敬語
「御社」と「貴社」の違い
話すなら御社、書くなら貴社
結論:話すときは「御社(おんしゃ)」、書くときは「貴社(きしゃ)」。どちらも相手の会社を敬って言う言葉で、意味は同じです。面接・電話・オンライン会議は「御社」、メール・履歴書・エントリーシート・送付状は「貴社」。声に出すか、字で読ませるかだけで決められます。このページでは、場面別の早見表、そのまま使える例文(就職・転職活動と取引先の両方)、銀行や学校など相手別の言い方、言い間違えたときの直し方、送信前のチェックリストをまとめました。
結論
「御社」と「貴社」は、どちらも相手の会社を指す尊敬の言い方です。話し言葉では「御社」、書き言葉では「貴社」と使い分け、自分の会社は社外の相手に対して「弊社」とへりくだって言います。
30秒でわかる使い分け早見表
| 御社(おんしゃ) | 貴社(きしゃ) | 弊社(へいしゃ) | 当社(とうしゃ) | |
|---|---|---|---|---|
| 指すもの | 相手の会社 | 相手の会社 | 自分の会社 | 自分の会社 |
| 使うとき | 話す | 書く | 社外の相手に(話す・書く) | 社内・規約・お知らせ |
| 代表的な場面 | 面接・電話・商談・説明会 | メール・履歴書・ES・送付状 | 取引先へのメール・会話 | 社内会議・社内文書 |
| 敬語の種類 | 相手を高める | 相手を高める | 自分をへりくだる | へりくだりなし |
Point
迷ったときの一問:この言葉は相手の耳に届きますか、目に届きますか。耳なら「御社」、目なら「貴社」です。
なぜ話すときと書くときで分けるのか
「御」も「貴」も、相手に関わるものを敬う気持ちを表す字です。「御社」「貴社」が指すものは変わりません。
話すときに「御社」を使う理由としてよく挙げられるのは、「きしゃ」と声に出すと「記者」「汽車」「帰社」など同じ音の言葉と聞き分けにくいことです。「貴社の記者が汽車で帰社した」と言われたら、耳だけでは区別できません。書くときは字で区別できるので、文書では「貴社」が使われてきました。
注意
これは法令や公的な基準で決まったものではなく、ビジネスの慣習として広く知られた使い分けです。そのため、メールで「御社」と書いても意味は通じます。ただ、この使い分けを知っている読み手は多いので、社外の改まった文面では守っておくのが安全です。
場面別の使い分け
| 場面 | 使う言葉 | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 採用面接(対面・オンライン) | 御社 | 話し言葉 |
| 電話 | 御社 | 話し言葉 |
| 会社説明会・OB/OG訪問での質問 | 御社 | 話し言葉 |
| 商談・打ち合わせ | 御社 | 話し言葉 |
| メール(応募・お礼・取引先) | 貴社 | 書き言葉 |
| 履歴書・職務経歴書・エントリーシート | 貴社 | 書き言葉 |
| 送付状・案内状・契約前の文書 | 貴社 | 書き言葉 |
| 社外とのチャット | 貴社が無難 | 書き言葉。くだけたやり取りでは御社を見かけることもある |
| 録画面接・自己PR動画 | 御社 | 声に出すので話し言葉 |
| 面接で原稿を読み上げる | 御社 | 書いた原稿でも、声に出すなら御社 |
例文:就職・転職活動
面接で志望理由を話す(御社)
御社を志望したのは、◯◯の分野で地域の事業者を支える取り組みに共感したからです。前職で◯◯を担当した経験を、御社の◯◯で生かしたいと考えております。
面接の最後に質問する(御社)
入社までに学んでおくとよいことがあれば教えていただけますか。配属先のチームでは、ふだんどのように仕事を進めていらっしゃるのかも伺えますでしょうか。
面接日程の連絡を電話で受けたとき(御社)
ご連絡ありがとうございます。それでは、◯日◯時に御社の本社へ参ります。当日は、受付で◯◯様のお名前をお伝えすればよろしいでしょうか。
会社説明会・OB/OG訪問で質問する(御社)
本日はありがとうございました。御社では、入社後の配属はどのように決まるのでしょうか。
履歴書・エントリーシートの志望動機(貴社)
貴社の◯◯事業は、利用者の声をもとに改善を重ねている点に魅力を感じました。私が学生時代に取り組んだ◯◯の経験を、貴社の◯◯で役立てたいと考えています。
職務経歴書の自己PR(貴社)
前職では◯◯の立ち上げを担当し、関係部署との調整を進めてまいりました。この経験を、貴社の◯◯部門で生かせると考えております。
応募メール(貴社)
件名:◯◯職への応募(氏名)
株式会社◯◯
採用ご担当者様
求人サイトで貴社の◯◯職の募集を知り、応募のご連絡を差し上げました。
履歴書と職務経歴書を添付いたしますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
面接後のお礼メール(貴社)
件名:本日の面接のお礼(氏名)
株式会社◯◯
人事部 ◯◯様
本日はお忙しい中、面接の機会をいただき、ありがとうございました。
◯◯についてのお話を伺い、貴社で働きたい気持ちが一層強くなりました。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
内定承諾のメール(貴社)
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
貴社からの内定を、謹んでお受けいたします。入社までに必要な手続きがあれば、ご指示いただけますと幸いです。
例文:取引先とのやり取り
メールで日程を尋ねる(貴社)
件名:◯◯のお打ち合わせ日程のご相談
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の件で、一度お打ち合わせの時間をいただきたく存じます。
貴社のご都合のよい日時を、いくつかお知らせいただけますでしょうか。
提案を送る(貴社・弊社)
先日伺った貴社の課題をもとに、◯◯のご提案をまとめました。
弊社でお手伝いできる範囲と進め方を資料に記載しております。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
見積もりを依頼する(貴社)
弊社で◯◯の導入を検討しており、貴社のサービスについてお見積もりをお願いしたくご連絡いたしました。
条件は下記のとおりです。
電話で担当者につないでもらう(御社)
お世話になっております。株式会社△△の□□と申します。
御社の◯◯部で、◯◯をご担当の方にお取り次ぎいただけますでしょうか。
打ち合わせで要望を尋ねる(御社)
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
まず、御社で今いちばんお困りのことから伺えますでしょうか。
相手に「貴社」と言われて返す(弊社)
弊社の◯◯にご関心をお寄せいただき、ありがとうございます。
貴社のご要望に合わせて、ご提案の内容を調整いたします。
相手が自分の会社を「御社」「貴社」と呼んだら、こちらは「弊社」で受けます。相手の言い方に合わせて自分の会社を「御社」と呼ぶことはしません。
相手別の言い方早見表(銀行・学校・病院・役所など)
| 相手 | 話すとき | 書くとき | 言いにくいときの代わり |
|---|---|---|---|
| 会社 | 御社 | 貴社 | ◯◯様(会社名+様) |
| 銀行 | 御行 | 貴行 | ◯◯銀行様 |
| 信用金庫 | 御庫 | 貴庫 | ◯◯信用金庫様 |
| 学校・大学 | 御校 | 貴校・貴学 | ◯◯大学様 |
| 幼稚園・保育園 | 御園 | 貴園 | ◯◯園様 |
| 病院・医院 | 御院 | 貴院 | ◯◯病院様 |
| 官公庁(◯◯庁・◯◯省) | 御庁・御省 | 貴庁・貴省 | そちら様 |
| 市役所・区役所 | 御庁(自治体そのものは御市・御区) | 貴庁(自治体そのものは貴市・貴区) | ◯◯市役所様 |
| 協会・団体 | 御会 | 貴会 | ◯◯協会様 |
| 組合 | 御組合 | 貴組合 | ◯◯組合様 |
| 法人(財団・機構など) | 御財団・御機構 | 貴財団・貴機構 | ◯◯財団様 |
| 事務所・店 | そちら様 | 貴事務所・貴店 | ◯◯事務所様 |
相手に合う言葉が分からないときや言いにくいときは、相手の名前に「様」を付けて呼ぶと、取り違えの心配がなく失礼にもなりにくい言い方です。銀行も株式会社なので「御社」でも意味は通じますが、相手に合わせた言い方からははずれます。
自分の会社の呼び方(弊社・当社・小社・わたくしども)
| 言い方 | 使う場面 | ニュアンス | 例 |
|---|---|---|---|
| 弊社 | 社外の相手へのメール・会話 | へりくだる | 弊社の担当よりご連絡いたします |
| 当社 | 社内の会話・社内文書・規約・お知らせ | へりくだりなし | 当社の今期の目標は◯◯です |
| 小社 | 挨拶状など改まった文書 | へりくだる(やや古風) | 小社よりご案内申し上げます |
| わたくしども | お客様との会話 | 会社や部署をまとめてへりくだる | わたくしどもで手配いたします |
就職・転職活動の応募者は相手企業の社員ではないので、面接で相手の会社を「弊社」「当社」と呼ぶことはありません。転職の面接で今の勤め先を言うときは、「現在の勤務先」「前職」「現職」と言えば、へりくだりの要不要に迷わずに済みます。自分のことは「わたくし」と言えば改まった場でも通ります。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 貴社様/御社様 | 「貴社」「御社」に敬意が含まれるので、重ねるとくどいと感じる人もいる | 貴社/御社 |
| 一通のメールで「貴社」と「御社」が混ざる | 読み手が気づくと、雑な印象になる | メールなら「貴社」にそろえる |
| 面接で「貴社の◯◯に」と話す | 意味は通じるが、話し言葉の使い分けからはずれる | 御社の◯◯に |
| 履歴書に「御社を志望」と書く | 書き言葉の使い分けからはずれる | 貴社を志望 |
| (社外に)当社としては | 誤りではないが、へりくだった印象は弱くなる | 弊社としては |
| (社内の会議で)弊社の売上は | 社内ではへりくだる相手がいない | 当社の売上は |
| (銀行の担当者に)御社 | 相手に合う言葉とずれる | 御行(書くときは貴行) |
| 宛名に「株式会社◯◯御中 ◯◯様」 | 「御中」と「様」を重ねている | 担当者名がわかれば「株式会社◯◯ ◯◯様」、わからなければ部署あてに「御中」だけを付ける |
| 他社の話題で「貴社」 | 「貴社」は今やり取りしている相手の会社を指す | ◯◯社様/◯◯株式会社 |
言い間違えたとき・書き間違えたときの直し方
- 01
面接・電話で言い間違えた
気づいたらその場で「失礼いたしました、御社の」と短く言い直して先に進みます。何度も謝ると話の中身が伝わりにくくなります。気づかずに過ぎたなら、蒸し返さなくて構いません。
- 02
送ったメールで混ざっていた
意味が通じていれば、訂正のためだけのメールは送らなくて構いません。次のメールから「貴社」にそろえます。
- 03
会社名や銀行名を取り違えた
相手の名前の誤りは失礼が大きいので、すぐに「先ほどのメールで御社名を誤って記載いたしました。大変失礼いたしました。」とお詫びのメールを送ります。
- 04
履歴書を提出前に見つけた
手書きなら書き直し、データなら直してから出します。修正液や二重線で直すより、清書し直すほうが安心です。
送信・提出前チェックリスト
- メール・書類の中の相手の会社は、すべて「貴社」になっているか
- 面接で話す内容のメモは「御社」で書いてあるか(読み上げるとき言い間違えないように)
- 「貴社様」「御社様」と重ねていないか
- 相手が銀行・学校・病院などのとき、相手に合う言葉(貴行・貴校・貴院など)になっているか
- 自分の会社は社外向けに「弊社」になっているか
- 使い回した文面に、別の会社の名前が残っていないか
この記事の要点
- 「御社」「貴社」はどちらも相手の会社を敬う言葉で、意味は同じ。
- 話すなら「御社」、書くなら「貴社」。録画面接や読み上げも話し言葉なので「御社」。
- 銀行は御行・貴行、学校は御校・貴校など相手に合わせる。迷ったら「◯◯様」。
- 自分の会社は社外に「弊社」、社内では「当社」。応募者が相手の会社をこう呼ぶことはない。
- 「貴社様」とは重ねない。言い間違えは短く言い直せば十分。
FAQ
よくある質問
意味は通じますし、失礼とまでは言えません。ただ、書き言葉は「貴社」という使い分けを知っている読み手は多く、気にする人もいるので、社外の改まったメールでは「貴社」にそろえておくと安心です。
「御社」は「おんしゃ」、「貴社」は「きしゃ」と読みます。「御行」は「おんこう」、「貴行」は「きこう」です。
面接は話し言葉なので「御社」です。履歴書やエントリーシート、お礼のメールなど書くものでは「貴社」を使います。
チャット欄は字で読ませるので「貴社」が無難です。同じ面接の中でも、話すときは「御社」、書くときは「貴社」と分けて構いません。
銀行は話すとき「御行」、書くとき「貴行」。学校は「御校」「貴校」です。言いにくいときは「◯◯銀行様」のように相手の名前で呼んでも構いません。
社外の相手には、へりくだった「弊社」を使います。社内の会話や社内文書、規約やお知らせのように特定の相手にへりくだる必要のない文書では「当社」を使います。
相手のグループ全体を指すなら「貴社グループ」(話すときは「御社グループ」)、特定の会社を指すなら「◯◯株式会社様」と名前で呼ぶと取り違えがありません。
「御中」は封筒やメールの宛名で、会社や部署あてに付ける言葉です。本文で相手の会社を指す「貴社」とは役割が違います。宛名の書き方は封筒の宛名の記事にまとめています。