敬語
「恐れ多い」と「恐縮」の違い
褒められたとき・大役を任されたときの使い分け
「恐れ多い」と「恐縮」は、どちらも相手の厚意を前にへりくだる気持ちを表しますが、向く相手が違います。「恐れ多い」は、社長・会長・来賓など立場がずっと上の人からの言葉や厚意を「自分にはもったいない」と受け止める言葉、「恐縮」は取引先や上司など幅広い相手へのお礼やお詫びに使える言葉です。褒められたときにそのまま使える一文は、ふだんなら「お褒めいただき恐縮です。」、立場の差が大きい相手なら「恐れ多いお言葉をいただき、ありがとうございます。」。お願いの前置きとしての「恐縮ですが」は「恐縮ですが」と「恐れ入りますが」の違いで扱っているので、このページでは褒められた・厚意を受けたときの受け止め方に絞って使い分けを解説します。
結論
「恐れ多い(おそれおおい)」は、身分や立場の高い人に対して失礼にあたりそうで申し訳ない、もったいなくてありがたいと感じる気持ちを表す形容詞です。「恐縮(きょうしゅく)」は恐れて身が縮む思いのことで、相手の厚意や手間に対する感謝や申し訳なさを表します。
「恐れ多い」と「恐縮」の意味
「恐れ多い」は、相手が自分よりはるかに上の立場にあることが前提の言葉です。そのような人から褒められたり、目をかけてもらったりしたときに、「自分にはもったいない」という気持ちを込めて使います。「畏れ多い」とも書き、敬い、かしこまる気持ちを強く出したいときは「畏」の字が使われることもあります。
「恐縮」は、相手の厚意や手間に対してありがたく、申し訳なく思う気持ちです。立場の差を問わず使えるので、取引先へのお礼、上司からのねぎらい、お客様からの褒め言葉など、ビジネスの幅広い場面で使えます。
Point
立場の差が大きい相手には「恐れ多い」、ふだんの目上には「恐縮」。迷ったら「恐縮です」を選べば大げさになりません。
違いと使い分け
| 恐れ多い | 恐縮 | |
|---|---|---|
| 向く相手 | 社長・会長・来賓・大先輩など、立場がずっと上の人 | 取引先・上司・お客様など目上全般 |
| 気持ちの中心 | もったいない、身に余る | ありがたい、申し訳ない |
| 使う場面 | 褒められた、大役を任された、厚遇を受けた | お礼、褒め言葉への返し、お詫び、お願いの前置き |
| 言葉の重さ | 重い(使う相手を選ぶ) | 中くらい(幅広く使える) |
| 定型の言い方 | 恐れ多いお言葉です/恐れ多いことでございます | 恐縮です/恐縮しております |
同じ「褒められた」場面でも、相手との立場の差で言葉を選びます。直属の上司やなじみの取引先に「恐れ多いです」と返すと、大げさに聞こえたり、かえって距離を置かれたように感じさせたりすることがあります。ふだんの目上には「恐縮です」「ありがとうございます」で十分です。
褒められたときに謙遜して返す言葉は、「とんでもございません」の使い方にもまとめています。
使える場面・使わないほうがよい場面
| 場面 | 合う言葉 | 例 |
|---|---|---|
| 社長・会長から直接ねぎらいの言葉をもらった | 恐れ多い | 恐れ多いお言葉をいただき、ありがとうございます |
| 式典で大役(祝辞・代表あいさつ)を任された | 恐れ多い/身に余る | 私には恐れ多いお役目ですが |
| 取引先の担当者に仕事を褒められた | 恐縮 | お褒めいただき恐縮です |
| 上司に食事をごちそうになった | 恐縮 | ごちそうになり恐縮です |
| お客様からお礼の品をいただいた | 恐縮 | お心遣いをいただき恐縮しております |
| お願いや質問の前置き | 恐縮(恐れ多いは合わない) | お忙しいところ恐縮ですが |
| 同僚・後輩に褒められた | どちらも大げさ | ありがとう、うれしいです |
注意
「恐れ多い」は、ふだんのお願いの前置きには向きません。「恐れ多いのですが、ご確認いただけますか」とすると、用件の軽さに比べて言葉が重く、大げさに聞こえます。前置きには「恐縮ですが」「恐れ入りますが」を使います。
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
| 言い方 | 丁寧さ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 身に余るお言葉を賜り、恐縮至極に存じます | 特に改まった言い方 | 式典のあいさつ・役員への書状 |
| 恐れ多いお言葉をいただき、ありがとうございます | 改まった言い方 | 社長・会長・来賓からの言葉への返し |
| もったいないお言葉をいただき、ありがとうございます | 改まった言い方(やわらかい) | 大先輩・恩師からの言葉への返し |
| お褒めいただき、恐縮です | 丁寧 | 取引先・上司への返し |
| 光栄です | 丁寧 | 選ばれた・招かれたことを喜ぶとき |
| ありがとうございます、励みになります | 丁寧(やわらかい) | ふだんの上司・取引先 |
「光栄です」は名誉に思う喜びを表す言葉で、へりくだる意味は弱めです。「身に余る」と組み合わせて「身に余る光栄です」とすると、謙虚さと喜びの両方が伝わります。
場面別のメール例文
社長から直接ねぎらいのメールをもらったとき
件名:Re:◯◯プロジェクトの件
◯◯社長
◯◯部の□□です。
お忙しいなか、直接お言葉をいただき、ありがとうございます。
私には恐れ多いお言葉ですが、チームの皆にも伝え、今後の励みにしたいと思います。
引き続き、精一杯取り組んでまいります。
式典の代表あいさつを任されたとき
件名:Re:創立記念式典での代表挨拶について
◯◯部長
お疲れさまです。□□です。
創立記念式典での社員代表挨拶のお話、承知いたしました。
私には恐れ多いお役目ですが、精一杯務めます。
原稿の案ができましたら、◯月◯日(◯)までにお目通しをお願いできますでしょうか。
取引先の担当者に仕事を褒められたとき
件名:Re:◯◯の納品について
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
仕上がりについてお褒めの言葉をいただき、恐縮です。
◯◯様に細かくご指示をいただいたおかげで、形にすることができました。
今後ともよろしくお願いいたします。
上司にごちそうになった翌日のお礼
件名:昨日のお礼
◯◯課長
お疲れさまです。□□です。
昨日はすっかりごちそうになり、恐縮しております。ありがとうございました。
伺った◯◯のお話は、来月の企画で早速生かしたいと思います。
取引先の会長から手紙をいただいたとき(返信の手紙)
拝復 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
このたびは、ご丁寧なお手紙を賜り、誠にありがとうございました。
弊社の取り組みにまで温かいお言葉をいただき、恐れ多く存じます。
今後とも変わらぬご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。
敬具
お客様からお礼の品をいただいたとき
件名:お心遣いへのお礼
◯◯様
いつもありがとうございます。株式会社△△の□□です。
本日、お心のこもったお品をお送りいただき、恐縮しております。
スタッフ一同で、ありがたく頂戴いたします。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
注意
大勢の前で話す受賞や表彰のあいさつでは、「身に余る光栄」「恐れ多いこと」といった言葉が使われることがあります。あいさつの組み立ては受賞スピーチの例文を参考にしてください。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 恐れ多いのですが、ご確認いただけますか | ふだんのお願いの前置きに「恐れ多い」は重すぎる | 恐れ入りますが、ご確認いただけますでしょうか |
| (直属の上司に)恐れ多いです | 立場の差に比べて言葉が重く、大げさに聞こえることがある | 恐縮です/ありがとうございます |
| 恐縮させていただきます | 「させていただく」を付ける必要がなく、くどく聞こえる | 恐縮です/恐縮しております |
| 大変恐縮でございますが、ありがとうございます | 前置きの形とお礼が噛み合わない | 大変恐縮です。ありがとうございます |
| 一通の中で「恐縮」を何度も | へりくだりが重なり、かえって不自然 | お礼の箇所で一度だけ |
「恐縮です」「恐れ多い」と返されたときの返事
褒めた相手から「恐縮です」と返ってきたら、それ以上へりくだり合う必要はありません。褒めた理由を一言添えて、これからに期待するくらいで十分です。
□□さん
ご丁寧にありがとうございます。
今回の段取りは本当に助かりました。次の案件でもよろしくお願いします。
自分が立場の上の側で、相手から「恐れ多い」と返されたときも同じで、「そんなにかしこまらなくて大丈夫ですよ」と軽く受けると、相手の緊張がほぐれます。
この記事の要点
- 「恐れ多い」は立場がずっと上の人の言葉や厚意を「もったいない」と受け止める言葉。
- 「恐縮」は目上全般へのお礼・褒め言葉への返し・お詫びに使える。
- 迷ったら「恐縮です」。直属の上司に「恐れ多い」は大げさに聞こえることがある。
- ふだんのお願いの前置きは「恐縮ですが」「恐れ入りますが」。「恐れ多い」は重すぎる。
- 式典や大役には「身に余る」「光栄です」と組み合わせると謙虚さと喜びが伝わる。
FAQ
よくある質問
どちらの表記も使われます。ビジネスの文書では「恐れ多い」と書くことが多く、敬いかしこまる気持ちを強く出したいときに「畏れ多い」と書くこともあります。
失礼ではありませんが、直属の上司やふだん接する目上の人には大げさに聞こえることがあります。「恐縮です」「ありがとうございます、励みになります」が使いやすい返しです。
社長・会長・来賓・大先輩など、自分との立場の差が大きい相手に使います。そうした人から褒められたり、大役を任されたりしたときに「自分にはもったいない」という気持ちを表します。
使えます。「ごちそうになり恐縮です」「お心遣いをいただき恐縮しております」のように、ありがたさと申し訳なさをあわせて伝えられます。あとに「ありがとうございます」を続けると、お礼の気持ちがよりはっきりします。
ふだんのお願いには向きません。言葉が重く大げさに聞こえるので、前置きには「恐縮ですが」「恐れ入りますが」を使います。