敬語
「〜のほう」の使い方
ぼかし言葉の直し方とメール例文
「〜のほう」は、方向を示すときや、二つ以上のものを比べるときに使う言葉です。ところが会話やメールでは、比べるものがないのに「ご確認のほうお願いします」「資料のほう送ります」と付けることがあり、ぼかし言葉として気になる人もいます。そのまま使える一文は「資料をお送りしますので、ご確認をお願いいたします。」。このページでは、本来の使い方と外したほうがよい使い方の表、言い換え、場面別のメール例文をまとめました。
結論
「ほう(方)」は方向・方角を表す言葉で、そこから「AよりBのほうがよい」「私のほうで対応します」のように、いくつかあるもののうちの一方、受け持つ側を示す使い方が広がりました。比べる相手も方向もない場面で付ける「〜のほう」は、言い切りを避けて表現をやわらげるために使われることがあり、「ぼかし言葉」と呼ばれることがあります。
「〜のほう」の意味と、気になる人がいる理由
「のほう」が自然に働くのは、方向(「駅のほうへ歩く」)、比較(「A案のほうが費用を抑えられます」)、受け持ち(「手配は弊社のほうで進めます」)の三つです。どれも、ほかの選択肢や相手側と区別する働きがあります。
一方、「ご確認のほうよろしくお願いします」「お名前のほう伺ってもよろしいですか」のように、区別する相手がないのに付けると、言い切りを避けた遠回しな言い方になります。やわらかく聞こえると感じて使う人もいますが、何を指しているのかがぼやける、回りくどいと感じる人もいます。
Point
比べる相手・方向・受け持ちのどれかがあれば「のほう」は自然。どれもなければ外す。外しても意味が変わらないなら、その「のほう」は要らない言葉です。
自然な使い方・外したほうがよい使い方
| 言い方 | 「のほう」の働き | 直すなら |
|---|---|---|
| A案のほうが費用を抑えられます | 比較(自然) | ― |
| 手配は弊社のほうで進めます | 受け持ち(自然) | 手配は弊社で進めます(どちらでもよい) |
| 会場の入口のほうへお進みください | 方向(自然) | ― |
| ご確認のほうよろしくお願いします | 比べる相手がない | ご確認をお願いいたします |
| 資料のほうお送りします | 比べる相手がない | 資料をお送りします |
| お名前のほう伺ってもよろしいですか | 比べる相手がない | お名前を伺ってもよろしいでしょうか |
| 日程のほうは調整中です | ほかの項目と区別しているなら自然 | 日程は調整中です |
注意
「日程のほうは調整中です(会場はもう決まっています)」のように、ほかの項目と分けて話しているなら、「のほう」は意味を持っています。迷ったら外して読み、意味が変わるかを確かめてください。
言い換え一覧(丁寧さの段階つき)
| 言い方 | 丁寧さ | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| ご確認くださいますようお願い申し上げます | 特に改まった言い方 | 案内状・改まった依頼 |
| ご確認のほど、よろしくお願いいたします | 改まった言い方(やわらかい) | 取引先・お客様への依頼の結び |
| ご確認をお願いいたします | 丁寧 | 社内外どちらにも使いやすい |
| ご確認いただけますでしょうか | 丁寧(尋ねる形) | 上司・取引先へのお願い |
| 確認をお願いします | 標準 | 社内の同僚・後輩 |
「ご確認のほど」の「ほど」は、言い切りを避けて控えめにお願いする働きをする言葉で、改まった依頼の結びとして定着しています。「のほう」と音が似ていますが、使われ方は別です。「ほど」の使い方は「よろしくお願いいたします」の言い換えも参考にしてください。
場面別のメール例文
取引先に資料の確認をお願いする
件名:◯◯の企画書ご確認のお願い
株式会社◯◯
◯◯様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の企画書をお送りいたします。
◯月◯日(◯)までにご確認いただけますでしょうか。
修正のご要望があれば、該当のページに書き込んでお戻しいただければ反映いたします。
二つの案を比べて提案する(「のほう」が自然な例)
件名:◯◯の会場候補について
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
◯◯の会場について、候補を二つに絞りました。
・A会場:駅から近く、収容人数に余裕がある
・B会場:費用を抑えられるが、駅から少し歩く
参加者の移動を考えると、A会場のほうが適していると考えております。
ご意見をお聞かせいただけますと幸いです。
手配を自社で引き受けると伝える(受け持ちの「のほう」)
件名:Re: ◯◯の備品手配の件
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご相談いただいた備品の手配は、弊社で進めます。
貴社には、当日の搬入時間だけお知らせいただければ結構です。
準備が整い次第、手配の内容をお送りいたします。
お客様に必要事項の入力をお願いする
件名:お申し込みに必要な情報のご入力のお願い
◯◯様
このたびはお申し込みいただき、ありがとうございます。△△受付担当の□□です。
お手続きを進めるため、下記のページからお名前とご連絡先をご入力いただけますでしょうか。
ご入力いただいた内容は、お申し込みの確認にのみ使用いたします。
社内で報告の期限を伝える
件名:◯月の実績報告の提出について
各位
お疲れさまです。□□です。
◯月の実績報告を、◯月◯日(◯)までに共有フォルダへ提出してください。
書式は前月と同じです。不明な点は□□まで連絡をお願いします。
注意
「よろしかったでしょうか」と「のほう」が重なる接客・電話の言い方は「よろしかったでしょうか」の使い方で扱っています。
よくある間違い
| 書きがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| ご確認のほうよろしくお願いします | 比べる相手がなく、回りくどいと感じる人もいる | ご確認をお願いいたします |
| お名前のほう頂戴できますか | 「のほう」に加え、名前を「頂戴する」という言い方を気にする人もいる | お名前を伺ってもよろしいでしょうか |
| 資料のほう、添付のほうにてお送りします | 「のほう」が重なり、要点がぼやける | 資料を添付してお送りします |
| こちらのほうが資料になります | 「のほう」と「になります」が重なる | 資料をお送りいたします |
| 私のほうから一点、質問させていただきます | 「のほう」と「させていただく」が重なり、くどく聞こえることがある | 一点、質問がございます |
「〜になります」の使い方は「〜になります」は誤用かにまとめています。
「〜のほう」を使ったお願いへの返事
相手から「ご確認のほうお願いします」と届いても、言葉づかいには触れず、何を確認したのか、いつまでに返すのかをはっきり返します。
◯◯様
お世話になっております。株式会社△△の□□です。
企画書をお送りいただき、ありがとうございます。
内容を確認いたしました。◯ページの日程について一点だけ相談がございますので、別途ご連絡いたします。
そのほかは、このまま進めていただいて問題ございません。
部下や後輩の文面を直すときは、「外しても意味が変わらない『のほう』は削ろう」と、判断の基準をいっしょに伝えると次から迷いません。
この記事の要点
- 「のほう」は本来方向・比較・受け持ちを表す。
- 比べる相手がない「ご確認のほう」はぼかし言葉として気になる人もいる。
- 外して読んで意味が変わらなければ削る。
- 改まった依頼の結びは「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」。「ほど」と「ほう」は別。
- 「になります」「させていただく」と重ねない。
FAQ
よくある質問
間違いとは言い切れません。方向・比較・受け持ちを表すときは自然な言い方です。ただ、比べる相手がないのに付けると、回りくどい、ぼかしていると感じる人もいるので、メールでは外すほうが無難です。
違います。「ほど」は言い切りを避けて控えめにお願いする言葉で、「ご確認のほど、よろしくお願いいたします」は改まった依頼の結びとして定着しています。「ほう」は方向や比較を表す言葉です。
相手側ではなく自分たちが受け持つ、という区別をしているので、不自然ではありません。気になる場合は「弊社で対応いたします」とすると、すっきりします。
書けますが、「方(かた)」と読まれて人を指すと誤解されることがあるため、ひらがなの「のほう」にしておくと読み違いが起きません。
失礼とまでは言えませんが、回りくどいと感じる人もいます。「お会計は◯円です」「お会計をお願いいたします」と言い切るほうが、すっきり伝わります。