ビジネスの慣用句
棚に上げるの意味とは?
例文と言い換え・棚上げとの違い
結論:「棚に上げる」は、自分に都合の悪いことを、なかったかのように扱って話題にしないことです。読み方は「たなにあげる」。「自分の確認漏れは棚に上げて、人のミスばかりとがめる」のように使います。自分について使えば謙遜の前置き(「自分のことは棚に上げて申し上げますが」)、他人について使えば非難になるので、向きに気をつけたい言葉です。このページでは、意味の2つの使い方、そのまま使える例文20、言い換え・反対の表現、「棚上げ」との違い、目上・社外での注意をまとめました。
結論
「棚に上げる」は、自分の欠点や都合の悪いことを、なかったかのように扱って話題にしないことを表す慣用句です。「自分のことは棚に上げて」の形で使われることが多く、厄介な問題を先送りにして放っておく意味で使われることもあります。
30秒でわかる「棚に上げる」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 読み方 | たなにあげる |
| 意味①(よく使う) | 自分に都合の悪いことを、なかったかのように扱う |
| 意味② | 厄介な問題を先送りにして放っておく |
| よく使う形 | 自分のことは棚に上げて/〜を棚に上げて…する |
| 自分に使うと | 「自分もできていませんが」というへりくだった前置き |
| 他人に使うと | 「自分の非を認めずに人を責めている」という非難 |
| 言い換え | 自分のことはさておき/人のことは言えませんが/自戒を込めて |
| 反対の向き | 我が身を振り返る/自分を省みる/襟を正す |
| 目上の人の行為に | 使わない(非難になる) |
「棚に上げる」の意味と由来
意味① 自分の非には触れずにおく
もっともよく使うのがこの意味です。自分の落ち度や弱みを脇に置いたまま、他人の落ち度を言う様子を表します。たとえば、自分も提出が遅れがちなのに、後輩の遅れだけを強くとがめる人について「自分のことは棚に上げて」と言います。
意味② 先送りにして放っておく
厄介な問題を後回しにしたまま放っておく意味でも使われます。ただ、職場では意味①で受け取られやすいため、案件の保留には「棚上げ」「保留」を使うほうが誤解が起きにくくなります(後述)。
由来
由来には諸説ありますが、物を棚の上に載せてしまうと、目の前から片づいて手をつけなくなる様子から、と説明されることが多い言葉です。
形の変化(活用)
- 棚に上げて:「自分のことは棚に上げて言いますが」
- 棚に上げた:「自分の確認不足を棚に上げた発言でした」
- 棚に上げず(に):「自分の非を棚に上げずに振り返る」
- 棚に上げるようですが:前置きをやわらげる形
Point
迷ったら主語を確認。主語が「自分」ならへりくだり、主語が「相手」なら批判です。
そのまま使える例文20(場面別)
自分を下げて意見を言う(前置き)
- 01自分のことは棚に上げて申し上げますが、議事録の共有は会議の当日中にそろえていきたいと考えています。
- 02私自身もできていないので、棚に上げるようで恐縮ですが、提出期限の前日に一度声をかけ合いませんか。
- 03自分のことは棚に上げて言うけど、このファイル名は日付から始めると探しやすいと思う。
- 04棚に上げるつもりはありません。私も同じ確認漏れをしたことがあるので、手順を一緒に見直しましょう。
- 05自分のことを棚に上げるようですが、最近、共有フォルダの整理が追いついていません。私も含めて、今週中に各自の担当分を見直しましょう。
注意
自分を主語にした前置きなので、目上の人がいる会議でも使えます。「私も含めて」と添えると、押しつけに聞こえにくくなります。議事録の残し方は議事録の書き方とテンプレートにまとめています。
振り返り・反省(報告書・面談)
- 01原因を外部の要因だけに求めて、自分たちの確認不足を棚に上げてしまっては、同じことが繰り返されると考えます。
- 02今回の遅れについて、自分の見積もりの甘さを棚に上げて、他部署の対応だけを問題にしていました。
- 03自分の非を棚に上げずに振り返るため、まず私の担当分から経緯を整理しました。
- 04部下の報告が遅いと感じていましたが、自分が相談しにくい雰囲気をつくっていたことを棚に上げていたと気づきました。
- 05チームの課題を挙げる前に、リーダーである私自身の段取りの問題を棚に上げないようにします。
注意
「自分」「自分たち」を主語にすると、特定の人を責める言い方になりません。上司への報告書や振り返りの場でも使えます。
他人の様子を表す(第三者として)
- 01自分の提出遅れは棚に上げて、人の締め切りには厳しい人もいる。
- 02自分のミスを棚に上げて部下を責めるだけでは、信頼は得られない。
- 03家では片づけをしないのに、それを棚に上げて子どもに「片づけなさい」と言ってしまった。
- 04自分たちの準備不足を棚に上げて、天気のせいにするのはやめよう。
- 05他人の欠点はよく見えるのに、自分の欠点は棚に上げてしまいがちだ。
注意
特定の相手を名指しで「棚に上げている」と言うと強い非難になります。一般論や、自分も含めた話にとどめるのが無難です。
チャット・メール(文字に残る連絡)
- 01(チャット)自分のことは棚に上げて言いますが、今日の資料のページ番号がずれていたので直しておきました。次から私も気をつけます。
- 02(チャット)先週は私もやってしまったので棚に上げるようですが、共有カレンダーに予定を入れる前に、ほかの予定と重なっていないか確認をお願いします。
- 03(社内メール)先日の記載誤りについて、私自身の確認不足もあったことを踏まえ、確認の手順を見直す案をまとめました。
- 04(社内メール)各部署へお願いする前に、まず当部署の対応から見直しましたので、結果を共有いたします。
- 05(社外メール)弊社の確認不足もございましたので、社内の手順を見直しております。今後の進め方についてご相談させてください。
注意
メール、とくに社外では「棚に上げて」という言葉そのものを使わず、自分の非を先に書くほうが同じ気持ちが穏やかに伝わります。
「自分のことは棚に上げて」の前置きテンプレート
前置きは①自分の非を認める → ②提案 → ③自分も一緒にやるの順にすると、指摘が押しつけに聞こえません。
- 01
① 自分の非を認める
「自分のことは棚に上げて申し上げますが」「私もできていないのですが」
- 02
② 提案を具体的に言う
「資料は前日までに共有フォルダに置くようにしませんか」のように、誰が・いつ・何をするかを入れる
- 03
③ 自分も含める
「私から始めます」「私も含めて見直します」で締める
自分のことは棚に上げて申し上げますが、会議資料は前日の17時までに共有フォルダへ置くようにしませんか。まずは私の担当分から始めます。
言い換え・類語・反対の表現
ビジネスで使いやすい言い換え
| 言い換え | ニュアンス | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 自分のことはさておき | 自分の話をいったん脇に置く。やわらかい | 会議・チャット |
| 人のことは言えませんが | 自分にも同じ落ち度があると認める | 同僚との会話 |
| 自戒を込めて申し上げますが | 自分への戒めも含める。改まった言い方 | 目上がいる会議・スピーチ |
| 私自身の反省も込めて | 自分の非を認めたうえで話す | 報告書・振り返り |
| 私もできていないのですが | もっとも平易で角が立たない | どの場面でも |
似た意味の表現(類語)
| 表現 | 意味・ニュアンス | 「棚に上げる」との違い |
|---|---|---|
| 棚上げ(にする) | 問題の解決や判断を、しばらく保留にする | 案件・議題に使う。自分の非の意味ではあまり使わない |
| 差し置いて | 本来優先すべき人や物事をそっちのけにする | 「◯◯を差し置いて」の形。自分の非に限らない |
| 見て見ぬふりをする | 気づいているのに知らないふりをする | 対象が自分の非に限らない |
| 目をつぶる | 欠点や過ちをとがめずに見逃す | 他人の非を許す意味でも使う |
| 臭い物に蓋をする | 都合の悪いことを一時しのぎで隠す | 隠す行為に重点がある |
| 頬かむり(をする) | 知っていながら知らないふりをする | くだけた言い方 |
| 自分を正当化する | 自分の行いを正しいと言い張る | 慣用句ではなく説明的な言い方 |
反対の向きの表現
- 我が身を振り返る・自分を省みる:自分の言動に誤りがないか考え直す
- 襟を正す:気持ちを引き締め、態度を改める
- 自分に厳しく、人に優しく:自分の非から先に正す姿勢
「棚に上げる」と「棚上げ」の違い
| 棚に上げる | 棚上げ(にする) | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 自分の落ち度・都合の悪いこと | 問題・議題・計画・案件 |
| 主な意味 | なかったかのように扱い、話題にしない | 解決や判断をしばらく保留にする |
| 評価 | 非難の意味を含みやすい | 中立(事情による保留) |
| 例 | 自分のミスは棚に上げて | その議題は次回まで棚上げにする |
案件の保留を伝えるときに「棚に上げましょう」と言うと、「責任逃れ」の響きに受け取られることがあります。保留なら「棚上げ」「保留」「いったん見送り」と書き分けましょう。保留の言い方はペンディングの意味と使い方にまとめています。
よくある失敗と直し方
| ありがちな言い方 | 気になる点 | 直した言い方 |
|---|---|---|
| 自分のことは棚に置いて | 慣用句の形は「棚に上げる」 | 自分のことは棚に上げて |
| その議題はいったん棚に上げましょう | 責任逃れの響きに取られることがある | その議題はいったん保留にしましょう/棚上げにしましょう |
| (反省として)棚に上げていました、とだけ言う | 何に触れずにいたのかが分からない | 自分も確認を怠っていたのに、後輩にだけ注意していました |
| (上司に)ご自身のことは棚に上げて… | 目上の人の行為を非難する言い方になる | 使わない。意見は自分の考えとして伝える |
| 棚に上げて申し上げますが、皆さんは… | 自分の非に触れず、相手だけに求めている | 自分のことは棚に上げて申し上げますが、私も含めて… |
目上・社外に使うときの注意
自分を主語にした前置きなら目上の人がいる場でも使えます。一方で、目上の人や取引先の行為を「棚に上げている」と言うのは強い非難になるので使いません。
| 相手・場面 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 目上の人がいる会議で改善を提案する | 自分のことは棚に上げて申し上げますが/自戒を込めて申し上げますが |
| 取引先に自社の改善を伝える | 弊社の確認不足もございましたので、手順を見直しております |
| 取引先の対応に問題があると感じたとき | 双方で確認の手順をそろえられますと幸いです |
| 社内の同僚との会話 | 自分のことは棚に上げて言うけど/人のことは言えないけど |
社外の相手には、慣用句で気持ちを表すより、自社の非を先に認め、そのうえで今後の進め方を提案するほうが伝わります。お詫びの言い回しはお詫びの言葉の使い分けを参考にしてください。
使う前のチェックリスト
- 主語は「自分」または「自分たち」になっている
- 目上の人・取引先の行為を「棚に上げている」と言っていない
- 前置きのあとに、具体的な提案(誰が・いつ・何を)が続いている
- 「私も含めて」「私から始めます」など、自分も行動に入れている
- 案件の保留を言いたいだけなら「保留」「棚上げ」に言い換えた
- 社外のメールでは慣用句を使わず、自社の非を先に書いた
この記事の要点
- 「棚に上げる(たなにあげる)」は自分に都合の悪いことを、なかったかのように扱って話題にしないこと。問題を先送りにして放っておく意味もある。
- 自分について使えば謙遜の前置き、他人について使えば非難。
- 前置きは自分の非を認める→具体的な提案→自分も含めるの順。
- 問題や議題を保留にするなら「棚上げ」「保留」と書き分ける。
- 目上・取引先の行為には使わず、社外では自分の非を先に認めてから提案する。
FAQ
よくある質問
自分の欠点や都合の悪いことを、なかったかのように扱って話題にしないことです。厄介な問題を先送りにして放っておく意味でも使われます。読み方は「たなにあげる」です。
自分にも同じ落ち度があると認めたうえで、意見や提案を言うときの前置きです。「自分のことは棚に上げて申し上げますが」のように使います。
自分を主語にした前置きなら、目上の人がいる場でも使えます。より改まった場では「自戒を込めて申し上げますが」も使えます。ただし、目上の人の行為を「棚に上げている」と言うのは非難になるので使いません。
他人について使うと「自分の非を認めずに人を責めている」という悪い意味になります。自分について使う前置きは、へりくだりの言い方です。
「棚に上げる」は主に自分の落ち度に触れないことに使い、「棚上げ」は問題や案件の解決をしばらく保留にすることに使います。保留の意味なら「棚上げ」「保留」を選ぶと誤解が起きにくくなります。
「自分のことはさておき」「人のことは言えませんが」「自戒を込めて」「私もできていないのですが」などがあります。似た意味の表現には「見て見ぬふりをする」「臭い物に蓋をする」などがあります。
自分の言動を考え直す「我が身を振り返る」「自分を省みる」、態度を改める「襟を正す」などが反対の向きの表現です。
慣用句としての形は「棚に上げる」です。「自分のことは棚に置いて」ではなく「自分のことは棚に上げて」と言いましょう。
由来には諸説ありますが、物を棚の上に載せてしまうと、目の前から片づいて手をつけなくなる様子から、と説明されることが多い言葉です。