金か
4. 当日の責任者の方のお名前と連絡方法
配置図をいただけましたら、弊社スタッフの配置と重ねて検討いたします。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
◯◯株式会社 ◯◯
例文3:発注を決めた会社に、当日までの段取りを依頼する
株式会社◯◯ ◯◯様
先日はお見積りをありがとうございました。
◯月◯日付のお見積り(No.◯◯)の内容で、発注いたします。注文書を添付いたしますので、ご確認をお願いいたします。
つきましては、次の打合せの日程をご相談させてください。
・現地確認:◯月◯日〜◯日のいずれか(会場の◯◯様も同席予定です)
・最終打合せ:開催の◯日前を目安に
当日の連絡系統は、弊社側の責任者を◯◯(携帯:◯◯)とし、入場規制・中止の判断は弊社が行います。判断に必要な情報(列の長さ、混雑の状況)を随時ご報告いただけますと助かります。
引き続きよろしくお願いいたします。
◯◯株式会社 ◯◯
注意
発注しなかった会社への連絡も、短くてかまわないので必ず入れます。「今回は他社に発注することになりました。ご検討いただきありがとうございました。」で十分です。次の案件で依頼しやすくなります。
見積比較表のひな形
見積書を受け取ったら、次の表に転記して並べます。空欄が出た項目は、その会社に追加で質問してください。空欄のまま金額だけ比べるのが、いちばん多い失敗です。
| 比較する項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 公安委員会の認定(番号) | |||
| 受ける業務の範囲(号・ポスト) | |||
| ポストごとの人数と配置時間 | |||
| 検定の合格証明書を持つ警備員の人数と配置先 | |||
| 配置図の提出 | あり/なし | あり/なし | あり/なし |
| 備品(無線・誘導灯・制服) | 込み/別 | 込み/別 | 込み/別 |
| 交通費・事前打合せ・現地確認 | 込み/別 | 込み/別 | 込み/別 |
| 来場者が想定を超えたときの増員 | |||
| 雨天・荒天時、中止時の扱い | |||
| 保険の加入状況 | |||
| 再委託の有無 | |||
| 当日の責任者と連絡方法 | |||
| 合計金額(税込・税抜を明記) |
Point
金額は最後の行に置いています。 上の行がすべて埋まり、条件が揃ってから金額を比べてください。比較の考え方は見積書の比較も参考になります。
よくある失敗と防ぎ方
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 「警備一式」で依頼する | 会社ごとに想定する業務が違い、見積が比べられない。必要な警備員の要件も曖昧になる | 業務をポストごとに書き出し、会場図に番号を振って渡す |
| 人数と単価だけで比べる | 検定の合格証明書を持つ警備員の配置の差が見えない | 比較表で配置の内訳を揃えてから金額を見る |
| 認定を確認しない | 法律上の警備業者でない先に頼んでしまう | 見積依頼の段階で認定の有無を書面で求める |
| 学生アルバイトに誘導を任せる | 18歳未満は警備員になれない(第14条)。運営スタッフと警備の線引きも曖昧になる | 誘導を誰が担うかを企画段階で決め、迷う場合は所轄警察署に相談する |
| 終演後の退場誘導を見落とす | 配置時間が終演で切れ、いちばん混む時間に人がいない | 時間割に退場完了までを入れ、配置時間を確認する |
| 判断者を決めずに当日を迎える | 入場規制や中止の判断が遅れる | 主催者側の判断者と連絡順を発注時に伝える |
契約前チェックリスト
こちらから渡す情報
- 想定来場者数と、時間帯ごとの波(開場前、終演後)
- 会場図(入口・出口・列の伸びる方向・ポスト番号)
- 時間割(設営から撤去完了まで)
- 屋内/屋外の別と、周辺の道路・隣接施設の状況
- 駐車場の有無と車両の出入り
- 物販・飲食の有無と売上金の扱い
- 来賓・出演者の有無と動線
- 過去の同種イベントの来場者数の実績(あれば)
先方から書面でもらうもの・決めること
- 第4条の認定の有無(認定番号)
- 受ける業務の範囲(号とポスト)
- 配置図(ポストごとの人数と時間)
- 検定の合格証明書を持つ警備員の人数と配置先
- 指揮命令系統と当日の責任者
- 無線など連絡手段をどちらが用意するか
- 増員の可否と条件、雨天・中止時の扱い
- 保険の加入状況と再委託の有無
- 事前の現地確認・打合せの日程
契約書のひな形と印紙の扱いは業務委託契約書を参照してください。
警備会社に任せきりにしない部分
警備を外注しても、主催者が決めることは残ります。ここを曖昧にしたまま発注すると、当日に噛み合いません。
- 誰が最終判断をするのか(中止・入場規制・退場誘導の判断は主催者の仕事)
- 連絡の順序(誰から誰に、どの手段で)
- 主催者側スタッフの配置と、警備との役割分担
- 入場規制に入る基準(何をもって規制するか)
- 救護の体制と近隣への事前連絡
注意
全体のリスク整理はイベントのリスク管理、当日の運用はイベント運営チェックリスト、道路にかかる場合は道路使用許可もあわせて確認してください。
警備を発注しても、判断する責任までは外注できない。
この記事の要点
- 外注の要点は認定業者に・業務を分けて・同じ条件で見積を取ること。
- 警備業を営むには第4条の都道府県公安委員会の認定が必要。認定のない事業者は法律上の「警備業者」ではない。
- 来場者の誘導・入退場の整理は第2条第1項第2号。手荷物検査や巡回は通常第1号業務と整理されている(神奈川県警察の質疑応答集)。
- 雑踏警備業務に当たるかは委託契約書等の内容と業務の実態で判断される。依頼書に業務をポストごとに書く。
- 第18条の検定合格警備員の配置が見積額の差になる。比較表で配置の内訳を揃えてから金額を見る。
- 第14条により18歳未満は警備員になれない。判断の責任は主催者に残る。
FAQ
よくある質問
警備業法第4条により都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者に依頼します。見積依頼の段階で認定の有無を書面で確認し、会場図・時間割・想定来場者数・業務の一覧を全社に同じものを渡すと、条件を揃えて比べられます。
イベントの名称・日時(設営から撤去まで)・会場・想定来場者数、ポストごとの業務内容、見積に含めてほしい項目(ポスト別の人数と時間、検定の合格証明書を持つ警備員の人数、備品と交通費の扱い、増員と雨天時の条件、認定の有無と再委託の有無)、回答の期限です。本記事の例文1をそのまま使えます。
来場者の誘導や入退場の整理は第2条第1項第2号です。会場や機材置場の警備は第1号(条文に「興行場」が明記されています)、売上金の輸送は第3号、出演者の身辺警護は第4号です。神奈川県警察の質疑応答集では、手荷物検査や巡回は通常第1号業務、駐車場の車両誘導は雑踏警備業務に該当しないと整理されています。
条件が揃っていない可能性があります。第18条は、国家公安委員会規則で定める種別の業務について、検定の合格証明書の交付を受けている警備員に実施させなければならないと定めています。配置の内訳、配置時間、備品や交通費の扱いを比較表で揃えてから金額を比べてください。
第2条第1項の定義には「他人の需要に応じて行うもの」という文言がありますが、自社スタッフによる誘導が警備業法の対象外であると本記事では断定しません。また第14条により18歳未満の者は警備員になれません。自社スタッフだけで誘導を行う計画がある場合は、所轄警察署に相談してください。
判断する責任までは外注できません。中止や入場規制、退場誘導の最終判断は主催者の仕事です。判断者、連絡の順序、入場規制に入る基準を発注の段階で決め、警備会社の配置図と主催者側スタッフの配置を重ねて確認してください。