敬語
「存じます」の意味と使い方
場面別の例文と「存じ上げます」との違い
結論:「存じます」は「思います」と「知っています」を、自分をへりくだって言う言い方です。取引先・お客様・上司への文章で使えます。迷ったら次の三つの形を覚えておけば足ります。
・考えやお願いを伝える:「〜と存じます」「〜いただきたく存じます」
・物事を知っている:「その件は存じております」(人なら「存じ上げております」)
・相手に尋ねる:「ご存じでしょうか」(「存じる」は相手には使いません)
このページでは、場面別にそのまま使える一文とメール例文、「存じ上げます」「ご存じ」との違いの表、言い換え、送る前のチェックリストをまとめました。
結論
「存じる」は「思う」「知る」を自分の側の動作としてへりくだって言う言葉(謙譲語)で、丁寧語の「ます」を付けた「存じます」の形でよく使います。知っている対象が人のときは、その人を立てて「存じ上げます」とすることが多く、相手が知っていることは尊敬の形の「ご存じ」で表します。
「存じます」の意味は「思う」と「知る」の二つ
| 意味 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 思う・考える・願う | 〜と存じます/〜たく存じます/〜に存じます | A案がよいと存じます/ご確認いただきたく存じます/ありがたく存じます |
| 知っている | 存じております | その件は存じております |
| 知らない | 存じません/存じておりません | あいにく存じません |
どちらの意味でも、主語は自分(または自分の側)です。相手が知っている・思っていることを言うときは、「ご存じ」「お考え」など、相手を立てる言い方に切り替えます。
Point
「存じる」は自分の側、「ご存じ」は相手の側。「存じていますか」とは聞かず、「ご存じでしょうか」と尋ねます。
そのまま使える一文(場面別)
メールの本文にそのまま入れられる一文を、場面ごとに並べました。◯◯は自分の状況に置き換えてください。
考え・意見を伝える
- スケジュールの面から、A案で進めるのがよいと存じます。
- 現時点では、◯◯を優先するのが妥当と存じます。
- ご事情は理解しておりますが、今回は見送るのがよいと存じます。
- ◯◯様のご意見も伺ったうえで決めたいと存じます。
お願い・希望を伝える
- ◯月◯日(◯)までにご返信いただきたく存じます。
- 一度、直接お話を伺いたく存じます。
- お手数ですが、添付の資料をご確認いただければ幸いに存じます。
- ご都合のよい日時をお知らせいただければと存じます。
お礼・喜びを伝える
- お忙しいなかご対応いただき、ありがたく存じます。
- このような機会をいただき、光栄に存じます。
- 温かいお言葉をいただき、うれしく存じます。
おわび・恐縮を伝える
- 確認が行き届かず、お手を煩わせてしまい申し訳なく存じます。
- たびたびのお願いとなり、恐縮に存じます。
- ご期待に沿えず、心苦しく存じます。
知っている・知らないを伝える
- その件は、担当の◯◯から聞いて存じております。
- ◯◯様のお名前は、以前から存じ上げております。
- あいにく、その点は詳しく存じません。
- 申し訳ございません、その方は存じ上げておりません。
- すでにご存じかと存じますが、念のためお知らせいたします。
注意
「ありがたく」「うれしく」「申し訳なく」のように、気持ちを表す言葉は「〜く存じます」、「光栄」「恐縮」のような言葉は「〜に存じます」の形になります。
「存じます」「存じ上げます」「ご存じ」の違い
| 言い方 | 誰の動作か | 対象 | 例 |
|---|---|---|---|
| 存じております | 自分 | 物事・事情・場所 | その件は存じております |
| 存じ上げております | 自分 | 人(相手や相手側の人物) | ◯◯様のことは存じ上げております |
| 存じません | 自分 | 物事 | あいにく詳しくは存じません |
| 存じ上げません | 自分 | 人 | 申し訳ございません、存じ上げませんでした |
| 〜と存じます | 自分 | 考え・願い | A案がよいと存じます |
| ご存じです(か) | 相手 | 物事・人 | ◯◯の件はご存じでしょうか |
「存じ上げる」は、知っている相手の人物そのものを立てる言い方なので、人について使います。物事について「その件は存じ上げております」と書くと、大げさだと感じる人もいます。物事には「存じております」で十分です。
注意
「思う」の意味で使うときは、「存じ上げます」にはしません。「〜と存じます」「〜いただければと存じます」の形で使います。
使える場面・使わないほうがよい場面
| 場面 | 使い方 | 代わりに使う言葉 |
|---|---|---|
| 取引先に、事情を把握していると伝える | 存じております | 承知しております |
| 取引先の担当者を知っていると伝える | 存じ上げております | ― |
| 提案の中で自分の考えを述べる | 〜と存じます | 〜と考えております |
| お願いの結びを和らげる | 〜いただければ幸いに存じます | 〜いただけますと幸いです |
| 相手が知っているかを尋ねる | 使わない | ご存じでしょうか |
| 社外に、自社の上司も知っていると伝える | 使える(例:弊社の◯◯も存じております) | ― |
| 社内チャット・同僚とのやりとり | かしこまりすぎることがある | 知っています/思います |
注意
社外の人に自社の上司のことを話すときは、上司も自分の側なので「存じております」が使えます。反対に、社内で上司本人について話すときは「部長もご存じです」と相手を立てる形にします。
場面別のメール例文
提案の中で自分の考えを伝える
件名:◯◯の進め方についてのご提案
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日ご相談いただいた◯◯の進め方について、案を二つにまとめました。
スケジュールと費用の面から、A案で進めるのがよいと存じます。
詳しくは添付の資料をご覧ください。ご不明な点がございましたら、お気軽にお知らせください。
お願いの結びを和らげる
件名:◯◯資料のご確認のお願い
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の資料を添付いたしました。
お忙しいところ恐縮ですが、◯月◯日(◯)までにご確認いただければ幸いに存じます。
打ち合わせのお礼を伝える
件名:本日のお打ち合わせのお礼
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日はお忙しいなかお時間をいただき、ありがたく存じます。
いただいたご意見をもとに資料を見直し、◯月◯日(◯)までにお送りいたします。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
納品の遅れをおわびする
件名:◯◯納品遅延のおわび
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の納品が当初お伝えした日に間に合わず、申し訳なく存じます。
◯月◯日(◯)には必ずお届けできるよう、社内で手配を進めております。
今後は進み具合を早めにお知らせするようにいたします。
紹介を受けて、面識のない相手に初めて連絡する
件名:◯◯様のご紹介でご連絡いたしました(株式会社△△ □□)
株式会社◯◯
◯◯様
突然のご連絡失礼いたします。株式会社△△の□□と申します。
◯◯社の◯◯様からご紹介をいただき、ご連絡いたしました。
◯◯様のお名前は、業界誌の記事で以前から存じ上げておりました。
一度、◯◯についてお話を伺いたく存じます。
問い合わせに、すぐには答えられないと返す
件名:Re:◯◯についてのお問い合わせ
◯◯様
お問い合わせいただき、ありがとうございます。株式会社△△の□□です。
お尋ねの◯◯について、あいにく私は詳しく存じておりません。
担当の◯◯に確認のうえ、◯月◯日(◯)までに改めてご連絡いたします。
お待たせして恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
相手がすでに知っていそうなことを念のため伝える
件名:◯◯の受付時間変更のお知らせ
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
すでにご存じかと存じますが、◯月◯日(◯)より、◯◯の受付時間が変わります。
念のため、変更後の時間を下記にお知らせいたします。
・受付時間:◯時から◯時まで
社外に、自社の上司も事情を把握していると伝える
件名:Re:◯◯の納期について
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご連絡いただいた納期の件は、弊社の部長の◯◯も存じております。
社内で対応を相談のうえ、本日中にお返事いたします。
社内の上司へのチャット(かしこまりすぎない形)
◯◯部長
◯◯社の件、先方の事情は把握しています。
今回はB案で進めるのがよいと考えていますが、いかがでしょうか。
注意
社内のチャットでは「存じます」を使わず、「把握しています」「考えています」で十分なことが多いです。結びの「幸いです」と「幸いに存じます」の違いは「幸いです」の使い方、前置きの言葉は「恐縮ですが」「恐れ入りますが」の使い分けも参考にしてください。
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
「思う」の言い換え
| 言い方 | ニュアンス | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 〜と存じます | 改まった言い方で控えめに伝える | 取引先・お客様への提案や意見 |
| 〜と考えております | 改まった言い方。意見がはっきりしているとき | 方針・判断の説明 |
| 〜する所存です | 自分の意志・決意を改まって述べる | 就任・異動のあいさつ、決意表明 |
| 〜と思っております | 丁寧 | 上司・取引先への日常的な連絡 |
| 〜と思います | 標準(丁寧語) | 社内の会話・チャット |
「知っている」の言い換え
| 言い方 | ニュアンス | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 存じ上げております | 最も改まった言い方(人について) | 取引先の人物・目上の人を知っている |
| 存じております | 改まった言い方 | 社外への連絡、上司への報告 |
| 承知しております | 事情や依頼の内容を分かって受け止めている | 依頼や条件を理解していると伝える |
| 心得ております | やり方や事情を理解し、身につけている | 手順・決まりを分かっていると伝える |
| 知っております | 丁寧 | 社内の上司との会話 |
相手の気持ち・事情を推し量るとき
| 言い方 | ニュアンス | 例 |
|---|---|---|
| お察しいたします | 相手の気持ちや苦労を思いやる | ご心労のほど、お察しいたします |
| 拝察いたします | 相手の事情を推し量ることを、より改まって言う | ご多忙のことと拝察いたします |
単に知っているだけなら「存じております」、頼まれたことを了解したなら「承知いたしました」と分けると伝わりやすくなります。返信の書き方は「承知しました」メールの例文にまとめています。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| ◯◯様のことをご存じ上げております | 相手を立てる「ご存じ」と、自分をへりくだる「存じ上げる」が混ざっている | ◯◯様のことは存じ上げております |
| この件、存じていますか | 「存じる」は自分の側に使う言葉で、相手に尋ねる形には合わない | この件はご存じでしょうか |
| その資料のことは存じ上げております | 物事に「存じ上げる」を使うと大げさだと感じる人もいる | その資料のことは存じております |
| A案がよいと存じ上げます | 「思う」の意味に「存じ上げる」は使わない | A案がよいと存じます |
| (社内で)部長も存じています | 社内で上司本人を話題にするなら、上司を立てる形が合う | 部長もご存じです |
| 一通の中で「〜と存じます」を何度も | くどく、言いたいことがぼやける | 大事な一か所だけにし、ほかは「〜と考えております」「〜です」 |
表記は「ご存じ」「ご存知」のどちらも見かけます。社内の文書やテンプレートでは、どちらかにそろえておくと読みやすくなります。
「ご存じでしょうか」と聞かれたときの返事
知っているときは「存じております」、人なら「存じ上げております」と返し、どの程度知っているかを一言添えます。知らないときは「あいにく存じません」と正直に伝え、確認の段取りを書きます。
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
お尋ねの◯◯の件は、あいにく存じませんでした。
お知らせいただき、ありがとうございます。社内でも確認し、必要な対応がございましたら改めてご連絡いたします。
名前を挙げられた人物に心当たりがないときは、「申し訳ございません、存じ上げておりません」と返し、「どちらでご一緒した方でしょうか」と穏やかに確認します。
送る前のチェックリスト
- 「存じます」の主語が自分(または自分の側)になっている
- 相手が知っているかを尋ねる文は「ご存じでしょうか」にしている
- 人を知っていると伝えるときだけ「存じ上げております」にしている
- 「思う」の意味で「存じ上げます」と書いていない
- 「ご存じ上げる」のように尊敬と謙譲を混ぜていない
- 「〜と存じます」は一通に一、二か所にとどめている
- 社内チャットでは「思います」「把握しています」で足りないか見直した
この記事の要点
- 「存じます」は「思います」「知っています」をへりくだって言う言い方。
- 考え・お願い・お礼・おわびは「〜と存じます」「〜たく存じます」「ありがたく存じます」「申し訳なく存じます」。
- 知っている相手が人なら「存じ上げております」、物事なら「存じております」。
- 相手が知っているかを尋ねるときは「ご存じでしょうか」。「存じていますか」とは言わない。
- 使うのは一通に一、二か所で十分。「ご存じ上げる」のように尊敬と謙譲を混ぜない。
FAQ
よくある質問
「思います」「知っています」を、自分をへりくだって言う言い方です。「〜と存じます」は考えや願いを控えめに伝える形、「存じております」は知っていることを伝える形です。
どちらも「知っている」をへりくだって言う言い方ですが、「存じ上げます」は知っている対象が人のときに使います。物事には「存じております」を使います。「思う」の意味では「存じ上げます」は使いません。
使えます。取引先・お客様・上司への文章で、自分が知っていること、考えていることを控えめに伝える言い方です。社内の気軽なチャットでは、かしこまりすぎることがあります。
「ご存じでしょうか」「ご存じですか」と尋ねます。「存じる」は自分の側に使う言葉なので、相手に向けて「存じていますか」とは言いません。
使えます。お礼なら「ありがたく存じます」「光栄に存じます」、おわびなら「申し訳なく存じます」「恐縮に存じます」の形になります。
「存じております」は知っていること、「承知しております」は事情や依頼の内容を分かったうえで受け止めていることを表します。頼まれたことを了解したと伝えるなら「承知いたしました」が合います。
失礼ではありません。人を知らないことを丁寧に伝える言い方です。「申し訳ございません」を添えると、より柔らかく伝わります。