法令
二次利用とは
意味・具体例と、契約で決めておくこと
結論:二次利用とは、最初に決めた媒体・期間・用途の外で素材を使うことです。使ってよいかは、元の契約に書いた範囲で決まります。書いていなければ、使う前に権利者の許諾を取り直します。テレビCMの映像をウェブ広告に回す、イベントの写真を翌年の告知に使う——広告やイベントの現場で揉めるのは、たいてい最初の契約に範囲を書いていないときです。この記事は、著作権法の条文をe-Govから取得したうえで、場面別の具体例、契約で決めること、そのまま使える条項と確認メールの例文をまとめます。
結論
二次利用とは、最初に予定した媒体・期間・地域・用途を超えて、写真・映像・デザイン・文章などの素材を使うことです。最初に予定した使い方を「一次利用」と呼んで区別します。
著作権法には「二次利用」という言葉の定義はありません。条文の上で問題になるのは、利用を許諾された範囲(第63条第2項)と、著作権の譲渡を受けた範囲(第61条)です。
出典: 著作権法 e-Gov法令検索(2026年10月・11月取得)
二次利用の具体例(場面別)
どれも「最初の契約に書いた範囲の外か」で判断します。左の一次利用だけを契約していた場合、右の使い方は二次利用になります。
| 最初の使い方(一次利用) | あとからの使い方(二次利用) | 主に広がる範囲 |
|---|---|---|
| テレビCM | 同じ映像をウェブ広告・SNS広告に流す | 媒体 |
| テレビCM | 放送期間が終わったあとも自社サイトに載せ続ける | 期間 |
| 国内向けの広告 | 海外の展示会や海外向けサイトで使う | 地域 |
| CM用に撮った写真 | 店頭ポスターやパンフレットに使う | 媒体 |
| ウェブ広告のバナー | トリミングや文字入れをして別のサイズに作り直す | 改変 |
| イベントの記録写真 | 翌年のイベント告知や採用ページに使う | 用途・期間 |
| セミナーのライブ配信 | アーカイブとして録画を公開し続ける | 期間・媒体 |
| キャンペーン用のキャラクター | グッズやノベルティに印刷して配る・売る | 用途(商品化) |
| 社内資料用のイラスト | 社外向けの営業資料や広告に転用する | 用途 |
| 自社広告の素材 | 販売店や代理店に渡して、相手の販促物に使ってもらう | 利用者 |
注意
最後の行のように他社に使わせる場合は特に注意してください。自社が使う前提で許諾を受けた素材を他社に使わせると、許諾の範囲の外になりえます。使わせるなら、その相手と範囲を契約に書きます。なお、許諾を受けた利用権そのものは、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できません(第63条第3項)。
使い方ごとに、関わる権利が違う
著作権は一つの権利ではなく、使い方ごとの権利の集まりです。使い方が変わると、関わる権利も変わります。
| 使い方 | 関わる権利(著作権法) | 二次利用の例 |
|---|---|---|
| コピーする・印刷する | 複製権(第21条) | CMの写真をポスターに刷る |
| ネットに載せる・配信する | 公衆送信権(第23条第1項) | CM映像をSNSやサイトに載せる |
| 加工・編集して別の作品にする | 翻案権など(第27条) | イラストをもとにアニメーションを作る |
| 加工した作品をさらに使う | 二次的著作物の利用に関する権利(第28条) | 作り直したバナーをさらに別の媒体へ |
Point
テレビ放送の許諾だけを受けていた素材を、ウェブに載せたりポスターに刷ったりすると、別の権利の使い方になります。だから媒体ごとに「どこまで許諾を受けているか」を確認する必要があります。
「二次利用」と「二次使用」の違い
広告やデザインの現場では、どちらも「最初の範囲の外で使うこと」の意味で使われています。この記事では同じ意味として扱います。
注意
著作権法の条文に「二次使用」という言葉は出てきますが、意味が違います。第95条(商業用レコードの二次使用)は、実演が録音された商業用レコードを放送事業者や有線放送事業者が放送・有線放送に使ったときに、実演家に二次使用料を支払う仕組みです。広告素材の使い回しの話ではありません。
Point
契約書では、言葉に頼らず中身を書いてください。「二次利用を許諾する」とだけ書くと、どの媒体・期間・地域が含まれるのかで解釈が分かれます。下の「契約書に書いておくこと」のとおり、具体的に並べるのが確実です。
許諾と譲渡は違う
| 利用の許諾(第63条) | 著作権の譲渡(第61条) | |
|---|---|---|
| 権利は誰に | 著作権者に残る | 譲り受けた側に移る(全部または一部) |
| 使える範囲 | 許諾に係る利用方法及び条件の範囲内(第63条第2項) | 譲り受けた権利の範囲。ただし翻案権等は特掲が必要(第61条第2項) |
| 他社に渡せるか | 利用権は、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できない(第63条第3項) | 譲り受けた権利は自分のもの |
| 二次利用のたびに | 範囲の外なら、許諾を取り直す | 譲り受けた範囲なら不要。ただし著作者人格権は残る(第59条) |
Point
許諾で受けているなら、使えるのは契約に書いた範囲だけです。第63条第2項は、許諾を得た者は「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」利用できると定めています。
注意
第63条第4項は、放送についての許諾は、契約に別段の定めがない限り、録音又は録画の許諾を含まないとしています。放送の許諾を受けただけでは、録音・録画する許諾までは含まれません。
「著作権を譲渡」と書いても足りないことがある
翻案権は、特掲しないと残ると推定される(第61条第2項)
Point
条文は、「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」としています。
「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約では、素材を加工・編集して別の作品にする権利は、譲渡した側に残っていると推定されます。契約書では「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)」のように、条文の番号を挙げて書くのが確実です。
著作者人格権は譲渡できない(第59条)
第59条は「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」と定めています。その一つが第20条の同一性保持権で、著作者は、その意に反して著作物の変更、切除その他の改変を受けないとされています。トリミングや尺の変更など、二次利用で想定している改変があるなら、契約の段階で著作者と合意しておいてください。
CMや動画広告の著作権は誰のものか
著作権法は、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物も「映画の著作物」に含むとしています(第2条第3項)。CMや動画広告は、これに当たりえます。
- 01
著作者は、全体の形成に創作的に寄与した者(第16条)
原作・脚本・音楽などの著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が著作者です。ただし職務著作(第15条)が当てはまる場合は、法人等が著作者になります。
- 02
著作権は、映画製作者に帰属しうる(第29条第1項)
著作者が映画製作者に対し、製作に参加することを約束しているときは、著作権は映画製作者に帰属します。映画製作者とは、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者です(第2条第1項第10号)。
Point
誰に著作権が帰属するかを、契約書に書いてください。広告主、代理店、制作会社のうち誰が製作に発意と責任を持つのかは、案件ごとの実態で決まり、条文は「誰が」とは書いていません。
注意
CMの中で使った音楽や原作は、映画の著作物の著作者とは別の著作物です(第16条の括弧書き)。CMの著作権を持っていても、音楽を別の用途に使えるとは限りません。イベントでの音楽の扱いはイベントでの音楽利用と著作権にあります。
出演者の権利は、素材の権利とは別
俳優、歌手など実演を行う者は「実演家」で、実演を録音し、又は録画する権利を専有します(第91条第1項)。第2項は、許諾を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、録音物に録音する場合を除き、第1項を適用しないとしています。
注意
出演料や、媒体・期間ごとの使用条件は、著作権法の条文ではなく出演契約で決まります。肖像の利用についても著作権法に規定はありません。CMの素材をSNSや店頭に広げるなら、出演契約で使ってよい媒体・期間・地域を確認してください。キャスティングの段取りはキャスティングとはにあります。
発注する側・受ける側、それぞれの注意点
| 発注する側(広告主・代理店) | 受ける側(制作会社・クリエイター) | |
|---|---|---|
| 契約前 | 使いそうな媒体・期間・地域・改変を、先に全部挙げて見積を取る | 許諾か譲渡か、どこまでの範囲かを見積書と契約書に書く |
| 譲渡を受ける・渡すとき | 第27条・第28条の権利を特掲する | 特掲の有無で、加工後の作品の扱いが変わることを先に説明する |
| あとから広げるとき | 使う前に、範囲の外かどうかを契約書で確認し、外なら許諾を取り直す | 追加の範囲と条件を書面で示す |
| 起きやすい行き違い | 「買い取ったから自由に使える」と思い込む | 「二次利用料」とだけ言い、どの範囲の対価かを示さない |
注意
制作会社やフリーランスに発注するときは、取引のルール(条件の明示など)を定めた法律もあります。下請法(現 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)とフリーランス法の要点は制作会社・フリーランスへの発注と下請法にまとめています。
契約書に書いておくこと(チェックリスト)
- 許諾か譲渡か——どちらの契約なのかをはっきり書く
- 媒体——テレビ、ウェブ、SNS、屋外、店頭、印刷物など。あとで使いそうな媒体まで
- 期間と地域——いつまで、どこで使えるか。期限が切れたあとの扱い(掲載を止めるか、延長するか)も
- 改変の範囲——トリミング、尺の変更、文字入れ。同一性保持権(第20条)との関係
- 譲渡なら、第27条・第28条の権利を特掲する——書かないと譲渡した側に留保されたものと推定される(第61条第2項)
- 著作者人格権を行使しないこと——譲渡はできない(第59条)ので、契約で取り決める
- 他社に使わせるか——販売店・グループ会社などに使わせるなら、その相手と範囲を書く
- CMや動画なら、著作権の帰属先——映画製作者が誰か(第29条)
- 出演者・音楽・原作は別の契約——それぞれの使用条件を確認する
- 範囲の外で使うときの手続き——誰に、どう申し出て、対価をどう決めるか
- 撮影前に関係者でそろえる——使う予定の媒体・期間・地域をPPMの議題に入れる(PPMとは)
そのまま使える例文
下は書き方の例です。案件に合わせて直し、最終的な契約書は弁護士などの専門家に確認してください。
契約条項の例
| 目的 | 条項の例 |
|---|---|
| 許諾の範囲を決める | 乙は甲に対し、本件素材を次の範囲で利用することを許諾する。媒体:テレビ、甲の運営するウェブサイト及びSNS公式アカウント。期間:〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで。地域:日本国内。 |
| 範囲の外の利用 | 甲が前項の範囲を超えて本件素材を利用するときは、事前に乙に書面で申し出て、利用の条件及び対価を協議のうえ定める。 |
| 期間が終わったあと | 利用期間の満了後、甲は新たな掲出を行わない。満了日までに掲出したもののうち、甲の管理下にあるものは〇日以内に取り下げる。 |
| 改変の範囲 | 甲は、本件素材の利用にあたり、トリミング、尺の短縮、文字及びロゴの挿入を行うことができる。これ以外の改変は、乙の事前の承諾を得て行う。 |
| 譲渡で翻案権を含める | 乙は甲に対し、本件成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を譲渡する。 |
| 人格権の扱い | 乙は甲及び甲の指定する者に対し、本件成果物について著作者人格権を行使しない。 |
| 他社に使わせる | 甲は、甲の販売代理店に対し、本条の範囲内で本件素材を利用させることができる。 |
確認・依頼メールの例
件名:〇〇キャンペーン素材の追加利用についてのご相談
〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇の〇〇です。
〇月に納品いただいたテレビCM素材について、ウェブ広告とSNS広告でも使用したいと考えております。契約書では媒体がテレビのみとなっておりますので、追加のご許諾をいただけますか。
・追加したい媒体:自社サイト、SNS広告
・期間:〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日
・地域:日本国内
・改変:尺の短縮、字幕の追加
条件とお見積をご提示いただけますと幸いです。出演者の方の使用条件についても、あわせてご確認をお願いいたします。
件名:素材の利用範囲の確認のお願い
〇〇様
お世話になっております。〇〇の〇〇です。
来月の展示会で、昨年のイベントで撮影いただいた写真をパネルに使用したいと考えております。この使い方が契約の範囲に含まれるか、ご確認いただけますか。含まれない場合は、追加の条件をご相談させてください。
(受ける側から)件名:お見積の利用範囲について
〇〇様
お見積をお送りします。本見積の金額は、テレビでの放送(〇年〇月〇日〜〇年〇月〇日、日本国内)での利用を前提としています。ウェブやSNSでのご利用をご予定の場合は、範囲を追加したお見積をお出ししますので、お知らせください。
よくある失敗
- 「二次利用可」とだけ書く——どの媒体・期間・地域まで含むかで解釈が分かれる
- 「著作権を譲渡」とだけ書く——翻案権などは譲渡した側に残ると推定される(第61条第2項)
- 素材の権利だけ確認して、出演者を忘れる——出演者の使用条件は出演契約で別に決まる
- CMの音楽をそのまま別の動画に使う——音楽はCMとは別の著作物
- 期限切れの素材がサイトやSNSに残る——期間を台帳で管理し、満了前に止めるか延長する
- 販売店に素材を渡して自由に使わせる——自社が使う前提の許諾なら、範囲の外になりうる
この記事の要点
- 二次利用とは、最初に決めた媒体・期間・地域・用途の外で素材を使うこと。法律上の定義はない。
- 許諾で使えるのは「利用方法及び条件の範囲内」だけ(第63条第2項)。範囲の外なら許諾を取り直す。
- 著作権の譲渡でも、第27条・第28条の権利は特掲しないと、譲渡した側に残ると推定される(第61条第2項)。
- 著作者人格権は譲渡できない(第59条)。改変の範囲は契約で合意しておく。
- CMや動画は「映画の著作物」に当たりうる。帰属先を契約書に書く。出演者・音楽は別に確認する。
FAQ
よくある質問
最初に予定していた媒体・期間・地域・用途を超えて、写真・映像・デザインなどの素材を使うことです。著作権法に「二次利用」という言葉の定義はありません。条文の上で問題になるのは、利用の許諾を受けた範囲(第63条第2項は「その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において」利用できると定めています)と、著作権の譲渡を受けた範囲です。
許諾で使っている場合は、許諾に係る利用方法と条件の範囲内に限られます(著作権法第63条第2項)。媒体、期間と地域、改変の範囲を契約書に書いておかないと、別の媒体に広げるたびに確認が必要になります。出演者・音楽・原作の権利は、素材とは別の契約で確認します。
広告やデザインの現場では、どちらも最初の範囲の外で使うことの意味で使われています。なお著作権法第95条の「商業用レコードの二次使用」は、商業用レコードを放送に使ったときに実演家へ二次使用料を支払う仕組みで、広告素材の使い回しとは別の話です。
著作権法には「二次利用」という言葉の定義はありません。関わるのは、複製権(第21条)、公衆送信権(第23条)、翻案権など(第27条)、二次的著作物の利用に関する権利(第28条)といった、使い方ごとの権利です。どの権利を、どの範囲で許諾または譲渡したかを契約書で確認します。
契約の書き方によります。第61条第2項は、著作権を譲渡する契約で第27条または第28条の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定するとしています。さらに第59条により著作者人格権は譲渡できないため、意に反する改変については同一性保持権(第20条)の問題が残りえます。
条文は「広告主」「制作会社」という区分では決めていません。CMは「映画の著作物」に当たりうるため、第29条第1項により、著作者が映画製作者に対して製作への参加を約束しているときは、著作権は映画製作者に帰属します。映画製作者は「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」(第2条第1項第10号)で、誰が当たるかは実態で決まります。帰属を契約書に明記してください。
出演契約で決めた範囲によります。著作権法第91条第2項は、許諾を得て映画の著作物に録画された実演について、録音物に録音する場合を除き実演家の録音権・録画権を適用しないとしていますが、出演料や媒体・期間の使用条件は出演契約で決まります。肖像の利用についても著作権法に規定はないため、出演契約で確認してください。
この記事では相場を示していません。条文に定めはなく、案件ごとの契約で決まるものだからです。期間・媒体・地域を契約書に書き、期限が切れたあとの扱いと、範囲の外で使うときの申し出の手続きまで決めておくことが大切です。
撮影を依頼したときの契約で、翌年の告知という用途と期間が含まれているかを確認してください。含まれていなければ、撮影者に追加の許諾を相談します。写っている参加者や登壇者の扱いは、撮影時の告知や個別の同意の内容もあわせて確認します。