ビジネス用語
「鑑みる」の意味と使い方
例文30と「を鑑みて」の扱い
結論:「鑑みる(かんがみる)」は、先例や今の状況に照らし合わせて考えることです。使い方は「◯◯に鑑み(て)、△△とする」の一つの型で足ります。◯◯に判断の理由、△△に決めたことを入れます。
例:「昨今の状況に鑑み、今年の懇親会は見送ることといたしました。」
押さえる点は三つ。①助詞は「に」(法令もこの形)、②理由と結論を必ずセットで書く、③口頭やチャットでは「踏まえて」に言い換える。このページでは、場面別にそのまま使える例文30、言い換えの使い分け表、送信前のチェックリストをまとめました。
結論
「鑑みる」は、手本や先例、現在の状況などに照らして、よく考えることを表す言葉です。読みは「かんがみる」。常用漢字表では「鑑」の訓として「かんがみる」が挙げられ、語例に「鑑みる」が載っています。
「鑑みる」の意味・由来・活用
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方 | かんがみる |
| 意味 | 先例・手本・現在の状況などに照らし合わせて考えること |
| 基本の形 | ◯◯に鑑み、△△とする/◯◯に鑑みて、△△する |
| 使う場面 | 社内通知、取引先へのお知らせ、お詫び状、稟議書、規程、報告書など判断の理由を改まって述べる文書 |
| 避けたい場面 | 雑談、チャット、くだけた会話(硬く聞こえる) |
| 言い換え | 踏まえて/考慮して/照らして/勘案して |
「鑑」はかがみ(手本・模範)を表す字で、「年鑑」「図鑑」「鑑定」などにも使われます。「鑑みる」はかがみに照らして見る、つまり手本や先例と照らし合わせて考えることから来た言葉だと説明されます。古くは「かがみる」とも言い、のちに「かんがみる」の形が広く使われるようになったと説明されます。
法令の文章にも多く見られ、たとえば個人情報保護法の基本理念を定めた条文は「慎重に取り扱われるべきものであることに鑑み」という形で書かれています。ビジネス文書でも、この「〜に鑑み」の形にそろえておけば迷いません。
活用(形の変え方)
| 形 | 例 |
|---|---|
| 鑑み(文の途中で区切る) | 状況に鑑み、開催を延期いたします |
| 鑑みて | 前回の結果に鑑みて、手順を見直します |
| 鑑みると | これまでの経緯に鑑みると、早めの連絡が必要です |
| 鑑みれば | 実績に鑑みれば、今回の判断は妥当です |
| 鑑みた | 利用状況に鑑みた結果、料金を改定いたします |
| 鑑みる(言葉を修飾) | 過去の事例に鑑みる必要があります |
注意
文書では「鑑みました」で文を終えるより、「鑑み、◯◯します」と後ろに結論を続けるほうが、何を決めたのかがすぐ伝わります。
そのまま使える例文30(場面別)
社内通知・お知らせ(6)
業務の繁忙状況に鑑み、今年度の全社忘年会は見送り、各部署での開催に切り替えることといたしました。
昨今の感染症の流行状況に鑑み、来週の全体会議はオンラインで行います。
情報漏えいの事案が他社で相次いでいることに鑑み、社外への資料送付はパスワード付きの共有リンクに統一します。
残業時間が増えている状況に鑑みて、◯月から20時以降の会議を原則禁止とします。
オフィスの利用率に鑑み、◯階の会議室を◯月末で閉鎖いたします。
台風の接近が予想されることに鑑み、明日は全社で在宅勤務とします。
取引先・顧客へのお知らせ(6)
お問い合わせの増加に鑑み、◯月◯日より、◯◯の受付をメールに一本化することといたしました。
原材料費の高騰が続いている状況に鑑み、誠に勝手ながら◯月◯日ご注文分より価格を改定させていただきます。
安全面に鑑み、当日の会場への車でのご来場はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
多数のお申し込みをいただいている状況に鑑み、受付を◯月◯日で締め切らせていただきます。
ご事情に鑑み、今回に限りお支払い期日を◯月◯日まで延長いたします。
今後の天候の見通しに鑑み、◯月◯日の屋外イベントは中止とさせていただきます。
お詫び・再発防止(4)
今回の発送遅延の重大さに鑑み、出荷前の確認を二重に行う体制に改めました。
同様の誤りが二度続いたことに鑑み、入力作業の手順を全面的に見直しております。
皆さまにご迷惑をおかけしたことに鑑み、当該サービスの月額料金を◯か月分返金いたします。
事態の深刻さに鑑み、責任者である私から直接ご説明に伺いたく存じます。
会議・提案(5)
昨年の来場者の動きに鑑みて、今年は受付を二か所に分けたいと考えています。
前回のトラブルに鑑み、本番前日のリハーサルは必ず行うことにしましょう。
競合の価格帯に鑑みると、今回の見積もりは一段階下げる余地があります。
残りの予算に鑑みて、広告は◯◯に絞って出すことを提案します。
現場の負担に鑑み、導入は一部の部署から段階的に進めるのがよいと考えます。
上司・社内へのメール(3)
件名:◯◯の発注先についてのご相談
◯◯課長
お疲れさまです。□□です。
これまでの納期の実績に鑑みて、次回の◯◯は△△社に発注したいと考えております。
比較の資料を添付しましたので、ご確認いただけますでしょうか。
スケジュールの遅れに鑑み、◯◯の工程を一部外注したいと考えております。ご判断をお願いできますでしょうか。
先方のご要望に鑑みて、提案書の構成を変更いたしました。修正版を添付いたします。
人事・評価・面談(3)
これまでの担当実績に鑑みて、次の案件は◯◯さんにリーダーをお願いしたいと思っています。
本人の希望とこれまでの経験に鑑み、◯月付で営業部への異動とします。
ご家庭の事情に鑑み、当面は時短勤務を認めることといたします。
稟議書・規程・報告書(3)
現行システムの保守期限が近いことに鑑み、新システムの導入を申請いたします。
本規程は、顧客情報が会社の重要な資産であることに鑑み、その取り扱いについて必要な事項を定める。
アンケート結果に鑑みると、次回は開催時間を短くすることが望ましいと考えられます。
注意
例文の◯◯は、言える範囲で具体的な事情に置き換えてください。「諸般の事情に鑑み」だけでは、受け取った人が理由を想像できません。
お知らせ文のテンプレート(コピー用)
中止・変更・値上げなど、受け取る人にとってうれしくない知らせほど「鑑みる」の型が役に立ちます。次の順番で書くと、理由・結論・お願いが抜けません。
件名:【重要】◯◯変更のお知らせ
お取引先各位
平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび、【具体的な理由】に鑑み、【いつから】【何を】【どう変える】ことといたしました。
【変更の内容:箇条書き】
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
ご不明な点は【担当者・連絡先】までお問い合わせください。
- 01理由:「◯◯の状況に鑑み」。事実を一つ、具体的に。
- 02結論:「◯◯することといたしました」。日付と内容をはっきり。
- 03お詫び・お願い:「ご不便をおかけいたしますが」。
- 04問い合わせ先:担当者と連絡方法。
「を鑑みて」と「に鑑みて」どちらが正しい?
Point
文書では「に鑑みて」と書くのが安全です。辞書や法令では「〜に鑑みる」の形が中心で、「を鑑みる」を誤りとする説明もあります。一方で、使われている実態を認める説明もあり、扱いは揺れています。
| 書き方 | 文書での扱い | 直し方の例 |
|---|---|---|
| ◯◯に鑑みて | 問題なし。法令もこの形 | そのまま使う |
| ◯◯を鑑みて | 気にする人がいる | ◯◯に鑑みて/◯◯を踏まえて |
| ◯◯を鑑みると | 同上 | ◯◯に鑑みると/◯◯を考えると |
迷ったときは、「を」を使いたくなったら「踏まえて」に替えると覚えておくと簡単です。「◯◯を踏まえて」は助詞「を」で自然につながります。
言い換え・似た言葉との違い
| 言葉 | 表す内容 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 踏まえて | 前提として考えに入れて | 最も使いやすい言い換え。会話・メールどちらにも |
| 考慮して | 判断の材料として考えに入れて | 社内外のメール全般 |
| 照らして | 基準と比べ合わせて | 「規程に照らして」など基準がはっきりしているとき |
| 勘案して | いろいろな事情を考え合わせて | 複数の要素を並べて判断する硬めの文書 |
| 受けて | ある出来事をきっかけにして | 「◯◯の決定を受けて」など出来事がはっきりしているとき |
| 配慮して | 相手のために気を配って | 相手への気づかいが主。判断の理由を示す「鑑みる」とは向きが違う |
「顧みる」「省みる」とは別の言葉
| 言葉 | 読み | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| 鑑みる | かんがみる | 先例や状況に照らして考える | 前例に鑑み、対応を決める |
| 顧みる | かえりみる | 振り返る、気にかける | 危険を顧みずに救助する |
| 省みる | かえりみる | 自分の言動を反省する | 自らの行動を省みる |
「鑑みる」は判断の前に、先例や状況という「手本」に照らす言葉です。過去を振り返るだけの場面や、反省を表す場面では使いません。
英語で言うと
英語ではin light of 〜、in view of 〜、considering 〜が近い表現です。例:In light of the recent situation, we have decided to postpone the event.(昨今の状況に鑑み、イベントを延期することにしました。)
よくある失敗と直し方
| ありがちな使い方 | 何がよくないか | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 状況に鑑み……。(結論がない) | 何を決めたのかが伝わらない | 状況に鑑み、◯日の説明会を中止いたします |
| 諸般の事情に鑑み | 理由がぼやけて、納得されにくい | 会場の改修工事に鑑み |
| チャットで「進捗に鑑みて〜」 | くだけた場で硬すぎる | 進捗を見て、◯◯にしますね |
| 「かがみる」「かんみる」と読む | 現在の読みは「かんがみる」 | 読みに自信がなければ「踏まえて」と言い換える |
| 過去を振り返る意味で使う | それは「顧みる」 | これまでを顧みると |
| 一つの文書に何度も使う | 硬さが重なって読みにくい | 二回目以降は「踏まえ」「考慮し」に替える |
送信前のチェックリスト
- 助詞は「に鑑み(て)」になっているか
- 「鑑み」の前に具体的な理由が書いてあるか(「諸般の事情」だけになっていないか)
- 「鑑み」の後ろに決めたこと(結論)が続いているか
- 日付・対象など、変更の中身がはっきりしているか
- 相手側の事情を理由にするときは「ご事情に鑑み」と「ご」を付けたか
- 同じ文書の中で「鑑み」を繰り返していないか
- 口頭・チャットなら「踏まえて」に替えたほうが自然ではないか
この記事の要点
- 「鑑みる」は先例や状況に照らして考えること。読みは「かんがみる」。
- 型は「◯◯に鑑み(て)、△△とする」。理由と結論をセットで書く。
- 「を鑑みて」は扱いが揺れるので、文書では「に鑑み」。「を」を使いたいなら「踏まえて」。
- 「顧みる」「省みる」は別の言葉。振り返り・反省には使わない。
- 口頭・チャットでは「踏まえて」「考えて」のほうが自然。
FAQ
よくある質問
「かんがみる」と読みます。常用漢字表でも「鑑」の訓として「かんがみる」が挙げられています。
「これまでの例や今の状況をよく見て考える」という意味です。会話なら「◯◯を踏まえて」「◯◯を考えて」と言えば同じ内容が伝わります。
辞書や法令では「〜に鑑みる」の形が中心で、「を鑑みる」を誤りとする説明もあります。一方で使われている実態を認める説明もあり、扱いは揺れています。文書では「に鑑みて」と書くのが無難です。
使えます。判断の理由を述べる改まった言葉なので、上司への提案や取引先へのお知らせにも使えます。会話では硬く聞こえやすいので「踏まえて」に言い換えるとなじみます。
「状況に鑑みまして、◯◯いたします」のように丁寧に言う人もいますが、文書では「状況に鑑み、◯◯いたします」と後ろの結論を丁寧にすれば十分です。
違います。「顧みる(かえりみる)」は振り返る、気にかけるという意味です。「鑑みる」は先例や状況に照らして考えるという意味で、使う場面が異なります。
「踏まえて」「考慮して」「照らして」「勘案して」などがあります。いちばん使いやすいのは「踏まえて」です。
in light of 〜、in view of 〜、considering 〜 が近い表現です。