個人情報
展示会の名刺交換と個人情報
主催者・出展者・来場者の三者で整理する
展示会の個人情報が分かりにくいのは、登場人物が3者いるからです。主催者、出展者、来場者。情報が誰から誰に動くかで、関わる条文が変わります。「展示会だから名刺交換は自由」という整理はありません。 まず、誰が取得した情報なのかを切り分けてください。
結論
展示会では情報の流れが複数あります。①主催者が来場登録で取得する、②出展者がブースで名刺を受け取る、③主催者が取得した情報を出展者に渡す。このうち③は、第27条第1項により原則としてあらかじめ本人の同意が必要になり、第27条第5項の委託・共同利用という枠組みを使うかの検討が必要です。①と②はそれぞれが第17条・第21条に従います。
根拠と、この記事の立場
本記事の条文はe-Gov法令検索の個人情報の保護に関する法律から取得しています(2026年10月時点)。
注意
本記事は条文の構造を整理するものです。 特定の展示会の運用が適法かどうかの判断は示しません。主催者として情報の流れを設計する段階、出展者として出展を検討する段階で、弁護士に確認してください。
情報の流れを3つに分ける
| # | 流れ | 主に関わる条文 |
|---|---|---|
| ① | 主催者が来場登録で取得する | 第17条(利用目的)・第21条(明示) |
| ② | 出展者がブースで名刺等を受け取る | 第17条・第21条(出展者が取得者) |
| ③ | 主催者が取得した情報を出展者に渡す | 第27条 |
Point
③が設計の分かれ目です。 来場登録のデータを出展者に提供する運用にするなら、来場登録の画面でそれを示しておく必要があります。登録が始まってからでは足せません。
②は出展者の責任
出展者がブースで名刺を受け取る行為は、出展者が取得者です。主催者が代わりに責任を負うわけではありません。ただし出展案内に論点を書いておくことで、トラブルは減ります。
注意
名刺そのものの扱いは名刺は個人情報かに整理しています。第2条第1項の定義に媒体の区別はありません。
③ 主催者から出展者へ渡す場合
個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。(第27条第1項)
条文が挙げる除外(法令に基づく場合、生命身体財産の保護、公衆衛生・児童の健全育成、国等への協力、学術研究機関等)に、出展者への来場者情報の提供は当たりません。したがって選択肢は次のいずれかになります。
- 01あらかじめ本人の同意を得て提供する(第27条第1項)
- 02共同利用の枠組みを使う(第27条第5項第3号・5項目を事前に示す)
- 03渡さない設計にする
Point
3つ目を軽視しないでください。 来場者が自分でブースを訪れて名刺を出す設計にすれば、②の流れだけになり、③の論点が消えます。運用で論点を減らせる場面です。
共同利用を使う場合の5項目
第27条第5項第3号は、次の5つをあらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いていることを条件としています。
- 01共同して利用する旨
- 02共同して利用される個人データの項目
- 03共同して利用する者の範囲
- 04利用する者の利用目的
- 05管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所(法人はその代表者の氏名)
注意
③「共同して利用する者の範囲」が展示会では難所です。 出展者は直前まで増減します。範囲をどう特定するかは、登録開始前に整理しておく必要があります。詳しくは共催セミナーと共同利用を参照してください。
バーコード・QRの読み取り運用
来場者バッジを出展者が読み取る運用は、読み取った瞬間に主催者から出展者へ情報が渡る設計になっていることが多い仕組みです。
- 読み取るとどの項目が出展者に渡るのかを把握している
- それが来場登録の画面に書かれている
- 第27条のどの枠組みで渡すのかを整理している
- 読み取りを拒否できる設計になっているか(運用として)
- 出展者がそのデータを何に使うかを出展規約で定めている
- 会期後のデータの扱いを出展者と取り決めている
Point
来場者から見て「バッジを読まれる=情報が渡る」ことが分かる状態になっているかが実務上の肝です。読み取り機を向けられた来場者が、何が起きているか分からないまま進む設計は、第21条の趣旨から離れます。
注意
特定のサービスの仕様は本記事では扱いません。 読み取りシステムを使う場合は、提供事業者にどの項目が、いつ、誰に渡るのかをデータの流れとして説明してもらってください。
主催者が出展案内に書くこと
出展者の個人情報の扱いまで主催者が保証することはできません。しかし論点を知らせることはできます。
- ブースで取得する情報については出展者が取得者であること
- 出展者自身で利用目的の明示を行う必要があること(第17条・第21条)
- 主催者から提供する情報がある場合、その範囲と条件
- 提供した情報を第三者にさらに渡さないこと
- 会期後の取扱い(保管期間、消去)
- 禁止事項(来場者への過度な連絡、名簿の転売等)
Point
「提供した情報をさらに渡さない」は必ず書いてください。 出展者が子会社や代理店にリストを横流しする構図は、主催者が来場者に説明した内容と食い違います。出展規約に書き、違反時の扱いも決めておいてください。
来場者への見え方を整える
来場登録の画面で、誰に何が渡るのかが分かるようにしてください。第21条第2項はあらかじめ明示を求めています。文面の構成は個人情報の取扱いの書き方に整理しています。
注意
出展ブースの設計そのものは展示会ブースの作り方、初めての出展は初めての展示会出展、会期後のフォローはイベント後のフォローを参照してください。
この記事の要点
- 展示会は主催者・出展者・来場者の三者。誰が取得した情報かで当てはまる条文が変わる。
- 主催者から出展者へ渡すのは第27条の論点。 出展者への提供は同条第1項の除外に当たらない。
- 選択肢は①本人の同意 ②共同利用の5項目 ③渡さない設計の3つ。③で論点が消える場面がある。
- 共同利用を使う場合、「共同して利用する者の範囲」が展示会では難所。出展者は直前まで増減する。
- バッジの読み取りは、読んだ瞬間に情報が渡る設計であることが多い。来場登録の画面に書かれているかを確認する。
- 出展規約に「提供した情報をさらに第三者に渡さない」を必ず入れる。
FAQ
よくある質問
第27条第1項は、法令に基づく場合など同条が挙げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとしています。出展者への来場者情報の提供はこれらの除外に当たりません。したがって、あらかじめ本人の同意を得る、第27条第5項第3号の共同利用の枠組みを使う(5項目を事前に示す)、または渡さない設計にする、のいずれかになります。
ブースで出展者が名刺を受け取る行為は、出展者が取得者です。主催者が代わりに責任を負う構造ではありません。ただし、出展者自身が利用目的の明示を行う必要があること(第17条・第21条)を出展案内に書いておくと、トラブルを減らせます。
読み取った瞬間に主催者から出展者へ情報が渡る設計になっていることが多い仕組みです。まず、読み取るとどの項目が出展者に渡るのかを把握し、それが来場登録の画面に書かれているかを確認してください。そのうえで、第27条のどの枠組みで渡すのかを整理します。特定のサービスの仕様は本記事では扱わないため、提供事業者にデータの流れを説明してもらってください。
第27条第5項第3号は「共同して利用する者の範囲」をあらかじめ示していることを条件としています。出展者が直前まで増減する展示会では、この範囲をどう特定するかが難所になります。登録開始前に整理しておく必要があるため、弁護士に相談して構成を決めてください。
ブースで取得する情報については出展者が取得者であること、出展者自身で利用目的の明示が必要であること、主催者から提供する情報がある場合はその範囲と条件、提供した情報をさらに第三者に渡さないこと、会期後の取扱い(保管期間・消去)、禁止事項です。とくに「さらに渡さない」は必ず入れてください。出展者が子会社や代理店にリストを渡す構図は、主催者が来場者に説明した内容と食い違います。