許認可
ロケの道路使用許可
要る撮影の見分け方と、申請書の書き方
結論:道路で撮影するとき、機材を置く・通行人を止める・見物人が集まるなど一般交通に著しい影響を及ぼす撮影なら、道路使用許可が必要です。申請先は撮影する道路を管轄する警察署(区役所ではありません)、東京都の手数料は2,100円。「何日前まで」という決まりはないので、撮影日が決まったらすぐ警察署に事前相談してください。この記事は、道路交通法・警察庁・警視庁の資料を2026年10月に取得して書いています。
結論
道路交通法第77条第1項第4号は、許可が必要な行為として「道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為」などのうち、公安委員会が定めたものを挙げています。許可を出すのは、その場所を管轄する警察署長です。
出典: 道路交通法 e-Gov法令検索、警察庁 道路使用許可の概要、申請手続等、警視庁 道路使用許可申請手続きについて(いずれも2026年10月取得)
先に答え:ロケの道路使用許可の要点
| 項目 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 要る撮影 | 一般交通に著しい影響を及ぼすような撮影 | 道路交通法第77条第1項第4号 |
| 申請先 | 撮影する道路の場所を管轄する警察署(東京都は交通規制係) | 第77条第1項、警視庁 |
| 書類 | 道路使用許可申請書(2通)、付近の見取図、公安委員会が定めた補足書類(東京都のロケは企画書・現場案内図・道路使用状況図 等) | 道路交通法施行規則第10条、警察庁、警視庁 |
| 手数料 | 東京都は工事・作業以外で2,100円。他の道府県は各警察の案内を確認 | 警視庁 |
| 期間 | 「何日前まで」の定めはない。東京都のオンライン申請は「通常数日を要します」 | 警視庁、警察庁通達 |
| 無許可・条件違反 | 3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金 | 第119条第2項第7号・第8号 |
許可が要る撮影・要らない撮影の見分け方
条文の鍵は「一般交通に著しい影響を及ぼすような」という部分です。警視庁も、ロケーションや撮影会について「一般交通に著しい影響を及ぼす場合に道路使用許可が必要」と説明しています。具体的にどの行為が対象かは、各都道府県の公安委員会が定めています。
下の表は、条文の文言(「通行の形態若しくは方法」「道路に人が集まり」)をもとに、よくある撮影の場面を整理したものです。この記事による整理で、最終的に判断するのは管轄の警察署です。
| 撮影の場面 | 見立て | 理由 |
|---|---|---|
| 車道に車両やカメラを止めて撮る、車線を使って走行シーンを撮る | 許可が要る | 車の通行の形態を変える |
| 歩道に三脚・照明・モニターを据えて撮る | 許可が要る方向 | 歩行者の通り道を狭める |
| 通行人に止まってもらう、迂回をお願いする | 許可が要る方向 | 通行の方法を変える |
| 出演者が有名人で、見物人が集まりそう | 許可が要る方向 | 「道路に人が集まり」に当たりうる |
| 手持ちカメラで、通行人と同じように歩きながら短く撮る | 要らない方向 | 通行の形態がふだんと変わらない |
| 人の少ない時間帯に、立ち止まらず数カット撮る | 要らない方向 | ただし場所と人数次第。迷ったら相談 |
Point
「◯人以下なら不要」という基準は、条文にも警視庁の説明にもありません。 少人数でも、車道に出る、機材を置く、通行を止めるなら影響は大きくなります。迷ったら管轄の警察署に事前に相談してください。
注意
「道路」は公道だけではありません。 警察庁は、道路交通法上の道路に、不特定の人や車が自由に通行できる私道・空地・広場、公開時間中の公園内の道路なども含まれると説明しています。私道でも人が自由に通れるなら道路使用許可の対象になりえ、あわせて所有者・管理者の承諾も要ります。
申請の流れ(5ステップ)
- 01
撮影場所の住所から管轄の警察署を調べる
許可を出すのは「その場所を管轄する警察署長」です。撮影場所が複数の警察署にまたがるときは、同じ公安委員会の管理に属するなら、そのいずれかの警察署長の許可で足ります(第77条第1項かっこ書)。
- 02
電話で事前相談する
撮影日、時間帯、場所、人数、機材、通行への影響を伝え、許可の見通し・必要書類・提出方法(窓口、オンライン等)を確認します。警察庁の通達は、十分な時間的余裕をもった事前相談が有効だとしています。
- 03
申請書と添付書類を作る
申請書(別記様式第六)は2通。添付書類は付近の見取図と、公安委員会が定めた補足書類です。東京都のロケーションでは、企画書、現場案内図、道路使用状況図などが案内されています。
- 04
警察署に提出し、手数料を納める
東京都の手数料は工事・作業以外で2,100円です。受付は平日の午前8時30分から午後4時30分(警視庁)。
- 05
許可証を受け取り、条件を現場に共有する
許可には、時間帯や誘導員の配置などの条件が付くことがあります(第77条第3項)。条件に違反すると、許可の取消しや罰則の対象になります。
申請書の書き方:欄ごとの記入例
申請書は、道路交通法施行規則の別記様式第六です。欄は「道路使用の目的」「場所又は区間」「期間」「方法又は形態」「添付書類」「現場責任者」の順に並びます。様式の備考は、「方法又は形態」の欄に、使用面積、行事等の参加人員、通行の形態又は方法など必要な事項を書くよう求めています。下は記入例です。◯◯を自社の案件に置き換えてください。
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 申請者 | 法人なら名称・主たる事務所の所在地・代表者の氏名(様式の備考) | 株式会社◯◯ 東京都◯◯区◯◯ 代表取締役 ◯◯ ◯◯ |
| 道路使用の目的 | 撮影であること、何の撮影か | テレビCM(◯◯社 商品◯◯)のロケーション撮影のため |
| 場所又は区間 | 住所と、使う範囲(どこからどこまで) | ◯◯区◯◯一丁目◯番先から◯番先までの歩道(延長約◯メートル) |
| 期間 | 準備・撤収を含めた時間。予備日を入れるなら併記 | ◯年◯月◯日 ◯時から ◯年◯月◯日 ◯時まで(雨天時は◯月◯日に順延) |
| 方法又は形態 | 人数、機材、使う面積、通行への配慮 | 出演者◯名・スタッフ◯名。歩道上の幅◯メートル×長さ◯メートルにカメラ1台・照明◯台を置く。歩行者の通路幅を◯メートル確保し、誘導員◯名を配置する。車道には出ない |
| 添付書類 | 付けた書類の名前 | 企画書、現場案内図、道路使用状況図(機材・人員の配置図)、香盤表 |
| 現場責任者 | 当日現場にいる人の住所・氏名・つながる電話番号 | 制作部 ◯◯ ◯◯(携帯 ◯◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯) |
「方法又は形態」の記入例(場面別)
例1:商店街の歩道でのCM撮影
出演者◯名、スタッフ◯名。歩道の店舗側に幅◯メートル×長さ◯メートルの撮影区画を設け、カメラ1台、照明スタンド◯台、モニター1台を置く。歩行者の通路は車道側に幅◯メートル確保し、区画の両端に誘導員を各1名配置する。本番中も歩行者を止めず、通行が多いときは撮影を中断する。
例2:早朝の歩道でのインタビュー撮影
出演者1名、スタッフ◯名。手持ちカメラ1台とマイクのみで、三脚・照明は使用しない。1カットごとに場所を移し、同じ地点に◯分以上とどまらない。歩行者が近づいたときは撮影を止めて道を空ける。
例3:車道脇に撮影車両を止める走行シーン
撮影車両1台、出演車両1台、スタッフ◯名。撮影車両は◯◯先の◯◯に停車し、出演車両は信号・規制に従って一般車両と同じ方法で走行する。車線の閉鎖や一般車両の停止は行わない。停車位置の前後に誘導員を各1名配置する。
Point
期間の欄には、機材の搬入から撤収が終わるまでを入れてください。 撮影だけの時間で書くと、搬入や撤収の時間が許可の外にはみ出します。時間帯は撮影の香盤表から転記すると食い違いが出ません。
事前相談で伝えること・聞くこと
- 撮影日と予備日、開始・終了の時刻(準備・撤収を含む)
- 撮影場所の住所と範囲、車道を使うか歩道だけか
- 出演者・スタッフの人数、置く機材の種類と数
- 通行人を止めるか、見物人が集まりそうか
- 誘導員を何名、どこに置けるか
- 必要な書類と部数、提出方法(窓口・オンライン等)
- 道路占用許可も要りそうか(機材やテントを継続して置く場合)
電話の切り出しの例です。
◯◯署の交通規制係でしょうか。株式会社◯◯の◯◯と申します。◯月◯日に◯◯区◯◯一丁目の歩道でCMの撮影を予定しており、道路使用許可の申請について、事前にご相談したくお電話いたしました。撮影はスタッフ◯名、カメラ1台と照明◯台で、◯時から◯時を予定しています。許可の見通しと、必要な書類を教えていただけますでしょうか。
警察署長が「許可しなければならない」場合
第77条第2項は、次のいずれかに当たるときは、警察署長は許可をしなければならないと定めています。
- 01現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき
- 02許可に付された条件に従って行われることにより、交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき
- 03現に交通の妨害となるおそれはあるが、公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき
Point
撮影計画は「条件をつければ交通の妨害にならない」形で組み立てるのが近道です。 第2号のとおり、条件に従えば妨害のおそれがなくなるなら許可されます。誘導員、時間帯、機材の置き場を、申請の段階で示してください。
撮影当日のチェックリスト
- 許可証(またはその写し)を現場責任者が持っている——警察官や通行人に聞かれたらすぐ示せるように
- 許可の条件を全スタッフが知っている——時間帯、使ってよい範囲、誘導員の位置
- 許可の期間・範囲からはみ出していない——押したときは撤収時刻を優先する
- 歩行者の通り道が空いている——ベビーカーや車いすが通れる幅か
- 照明の向きを確認した——夜間は、光が車道や交差点の方へ漏れていないか
- 撮影車両の待機場所が決まっている——申請書に書いた範囲の外で待たせない
- 近隣への案内が済んでいる——警察庁の通達は、地域住民などとの合意形成をロケ撮影の実施主体の責任としています
近隣に配る案内文の例です。
撮影のお知らせ
このたび、下記の日時に、この付近の歩道でテレビCMの撮影を行います。道路使用許可を受けたうえで、通行の妨げにならないよう誘導員を配置いたします。ご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
日時 ◯年◯月◯日(◯)◯時〜◯時(雨天時は◯月◯日)
場所 ◯◯区◯◯一丁目◯番付近の歩道
お問い合わせ 株式会社◯◯ 制作部 ◯◯(携帯 ◯◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯)
無許可・条件違反の罰則
道路交通法第119条第2項は、第77条第1項に違反したとき(許可が必要なのに受けなかったとき)(第7号)と、警察署長が付けた条件に違反したとき(第8号)について、3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金を定めています。条件違反は、許可の取消しや効力の停止(第77条第5項)の理由にもなります。
注意
現行の第119条の表記は「拘禁刑」です(e-Gov法令検索、2026年10月取得)。古い解説記事には「懲役」と書かれたものもあるので、引用するときは現行の条文で確かめてください。
警察庁の通達(令和7年7月4日)が求めていること
警察庁は令和7年7月4日、各都道府県警察に「ロケ撮影に伴う道路使用許可申請手続等の円滑化の推進について」を通達しました。関係府省庁が取りまとめた「ロケ撮影ハンドブック」を踏まえたものです。
- 前例がないことを理由に一律に断らない——通達は「道路使用の前例がないなどの理由から一律に道路使用許可をしないということのないよう」周知徹底するよう求めています
- 代替案を示してもらえる——直ちに許可できない内容でも、代わりの場所や日・時間帯を提示するなどの助言をするよう求めています
- 道路占用許可と一緒に受け付けてもらえる——両方が必要な場合、申請を一括して受け付けられることの周知を求めています
- 大規模なロケは警察本部が調整——複数の警察署にまたがる場合
- フィルムコミッションと連携する——製作者等にも、フィルムコミッションと連携して調整するよう教示するとしています
機材を置くなら、道路占用許可も
道路にテントや機材の置き場を設けて継続して使うなら、道路使用許可(道路交通法)とは別に、道路管理者の道路占用許可(道路法第32条)が要る場合があります。道路法第32条第4項は、両方が必要な場合に申請書を警察署長を経由して出せる仕組みを定めており、上の通達も一括受付の周知を求めています。
注意
道路占用許可の要件と申請事項は道路占用許可とはにまとめています。イベントでの道路使用許可は道路使用許可の取り方、ドローンで空撮する場合はドローンと航空法を参照してください。
この記事の要点
- 一般交通に著しい影響を及ぼす撮影は、管轄の警察署長の道路使用許可が必要(道路交通法第77条第1項第4号)。「◯人以下なら不要」という基準はない。
- 申請書は別記様式第六を2通。「方法又は形態」に人数・機材・面積・通行への配慮を具体的に書く。
- 東京都の手数料は工事・作業以外で2,100円。「何日前まで」の定めはなく、早めの事前相談が有効(警察庁通達)。
- 無許可や条件違反は3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金(第119条第2項第7号・第8号)。
- 令和7年の警察庁通達は、前例がないことを理由に一律に許可しないことのないよう求めている。
FAQ
よくある質問
一般交通に著しい影響を及ぼすような撮影なら必要です。道路交通法第77条第1項第4号は「道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為」などのうち公安委員会が定めたものを、許可が必要な行為として挙げています。車道を使う、歩道に機材を置く、通行人を止める、見物人が集まるといった撮影は影響が出やすいため、管轄の警察署に相談してください。
一般交通に著しい影響を及ぼさないものは、第77条第1項第4号の要件に当たりません。手持ちカメラで通行人と同じように歩きながら短く撮る場合などです。ただし「何人以下なら不要」といった基準は条文にも警視庁の説明にもなく、具体的には公安委員会が定めています。迷う場合は管轄の警察署に事前に相談してください。
道路交通法施行規則第10条により、道路使用許可申請書(2通)、道路使用の場所又は区間の付近の見取図、公安委員会が必要と認めて定めた補足書類を出します。東京都の場合、警視庁はロケーション等の書類として、企画書など行事の概要が分かるもの、現場案内図、道路使用状況図などを案内しています。
様式の備考は、使用面積、行事等の参加人員、通行の形態又は方法など、使用について必要な事項を書くよう求めています。撮影なら、出演者とスタッフの人数、置く機材の種類と数、使う範囲の広さ、歩行者の通路をどれだけ空けるか、誘導員の人数と位置を書きます。
警視庁の案内にも警察庁の通達にも「何日前まで」という定めはありません。警視庁はオンライン申請について「通常数日を要します」としています。警察庁の通達(令和7年7月4日)は、十分な時間的余裕をもって事前相談することが有効としているので、撮影日が決まったら早めに管轄の警察署へ相談してください。
警視庁の案内では、工事・作業以外の申請は2,100円です(工事・作業は2,700円、再交付は700円)。手数料は都道府県ごとに定められているため、東京都以外では各都道府県警察の案内を確認してください。
区役所ではなく、撮影する道路の場所を管轄する警察署(交通規制係)に申請します。警視庁の受付時間は平日の午前8時30分から午後4時30分です。撮影場所が複数の警察署の管轄にまたがる場合は、同じ公安委員会の管理に属するならいずれかの警察署長の許可で足ります。
道路交通法第119条第2項第7号により、第77条第1項に違反した者は3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金の対象です。許可に付いた条件に違反した場合も、同項第8号で同じ罰則があり、許可の取消しや効力の停止の理由にもなります。
警察庁は、不特定の人や車が自由に通行できる私道も道路交通法上の道路に含まれると説明しています。その場合は道路使用許可の対象になりえます。あわせて、私道の所有者・管理者の承諾も得てください。
警察庁は令和7年7月4日の通達で、道路使用の前例がないなどの理由から一律に道路使用許可をしないということのないよう、各都道府県警察に周知徹底を求めています。直ちに許可できない場合でも、代替場所や日・時間帯を提示するなどの助言を行うよう求めています。時間帯、誘導員、機材の置き方を具体的に示して相談してください。